香霖堂
「いらっしゃい、ここは道具屋だよ」
入ってきた訪問客に霖之助は本を読みながら話した
「暇そうだな霖之助、やはり趣味ではそうなるか」
「おや、バーンじゃないか、どうしたんだい?君も八雲紫と同じく盗みに来たのかい?」
本を下ろした霖之助はバーンへ含んだ笑みを向ける
「フッ……対価は払っておるだろう?幻想郷の平和をな」
「わかってるさ、だから気にしてないよ」
品を眺めながら話すバーンを眺めながら霖之助は返す
「何だろうね……こうして見ていると君が大魔王だったなんて嘘みたいだ」
「……何に見える?」
「何にも見えないよ、今の君はただの幻想郷の住人……他より少し強い幻想郷の住人にしか見えないよ」
「そうか……」
バーンの表情に変化は無い、一言そう言うと無言でまた品をゆっくりと見て回る
「何か……あるみたいだね」
バーンの様子から何かがあるのだと察した霖之助は聞いた
「まぁ……な……」
「そうかい……まぁ詮索はしないけどね」
また本を読み始めようと手に取った瞬間、香霖堂へ新たな来訪客が現れる
「お邪魔するわ」
「アリスじゃないか、どうしたんだい?」
来訪客はアリス
「新しい物が入ってるか見に来たの……って……」
「バーンじゃない」
店に居たバーンを見つけて声を掛ける
「お前は確か……魔法使い、アリス・マーガトロイド……だったな?」
「アリスで良いわ、それより私の事知ってたのね、話した事も無かったのに」
「一応はな、前の宴でお前が魔理沙と共にいるのを見て友だと知った、話した事はなかったが片隅にはあったのだ、それに……」
「お前は大妖精を守ってくれたと聞く、だから礼を言いたかった……霖之助と同じくな」
「そんな、礼だなんて……貴方の方が余程凄い事をしてる、礼を言うのは私の方なのに」
困惑するアリス、そこに霖之助が口を開いた
「そうだよ、君のしてくれた事に比べれば僕等がした事は些細な事さ、礼には及ばないよ」
霖之助もアリスと同じ意見、だがバーンはそれを聞いて首を振った
「そうではない、事の大きさは関係無いのだ」
「余は大妖精を大切な友と思っている、それこそお前達が幻想郷を想う以上に……」
「「……」」
二人は言葉が出なかった、あのバーンが幻想郷よりもそこに住む住人、妖精の方が大事だと言ったのだ、聡明で威厳がありそして何よりも強いバーンがそう言ったからだ
だが二人が黙ったのはそれが信じられないからではなかった
(なんて想いの重さと深さ……ここまで他人を想う事が出来るものなの……!?)
他人に余り関心の無いアリスはバーンの個人に向ける想いの強さに絶句していた
(参ったねどうも……彼がそう言うとそれが正しい事だと思ってしまう)
幻想郷と友、危険の際にどちらを選べと言われれば幻想郷を選ぶだろう、中には友と答える者もいるだろうがバーンの様にそれがさも当然の様に答えれる者はそうは居ない
バーンの威厳も相まりその言葉を正しいと感じてしまった霖之助は「そうだね」と言いかけて咄嗟に口を閉じていた
「フッ……すまぬな、幻想郷もお前達も軽く見ている訳ではないのだが……どうしても……な」
「えぇ……」
「わかってるよ」
バーンの謝罪に二人はようやく口を開いた
「さて、余は向かう所がある故これで失礼するが……霖之助」
「何だい?」
「アラストルの代わりをやろう」
そう言ったバーンは異空間から頭ほどある大きさの物を取り出し霖之助に手渡した
「美しいな……盾かなこれは?名は……シャハルの鏡か」
受け取った霖之助は能力を使い物の名を口にする
「模倣品だがな、オリジナルは余が砕いてもう存在せん」
「そうなのかい?でも模倣とは思えない、凄いな……用途は……魔法の反射か、これはまた凄い」
シャハルの鏡を手に持ち眺めながら鏡の美しさと効果に感嘆の声を漏らす
「余のマホカンタを込めてある、魔法の反射率は100%だ、戦闘に使うなり売るなり好きにするがいい」
「いや……売る気は無いよ、これは贈り物……売り物にする為にくれた訳じゃない、非売品にするよ……ずっとね」
「これからも魔理沙を見守ってやってくれ」
「……?わかったよ」
不思議な言い方に疑問を浮かべるが事情を知らない霖之助はとりあえず了承した
「アリス、お前にはこの指輪をやろう……はめてみろ」
「ありがとう……」
贈り物に困惑気味に受け取ったアリスは指輪を促されるままはめてみる
「えっ……これって……」
指輪をはめたアリスは魔力が回復したのを感じバーンを見た
「その指輪には魔力回復の効果を与えてある、回復する魔力は微量だが壊されぬ限り装備者の魔力を回復し続ける、名は……そうだな……魔王の指輪とでもしておくか」
「こんな凄い物ホントに貰っていいの?」
「無論よ、代わりにお前には今後起きるかもしれん異変の際には本気で戦ってもらう」
「……気付いてたのね」
「お前を見た時から強い力を秘めていると感じていた、そして大妖精から聞いたが悪魔に苦戦していたらしいな、本気を出せば苦も無く殲滅出来たにも関わらずだ」
「……そうね」
「お前が何故本気を出さないのかは知らん、だが今後それでは済まぬ事態が起きないとは言えん……無理強いはせんがお前が幻想郷を想うなら考えておいてくれんか?」
「……前向きに検討しておくわ」
アリスはバツが悪そうに答えた、彼女も思うところがあり反省しているようだ
「でも貴方が居れば……」
私は必要無いでしょ?
そう言おうとしたアリスの言葉はバーンの手に止められる
「……さらばだ」
止めた理由も話さずバーンは香霖堂から去っていった
「何なのよ……」
消化不良な事に溜め息をついたアリスは霖之助に視線をやった
「さぁね、僕も彼の意図はわからないけど……」
霖之助は感じたままを言葉にする
「別れの挨拶……に感じたよ」
「帰るかもしれないって事?自分の居た世界に?」
「違うと思う、あれは多分もっと……」
(二度と会えなくなる様な……そんな感じに見えた)
そして二人はまたいつもの生活に戻る、バーンの頼みを胸に残して……
(香霖堂でアリスに会えたのは幸運だったな、お陰で一番時間の掛かる白玉楼に時間を割ける様になった……行くとしよう)
「その前に……」
行き先を決めたバーンはルーラを唱え飛んで行く
紅魔館・正門
「暇ですねぇ……」
仕事の門番をする美鈴が一人呟く
(誰も来ませんし何か必殺技でも考えましょうか……)
周囲に誰も居ないのを確認した美鈴は拳に気を溜めて構えた
「私のこの手が真っ赤に燃えるぅ!勝利を掴めと轟き叫ぶぅ!」
声を張り上げて更に拳に力を込める
「ばぁくねつ!!」
気が熱を持ち赤熱する
「メイリーンフィンガー!!」
グワァっと空を切った指が何かを掴んだように持ち上げる
「ヒィィィトォ……」
フィニッシュを決めようと美鈴は指に力を込める
「愉快な事をしているな美鈴」
そこに掛けられる声
「エン……へっ!?」
掛けられた声に美鈴はすぐに振り向いた
「ば、バーンさん!?」
声を掛けたのはバーン、微笑んでいる
「……い、いつから見てました?」
「勝利を掴め……の辺りからだ」
「恥ずかしい……死にたい……」
顔を真っ赤にした美鈴は体育座りでその場にうずくまった
「そんな暇は無いぞ?行くぞ美鈴」
「はい?どこへですか?」
「白玉楼へだ」
「何で白玉楼へ……私、仕事中なんですが……」
「行くのか?行かんのか?早く決めろ、次は無い」
「次は無い?」
美鈴は首を傾げる、紅魔館に住むバーンに次は無いと言われたからだ、今日しか出来ない大事な用なのかと考える
(まっいいか!)
「行きます!暇ですしね!お嬢様も留守ですし今日くらい大丈夫でしょう!」
ピョンと立ち上がった美鈴はバーンに並ぶ
(レミリアが留守……?まぁ気にする事はなかろう)
レミリアの留守が弱冠気になったがすぐに気を取り直し美鈴に手を差し出した
「掴まれ」
「はいっ!!」
元気良く返事した美鈴はバーンの手を掴むと二人はルーラで白玉楼へと飛んでいった
白玉楼
「!?」
庭を手入れしていた妖夢は気付いた
(侵入者……方法はわかりませんが門前に突然現れた、力量を察するにかなりの手練れ……)
獲物を構え開きかけた門の前に立つ
「成敗っ!!」
開くと同時に神速の一刀を放った
「!?」
瞬間目を見開いた
眼前に映ったのは白刃取りを行おうと構える美鈴と何故か動かない剣
「警戒心を持つのは良い事だがせめて相手を確認してからにしろ、美鈴を切ってからでは遅い」
視界の外から聞こえる声
「バーンさん!?」
剣を止めていたのはバーン、妖夢の剣をなんと指1本で止めていた
「す、すいません!!またやってしまいました……」
直ぐ様剣を納めた妖夢は深々と頭を下げた
「以後気を付けろ、美鈴とて女だ、傷付くのは好ましくはない」
「とてって何ですかとてって……そんなに私魅力無いですかぁ……?」
一応な女扱いに肩を落とす美鈴を他所にバーンは話しだした
「妖夢、お前と西行寺幽々子に用があるのだが先に西行寺幽々子を済ませたい、話が済むまで美鈴と待っていろ」
「あ、はい、幽々子様ならいつものお部屋に居ますのでどうぞ」
「わかった、では暫し待て」
白玉楼へ入っていくバーンを見送った後、二人は顔を見合わせる
「……どうしますか?」
妖夢が聞いた
「そうですね……ただ待つのも退屈ですし……」
美鈴が構えた
「よろしければ……組手でもしませんか?」
「良いですね!では……よろしくお願いします!」
剣を峰にし妖夢も構える
「「ハッ!!」」
組手をしてバーンを待つ事にした二人は楽しげに拳と剣を重ねる
「失礼する西行寺幽々子」
「あらぁ?バーンじゃない」
部屋に入って来たバーンを幽々子は見た
「どう……した……の……?」
何かを感じた幽々子はバーンを凝視する
「……そうゆう事だったのね、あの子がき……」
ハッっと気付いた幽々子は言葉を紡ぐのを止める
「何だ?」
「……何でもないわ、ちょっとお腹が減ったの」
バーンの問いに濁した返事を返す
(思わず口走る所だったわぁ……危ない危ない、バーンには話すなって言われてるものね)
交わした約束を思い出した幽々子は逸らす様に話題を変えた
「ねぇバーン……貴方……死ぬでしょ?」
「……」
変えた話題は先に感じた事
「答えなくてもわかる、貴方は今まさに死の淵に居る……幽霊の私が居る冥界の一番近い所に……」
幽霊である幽々子が感じたのは死、既に死んでいる自分と限りなく近い位置にバーンは居ると感じたのだ
「ただし……貴方が行く場所は冥界ではない……」
「わかっておる……余は魔族、死んでも幽霊になる事は無い」
バーンは既に理解している、死んでも幽霊になり幻想郷に居座れる事は出来ないと
「貴方が幻想郷で生まれた魔族ならまだ可能性はあったけど……でも貴方は異世界の魔族、死んだ後の魂は貴方の居た世界のルールによって決められるから……」
(これを話すのは二度目ね……)
幽々子は以前この事を誰かに話していた
「それもわかっている、余が死ねばまた魂の牢獄に閉じ込められるだろう……次の死は先に肉体が滅びた後だ、蘇生は出来ん」
「……ごめんなさいね、力になれなくて」
無力に幽々子は顔を伏せた
「よい、余は助けを求めに来た訳では無い」
「……じゃあどうしたの?」
救いを求めているのでは無いと知った幽々子は何をしに来たのか疑問にバーンを見た
「お前の忠臣を借りに来た」
「忠臣?妖夢の事?」
「そうだ、少しの間妖夢を預けて欲しい、お前にとっても有益になる筈だ……出来るか?」
「それは構わないけど……何をするの?」
「再戦の願いを叶えるのと……」
承諾を受けたバーンは部屋から出ながら答えた
「少し手解きをするつもりだ」
「やりますね!」
「妖夢さんこそ!」
組手を続ける二人は微笑み合う、峰を返している為普段とは勝手は違うが二人の実力は伯仲していた
「待たせたな」
そこへ幽々子を引き連れたバーンがやってくる
「幽々子様への用件は終ったんですね」
「それで私達への用って何ですか?」
用が済んだバーンに二人は聞く
「まず妖夢、お前の願い……余との再戦を叶えてやる」
「本当ですか!」
嬉しく目を輝かせる妖夢だがすぐに顔を苦くする
「でも未熟な私ではまだバーンさんには……」
苦くしたのは己の力不足、今戦っても善戦すら出来ないとわかっている妖夢は嬉しいがまだ早いと思っていた
「妖夢……気持ちはわかるけど今しかないのよ」
バーンの後ろに居る幽々子が悲しげに話した
「今しか……?それはどうゆう……」
理由を聞こうとした妖夢へバーンが告げる
「やるのか?やらんのか?」
「……やります!」
何か話せない事情があるのだと察した妖夢は理由を聞くのを止めバーンとの再戦を望んだ
「次に美鈴」
「はい!」
「お前は以前教えて欲しいと……そう言ったな?」
「えっ……えっ!?何をですか?」
心当たりの無い美鈴は困惑している、完全に忘れている
「余は聞いていたぞ、天地魔闘の構えを教えてくれ……とな」
「……!!まさか……妖夢さんを倒したあの時の構えですか!?」
名を聞いた美鈴はすぐに以前見た構えを思い出し名がそれなのだと察した、枷の付いていたバーンが繰り出した完全ではないがそれでも圧倒的な強さを見せたあの構えを
「だから特別に余の秘技を教えてやろうと思ってな」
「本当に……本当にですか!!」
弱冠顔を紅潮させる美鈴、あのバーンが見せた構え、不完全だったがそれでも美鈴の記憶には鮮烈に刻まれていた、それを教えて貰えるのだ、興奮で声が荒くなる
そして何より
(バーンさんが私なんかの事を覚えてくれた……!!その上叶えてくれた!!)
バーンが紅魔館のただの門番である美鈴をちゃんと認識してくれていた事が嬉しかった
「教える……と言っても手取り足取り教える時間は無い、それにそれで修得出来るほど余の秘技は軽くは無い……」
「だからだ、身に刻め、そしてそれを基に自らで完成させろ」
「……望む所です!!」
意気込む美鈴、苛烈な方法に美鈴は嫌な顔1つせず寧ろ更に意思を高める
「妖夢、お前もだ、余の秘技を破りたいなら破る為に身に刻め」
隣の妖夢に挑戦的な目で微笑む
「気付いてましたか……」
「お前の目を見ればわかる、天地魔闘を破り余に勝つ野心がな」
「そこまでお見通しですか……なら遠慮なく胸を貸して貰いますバーンさん!!」
美鈴と同じく意気込む妖夢、定めた目標を前にその意思の高揚は最高潮になる
「よし……まずは妖夢、お前からだ、気遣いは無用……殺す気で来い」
「わかってます!行きますよバーンさん!!」
美鈴が幽々子と共に退いた瞬間に妖夢は攻撃を仕掛けた
「ハッ!」
弾幕を牽制に一気に距離を詰める
「セヤッ!!」
剣の一閃をバーンの胴へ放つ
「ほう……以前より速く鋭くなった、悪魔との戦いで更に経験を積んだようだな」
軽々と指で受けたバーンが微笑む
「……バーンさんに言われると皮肉に聞こえます」
殺す気で放った一閃を受け止められた妖夢は苦笑う
「フッ……そうか、それはすまぬな」
ガギィン!!
「くうぅぅ……!?」
謝罪の直後に放たれた手刀を二刀で受けた妖夢が後退する
「これで全く本気じゃないんですから困り物です全く……」
腕の痺れに苦笑する妖夢、だが何故か今は痺れすら嬉しかった
「ハアァッ!!」
二刀で斬りかかる妖夢、長刀と短刀を巧みに扱いバーンを追い詰める
「……」
だが無言の涼しい顔のバーンに全てを受けられる
「ハアアアッ!!」
「……ハァッ!」
二刀を手刀が捉え、二刀は妖夢の頭上に弾かれる
ピタッ
「死んだな妖夢、剣を放さなかったのは見事だ、剣士として最も大事な事を守ったな」
手刀が妖夢の首で止まっていた
「相手にすらなりませんでしたね……」
「少々強くなった程度で相手になられると余の沽券に関わる、当然の結果だ」
決着にバーンは次の仲間を呼ぶ
「来い美鈴」
「はいっ!お願いします!!」
妖夢が下がり美鈴がバーンと対峙する
「加減はしてやる、目に焼き付け、身に刻め……これが……」
力を凝縮しながら手は定位置へ移動する
「……!!」
構えの完成に顔を強張らせる
(対峙して初めてわかる……凄い……なんて完成された技でしょう……私では一生無理かもしれません……)
冷や汗をかきながら構えを睨む
(ありがとうございますバーンさん……)
機会を与えてくれた事に深く感謝し
「紅美鈴……参る!!」
バーンへ駆けた
天 地 魔 闘
「……カハッ!?」
美鈴は地に伏せていた
「どうだ?これが余の誇り……魔帝すら破れなかった余の力の極致だ」
仰向けに倒れる美鈴に話し掛ける
「ぐっ!?くっ……!?」
(何をされたかわからなかった……わかったのはおそらく3回何かをされた……と思うだけ……)
起き上がりながら美鈴は天地魔闘の構えを僅かに感じた
バーンは美鈴の拳を掌底で弾き、手刀を切らぬ様に打ち、弾幕を浴びせていた
(そして優しい手加減ですね、しかし加減してもこの強さとは……)
美鈴の感じる様にバーンは手加減していた、それも余り怪我をしないようにされど身に刻む強さで
(本気なら今私は灰になってますね……)
バーンが本気なら美鈴は跡形も無く消えていた、本来の威力なら美鈴が耐えられる訳がない、まさに必殺の威力を持った技なのだ、更に今は鬼眼王の力だ、その威力は推して知れる
(本当に……ありがとうございますバーンさん……今私は歓喜で胸が一杯です!!)
「もう一度お願いします!!」
美鈴は闘志を燃え上がらせ構えた
「何度でも来い……悔いの無いよう存分に掛かって来るがいい……妖夢、お前もだ」
美鈴の闘志に微笑んだバーンは妖夢にも向けて微笑む
「ハイッ!!」
妖夢も嬉しく返事を返した
だが二人は気付いていなかった
バーンの言動の端々に出る別れの意味を……
(貴方はそれで良いのね……想いだけを残して……それが貴方なりの別れの餞別……)
(でもそれは別れを知った時の傷を増やす事……それを知っていて残すのね……)
(痛み以上の絆を……)
幽々子だけは二人に見えない様に顔を逸らした
「掛かって来るがいい!妖夢!美鈴!」
二人の挑戦はまだ始まったばかり……
「ハァ……ハァ……」
「ゼェ……ハァ……」
長い時が過ぎ二人は膝をついていた
何度も、何度も打ちのめされ、その度に立ち上がったからだ
服は破れ体の至る所に痣や傷が出来ている、それでも挑み続けたのは……
「限界……だな、お前達は良くやった……もう休め」
二人の姿に限界を見たバーンが終わりを告げる
「まだ……です!」
妖夢が立ち上がる
「私も……やれます!」
同じく美鈴も立ち上がる
「「お願いします!!」」
立ち上がるのは、今この時がかけがえのない時だと思うから
二度とこんな機会が無いと闘う内に感じたから二人は限界を迎えても立ち上がったのだ
「……よかろう、これをもって最後とす……る……!?」
(グウゥ……!?今……か……!!)
一瞬顔を歪めたバーンは直ぐに顔を戻して二人に構える
天地魔闘の構えを
(少しは天地魔闘の構えは理解したけど……ダメだ、突破口が見当たらない……クソッ!最後なのに!!こうなったら……)
「こうなったら背水の陣だ!!」
玉砕覚悟の特攻をするべく美鈴は力を振り絞る
「……お前一人で陣なのか?」
「うぅ……突っ込まないでください……」
バーンの指摘に顔をしかめる
「心配要りません……私が……居ます!!」
「妖夢さん……!!」
美鈴の隣に妖夢が並んだ、美鈴と同じく玉砕覚悟の特攻を決めるべく
我が儘を聞いてくれたバーンに応える為に……
「華符「彩光蓮華掌」!!」
「奥義「西行春風斬」!!」
二人の全てを込めた奥義
「天地……魔闘……」
名残惜しく迎えた
「回復はしておいた……直に目を覚ますだろう、後は任せた」
「ええ、任せて……ありがとねバーン、妖夢はこれでまた強くなれるわ」
傍らで寝る妖夢を撫でながら幽々子は感謝を述べた
「見られぬのが残念だ、いずれ美鈴と共に幻想郷に名を轟かせるだろう姿を……」
抱き抱える美鈴を覗きながら答える
二人は満足そうに寝ている
「じゃあねバーン……成仏したらまた会いましょう」
「たわけが……する気などあるまいに」
苦笑し合うとバーンは背を向け白玉楼から去っていった
「ウフフ……その内するわよぉ……ねぇ妖夢?」
妖夢に語り掛けるが返されない返事に幽々子の語りは独白に終わった
「すまぬな美鈴……ここで許せ」
紅魔館の門前に美鈴を寝かせたバーンは飛翔する
(夜か……あやつが博麗神社に居れば良いが……)
ゆっくりと飛びながら時折ふらつくバーンは博麗神社へと向かって行った
謎の洞窟
「ハァ……ハァ……!!……ハアァッ!!」
少女は洞窟を進んでいた、異形を退けながら地下へ
(今……何階……?もう……わからなくなったわね……100は越えてる筈だけど……)
「キシャア!!」
急ぐ少女を異形の爪が襲う
「ッ!?……このぉ!!」
爪に服と肌を切り裂かれた少女の拳が異形に風穴を空け吹き飛ばす
「待ってなさい……もう少し……もう少しだから……」
疲労とダメージで最初程のスピードが出なくなった少女はそれでも一心に地下へと進む
「!?……また……」
少女の羽が止まる、眼前にはもう何度目かの異形の大群が犇めいていた
(大丈夫……こんな程度で諦めない……だから……)
(待ってて……バーン……!!)
「神槍「スピア・ザ・グングニル」!!」
群へ飛び込んで行った
少女は幼い外見だが年齢は500を越える
少女は吸血鬼と呼ばれる種族
少女はバーンを助けたかった
少女の名はレミリア・スカーレットと言った
幻想郷のとある丘
バーンはそこに腰掛けていた
(居らぬか……博麗神社に居ないとすれば神出鬼没のあやつを探すのは不可能……時間が足りん)
探し人は見つかっていなかった
博麗神社に居るとふんで向かったバーンだが気配を感じれず、探し回ったが見つけれずにいた所を適当な丘を見つけたので降りたっていた
(それに呪いの痛みで満足に飛ぶ事も叶わん……口惜しいが仕方あるまい)
会うことを諦めたバーンは呪いの痛みを耐えながら月を見上げる
(明日……明日だ……)
友に会える喜びを感じながら同時に残る時間を感じ無表情に月を眺める
(月……そうだな、こんな風に月を眺めているといつもあやつが来るのだった……)
月に一人の友を思い出す
(レミリア……お前が居たから余は……)
「おやおや……そこに居るのは幻想に名高い大魔王バーンじゃないか、どうしたんだいこんな所で?探し物かい?」
馳せる想いを声が遮った
「お前から来るとはな……探したぞ?」
声は知る者の声、バーンの探し人だった
「萃香よ……」
バーン最後の旅、3日目後半は霖之助、アリス、幽々子、妖夢、美鈴となりました。
妖夢と美鈴が長くなりましたね、ある意味で二人は一番良い物を貰ったので濃くなりました。
次回は……頑張ります!