東方大魔王伝   作:黒太陽

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第36話 夜に想う

太陽の畑

 

夜になっても彼女は居た

 

「ふぅ……こんな所かしらね」

 

悪魔の襲撃で踏み荒らされた花を手入れする為に

 

「これで大体終わり……今日は帰りましょうか、また明日ねみんな」

 

手入れの目処がつき嬉しそうに微笑む幽香は家路を進む

 

「……何の用かしら?」

 

家路の途中、気配を感じ目付きを鋭くした幽香が木陰を睨む

 

「そう邪険にするな風見幽香……」

 

木陰から現れたバーンが幽香へ近付く

 

「……何の用?」

 

面白くなさそうに再度問う

 

「聞けば魔理沙を助けてくれたらしいな」

 

「そんなつもりは無いわ、帰るから退いて」

 

バーンを避けて擦れ違い歩いて行く

 

「……待て幽香」

 

名で呼び止めた

 

「気安く呼ぶな!」

 

振り向きざまに傘を構えた幽香が叫ぶ

 

「少し馴れ合っただけでもう仲間の気分!?調子に乗らないで!!」

 

敵意を露にバーンを睨み付ける、何故かとても機嫌が悪かった

 

「……なら風見よ、聞け」

 

「チッ……何?」

 

よそよそしく姓で呼ぶバーンに機嫌は更に悪くなる、自分に勝ったバーンが自分の言葉を素直に聞いたのが腹立たしかった

 

それでも用件を聞いたのはバーンが素直に聞いたのが疑問だったから

 

「ムンドゥスは強かった……余だけでは勝つ事は難しかった……勝てたのはお前達との絆があったからこそよ」

 

「絆……?」

 

「そう絆……かつて余に勝利した者達が持っていた物だ、今ならそれが余にもあるとわかる」

 

「その絆が私とお前にあると?ハッ!笑わせないで……そんな物は無いし私には必要無い」

 

「いずれお前にもわかる時が来れば良いがな……」

 

「ッ!!」

 

幽香はイラつく、傲岸不遜だったバーンが絆等と甘い事をほざいているのが幽香には堪らなく不快だった、傘を握る手に力が籠り今にも撃たんとしている

 

「まぁそれはよい……お前への真の用は別にある」

 

「真の用……?」

 

バーンの言葉に傘に入る力を緩めながら聞いた

 

「お前は魔理沙を助けてくれた、そしてムンドゥスに勝てたのもお前の協力があってこそ成し得た、だからな……」

 

「褒美を取らせよう……と思ってな」

 

真の用とは幽香への褒美だった

 

「……種なら要らないわよ?」

 

「そうだろうとは思っていた、そこで余は考えた……お前が余から一番欲する物……それは……」

 

 

「余の生命……であろうな?」

 

 

幽香が欲する物、それは自分の命、バーンはそう考えていた

 

「あら……わざわざ殺されに来たの?その情けない考えごと消して欲しいのかしら?」

 

少し溜飲を下げた幽香、笑える冗談だと鼻で笑っている

 

「お前に消せるならこの命くれてやろう」

 

「……本気?」

 

バーンの目が言葉が冗談では無いと幽香に感じさせ始める

 

「無論だ、余は何もせん、攻撃も防御も……な、それが褒美だ、素晴らしいであろう?」

 

「……そこまで馬鹿にして今更訂正は聞かないわよ?」

 

最後の意思確認をしながら緩めた力を込め直す

 

「安心しろ、余に二言は無い、それにな……」

 

含んだ笑いを幽香に向ける

 

「お前では無理だ」

 

 

「舐めるなァァ!!」

 

否定と同時に傘で殴りつけた

 

「!?」

 

殴った幽香は目を見開く

 

「どうした?それで終わりか?」

 

バーンは微動だにしていなかった

 

 

「……ッ!!ハァァァァァァァァッ!!」

 

 

傘を捨てた幽香は持てる力を全て込めバーンを滅多打ちにする

 

何度も、何度も拳を振り上げバーンを殴った

 

 

 

 

 

「ハアッ……ハアッ!?……ハアアッ!!」

 

どれだけの時間殴り続けただろうか、どれだけの数の拳を食らわせただろうか

 

殺意を込めた拳をバーンに打ち続けた幽香は息を切らしながら渾身の一撃を食らわせる

 

「……」

 

だがバーンは無傷だった、それどころか揺れる事すら起きずただ幽香の攻撃を一身に受け続けた

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

打った拳をゆっくり引きながら後退する幽香、息は上がっているがまだ強く睨み付けている

 

「もうよいだろう風見……」

 

殴られる間ずっと目を閉じ沈黙していたバーンが告げる

 

「今の余はいわば小さき鬼眼王……枷の付いていた余に敵わぬお前が何をしようとも余に傷を付ける事すら叶わぬ……」

 

バーンの語る通り今のバーンは鬼眼王そのもの、ムンドゥスに匹敵する力を持つ鬼眼王の肉体なのだ例え体に力を込めなくとも幽香では何千、何万打とうが効く事は無い

 

「黙れ……黙れぇぇぇぇ!!」

 

再び傘を取った幽香がバーンに突きつける

 

「殺す……!!殺してやるわ……バァァァァン!!」

 

妖力を一気に解放し傘に注ぎ込む

 

(ほぉ……自我を無くす事無くその力を操れるまでになったか……成長したな幽香)

 

幽香の力に内心喜んだ

 

幽香もまた紅魔館の5人と同じくバーンを越える為に力を磨いていた、そしてムンドゥスとの戦いを経て限界を突破していたのだ

 

「ハアッ……ハアッ!!」

 

更に力を込め続ける幽香、これが最後とばかりにありったけを傘に注ぐ

 

(だがな幽香……それでも……)

 

 

「ウアァァァァァァ!!!」

 

 

それは撃たれた、傘から出たのはバーンの体数倍にもなる極大のレーザー

 

それはバーンを飲み込み幻想郷の空に向かう架け橋の様に伸びていった

 

「……ッハアッ!?ハアッ……ハアッ……」

 

ありったけを注いだレーザーを撃ちきった幽香は腕を下ろし頭を下げ息を荒げる

 

 

「……クソォッ!!」

 

 

煙の上がる眼前を見る事無く幽香は叫んだ

 

「素晴らしい威力だった……お前はあの時より強くなった、だが……」

 

煙からバーンの声が聞こえ姿を現す

 

「効かぬ……効かぬのだ幽香……」

 

現れたバーンに傷は無かった

 

「くっ……!?」

 

身構える幽香

 

「お前の全てを込めても無抵抗の余を殺すのは叶わなかった……褒美はこれで終わりだ」

 

その幽香に諭す様に話しかける

 

「まだ……まだよ!!」

 

睨み付けた幽香がバーンを殴りつける

 

「もう……やめよ……」

 

力無く殴り続ける幽香に唇を噛む

 

「黙りなさい……私が……殺す……今……ここで……!!」

 

それでもやめようとしない幽香だがもはや殴る力すら出せずバーンの胸に置くように拳を振るう

 

「やめよ!」

 

バーンが幽香の腕を掴んだ

 

「離……して……」

 

抵抗する幽香だが軽く掴んだ手すら振り払えず項垂れる

 

「もうよい……これ以上は……」

 

 

幽香の姿に苦き表情で目を閉じる

 

 

「余も辛い……」

 

 

 

 

 

 

 

「聞かせなさい、なんであんな真似を?」

 

落ち着き息を整えた幽香が問うた、馬鹿にしているつもりは無いとわかる、だが効かないとはわかってたとはいえ自殺紛いの行為をしたバーンの真意を知りたかった

 

「……いっそ消してくれれば……と、そう思ってしまったのだ……お前を見た時にな……全てを終える前にこの胸の苦しみごと何もかも消してくれと……」

 

自分に殺意持つ幽香を見て思ってしまった意思の反逆、しかし同時に悟った、消される事は無いと、だから戒めに自虐に及んだ

 

「何よそれ……この後死ぬみたいじゃない」

 

言い回しからまるでバーンが死に向かっている様に感じる幽香は聞いてしまった

 

「……そうだ」

 

「……冗談じゃないのね」

バーンの表情に真実を見た幽香はそのまま見つめる

 

「私のこの恨みはどうするつもり?」

 

「これで許せ」

 

バーンは幽香に一粒の種を手渡す

 

「……結局は花なのね、芸の無い奴……」

 

「お前にはこれしか無いと思ったのでな……お前にはやはり花が似合う」

 

「……これは……ヒルガオ……確か花言葉は……」

 

「「絆」」

 

二人の声が重なる

 

「フフ……」

 

「フッ……」

 

何故か可笑しくて二人は笑う

 

「それには余の魔力が込めてある、決して枯れる事は無い……が、要らぬなら捨てろ、余は気にせん」

 

「しょうがないから育ててあげる、まだ理解は出来ないけど……絆は確かに貰ったわ」

 

そう言うと幽香は笑った、何十年か振りの笑顔をバーンに向けて

 

「次に会うのは地獄か……さらばだ……幽香……」

 

「ええ……次は地獄で会いましょう……その時こそ殺してあげる……」

 

魔力を纏ったバーンに別れを告げるとバーンは一瞬で幽香の前から消え去って行った

 

 

「またね……バーン……」

 

 

 

魔力の残り香を見つめながら呟くと幽香は家路を再び歩きだす

 

 

 

絆を握りしめて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシュ

 

「……クッ!?」

 

ルーラで降り立ったバーンはよろけた

 

(ようやく痛みは収まってきたが……)

 

よろけを戻し体を確認しながら眼前の建物を見上げる

 

(痛みを見せぬ為の咄嗟のルーラはここを選んだか)

 

眼前に立つ寺、命蓮寺の敷地にバーンは立っていた

 

幽香と過ごした時間の間も激痛は襲っていた、それを悟られぬ様に気丈に振る舞ってはいたがそれがルーラの場所指定の選択を行わせず意図していない命蓮寺へと来る事になった

 

(所々明かりは点いているが起きているかはわからんな……ここはやはり予定通り明日に……)

 

身を翻し飛翔しようとするバーン

 

「あら……?貴方は……」

 

そこに声を掛けられ振り向くと

 

「どうしました?こんな時間に?」

 

そこには白蓮が居た

 

「起きていたか……お前と話に来た」

 

バーンは白蓮に会うつもりだった、偶然だが白蓮は一旦去ろうとするバーンに出くわした

 

「私と……?構いませんよ、丁度散歩に出ようと思っていた所でしたので」

 

「では余も付き合おう、たまには月夜の散歩も良いものだ」

 

二人の散歩は始まった

 

 

「こうして貴方と話すのは初めてですね」

 

「確かにな、余とお前は面識こそあるがまともに話をしたのはこれが初めて……」

 

「そして最後になる」

 

歩きながら話す二人、表情は変わらない

 

「……何か事情があるのですね?」

 

「そうだ……もう……止められん」

 

散歩は続く

 

「そうですか……それはわかりました、貴方がそれを享受している事も……ですがそれだけを伝える為に来たのではないでしょう?」

 

白蓮もわかっている、バーンがただそれを伝えるだけに来たのではないと

 

「……魔理沙」

 

「……魔理沙がどうしました?」

 

「アレは才能が有り努力もするが時折感情に任せ思慮に欠ける部分がある……ナイトメアの時の様にな、あれでは短い寿命を更に減らしかねん……心配なのだ……魔理沙が……」

 

話したのは友である魔理沙の事、魔理沙の性格がいずれ災いの火種になり危険になるのではとバーンは考えていた

 

「そこで仲の良いお前に導いて欲しい、大魔法使いと呼ばれるお前に魔理沙が危険を回避出来る様に」

 

「……それは杞憂ですよバーン」

 

白蓮は微笑みを返した

 

「魔理沙は強い女性です、危険なんて跳ね返す力と意思を持っています……貴方なら良くご存知でしょう?」

 

「……それは知っている」

 

「なら貴方は信じるべきです、魔理沙の力を意思を……貴方が信じなくてどうするんですか」

 

「……」

 

「それに私から魔理沙に教える事はありません、もう魔理沙は見つけています……力と意思を与えた……」

 

 

「貴方を……」

 

「……」

 

「以前魔理沙が話してましたよ、貴方は魔理沙にとって友達であり越えるべき壁でもあり良き師でもあるのだと……」

 

「そうか……そんな事を……」

 

唇が思わず緩む、そう思ってくれていたのを知ったバーンの表情は意図せずに自然と笑みが浮かんだ

 

「……心配は無くなりましたか?」

 

「正直言えば不安はあるがな……」

 

「心配要りません、もし魔理沙がダメな時は……その時は私達が助けます、ムンドゥスの時の様に……だから……」

 

 

「貴方が信じる魔理沙を信じてあげてください」

 

 

「……よかろう」

 

そこでバーンは足を止め月夜の散歩は終わりを告げる

 

「行くのですか?」

 

「……礼を言う、魔理沙の友がお前で良かった……」

 

「さらばだ……」

 

ゆっくりと飛翔しながらそう言うとバーンは白蓮の前から飛び去って行く

 

「悲しい人……誰よりも愛深き故に……」

 

森の中で1人残された白蓮は呟き、夜の散歩を再開する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む……あれは……」

 

次の場所に向かうバーンは途中、夜の闇とはまた違う宙に浮かぶ黒い球体を発見する

 

(これは能力か……闇を作る能力……確かそれを扱う者が居たな……)

 

黒球を前に思案していると黒球から声が聞こえた

 

「そこにいるのは誰なのだー?」

 

「やはりお前かルーミア」

 

聞き覚えのある声、中に居たのはルーミアだった

 

「その声はバーン!」

 

ルーミアも聞き覚えのある言葉に反応し能力を解除した

 

「やっぱりバーンだ!」

 

「変わりない様だなルーミア」

 

微笑み合う二人だが内心バーンは苦笑していた

 

(予定が狂い続けているな……いや、これこそが本道か……宛無くルーミアを探すには今の余では時間が足らん、最悪諦めるつもりだった事に比べれば今この時に会うのは最良……)

 

「ルーミア……余の傍に来い」

 

「何なのだー?」

 

横にやって来たルーミアはバーンを見上げる

 

「チルノと大妖精は好きか?」

 

「好きなのだー!」

 

「これからも二人の友で居てくれるか?」

 

「もちろんなのだー!」

 

「これからあの二人に辛い事が起こる……」

 

「そーなのかー?」

 

「その時はお前が慰めてやってくれ」

 

「わかったのだー!」

 

「フッ……ならば……」

 

微笑んだバーンは指先に魔力を集中させルーミアの髪をなぞっていく

 

「何してるのだー?」

 

「少し待て……よし、これでよい」

 

指を髪から離すとすぐにルーミアは手をあて確認する

 

「これは……リボン?」

 

ルーミアの髪にはリボンが付いていた、もとから付いていた方に寄り添う様に

 

「そうだ、そのリボンが余とお前の約束の証、二人を頼んだぞ?」

 

「うん!わかったのだー!!」

 

リボンのプレゼントに喜んだルーミアは約束は守ると笑顔で答えた

 

「……ではなルーミア、さらばだ」

 

バーンは飛んでいく、次なる場所へ

 

「バーン!ありがとうなのだー!!」

 

ルーミアは感謝を叫ぶ、何も知らない故に強く感謝を叫ぶ、後で知る方が良いのか今知る方が良いのかはわからない

 

だがバーンは話さなかった、それはルーミアが幼い二人と重なったから話せなかった

 

 

そしてバーンは今日最後の予定の地へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守矢神社

 

「はーい、どなたですかぁ?」

 

訪問者が戸を叩いたのを聞いて早苗が向かう

 

(こんな遅くに誰かしら?もうすぐで日が変わるのに……また妖怪が暴れてるのかしら?)

 

夜の来訪者は珍しい事ではない、早苗達を頼ってくる者がたまに居るので早苗はあまり気にはしていなかった

 

「はいはいどちら様ですかぁ?」

 

「八坂神奈子に会いに来た、通させてもらう」

 

「バーンさん!?ちょちょちょっと待ってください!いきなり困ります!」

 

言うや否や直ぐ様入ってくるバーンを慌てて抑える早苗

 

「早苗!」

 

そこに奥から現れた者が一喝する

 

「通してあげなさい」

 

「諏訪子様……」

 

諏訪子の承認に頷いた早苗はバーンの前から退き道を開けた

 

「神奈子は突き当たりの部屋に居るよ」

 

「……わかった」

 

バーンは奥へと歩いて行く

 

「……良かったんですか諏訪子様?大魔王を神聖な神社に入れてしまって……」

 

不安気な早苗が問う

 

「良いんだよ早苗、もうバーンは大魔王じゃない……それに……」

 

(もう長くない……好きにしたら良い……それぐらいの事は誰も責めはしないしね……)

 

神である諏訪子はバーンの呪いを知っていた、だからバーンが時間が無く急いでいるのを悟り無理を通してやったのだ

 

 

 

 

「来たか大魔王」

 

「邪魔させてもらう神よ」

 

部屋に居た神奈子は入ってきたバーンに驚きはしなかった

 

(夜の女王の次は大魔王か……)

 

心当たりがあったから

 

「来る様な気はしていたがまさか本当に来るとは……変わったのう大魔王」

 

「気に入らんなら帰ってやろう」

 

「そうは言っておるまい、むしろ知りたい、呪いで死が間近の大魔王がそんな事をしている理由をな……」

 

神奈子も諏訪子同様呪いを知っていた、神である二人はその能力の高さからバーンを蝕む邪悪な力を感じ取っていた

 

「まぁ言わずともわかるがな、あの宴の時を見ていればわかる」

 

二人が知っていながら知らぬ振りをして宴に参加していたのは永琳と同じくバーンを思っての事、永琳は見るのが辛くて消えていたが二人はバーンを、バーンを囲う友を思って参加した、要らぬ勘繰りをされぬように呪いを気付かぬ振りをして楽しく……

 

「……その通りだ、仲間の為よ……笑うか?」

 

「笑いはせんが……その中に我も入るのか?」

 

「加えてやらんでもない」

 

そう言われた神奈子は苦笑する

 

「抜かせ大魔王……神が大魔王と仲間だと?ふざけた事を抜かすな」

 

「フッ……そうだろうな、神が魔族と仲間などと……あってはならん事か……」

 

同じく苦笑するバーンに神奈子は酒を注ぎ差し出した

 

「そう、あってはならん事だ……が、まぁ飲むが良い……」

 

「……頂くとしよう」

 

机を挟んで二人は座り酒を飲む

 

「思いもせなんだわ……まさか大魔王と酒を飲み交わすとはな……我自身驚いておる」

 

「余も驚いている、あれだけ憎かった神と酒を……とな」

 

一口ずつ飲んだ二人に沈黙が訪れる

 

沈黙はあったが二人は笑っていた

 

神と大魔王が飲み交わす、その奇妙な感覚が二人を笑わせた

 

「さっきの……我を仲間とする言葉だが……」

 

「ほお……まさか受け入れるのか?」

 

「馬鹿を言うな……さっきも言ったがそれは出来ん、我にも面目がある、だが……」

 

神奈子は少し迷った末に話しだした

 

「神としてではなく……ただの八坂神奈子としてなら……」

 

「考えてやらんでもない」

 

そう言った神奈子ははにかんだ、皆には内緒だぞ?っと言う様に

 

「どう大魔王?やはり自分より弱い私では不服?」

 

口調が普段に戻った神奈子はバーンの反応を見るように微笑む

 

「……抜かせ神……いや……」

 

微笑みを受けたバーンは苦笑しながら

 

 

「神奈子よ……」

 

 

仲間の名を呼んだ

 

 

 

「……一献注いでやろう」

 

「んっ……大魔王の酌なんて二度と無い機会ね」

 

「余はもう大魔王では無い……今はバーンよ」

 

「そうだったわね……失礼したわ」

 

「よい……それより神奈子よ、これをお前に託す」

 

「貢ぎ物?何をくれるのかしら?」

 

バーンが取り出して机に置いた物を見て神奈子は目を細めた

 

「これは……爆弾、それもとてつもなく強力な……何のつもり?」

 

机に置かれたバーンの掌大の物体に危険を感じつつ問うた

 

「黒のコアと言う……余の世界に伝わる爆弾だ」

 

バーンが取り出したのは黒のコア、禁呪を扱う者さえ使用を避ける太古より魔界に伝わる超強力爆弾

 

「これは小型だがそれでも鬼眼王の魔力を凝縮させた物だ地上で使えば幻想郷の半分以上は楽に灰に出来る威力はある、使うなら遥か上空で使え」

 

「そんな物騒な物を何故私に?」

 

神奈子の疑問は最も、下手をすれば幻想郷を滅亡さしうる代物を託そうとしているのだから

 

「これから先……幻想郷に何が起きるかわからん……またムンドゥスの様な者が現れるやもしれん、これはその時の切り札として使え」

 

「滅多な事では誘爆しない様にしてある、そしてこのコアはお前の神気にのみ反応する様にしておいた……」

 

バーンの説明を静かに聞いていた神奈子は黒のコアを自分の前に置きバーンを見つめる

 

「良いでしょう……これは確かに私が託された……必ず幻想郷の為だけに使うと約束しましょう」

 

バーンの思いに嘘偽り無く答えた

 

「それでだ神奈子……代わりと言ってはなんだが頼みを聞いてくれるか?」

 

「ええ良いわ、私に出来る事ならね」

 

「……神の加護を与えて欲しい」

 

「貴方じゃ……ないわよね」

 

「そうだ……与えて欲しいのは余の7人の友……全てに平等に与えられる神の加護を少しばかり贔屓して欲しいのだ」

 

「無茶を言うわね……」

 

バーンの頼みは無理難題、本来神の加護とは等しく与えられる物、偏りがあってはいけない、それを曲げろと言うのだ、神である神奈子にとって無茶以外の何物でもなかった

 

「やはり厳しいか……」

 

神奈子の渋い表情に頼みは不可能だと悟る

 

「今のは忘れろ、流石に余も無理を言い過ぎた」

 

「あっ……ま、待て!」

 

立って去ろうとするバーンに神奈子は思わず呼び止めてしまった、何故思わずなのか?

 

それはバーンの無理だと知った表情がとても悲しげで掛ける言葉も無いのに咄嗟に口に出てしまったから

 

「どうした?」

 

「お、お前の頼みは聞けないけど……の……」

 

何も考えていなかった神奈子は慌てて言葉を紡ぎだす、それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

「呪いなら解く事が出来る……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

微かに光が見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バーンの旅路、次は幽香、白蓮、ルーミア、神奈子の4人です。
意外に膨らんでしまいました、幽香、神奈子だけで1話書けそうなくらい……

次回も頑張ります!
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