東方大魔王伝   作:黒太陽

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第23話 血路を開け

「大丈夫ですか!」

 

咳き込むフランに刀をネロアンジェロに向けたまま近寄る妖夢

 

「……何さっきの?」

 

「はい?」

 

息を整えたフランが訝しげに聞いた

 

「さっきの登場の仕方!」

 

「あー……あの、その……ちょっとやってみたかったんです……あんな登場の仕方……変でしたか?」

 

少し恥ずかしそうに照れる妖夢は頭を下げ震えるフランに目をやる

 

「か……」

 

震えていたフランがポツリと呟いた

 

「カッコイイ!!ヒーローみたい!」

 

目をキラキラと輝かせ妖夢を見つめた

 

「!?」

 

フランの反応に一瞬驚いた、そこまでの反応をされるとは思ってなかったから

 

(やった!こんなに喜んで貰えるなんて……やってみた甲斐がありました!)

 

しかしすぐに悦に浸り満足気に微笑む

 

「フフ……さぁ成敗してあげ……うわっ!?」

 

調子に乗った妖夢の口上はネロアンジェロの剣撃により中断されてしまう

 

「ッ!?」

 

刃を交える妖夢の顔が歪む、弾き合い距離を取った妖夢の顔は先程までの余裕は無かった

 

(強い……あの大剣で私の速さに着いてこれるなんて……)

 

構えるネロアンジェロを見て実力の高さを感じとる

 

(尚且つ剣術も相当な物……何か違和感を感じますが……模倣の様な……何にせよ油断は禁物ですね)

 

ネロアンジェロの剣技に違和感を感じるも実力の高さに妖夢の顔は真剣になりネロアンジェロただ一人に集中する

 

「あたしも手伝う!」

 

そこにフランが協力を申し出る

 

「……すいませんが私だけでやらせて貰えますか?相手は剣士……私の領分ですので」

 

「……」

 

断りを入れた妖夢は返事の無いフランに了承したと受け取り刀の構えをより鋭くする

 

「……参ります!」

 

勢い良くネロアンジェロへ飛び出して行った、二人は切り合いをしながら移動していく、残されたフランは呆れた様に溜め息を吐いた

 

「これはね……決闘じゃ無いんだよ半霊さん……戦争なんだよ……」

 

切り合いを始めた妖夢に向かい呟いたフランは移動しながら戦う二人を追って歩いて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隠された人里周辺

 

「ふぅ……一先ずは落ち着いたかな?」

 

剣の血を拭き取りながら霖之助が呟いた、人里周辺の悪魔は殲滅出来た様だ

 

「慧音さん……大丈夫ですか?」

 

大妖精が傷付いた慧音を気遣う

 

「ああ平気だ……そっちは大丈夫か?」

 

藍と橙に向かい尋ねる

 

「こちらも軽傷です、では私達は他の戦場へ……」

 

式の二人が飛ぼうとした時、森から飛び出てくる者がいた

 

「アリスさん!無事だったんですね!」

 

飛び出てきた者の名を大妖精が叫んだ、所々傷を負っているアリスは5人に合流すると謝りだした

 

「ごめんなさい!私1人じゃ無理だったの!」

 

「えっ?」

 

「……なるほど、想像がついたよ」

 

アリスの謝罪に困惑する大妖精の横で霖之助が察し、次いで慧音、藍、橙が察してアリスの現れた森に目線をやった

 

 

 

ドドドドド

 

 

 

地鳴りが聞こえてくる、それはドンドン近付いてくる

 

「キシャアァァァ!!」

 

「ウヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

「オッオッオッ!!」

 

森から大量の悪魔が現れた、アサルトにシンやデス、ノーバディも加え更にシャドウと呼ばれる黒い何かが猫の様な猛禽類の形をしている悪魔も加え飛び出してきた

 

「ふぅ……団体様の御到着だ、まだまだ休憩時間には程遠いらしい」

 

草薙の剣を構えた霖之助の言葉に全員構える

 

そしてまた人里の周辺は戦場へと戻っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山

 

「このっ!死ね!死ねぇ!」

 

ステルス状態のにとりが何かを踏み潰している

 

「気持ち悪いんだよ!死ねぇ!」

 

にとりが踏み潰しているのはファントムベビーの大群、このベビーが数百年の時を掛けファントムになるのだがまだこの状態では幻想郷の蜘蛛と大して違いは無い、踏むだけで死んでしまう

 

「ひゅい!?」

 

ファントムベビーを踏み潰していたにとりが驚いた、ベビー達が一瞬で全て弾けたのだ

 

「遊ぶでないにとり」

 

「別に遊んでる訳じゃないんだけど……」

 

神気でベビーを殲滅した神奈子が現れた

 

「被害はどれくらい?」

 

「鴉天狗の伝令によると半数近くやられたらしいですよ」

 

「ちっ……わかったわ、私はこれから悪魔を放った敵の大将の所へ向かうわ、ここは任せたわよ、諏訪子達と連携して」

 

「わかりました、じゃあ行きます」

 

足音だけが響き山の中に消えていくにとりを確認した神奈子は紅霧漂う空を見上げる

 

(これは言わば前奏、曲が終わった後に残るのは我等の喝采か悪魔の喝采か…………)

 

幻想郷の未来を思い神奈子は飛んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideフラン・妖夢

 

「くっ……!」

 

ネロアンジェロと剣技を交える妖夢の表情は優れない

 

(大剣で二刀と渡り合う力と剣技……なんという手練れ!しかし……)

 

ネロアンジェロの剣閃を受けながら妖夢は更に違和感を感じていた

 

(やはり剣技に模倣を感じる……積み上げた物では無く見様見真似の様な……剣に魂を感じない……)

 

妖夢の感じる違和感は模倣、自らが鍛練の果てに培った技術では無くそれを扱う者の真似、それをネロアンジェロの剣技から感じていた

 

この妖夢の模倣という考えは正しかった、ムンドゥスの作り出したネロアンジェロ、元はバージルと呼ばれる半人半魔の魔剣士を改造して作り出した者だ、だから剣技もネロアンジェロ独特の物、ムンドゥスはネロアンジェロの外見に見ただけで模倣する悪魔を融合させネロアンジェロ擬きを作ったのだ

 

「せあっ!」

 

ネロアンジェロの剣を二刀で押し飛ばす

 

「!!」

 

ネロアンジェロの構えにピクリと反応する

 

(居合い……)

 

ネロアンジェロの構えは居合いの際に使う構え、腰を落とし脇に剣を構えている

 

(居合いは迎撃向きの剣技……私が飛び込むとでも?)

 

弾幕を発生させた妖夢は発射する為に刀を構えた

 

「!?」

 

撃つ刹那、ネロアンジェロの体が膨張した様に見えた

 

「くあっ!?」

 

ネロアンジェロの大剣をかろうじて受け止めた妖夢だがあまりの威力に飛ばされる

 

「くっ……」

 

(まさか疾走しながらの居合いとは……)

 

妖夢の受けた攻撃、それは疾走居合い、居合いの構えのまま敵に高速で接近し居合い切りを行う元になったネロアンジェロの剣技

 

「!!」

 

立ち上がろうとした妖夢にネロアンジェロが拳から何かを放った

 

「くっ!?これは……」

 

横転しながら避け、弾幕を放つ

 

(魔力弾……連射こそ出来ない様ですが威力に優れている……遠近に死角無し……)

 

弾幕を切り払ったネロアンジェロを見据えながら分析する、質こそ違うが二人は同タイプ、剣技を主とし遠距離もこなせる

 

(来る!)

 

動き出す気配を察知したと同時にネロアンジェロは妖夢に接近し剣撃を繰り出す

 

「ハアッ!!」

 

二刀を使い渡り合う、ネロアンジェロの剣技にも妖夢は負けていない

 

「……!!」

 

ネロアンジェロの剣撃を一刀を使い受け流す

 

「……ふっ!」

 

もう一刀で切りつける、しかしギリギリで剣を戻し防がれる

 

(今!!)

 

体を1回転させ遠心力を利用した一刀を剣に浴びせる

 

「!?」

 

ネロアンジェロの剣は離れこそしなかったが頭上に弾かれる

 

「ハアアアッ!!」

 

弾いた一瞬の隙を見逃さず二刀で切りつけた

 

 

 

ドン

 

 

 

響いたのは剣撃の音では無かった

 

 

「かっ……はっ!?」

 

 

そして攻撃を受けたのはネロアンジェロでは無く妖夢だった、妖夢の腹にはネロアンジェロの膝が埋まっていた、そしていつの間にか大剣は消えている

 

「くっ……はぁ!!」

 

痛みに一瞬怯んだがすぐに1歩下がり刀を振るう

 

「なっ!?」

 

刀を振るよりも早くネロアンジェロが妖夢に詰め寄り拳を顔に打ち込む

 

(た、体術!?)

 

ネロアンジェロの怒濤の体術が妖夢を襲う、殴り、蹴られ、反撃を許されない

 

「がっ!?」

 

連撃の最後に回し蹴りを受けた妖夢は吹き飛び岩壁に叩きつけられる

 

「かはっ……うぐぅ!?」

 

そこに歩みよったネロアンジェロが首を捕まえ壁に押し当て手を掲げる、手に紫炎が走ると大剣が現れた、この大剣は自由に出し入れが可能なのだ、先程も弾かれた剣を消し体術に移行したのだ

 

「かっ……!?」

 

苦しみに刀は手から離れ足下に落ちる、空いた手でネロアンジェロの手を引き離そうとするがびくともしない

 

(殺られる!?)

 

突き出された大剣に己の未来を予知し咄嗟に目を閉じた

 

 

 

「禁忌「レーヴァテイン」」

 

 

 

声が聞こえた瞬間、轟音が妖夢の前を通り過ぎ、苦しさが消えた

 

「ごっ!?……ごほっ!?……今のは誰……が?」

 

目を開いた妖夢は呼吸を整えながら自分を助けてくれた者を探した、首を絞められ苦しんでいた妖夢に声はよく聞こえていなかったし目も閉じていたから

 

「感謝してよー?あたしが助けなきゃ死んでたんだよ?」

 

妖夢の前にヒタヒタと歩く音と共にフランが現れた

 

「そうですか……」

 

助けてくれたのがフランだと確認した妖夢はすぐにネロアンジェロが飛ばされた方向に目を向ける

 

「……」

 

吹き飛ばされたネロアンジェロは大剣を携え遠くから歩いて来ていた、レーヴァテインを大剣で防いだのだろう、大剣に大きな穴を空けている

 

「助けてくれた事は感謝します……ですがアレは私が倒します」

 

刀を杖代わりに起き上がりながらフランに告げる、これは私の戦いだと

 

「ねぇ……?この戦いって誰の戦いだと思う?」

 

そんな妖夢にネロアンジェロを見ながらフランは問うた

 

「……おっしゃる意味が良くわかりませんが……」

 

質問の意図が掴めない妖夢はフランに目をやる

 

「これはね……幻想郷の戦いなの、貴方の決闘じゃ無いの……わかる?」

 

「……」

 

フランの言葉に妖夢は返せなかった

 

「だから2体1が卑怯だとかそうゆう話じゃ無いの、あたし達は幻想郷が好き……だから幻想郷の為に戦う、ううん……戦うだけじゃない、勝たなきゃ……なら協力しないとダメだよ!」

 

「……」

 

何も返さないが妖夢は内心驚いていた、幼く見えるフランがここまで幻想郷を想い、考えていた事を……そして……

 

(その通りです……幻想郷を守る為の戦いなのに私は相手が剣士だからと私闘を持ち込んでしまった……幽々子様の命も忘れて……)

 

(すいません幽々子様……私はまだまだ未熟です……しかし……もう忘れません!)

 

自らを戒め、フランに向き直した

 

「貴方の言う通りです、これは私の戦いでは無く幻想郷の戦い……力を貸して貰えますか?それと改めて助けてくれてありがとうございます」

 

「良いよ!あたしも助けて貰ったしね!」

 

妖夢の願いにフランは笑って応えた

 

「さぁいっくよー!」

 

「はい!」

 

構えた二人は場に戻って来たネロアンジェロに向かい駆けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の畑から離れた平地

 

「グギャアアアアアァ!?」

 

アサルトの悲鳴が木霊する

 

「痛い?……でしょうねぇ……」

 

アサルトの手足を引きちぎり、捨てながら幽香は笑う

 

「フフ……」

 

アサルトの顔を踏み潰し傘を構え、発射された魔力弾がシンの依り代を砕く

 

「あら……新しいのが来たわね」

 

悪魔を惨殺していく幽香の前にシャドウが現れ、形を巨大な口に変化させ襲い掛かってくる

 

「遅い遅い……」

 

スッっと避けた幽香の拳がシャドウに炸裂する

 

「へぇ……」

 

幽香の拳は魔力の防壁に阻まれる

 

「少しは強いみたいね……本当に少しね」

 

言葉と同時に流れる様に傘をシャドウに向け弾幕が発射される

 

「なんだ……弾幕には弱いのね、簡単に弱点がでちゃったわね」

 

弾幕がシャドウの影を痛め、弱点の球体を露出させる

 

「これでおしまい」

 

球体を殴り飛ばす、同時にアサルトが飛び掛かってくる

 

「ハイハイ……」

 

避けた幽香はアサルトの尻尾を掴み地面に叩き付ける、何度も何度も

 

「あら?まだ生きてるの?……死にかけね……道ずれにする気かしら?」

 

既に死体のアサルトを捨てた幽香が見たのは先程のシャドウ、赤く変色し死にかけだとわかった、そのシャドウが幽香を道ずれにするべく襲い掛かる

 

「必死ねぇ……でももう良いわ、じゃあね」

 

傘から放たれたビームがシャドウを飲み込み跡形も無く消し去った

 

「流石に飽きてきたわね、こんな雑魚ばかりじゃ……」

 

デスサイズの鎌を奪い依り代に突き刺した幽香が呟いた、今のデスサイズを最後に花畑から引き連れた悪魔と増えた悪魔は全滅した

 

「あれは……何かしら?」

 

紅霧漂う幻想郷の空を見上げた幽香は何かを見つけた、紅霧により何かは良くわからないが巨大なシルエットとそれを追う小さなシルエットが見えた

 

「あれも悪魔?……面白そうね、行ってみましょうか」

 

好奇心を胸に幽香は飛び立った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隠された人里周辺

 

「キシャアアァ!!」

 

アサルトが奇声をあげて爪弾を大妖精に向け発射する

 

「させないよ」

 

霖之助が草薙の剣で切り払う

 

「しかしこれは参ったね……」

 

周りを囲む悪魔の集団、大妖精を中心に陣を作ってはいるが多過ぎる悪魔に疲弊と怪我が溜まる

 

「霖之助さん……こうなれば一点突破で一旦退避しましょう、このままでは全滅です」

 

傍らの藍が進言する、疲弊した彼女等には今の悪魔の数は余りに多勢に無勢と感じていた

 

「私も賛成だ、私がやられたら人里が危険に晒される」

 

「そうね、不本意だけどこの場は戦略的撤退と行きましょう」

 

慧音とアリスも賛成し霖之助を見る

 

「……そうだね、僕も同じ事を考えてたよ」

 

戦う者が全員承諾し一番手薄な場所を探す、そこで守られる大妖精が気付いた

 

「……もしかしたら逃げなくても大丈夫かも知れません」

 

「何故だい?」

 

大妖精の言葉に振り向いた霖之助は大妖精がある空の一点を見ているのに気付き同じ方向を見た、そして微笑んだ

 

「どうやら大丈夫らしい、みんな、助かったよ」

 

えっ?っと皆が空を見上げた瞬間、シンやデスを依り代ごと霧散させながら2名の救世主が降り立った

 

「遅れてごめんなさいね、後は任せといて」

 

現れたのは輝夜と鈴仙、凛とした瞳で悪魔を睨み付ける

 

「まさかお前が来るとはな……永遠亭に結界を張って籠ってると思ってたよ」

 

「そうね、私もそう思っ……」

 

慧音に続き話し出した藍の言葉は輝夜に止められる

 

「今はそんな事を言ってる場合じゃないでしょう?下がってなさい、私がやるわ」

 

「貴方もよ……下がってなさい」

 

1歩前に出た輝夜に歩み寄ろうとした鈴仙に手をかざし下がらせる

 

輝夜の周囲には数百の悪魔が囲い今にも飛び掛からんとしている、その悪魔達に向かい輝夜は静かに語りだした

 

「まったく……数ばかり集めて……死ぬ前に教えてあげる、数で囲めば勝てるとでも……?バカじゃないの……?そういうこざかしい事と無関係な所に……」

 

 

 

 

「強者は存在する……!!」

 

 

 

 

同時に悪魔は飛び掛かった

 

アサルトの爪がトゲが!シンやデスの鎌や鋏が!マリオネットのナイフが!

 

目前に迫った攻撃に輝夜は一瞬、口を吊り上げた

 

 

 

 

 

 

 

「終わったわよ」

 

 

 

 

 

 

一瞬の出来事だった、大妖精達が気付いた時には悪魔は全てバラバラにされ大量の死体が積み上げられていた

 

「ハハ……もう全部彼女一人で良いんじゃないかな?」

 

その光景に霖之助が呟いた

 

輝夜が何を行ったのか?それは彼女の能力の1つ須臾(しゅゆ)一瞬を集めその一瞬の中を自由に動き回れる能力、この能力を使い認識出来ない一瞬の間に悪魔を殲滅したのだ

 

「鈴仙、悪魔はまだ幻想郷に蔓延っているわ、貴方は慧音に付いて彼女を守りなさい」

 

鈴仙に告げた輝夜は踵を返し飛び立とうとする

 

「姫様はどちらに?」

 

「私は行く所があるわ……しっかり守りなさい、もし慧音に何かあれば妹紅が黙ってないわよ?」

 

そう告げると輝夜は飛び立っていった

 

「よし、僕達は博麗神社に向かおう、あそこなら悪魔は神聖な気によって入ってこれない筈だ」

 

霖之助の提案に頷いた一同は悪魔の襲撃に注意しながら博麗神社へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideフラン・妖夢

 

「ハッ!」 「うりゃー!」

 

協力した二人の攻撃がネロアンジェロを襲う、フランが弾幕で牽制し隙を見た妖夢が斬撃を浴びせる

 

「……!?」

 

二人の連携に押されるネロアンジェロ、如何に手練れの真似をしても二人の強者を同時に相手にするには厳しいものがあった

 

「禁忌「フォーオブアカインド」!!」

 

4人に分裂したフランがネロアンジェロを囲い弾幕を放つ、弾幕が集中し爆発を伴い轟音があがる

 

「半霊さん後ろ!」

 

フランの1人が叫んだ、離れている妖夢の背後にネロアンジェロが上段に大剣を構えていた

 

「わかってます!」

 

背後からの上段切りに二刀を交差させ背を向けたまま受け止める

 

「くはっ!?」

 

その状態から背を蹴られフランの居る位置まで転がる

 

「大丈夫?」

 

分裂を戻したフランが歩み寄る

 

「ええ大丈夫です、それよりわかってますか?」

 

立ち上がった妖夢は刀を構えながら聞いた、理解しているかを

 

「わかってるよ!さっきのはワープだね、見た感じポンポン使える技でもないみたい、出来るならもっと苦戦する筈だし」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

フランの説明に意外そうにしている妖夢にフランが尋ねた

 

「いえ……貴方はもっと大雑把なイメージがあったので……分析しているとは思ってなかったんです」

 

「……半年前のあたしならそうだったんだけど……ね!」

 

ネロアンジェロの魔力弾を回避しながらフランは嬉しそうに語りだした

 

「バーンにね!もっと考えて戦えって言われたの!だからあたしは頑張った!そしたらバーンは笑ってくれるの!」

 

「あたしはそれが嬉しくてもっと頑張った!初めてだったの!あたしの事を真剣に考えてくれて褒めてくれたのが!」

 

魔力弾を回避しながらフランは優雅に舞う

 

「それからね……」

 

妖夢の横に降り立つ

 

「あたしの中の狂気をバーンは抑えてくれた……それからは外に遊びに行ける様になった……友達もいっぱい出来た!バーンのお陰であたしは幻想郷が好きになったの!」

 

「だから……あたしは悪魔を許さない!悪魔なんかにここはやらせないよ!」

 

幼い外見に似合わない強い瞳を妖夢に向けた後、フランは笑った

 

 

救われていたのだ……フランはバーンに

 

 

「そうですね……私も幻想郷が滅ぶのは遠慮します、バーンさんとの再戦もまだですし……」

 

フランを見つめていた妖夢はネロアンジェロへ向き直し刀を構えた

 

 

妖夢もまたバーンとの再戦に強くなる目的を与えられた者、バーンに勝つ為に鍛練する気力を貰っていたのだ

 

 

「行きますよ!それと私の事は妖夢と呼んでください、半霊ではありません」

 

「うん!じゃああたしもフランって呼んで!行くよ妖夢!」

 

 

二人はネロアンジェロに駆けた、妖夢の剣がネロアンジェロを切り、フランの弾幕が甲冑越しにダメージを与える、二人のまるで長年コンビを組んでいたかの様な熟練した連携にネロアンジェロは反撃もままならず打ちのめされる

 

 

そのまま勝負は着くと思われたが

 

 

「オオオォォォ!!」

 

 

突然ネロアンジェロが咆哮し魔力が高まる、宙に浮いたネロアンジェロが更に激しく咆哮するとネロアンジェロの肉体は肥大化していく

 

「大きくなったよ!?」

 

「ただ大きくなっただけとは思えません……注意しま……!?」

 

注意を促す妖夢の眼前にネロアンジェロが疾走してきた

 

「つぅ!?」

 

疾走居合いを刀で受けた妖夢は予想以上の力に踏み止まれず吹き飛ばされてしまう

 

「妖夢!?キャン!?」

 

飛ばされた妖夢に目を向けた瞬間ワープしたネロアンジェロの裏拳がフランを殴り飛ばす

 

「なんて豪剣……っ!?」

 

起き上がった妖夢が顔を上げ見たのは駆け寄ってくるネロアンジェロ

 

「このっ!!」

 

ネロアンジェロの剣撃を流すように捌く妖夢、豪剣を掻い潜り剣閃を浴びせようとしたその時

 

「……!?……かっ……!?」

 

妖夢の体が切り裂かれた

 

「……つあっ!!」

 

咄嗟に爆発性の弾幕を地面に放ち爆風を利用して飛び退く

 

「魔力の剣……」

 

ネロアンジェロの周囲を滞空する剣を視認し顔を歪めた

 

(傷は……致命傷ではありませんが深い……しかし、まさかあんな奥の手があるとは誤算でした……)

 

ネロアンジェロの作り出した魔力の剣、名を幻影剣、元はネロアンジェロの改造される前のバージルの使う技

 

「フォッフォッフォ……」

 

幻影剣を滞空させながら妖夢に迫るネロアンジェロ、しかしダメージが深い妖夢は刀を杖代わりに立つのが精一杯だった

 

「やらせるかコンニャロー!」

 

そこにネロアンジェロの背後からレーヴァテインを構えたフランが飛び込んでくる

 

投合されたレーヴァテインはネロアンジェロに向かい背から貫いた

 

「うぐっ!?」

 

レーヴァテインはネロアンジェロを貫かず地面に刺さった、そしてフランはネロアンジェロの拳を腹で受けていた

 

「……またワープ……うあっ!?」

 

頭を掴まれたフランは上空に投げ飛ばされる

 

「何をする気……まさか!?」

 

妖夢が逸早く感づいた、魔力の剣、ワープ、これらから導き出された答えは1つだった

 

「止めろ!」

 

妖夢が叫んだ瞬間ネロアンジェロの周囲を滞空していた幻影剣が消えた

 

「ヤバッ……」

 

空中で体勢を立て直したフランが呟いた、周囲には幻影剣が刃をフランに向け囲んでいた

 

「フラン!避けてください!」

 

ネロアンジェロがかざしていた手を握り締めた

 

「あっ!!」

 

 

 

 

 

ザンッ

 

 

 

 

 

妖夢の目の前で惨劇は起きた、フランは数本の幻影剣に串刺しにされ落下していく

 

「フラン!フラン!!」

 

地面に落下したフランに叫ぶ、だがフランから返事は無い

 

「フォッフォッフォ」

 

静寂を壊す様にネロアンジェロの笑い声が響く

 

「キサマァァァァァ!!」

 

笑い声をかき消し怒声がネロアンジェロを射抜く

 

「許さない……絶対に許さない!!」

 

刀を構えた妖夢が血を飛散させながら駆けた

 

「ハアアアアッ!!」

 

剣閃が血と共に走る、傷の痛みなど怒りで忘れた妖夢の剣がネロアンジェロに向かう

 

「くああっ!?」

 

だが妖夢の剣がネロアンジェロを切る事は無く逆に切りつけられ小さい切り傷が無数に出来ていく

 

「はぁ……はぁ……必ず倒す……!!」

 

最早二刀を持つ力すら無い妖夢は白楼剣を納刀し楼観剣を構える

 

「必ず……守る……命を賭してでも!!」

 

意識すら朦朧としながらもネロアンジェロに立ち向かおうとする、彼女は言葉通り命を賭けてでも倒すつもりなのだ

 

 

「ヤダよ妖夢……死んじゃダメだよ……」

 

 

朦朧とする妖夢に聞こえる筈の無い声が聞こえる、声に導かれるまま顔を向ける

 

「フラン……フラン!!」

 

声の主を見た瞬間、意識は鮮明になった

 

「吸血鬼って頑丈なの……流石にこれは死ぬかと思ったけどね」

 

身に幻影剣を刺したまま、血を噴き出しながらフランが微笑んだ

 

「……」

 

ネロアンジェロが妖夢を無視してフランに歩み寄る、まだ反撃の余力がありそうな妖夢より今にも死にかけんとしているフランにトドメを刺す事を優先したのだ

 

「フォッフォッフォ……」

 

大剣を上段に構え、トドメを刺さんと振り下ろす刹那

 

「……妖夢!!」

 

友の名を呼んだフランが体当たりを食らわせる、ネロアンジェロはよろけて後退り、フランは高速で飛び距離を取ってネロアンジェロの背後に回る、ネロアンジェロは二人に挟まれる形になった

 

「……!フラン!!」

 

フランの意図を理解した妖夢は残る力を振り絞り集中する

 

(集中しろ……フランの作ってくれた最後の好機を無駄にしないために……!限界を越える!)

 

「……!?」

 

妖夢から危険な物を感じたネロアンジェロはワープを行おうと魔力を集中する

 

「フォッ!?」

 

背後から攻撃を受けよろける、フランがワープをさせまいと弾幕を放ちながら突撃してくる

 

「うぅりゃああああ!!」

 

よろけたネロアンジェロの背中に体当たりを食らわせそのまま妖夢に向かい突進する

 

 

 

「……奥義「西行春風斬」!!」

 

 

 

その場に風圧を残し消える

 

 

 

「成敗っ!!」

 

 

 

剣閃はフランを紙一重で避け、切り抜けた

 

 

 

 

 

「かはぁ……はぁ……」

 

膝を着いて苦しさに喘ぐ妖夢

 

「はぁ……はぁ……うぷっ!?はぁ……はぁ……」

 

ネロアンジェロの腰を掴んだまま地面を滑ったフランは血を吐きながらネロアンジェロに振り向いた

 

「オォォォォ!!」

 

ネロアンジェロが咆哮した、胴を真っ二つにされたネロアンジェロの上半身が苦しみと怒りを混じらせた様な声で咆哮していた

 

「貴方の負けです……貴方が本人なら私達は敵わなかったかもしれません……如何に剣技や技を真似ようとも魂の無い剣に私達を倒す事は出来ません!」

 

ズルズルと下半身に向かうネロアンジェロに告げた、魂、信念の差だと

 

「……しつこいよあんた」

 

よろけながら上半身を見下すフラン、その冷徹な瞳にネロアンジェロは恐怖を感じたのか下半身へと急ぐ

 

 

 

 

「きゅっとして……」

 

 

 

 

掌に目を作り出す

 

 

 

「ドカーン」

 

 

 

 

目を握り潰した

 

「オォォォォ!!」

 

咆哮を最後にネロアンジェロの肉体はバラバラに飛び散り、下半身も連動し霧散していく

 

 

 

「大丈夫?妖夢ぅ?」

 

「私はなんとか……フランの方が重傷でしょう?フランの方こそ大丈夫ですか?」

 

ネロアンジェロが死んだ事でフランを貫く幻影剣が消え、栓が無くなった為に血を大量に流しているフラン

 

「かなりキツイけど大丈夫だよ、言ったでしょ?吸血鬼は強いの!傷もすぐ塞がるから大丈夫!」

 

笑みを向けたフラン、友達を守る事を成し遂げた彼女は嬉しそうに笑う

 

「1つ……聞いて良いですか?何故能力を使わなかったんですか?使えばもっと楽に勝てたのに……」

 

フランの能力でトドメを刺したのを見た妖夢が聞いた、戦闘中は必死でそこまで頭が回らなかったのをトドメを見て思い出したのだ

 

「確かにあたしの能力を使えばもっと簡単に勝てたかもしれないね……」

 

「バーンがね……修行してる時に言ったの、あたしの能力が効かない敵も現れるかもしれない、だからお前は能力に頼らない戦い方をしろって」

 

妖夢の手を取り起き上げる

 

「ごめんね……あたしが能力を使っていれば妖夢はこんなに怪我しなかったのに……」

 

申し訳なさそうに頭を下げた、幻想郷を守る為なら問答無用で能力を使えば良い、妖夢に始めに言った事を自分が行えていない事がフランは恥ずかしかった

 

「気にしないでください、私もこれを修行と思えば良い経験です、それにフランが居なければ私は死んでいたのですから……」

 

しかし妖夢は怒らず、それどころか感謝した

 

「ありがとうございますフラン」

 

フランに笑顔を向けた

 

「……うん!あたしもありがとう妖夢!」

 

フランも笑って返した

 

「さぁまだ悪魔は居ます……申し訳ありませんが肩を貸して貰えますか?」

 

「うん!一緒に行こ!妖夢!」

 

二人は肩を組み合い、より魔力の濃い場所へ向かいフラフラと飛んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷・上空

 

「いい加減止まりやがれー!!」

 

魔理沙の弾幕がグリフォンに炸裂し爆煙を発生させる

 

「グォオオオオ!!」

 

爆煙を吹き飛ばしたグリフォンが魔理沙に向き直し威嚇する

 

「ようやくヤル気になったか!来いよ!焼鳥にしてやるぜ!」

 

 

 

 

 

人間の魔女と魔鳥、幻想の空にて対峙する

 

 

 

 

 

 




休みの内に一気に書きました。

ネロアンジェロ戦終了です、剣士対剣士をやりたくて二人を戦わせました、そして紅魔館メンバーのフランの成長を書きたくて……フランは初期話以外活躍してなかったので……

次はグリフォン戦です、ですが次回から本当に遅くなりそうです。
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