「さよなら…!大魔王バーン……!!」
それが敗れた余の聞いた最期の言葉
世界を震撼せしめた大魔王は竜の騎士の称号を持つ勇者によって倒された
世界から魔は薄れ、平和が訪れた世界
ただ、世界を救った勇者が戻らない世界………
そんな世界を漂う者が一人……
「ここも違う……魔力に満ちた世界だからもしやと思ったのだけど……」
空を漂う女は溜め息混じりに一人愚痴る
(ここもダメだった……もう何百年探し続けてるかしら……)
考え事をしながら上空へ飛翔する
「ん?」
飛翔を続けていた動きが止まり、女は自分のいる位置よりさらに上空を見る
(何かしら?強い魔力を感じる……でもこの先は宇宙……)
少しの間思案するが考えても埒の明かない事だと察した女は目の前に奇妙な空間を作り出し入って行った
「これね……魔力を放っていた物は」
女が宇宙空間で見つけた物
それは今や物言わぬ石像と化し宇宙をさまよう大魔王バーンの遺体
「死してなおこれほどの魔力を放っているなんて……いえ!?これは……」
漂うバーンの石像を凝視する女
(生きてる!?肉体は石像と化し魂も石の肉体に囚われながらも生きてる……そしてこの石化は呪い……自力で解くことが出来ない呪いの中生きている……でもこれでは死んでいるのと同義……)
バーンの石像を見つめながら女は思案を巡らせる、石化したバーンの顔を見つめている内に女の思考が変わった
(石像の状態でこれほどの力を持つならアレに対する抑止力……いえ刃になり得るかも知れない……)
差し出した手をバーンの頬に添えた
「あなたにとっては不本意かも知れないけれど、第二の生を与えてあげるわ……枷は着けさせて貰うけどね……」
バーンの周りを怪しげな空間が覆う
(……こんな事をしても状況は変わらないかもしれない……早く探し出さないとね……)
唇を噛み、拳を握り締めながら女はうつむく
(幻想郷が滅んでしまう前に……)
女はバーンの石像を空間に取り込むと空間を閉じ、この世界から消えた……
余は……負けたのだ……
魔界の全てを背負い、戦い……負けたのだ……
後はこの魂が朽ちるの待つだけ……
そう……その筈だったのだ……
「なぜ余は目覚めた……」
目覚めたバーンは信じられなかった、自分が目覚めた事が、動ける事が……
(目覚める事もあり得ぬ筈だがそれどころか肉体が鬼眼王ですらない、戻る事は叶わぬあの状態が何故……)
自身の肉体を確認しながら改めて今の自分の状態が異常である事を悟る
(何者かの仕業か……だが何の為に……)
今の状態を人為的な仕業と考えながらバーンは立ち上がり周囲を見渡す
「森の中……だが知らぬ土地、余の知る土地ではない」
周囲を見たバーンはおもむろに木に近付き、スッっと手刀を木に浴びせた、手刀を受けた木はなんの抵抗も無く真っ二つになり、地面へ落ちる
「これは……」
手刀を放った手を見ながらバーンは違和感を感じていた
(肉体に負荷が掛けられている……)
拳を握りながら肉体の変化を感じとる、本来なら木を切るぐらいなら全力であろうと結果は変わらない、だが自身の肉体の事を一番知っているバーンはその変化を感じ取った
「……」
何かを考えながら切った木に指を突きだし呪文を唱える
「メラ」
指先から放たれたのは火球、バーンの指先程の大きさを持った火球と言うより火の粉が切られた木に当たる
当たった木は一瞬で燃え尽きた
「やはりか……」
残り火を見ながらバーンは呟く
(魔力の方もかなりの負荷を掛けられているな……)
自身の今の状態を確認しながら思案する
(全力の半分以下……まぁ良い、余を目覚めさせた輩に解かせれば良い、真意の方も知らねばならんしな)
「さて……」
思考が終わったバーンは上空へ飛翔する
「まずは情報か、この世界と下手人の情報……フッ……余が勇者の真似事をする羽目になるとは……」
苦笑したバーンは上空で辺りを見回す
(とりあえずはあの一際目立つ赤い館へ行ってみるとしよう)
バーンは遠目に見える赤い館へ向かい飛んでいった
謎の地で目覚めた大魔王、謎の女の目的とは?……かつて世界を震撼させた大魔王の旅が始まる
まずは短いですが幻想入りです。
不定期になりますが細々とやっていきます。