東方大魔王伝   作:黒太陽

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第1話 紅い館

赤い館へと向かうバーン、道中館の近くの湖を通り過ぎた

 

 

「あれ?誰か飛んでる……見たことない人……」

 

湖の側の森の中、茂みから顔を出した少女が呟いた

 

「あっちは紅魔館の方向……」

 

見知らぬ人物が飛び去るのを眺めながら呟いていると

 

「大ちゃん見ーっけ!!」

 

「うひゃあ!?」

 

突如目の前に降り立った者と声で少女は茂みから跳び跳ねた

 

「大ちゃんバカだねぇ、かくれんぼなのに顔だしてるなんて」

 

ケラケラと笑う少女は大ちゃんと呼ばれる少女に指を指す

 

「もう、チルノちゃんビックリしたよぉ……」

 

恥ずかしそうに赤面しながらチルノと呼ばれる少女の傍に近付く

 

「あのねチルノちゃん、さっき……」

 

先ほどの人間の事を話そうとした口に出したのと同時に

 

「次は大ちゃんが鬼ね!ちゃんと100数えなさいよ~!」

 

そう言ったチルノは飛び去って行った

 

「チルノちゃん!……まぁ良いや後で」

 

一人呟いた後、木に顔を当て数えだした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全てが赤い館か……これがこの世では美しいとされるのか?」

 

赤い館、普通の感性を持つなら大多数がいい趣味とは言えないと言うだろう、だが情報の欲しいバーンはどうでも良い事ではあるが推察する、聡明であるが故の弊害とも言える

 

空から眺めていたバーンは館の門前へと降り立った

 

 

「…………」

 

門前に降り立ったバーンは眼光鋭く睨み付ける

 

「……zzz」

 

バーンが睨み付けたのは門前で壁に持たれながら居眠りをしている女

 

「女……起きろ」

 

「……zzz」

 

バーンの言葉を意に返さず居眠りを続ける女

 

 

(舐められたものだ……)

 

女を素通りし門に手を掛けた

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

爆発でもしたかのような音が響いた

 

 

「カッ……!?ハッ…グゥ……!?」

 

 

「女……余を舐めるのは大概にせよ」

 

 

音の出所は門の側の壁、バーンが女の首を捕まえ壁に叩きつけていた

 

バーンが門に手を掛けた瞬間、女はバーンに攻撃を仕掛けていた、だがバーンは攻撃を知っていたかの様に避け、首を捕まえ壁に叩きつけたのだ

 

 

「お前が眠るフリをし余を謀っていた事はわかっていた、相手が悪すぎたな女」

 

そう言うと掴んでいた首を放した

 

「カハッ……ゲホッ…………あなたの様な外来人が紅魔館に何の御用ですか?」

 

息を整えつつバーンに問う

 

「お前に話す事では無い、通らせて貰うぞ」

 

身を門に向け歩き出すバーン

 

「待て!許可無く入らせる訳にはいきません、排除させて貰います!」

 

構えを取りバーンを睨み付けた

 

「力の差を感じつつも挑むか……」

 

女へ向き直し、微笑する

 

「……これが仕事なので」

 

苦笑しながら答えた女、だがその顔には冷や汗をかいている

 

(と、とんでもない化物を相手にしちゃった……)

 

今更遅い後悔をしながら女は叫んだ

 

「紅 美鈴、参る!」

 

啖呵が終わると同時に駆けた

 

 

「武道家か、余の体の具合をみるのに丁度良いな」

 

バーンが呟いた瞬間、眼前に拳が飛んできた

 

「フン……」

 

拳を軽くいなしたバーンに次々と攻撃が襲う

 

「ハッ!」

 

攻撃を続ける美鈴、その顔は必死

 

(技量はあのマァムと同程度か、だが力が強い……人間か?)

 

攻撃を捌きながら力量を確認する

 

「ムッ!?」

 

繰り出された蹴脚を払おうとしたバーンの手は空を切る

 

(フェイントか!)

 

そう思った時には遅かった、体勢を立て直そうとするバーンの目前には既に美鈴が居た

 

「ハァッ!」

 

渾身の拳がバーンの胴を捉えた

 

「フゥー……フゥー……」

 

地面を抉りながら後退したバーンを見据えながら息を整える

 

(わかってはいましたがこれほどとは………)

 

渾身の一撃を決めた割には美鈴の顔は優れない、何故なら

 

 

「良い一撃だった」

 

 

効いていないから……

 

 

(申し訳ありませんお嬢様、私はここで死んでしまうかもしれません……)

 

心の中で詫びた美鈴は死を覚悟した

 

 

(防御力はあまり落ちていない、だが力の減少と速さが落ちている……本来ならあの程度のフェイントなど見てからでも対処出来る)

 

死を覚悟した美鈴とは違いバーンはこの戦いを肉体の確認程度としか思っていない

 

「美鈴と言ったな、もう少し付き合ってもらおう」

 

そう言うとバーンは身構える美鈴に攻撃を仕掛けた

 

 

「クッ……!?」

 

 

攻守逆転し攻撃を捌く美鈴、その表情はやはり必死

 

 

(攻撃は単調、でも速く、そして強い!!)

 

 

矢継ぎ早に繰り出される攻撃、武術的な駆け引きこそ無いがその息をつかせぬ怒涛の攻めに守勢を余儀無くされる

 

(意外に良くやる、これほどなら耐えられるか?)

 

直後バーンの攻撃がさらに速さを増した

 

(嘘!?さ、捌き切れな……)

 

守りを掻い潜った掌底が美鈴を打ち、地面に叩きつけられた

 

「グゥゥ………!?」

 

咄嗟に防御したものの防御を無視するかのような強烈な一撃

 

(ヤバイ!動かないと………)

 

追撃を避ける為に体を動かそうとするが痛みで動きが鈍る

 

「……?」

 

視線をバーンに戻した美鈴が見たのは自分を見下ろしてはいるものの何もしようとしてこないバーンの姿

 

「……ハッ!?」

 

一瞬呆けたがすぐ気を取り直し、痛みに慣れた体を跳ねさせ距離を取る

 

(この技に全てを掛けるしかない!)

 

気合いを込めた美鈴の体から何かが吹き上がる

 

(これは闘気……いや、闘気の他に魔力も混ざっている、この世界の人間は闘気と魔力の両立が出来るのか……)

 

バーンは美鈴のしようとする事に警戒はしない、寧ろ珍しい物を見る目で観察している

 

「食らえ!彩符「極彩颱風」!!」

 

技名と共に出されたその技は美鈴の体から放たれた

 

「面白い……この世界の者はこのような芸当が出来るのか」

 

眼前に展開されたのは高密度の弾幕、美鈴の姿すら見えなくなりそうな程の量

 

「行けぇ!!」

 

美鈴の掛け声に呼応し弾幕がバーンに向かう

 

だが目前に迫る弾幕にバーンの表情は些かの変化も無い

 

迫り来る弾幕に向かいその手をかざし、バーンは唱えた

 

 

「イオナズン」

 

 

一瞬、強烈な閃光が辺りを照らした瞬間、轟音と共に大爆発が起こった

 

その爆発は美鈴の弾幕を飲み込み、瞬時に広がった

 

 

「館を壊さぬよう抑えはしたが、さてあの女は生きていれば良いが……」

 

周囲を舞う砂埃を掌の風圧で吹き飛ばす

 

「流石武道家なだけはある、だが力を抑えたとは言え余のイオナズンを受けてその程度で済むとはやはり……」

 

美鈴の姿を確認したバーンはその健在振りに感心した、美鈴はかなりのダメージは負っているもののその場に立っていた

 

「あ、あんなの……反則ですよ……」

 

今にも倒れそうな美鈴は思わず口にする、弾幕を飲み込み更に術者にもダメージを与える技、言ってみればボムである、回数もバーンの魔力によって決まるが今のバーンでさえ軽く50は余裕で撃てる、大幅な負荷を与えられてなおその魔力は常軌を逸している

 

「……」

 

無言で美鈴に歩むバーン

 

(し、死んだ……)

 

美鈴はその姿に自分の死を悟った

 

「……ッ!?」

 

眼前にバーンが迫った瞬間、美鈴は目を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

「美鈴」

 

トドメは来なかった、代わりに名を呼ばれた美鈴はゆっくり目を開けバーンを見る

 

 

「もう良いだろう?通らせて貰うぞ」

 

「えっ?」

 

美鈴は呆けた、トドメを刺されるものとばかり思ったのにトドメは刺されず門を通ると言われたから

 

「と、トドメは刺さないんですか?」

 

「お前が人間なら躊躇無くトドメを刺しただろう、だがお前は人間ではないのであろう?魔族でも無いが少なくとも人間ではない、それゆえだ」

 

バーンの推理は当たっている、美鈴は妖怪であり人間では無い、姿は人間と大差無いが肉体の強さ等は人間と比べ遥かに高い

 

「お、お嬢様達に乱暴はしませんよね?」

 

「安心するがいい、危害を加えに来た訳では無い、だが出方次第だ、お前の様な応対ならどうなるかは保証出来ん」

 

「あー……えっとその……」

 

不意討ちをかました美鈴は言葉を詰まらせた

 

「門番の応対を改めるんだな、その怪我はお前の責として受け入れろ」

 

「はい……」

 

歩いていくバーンの後ろ姿を見ながら項垂れた、門を開け中に入ったバーンを見送った後、緊張の切れた美鈴はその場に倒れた

 

「助かった……!もう動けないよ……あ!取り次ぎしてない……それにさっきの爆発……絶対あの人侵入者扱いになってるだろうなぁ……うーヤバイなぁでも動けないしなぁ……」

 

その場で一人喋る美鈴、あれこれ不安な事を口に出す

 

「考えてもしょうがない、一旦休んで回復してから向かいますか……イテテ……はい、応対を改めます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何よ今の音……」

 

「凄い音だったねお姉様」

 

紅魔館の一室で寝ていた姉妹が目を覚ました

 

「……咲夜」

 

姉がメイドの名を呼ぶ

 

「はい、何でしょうか?」

 

何も無かった空間に突如メイド姿の女性が現れる

 

「今の音は何?」

 

「美鈴と交戦した者の仕業でしょう、紅魔館には被害はありません、先ほど門を開き入ってくる者を確認しました、おそらくその者かと……」

 

「フン……侵入者ね、咲夜、始末して来なさい、美鈴を倒した位で調子に乗っている愚か者をね」

 

「かしこまりました」

 

そう返事をするとメイドは一瞬でその場から消え去った

 

「ねーお姉様、あたしも遊びたい!」

 

「あんまり我が儘言わないの、でももしその侵入者がここに来れたなら遊んでも良いわよ」

 

「やった!咲夜負けないかなー」

 

「だからって負けを願うのはダメよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出迎えは無しか」

 

館に入ったバーンは玄関から内部を見渡す

 

(内部も赤………それよりもこの館、何か内部に施してある、空間の歪みを感じる)

 

バーンが歩を進めようとしたその瞬間

 

「!!」

 

ナイフが突如目の前に現れる

 

ナイフが刺さる瞬間にナイフを掴んだバーン

 

(何の施しも無いナイフ……突如表れたのはどうやった?空間に干渉した様子も無い)

 

手にしたナイフを見ながら謎の攻撃方法に思案しているバーンに声が掛かる

 

「やるわね、美鈴を倒しただけはあるみたいね」

 

物陰から表れたメイド姿の女がバーンの前に立つ

 

「……お前の仕業か」

 

手にしていたナイフを握り潰し床に捨てる

 

「やめて下さらない?掃除も大変なのよ?それにナイフだってタダじゃないんだし」

 

「フン……ここに住む者は不意討ちが挨拶なのか?」

 

「そんな訳ないじゃない、この紅魔館の主からあなたの始末を受けたから攻撃したのよ」

 

「お前はここの主の居場所を知っているのか?」

 

「ええ、勿論よ」

 

バーンの顔が薄く笑う

 

「なら好都合だ、お前に案内してもらうとしよう」

 

「やってみなさい!」

 

咲夜はバックステップをすると弾幕を展開しバーンを攻撃する

 

「フン」

 

迫った弾幕を掌底で弾きながら進んで行く

 

「弾幕を弾きながら進んでくる……」

 

咲夜はその光景に驚きを見せる、今まで弾幕を弾いた者などいなかったから

 

「もう終わりか?」

 

バーンが咲夜の眼前に立ち、捕まえようと手を出す

 

「!?」

 

手は何も掴まなかった

 

(これは……まさか)

 

起こった現象にバーンはある考えに行き着いた

 

「普通の弾幕では無理見たいね、なら!」

 

バーンの後方に表れた咲夜が再び弾幕を展開する

 

「……」

 

先ほどと同じように弾きながら進むバーン

 

両の手を使い弾いたその瞬間

 

(今!)

 

「!?」

 

弾いた隙を狙いナイフがバーンの胸の前に数本現れる

 

(やはりか……)

 

「終わりね……」

 

咲夜が呟きと同時にナイフがバーンに突き刺さる

 

キンッ

 

キキキンッ キンッ

 

事は無かった、バーンに当たったナイフは金属音を出し全て弾かれた

 

「えっ?」

 

思わず声が出た、刺さる所か傷すら付けられないその光景に

 

「無駄だ、余の肉体にそんなナイフごときで傷は付けれん、余を切りたくば伝説のナイフでも持ってくるんだな、そんな代物がこの世界にあるならばな」

 

笑みを浮かべ咲夜を皮肉る

 

「それとこんな話をしてやろう、余の世界には凍れる時の秘法と言う魔法がある」

 

「何を……」

 

「まぁ聞け、その魔法は皆既日食の日にしか行えぬ時の魔法、つまり……」

 

「それがどうしたの?ナイフが効かないなら弾幕で……」

 

咲夜がその能力を発動した瞬間

 

「余も時を止められる」

 

時の止まった世界でバーンは咲夜を捕まえた

 

「う、嘘!?そんなっ!?」

 

捕まえられた咲夜は驚愕の様子でバーンを見て能力を解除した

 

 

 

「さてどうする?大人しく主の元に案内するか?ひとつ言っておくが断るならお前は死ぬ事になる、外の女は人間では無いため生かしたがお前は違う……慈悲は無いぞ……人間」

 

「うっ……わかったわ……案内する、でもお嬢様達には手を出さないで!危害を加えるなら絶対に行かせない」

 

案内するとは言ったがもし危害を加えるなら刺し違えるもいとわない、そう咲夜の言葉からは聞こえた

 

「……外の女もそうだがお前達は勘違いしている、余は戦いに来たのでは無い、色々と知りたい事があるからここを訪ねたのだ」

 

「……その言葉本当でしょうね?」

 

「疑う気持ちはわかるがな、だが今の余にお前を信用させる術は無い、信用しろとしか言えぬ」

 

「……わかったわ、貴方が危害を加えに来たなら私なんてとっくに死んでるものね……こっちよ」

 

踵を返した咲夜は歩き出す、その後を追うバーンは薄く笑っていた

 

(余に時を止める力は無い、時の秘法とは確かに時を操る魔法、だが皆既日食の力を借り、余の魔力を持ってしてようやく1人分の肉体の時を操れる、先ほどのはお前の能力が皆既日食の代わりになったから可能だった事、それを応用しただけの事よ)

 

(とは言え本来の皆既日食では無い上に余の魔力の低下、今の余の魔力では2~3分が良いところだろう)

 

 

 

(しかし……人間が時を止めるとは……この世界は存外楽しめるかもしれんな)

 

 

咲夜の後に続きながら大魔王はこの世界に興味を感じていた




とりあえず1話書きました。

バトルばかりですが……大魔王様がとても優しいのは東方って言うのもありますがまぁ追々書いていきます。

バーンの時止め入門はこれで妥当かなとは思うんですがどうでしょう?
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