「こっちだ蜘蛛野郎!」
離れて戦うべく二人はファントムと共に広い魔界へ散っていく
「さぁて……私達もやるわよパチュリー!」
「ええ、やりましょう」
ナイトメアへ構える二人にナイトメアが攻撃を放ち避ける二人
ムンドゥスはその様を楽しげに見つめていた
side妹紅・チルノ
「さぁやるぞチルノ!」
霊夢達からかなり離れた場所でファントムと向き合う二人
「食らえー!」
まずは様子見……では無く倒す気満々のチルノの氷弾がファントムに襲い掛かる
ジュウ
ファントムに命中した氷弾はその身を傷付ける事なく蒸発してしまった
「チルノの氷を……!?あいつ溶岩かよ!?」
チルノの強力な氷弾を容易く蒸発させるファントムの温度に妹紅は驚愕する
「……ならこいつはどうだ!」
妹紅が飛び出し拳をファントムの外皮に打ち付けた
(か、硬い……ナイトメア以上か!?)
拳から感じる硬度、今まで体験した事の無い硬さに焦りを生みながら妹紅は下がった
「……」
喋らないファントムは手足を大きく上げ威嚇のポーズを取った、もう良いか?と言う様に
オリジナルのファントムは言葉を喋る事が出来たがこのファントムはムンドゥスの作り出した意思の無いファントム、それ故に何も思わずただムンドゥスの命に従う
攻撃体勢に入ったファントムの口内に熱が集まり始める
「……ヤバイ!チルノ避けろよ!」
集まる熱の高さに危機を感じた妹紅の声にチルノも頷き距離を取る
そしてファントムから多大な熱量を持つ溶岩弾が二人に放たれた
「ッ!?」
余裕を持って回避した妹紅の顔が歪んだ
(なんて熱量だよ……充分距離を置いて避けたのにここまで熱気がくるなんて……)
地面に着弾した溶岩弾を見ながら妹紅は戦慄した、溶岩弾は地面を溶かしながら熱気を広範囲に広げる様を見て凄まじい熱量の高さを感じた
「チルノ大丈夫……!?」
チルノに振り返った妹紅の言葉が止まった
「うぅ……熱い……」
チルノは苦悶の表情で悶えていた、溶岩弾の凄まじい熱気は氷精の彼女に取って毒に近い、体からは汗を大量に流していた
「チルノ!大丈夫か!?溶けるのか!?」
氷精だから熱で溶けるのではないかと心配する妹紅にチルノは微笑み返した
「大丈夫よ……それよりどうすんの?あたいの氷も効かない、あんたの攻撃も効かない……勝ち目あんの?」
「……まだ何とも言えないな、とにかく色々やってみて糸口を見つけなきゃな」
「わかったわ、行くわよ妹紅!」
「おう!」
ファントムに向かい二人は飛んだ、それを迎え撃つファントム
蓬莱人と妖精、そして魔界の大蜘蛛の戦いは熾烈を極める
紅魔館
「粗方殲滅出来た様ね……」
上空から紅魔館を見下ろすレミリア、レミリア達は紅魔館に攻めいって来た悪魔達の大半を片付けていた
「頃合いね」
紅魔館で残る悪魔と戦っている咲夜や美鈴を見ながら呟いた
「咲夜!美鈴!私とフランはこれより打って出る!紅魔館は任せたわよ!」
「お嬢様!それでしたら私もお供します!」
悪魔を蹴り飛ばした美鈴がレミリアに返した、咲夜も同じ様だ
「私とフランで良いわ、それより私が帰って来た時に紅魔館が滅茶苦茶だったら怒るわよ?」
「お嬢様……わかりました!この美鈴の名にかけて紅魔館を守り抜きます!」
大事な用件を伝えられた美鈴は力強く答えた
「紅魔館はお任せください、このナイフに誓い必ずや悪魔から守り抜いて見せます!」
咲夜もナイフを胸にかざし答える
「フフ……パーフェクトよ二人共!任せたわよ!」
二人を見て微笑んだレミリアはすぐに表情を険しくさせる
「フラン……私達は幻想郷に散って行動するわ、貴方へのオーダーは1つ、サーチアンドデストロイ!サーチアンドデストロイよ!悪魔どもを皆殺しにしてやりなさい!」
「了解お姉様!いっくよー!」
見敵必殺!そう命令を下されたフランは嬉々として幻想郷へ飛んでいく、フランの向かった方向を確認した後レミリアもフランとは違う方向へ向かい飛んでいった
「ギィィィィ!!」
「ウヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
見送った二人の前に威嚇するアサルトと高笑いするシンサイズが現れる
「死にたい奴……前に出ろ」
指を鳴らしながら美鈴が悪魔へ宣告する、何かの漫画を見たのだろうか、一瞬服を破りそうになって止めた
「雑魚だけで紅魔館を落とそうなんて……間抜けね……知るが良いわ!私の能力は……まさに世界を支配する能力だと言う事を!」
咲夜も何か読んだらしい、主の目が無くなった二人は吹っ切れた様に悪魔達を殲滅していった
side妹紅・チルノ
「うらああ!」
ファントムへ大量の弾幕を放つ妹紅
「……」
弾幕をその硬い体で受けながら溶岩弾を放つファントム
「クッソ!効きやがらねぇ!」
ファントムの硬さに嫌気がさしてきた妹紅を押し退けチルノが溜めていた力を放った
「これならどう!」
ファントムの頭上に巨大な氷柱を作り出し落下させる、氷柱はファントムの熱に溶かし切られず炸裂した
「……これでやれたら楽なんだが」
バラバラになった氷がファントムを覆い一見やった様に見えるが氷の隙間から溢れる水蒸気にやってない事を悟る
「ヴオオオオオ!!」
雄叫びを上げ氷を弾き飛ばしファントムは姿を現す
「だよな……参ったなこれは……」
元気なファントムに打開策が思い付かない妹紅は苦い顔で呟く
「ねぇ……あいつの背中……傷付いてない?」
気付いたチルノが指を差した
「……本当だ少しだけど傷付いてるな……背中と……後顔か……そこが弱点か!」
妹紅の推察は正解だった、ファントムの弱点は顔と背中、そこは外皮とは違い柔らかいのだ、チルノの放った氷柱が背中に命中し砕けた欠片が顔に傷を付けていたのだ
「なんとかなりそうだな……良し!チルノ行くぞ!」
「わかったわ!」
二人は弱点の顔と背中に集中攻撃を開始する、ファントムも負けじと溶岩弾を連射し反撃する
その戦場は更に熱を帯び燃え上がる
幻想郷・上空
「待ちやがれ!」
グリフォンを追う魔理沙、弾幕を放ちながら空を縦横無尽に飛び回る
「邪魔すんなー!」
魔理沙に襲い掛かるシンを弾幕で粉砕しながらグリフォンに詰めていく
「!?」
魔理沙は驚き目を見開いた
グリフォンの背に乗るネロアンジェロがグリフォンから飛び降りたのだ
「二手に別れるつもりか!?」
すぐさま考える
(どうする?どっちも危険だ……)
埒の開かない選択に頭を掻いた魔理沙は叫んだ
「あの鳥からだ!死ぬなよみんな!」
幻想郷の民達がネロアンジェロに殺されぬ様願った魔理沙はグリフォンを追っていった
白玉楼
「どれだけ居るのよ……いい加減うんざりしてきたわ……」
白玉楼に大量の悪魔の死体を積み上げている幽々子はまだまだ現れる悪魔達に呆れ顔で呟いた
「そこ危ないわよ?」
突撃してくるアサルトに忠告する
「ギィ!?ギイイイィィ!?」
アサルトが勢い良く倒れこみ幽々子の前で生き絶えた
「その拙い知能じゃ分からないでしょうね、これ、触ったら死んじゃうわよ?」
死蝶を周囲に停滞させている幽々子が死蝶を指差して教えてあげる、先のアサルトは死蝶に突っ込み自滅に近い形で死んだのだ、だがアサルトに死蝶が危険だと認識する知能は無い、アサルト達は漂う死蝶に触れ次々と死んでいった
(流石にここまで倒せば目的は明確ね……この悪魔達は人や妖怪を殺すだけみたいね、建物には無関心……そうとわかれば……)
その場に浮いていた幽々子はフワフワと白玉楼の門へ向かう、その間にも襲い掛かる悪魔は死蝶により幽々子に触れる事なく生き絶えていく
「悪魔を葬りながら向かいましょうかねぇ……私が行っても無意味かもしれないけど足掻いとかないとね……」
ゆっくりと白玉楼を出た幽々子は悪魔を葬りながらかの場所へ向かい始めた
旧都
ここにも悪魔の死体は積み上げられていた、旧都の猛者達が悪魔を相手に優勢を保つ、中でも鬼の二人の力は凄まじく、悪魔すら泣き出す程の膂力で逆に蹂躙されていた
「取り敢えずはこんなもんかね、萃香!数はいくらだい?」
旧都に現れた悪魔の大半を始末した場で勇儀が聞いた
「百から先は数えて無い!」
フンと鼻を鳴らした得意面の萃香
「なんだいそりゃ……まぁあたしも三百くらいで数えなくなったけどさ……まっこの勝負あたしの勝ちだね!百と三百じゃ結果は見えてるね!奢りよろしく!」
勇儀も得意面で萃香へ視線をやる
「んなっ!?何言ってんだい!私だってそれぐらい倒してるさ!いやそれ以上さ!私の勝ちさ!飯を奢るのは勇儀の方さね!」
慌てて反論する萃香、何故彼女がここまで反論するか?それは鬼の負けず嫌いもあるが彼女にはお金が無かった、天界や博麗神社で居候に近い生活をしている彼女にお金など必要なかったのだ
「なんだい……あんたまた文無しかい?」
勇儀にはバレていた
「な、何を言うか!?私の勝ちだから主張しているだけだ!お、お金ならたんまり持っとるわい!」
あたふた喋る萃香、バレバレである
「まぁ良いさ、勝負はまだ続いてるしね、地上にはまだ悪魔は沢山いるだろうからそこで白黒着けようじゃないか!」
「フフン……良いのかい?私の圧勝に終わる事になるよ?」
「上等!その酔っぱらい面を泣き顔に変えるのもまた一興さ!行くよ萃香!」
「あ、勇儀待った!」
地上へ向かう勇儀を止めた、勇儀は怪訝な顔で振り向く
「あんた地上に出ないんじゃないのかい?」
「今は非常事態、そんな事言ってる場合かい?」
「それもそうね……じゃあ行こうか勇儀!」
旧都に残る僅かな悪魔を旧都の猛者達に任せ二人は地上へと向かって行った
side妹紅・チルノ
「うらぁ!!」
「やあぁ!!」
二人の弾幕がファントムの顔と背に直撃する
「ぬぅ……りゃあああぁ!!」
怯んだ隙にファントムの顔面に飛び込んだ妹紅が顔を滅多打ちにする
「ぐあっ!?」
爪での反撃に胸を切られた妹紅が下がる
「はぁ……はぁ……まだくたばらないのかよ……タフ過ぎるだろ……」
かなりのダメージを与えた筈だ、空を飛べないファントムにほぼ一方的に弱点の顔と背中に弾幕と殴打を与え続けている、妹紅なら二桁は死んでいる量のダメージを……しかしファントムは倒れない、空を飛ぶ二人に溶岩弾を隕石の様に落としたりするが二人には易々と避けられるが徐々に体力を削り今の様にダメージを与えたりしていた
「弾幕はあんまり効かないからな……こうなったらダメージ覚悟で殴り続けてやる!……チルノ!」
意を決した妹紅はチルノへ振り向いた
「!?……チルノ!?」
妹紅はすぐ異変に気付いた、チルノが大量の汗を流しフラついている
「チルノ!」
墜落しそうになったチルノに飛び寄り支える、同時にファントムの注意を逸らすために弾幕をファントムの回りに放ち煙幕を作る
「クソッ!この熱気か!」
辺りを充満する熱気、ファントムが大量に連射し隕石の様に落とした溶岩弾が辺りを異常な熱気のフィールドを作り出していた
(私は平気だけど……チルノには地獄か……)
妹紅は炎を操る故に熱には耐性があるので溶岩弾が直撃しない限りは熱気の影響は受けない、しかし氷精のチルノは別、熱は天敵なのだ、チルノ程の力があれば多少の熱は問題は無いがファントムの作り出した熱はチルノの許容を越える熱を出していた
「あ、あたいは大丈夫……もう少しなんでしょ?やるわよ……」
なんとか意識をハッキリさせたチルノが言うが誰が見ても強がりは明らかだった
「辛いんだろ?離れてろよ……後は私がやる!」
「こ、子分が生意気言うんじゃないわよ……」
今にも倒れそうなチルノだがそれでもやろうとする、退くつもりは無い
「たまには子分の言うことも聞いてくれよ親分……子分の言うことも聞いてくれなきゃ嫌われるぜ?任せてくれよ」
優しく話しかけた、親分子分の前に友人であるチルノの苦しむ顔を見るのが辛いのだ、だから妹紅も退かない
「……わかったわよ、今回は子分に手柄を譲ってあげるわ!ちゃんと仕留めなさいよ!」
退く事を了承したチルノはフラフラと離れていく
「任せてくれ親分……必ず倒すさ!」
決意を言葉にした妹紅は煙幕から出てきたファントムの前に立つ
「ファントムだっけな……覚悟は決めた!もう私に後退は無い!根比べと行こうか!」
体に炎を纏い妖術を込めた両腕を構えファントムに殴り掛かった
「ぬあああああぁぁ!!」
ファントムの顔面を殴る、鬼気迫る顔で
「ッグッ!?……ラアッ!!」
爪が体を裂くが構う事なく殴り続ける
「かっ……!?……こんのヤロォォォ!!」
ファントムの蠍の様な尻尾が肩を貫く、それでも妹紅は止まらない
「グォ……グオオォ……」
止まぬ殴打に遂に呻き声をあげて下がるファントム、その顔は既に原型を留めておらずグチャグチャ
「ぜぇ……ぜぇ……逃げるんじゃねぇよ」
歩む血塗れの妹紅にファントムは口内に熱を溜め溶岩弾を放とうとする
「させるかよ!」
飛び込んだ妹紅の肘打ちがファントムの脳天を打ち抜き溶岩弾は発射される事なく口内で爆発した
「ハッ……ザマァないなぁ」
自分の溶岩弾にダメージを受けたファントムは怯みまた下がる
「終わりにしてやる!」
終幕の言葉と共に飛び込んだ妹紅はファントムを殴る、今度は乱打ではなくゆっくりと1発1発に力を込めて
「カッ……カオォォォ……」
段々とファントムの抵抗が弱くなっていく、だがそれでも油断無く殴る、油断も慢心も無い、ただ勝つために力は緩めない
「ぜぇ……ぜぇ……~~ッ!!」
右腕に渾身の力を込める
「ウラァァ!!」
会心の一撃がファントムに炸裂しファントムの顔を割った
「グォ……オォ……ォ……」
ファントムはその場に倒れた
「やったぜ……」
ニヤリと笑った妹紅はファントムの様子を暫し見つめ動かない事を確認すると振り向き歩き始めた
「グオオオオオオ!!」
「なっ!?」
向き直した時には遅かった、爪でガッチリと拘束されてしまう
「しつこい……ぞ!……コノヤロウ!」
拘束から抜け出そうとするが強い力で抑えられ抜け出せれない
「ッ!?」
抜け出そうとした妹紅が見たのはファントムの大きく開いた口、それを見て何をしようとしているのかをすぐ理解する
(食べる気か!?ヤバイ!!)
「離せぇぇぇ!!」
爪を押し広げようとするが動かない、そして近付く口
(クソォドジった……癪だけど諦めるしか無い……悪いみんな、一旦リタイアだ……後は任せる……)
一時の死を受け入れた妹紅は抵抗を止め迫る口を前に目を閉じた
(冷たい!?)
食べられる刹那……身に感じた冷気にハッと目を開けた妹紅は爪を見た
自分を抑える爪の片方が根元まで凍りついていた
「早く逃げて妹紅!!」
「!!」
背後から掛かった声で我に返った妹紅が凍った爪を砕き脱出し振り向いた
「なんで来た!?」
妹紅は思わず怒鳴ってしまった、助けてくれた者にとって耐え難い地獄の空間に戻ってきたのだから
「何言ってんのよ……子分を守るのは親分の務めでしょ……それに……」
離れて多少回復したとは言えやはり辺りの熱気はチルノにはかなり辛い、それでもやって来たのは……
「この程度で逃げたんじゃ……バーンに……」
溶岩弾を放とうとするファントムに手をかざす
「一生勝てないじゃない!」
能力を使ったチルノの冷気はもう片方の爪と前足の2本を凍らし、脆くなった足が自重に耐えきれず前のめりに崩れ溶岩弾は不発に終わる
「チルノ……それ……」
妹紅が気付いた、チルノの行った行為の意味を
そう、チルノが行ったのはバーンとパチュリーが教えた能力の使い方の応用、全体ではなく局所を凍らせる使い方、そして全力のチルノは熱く煮えたぎるファントムを凍らせれる程力を上げていた、バーンとの修行の成果が表れたのだ
「これが……あたいの全力よ!!」
鍛え上げた能力を最大限に高めたチルノはファントムに向かい両手をかざす
「うぅ……だああぁぁ!!」
ファントムの周囲に発生した氷はファントムの熱に負けず徐々にファントムに迫っていく
「イケるぞチルノ!そのままやっちまえー!」
更に力を高めたチルノの能力はファントムを凍らせていき顔を残すだけとなった
後一息、と妹紅が感じた瞬間だった
「悪足掻きか!?」
ファントムの口内に熱が溜まり溶岩弾を生成していた、そしてその銃口はチルノへ向けられている
「チルノ!攻撃が来るぞ!避け……」
注意を促した言葉が止まった
妹紅の言葉に朧な瞳のチルノは反応を示さなかったからだ
(私の声が聞こえないくらい集中してるのか……この熱気の中で……アレを凍らせるのも相当な力がいる筈……動けないのか!?)
チルノの様子に察した妹紅がファントムに目をやる、溶岩弾の発射に猶予は残されていない、今から止めるにも間に合わない
(なら私のやることは!)
成すべき事を悟った妹紅は炎鳥を纏いチルノの前に立った
「こいよ!チルノはやらせない!」
「ヴオォォォォ!!」
言葉の終わりを待っていたかの様に溶岩弾は発射された
「ハアアアアアァァ!!」
溶岩弾に飛び込み拳で迎え撃った妹紅の叫びが響き、衝撃で散らした破片が体を穿つ
「……!!やあああああっ!!」
背後のチルノが叫んだ
「ヴオォォ……ォォ……ォ……」
ファントムの顔を氷が覆い
「……」
ファントムは完全に動きを止めた
「ハアアアアァ!!」
だが溶岩弾は止まった訳では無い、撃った本人が止まってもチルノを滅しようと止まる事は無い
「ま……」
破片が身を穿ち血を蒸発させながらも妹紅は力を決して緩めない
「負けるかあぁぁぁ!!」
吼えた
猛る叫びと共に溶岩弾を打ち砕く、この状況は奇しくも以前バーンと対峙した時と似ている、だが今回の勝者は妹紅、体は傷だらけだが炎鳥は消えず氷付けのファントムに向かい優雅に羽を羽ばたかし飛んだ
「これで……最後だああぁぁぁ!!」
凄まじい勢いでファントムとぶつかり合う
ギャン
炎鳥と氷塊がぶつかった音、衝撃音を欠き消し風切り音が響く、ファントムを粉々に粉砕し、不死鳥は高く舞い上がった
「よし!……よぉし!やったぞチルノ!」
勝利の喜びを言葉で表しながらチルノのもとへ向かう、チルノの冷気で温度の下がった場所に降り立つ
「うっ……っ!?……」
地に足が着いた瞬間、よろけて膝を着いてしまう、激戦に傷付いていた体の悲鳴、緊張が切れた事で出てきてしまったのだ
「あたいならまた復活出来るのに……怪我してるのに無茶するからよ……」
チルノの微笑みが迎えた、チルノも憔悴している、熱気のダメージとファントムを凍らせる為に能力を酷使した為だ
「だからって見殺しに出来なかったよ……だって私達は親分と子分、それでから不死コンビだろ?相棒をやらせられるかよ……」
妹紅も微笑んだ、二人とも一先ずの安堵に笑った
「まだ終わってないわよ……さぁ行くわよ」
そう、まだ終わってないのだ、ムンドゥスを始め敵はまだ大勢いるのだ
「チルノ……お前はバーンを呼んで来てくれ……きっと地霊殿にまだ居る筈だ」
しかし妹紅はチルノと向かおうとせずバーンを呼びに行くことを頼んだ
「なんでよ!あたいじゃ役に立たないって訳!?」
チルノが食いかかる、なんで私だけと言った思いがあるのだ
「わからないのか!私達で勝てると思うのか!あの化物に勝つにはバーンの力が必要なんだ!お前にだってわかるだろ!」
妹紅が怒鳴る、わかっているのだ幻想郷の者では勝てないと
「でも……」
怒鳴られても渋る、チルノにもわかってはいる、勝てないと、それでも渋るのは仲間達と運命を共にしたいから、自分だけ比較的安全な事をするのが我慢ならなかった
「頼むよチルノ……私は満足に動けない、チルノだから頼むんだ、仲間外れじゃない……幻想郷を守る為だ!」
必死の妹紅にチルノは暫し見つめ合う
「終わったら……」
「えっ?」
紡ぎかけた言葉
「ご飯……奢りなさいよ」
そう言うと身を翻した
「あ……ああ!みんなで……みんなで行こう!」
妹紅は笑った、チルノも見ずとも笑っているのがわかっていた、そしてチルノは飛んで行く
「頼むチルノ……イテテ……さぁ私も行かなきゃな」
血塗れの体を起こし、足を引きずりながら歩き出した、仲間の戦う死地へ
幻想郷のとある平原
「きゅとして……」
「ドカーン!」
悪魔は粉微塵になり生き絶えた
「よーし!この辺りも殲滅完了!次はどっちに向かおうかな~」
辺りの悪魔を殲滅したフランが飛び立とうと地を蹴る
「!?」
飛んできた攻撃に気付いたフランは回避し攻撃の方向に振り向いた
「うわっ!?」
振り向いたフランの視界は黒で覆われていた
「ッ!?」
その黒に何かされたらしくフランは吹っ飛び木に叩きつけられる
「誰よ……うぐっ!?」
首が持ち上げられ木に押し付けられる
(く、黒い……剣士?)
首を絞められながらフランが見たのは黒い甲冑を纏う剣士、ネロアンジェロ
「フォフォフォ」
不気味な笑いをあげたネロアンジェロは手にする大剣をフランに突き立てる
(ヤバイ!?)
剣を刺されると直感したフランだが遅かった、剣はフランの心臓目掛け直進する
「待ていっ!!」
声と共に斬撃がネロアンジェロを襲い、ネロアンジェロはフランを離し飛び退き周囲を見回した
「神を信じて生きている人々や妖怪を脅かし、幻想郷を地獄に塗り替える悪魔たちよッ!!たとえ神が現れずとも、いつか必ず心ある者が、神に代わって悪を裁く……!!」
どこからか声が聞こえる
「人それを……「天誅」と言う!」
「フォ!?」
「ゴホッ……この声は……誰!?」
声の主を探すネロアンジェロに声の主に問うフラン
「白玉楼、剣術指南役兼庭師!魂魄妖夢!幽々子様の命に従い……貴方に天誅を下します!」
今ここに吸血鬼と剣士対魔剣士の戦いが始まる
明けましておめでとうございます。
ファントム戦は終わり次はネロアンジェロ戦になります、部下3体の戦いは同時進行していると思ってください。
次回から更新がかなり遅くなるかもしれません……