東方大魔王伝   作:黒太陽

42 / 45
第40話 運命

3日前

 

バーン最後の宴が終わり皆が寝静まった後、レミリアはふと目が覚め館内を歩いていた

 

(良い気分ね……)

 

楽しい時間を過ごしたレミリアは酔いも手伝いとても良い気分でバルコニーに向かっていた

 

(バーンが居たら申し込んでみようかしら……)

 

期待と少しの不安を感じながらバルコニーを目指す

 

(いたいた……あら?)

 

バルコニーに居るバーンを遠目に見つけたレミリアは違和感に気付く

 

(誰かと話してる?)

 

バーンは誰かと話している様だった、内容は聞き取れないが話しているのは間違いなさそうだ

 

(いったい何を……)

 

気になったレミリアは物音を立てない様に宙に浮き、気取られぬ様に近付いて行った

 

 

「よい……お前のお陰で楽しき時を過ごせた」

 

 

レミリアの耳にバーンの声が入る

 

(話してるのは永琳と……紫ね、何の話かしら?宴の話?)

 

気取られないギリギリの距離で様子を窺う

 

レミリアが更に聞き耳を立てたその時だった

 

 

 

「呪いを受けた余がまだ生きている……これも余の運命か……」

 

 

 

(え……)

 

聞いてしまったレミリアは驚く、まだ全容は理解出来ていないが呪いを受けている、それだけはわかった

 

 

「私ではその強過ぎる呪いは解呪出来ない……本来6日で死ぬ呪いを出来る限り引き延ばすしか……」

 

 

(嘘……)

 

次に聞いた言葉がレミリアに全てを理解させた

 

バーンは死ぬ運命だった、引き延ばすと言う事は死ぬ運命には変わりないという事を

 

(そんな……そんな事って……)

 

信じられない

 

せっかくムンドゥスを封印してバーンも起こしてこれからだという時に聞かされたバーンの死

 

信じられる訳がなかった

 

 

 

「余は成す為に生き長らえていたのだ……友を作り、守る為に……それが成せたから死ぬのだ……余を人とするなら……な」

 

 

 

(バーン……)

 

だがバーンの口から語られる死を含む言葉にレミリアは信じざるを得なかった

 

 

 

「……自分の体だ、言われずともわかる」

 

 

 

 

「後……4日だ」

 

 

 

(……4日)

 

そして知った呪いの期限、それを知ったレミリアにある考えが芽生えはじめていた

 

 

「このまま残る余生を幻想郷で過ごしあやつらに遺恨だけを残し死ぬか、今の内に幻想郷を去りあやつらが何も知らぬ内に死ぬかを……な……」

 

 

(自分が死ぬって時まで……私達の事を……)

 

バーンの想いを知ったレミリアの目からはいつの間にか涙が流れていた

 

 

「これがその時……その時が来るまで……余は幻想郷に居よう」

 

 

(なら……まだ4日……)

 

バーンの選択に僅かな可能性を見る

 

 

「あやつらには……黙っておけ」

 

 

(……)

 

また涙が頬を伝う

 

 

二人がバーンの前から去った後、紫と同じくバーンを見たレミリアは決意した

 

(死なせない……絶対に貴方を救ってみせる!待ってなさいバーン!私が必ず運命を変えてみせる!!)

 

バーンの呪いを解く事を決意したレミリアはバーンに気付かれぬ様静かにその場を離れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・図書館

 

「……違う」

 

本を読むレミリアが呟いた

 

「こんなのじゃバーンの呪いは解けない!!」

 

本を叩きつけた

 

(ダメ……死の呪いはある種の運命決定、生半可な事じゃ解けない)

 

他の方法を探そうとしたレミリアは乱雑に放られた本を見てバーンの言葉を思い出す

 

(黙っておけ……か)

 

知られるのをギリギリまで避けるバーンの言葉を思いだし本を片付ける

 

この時に小悪魔に見られていたがレミリアは気付いていない

 

「ん……?」

 

片付けが終わり図書館を出ようとしたレミリアの目に気になる背表紙が見えた

 

(神々の遺産……)

 

それを見たレミリアはもしかしてと思った、神の残した物なら、神の力なら何かあるのではないかと感じたからだ

 

本を手に取りページを捲る

 

「違う……違う……」

 

「!!」

 

ある項目で手は止まった

 

(破邪の秘法……)

 

その項目を読んでみる

 

(これなら解呪の呪文と組み合わせればもしかして……)

 

効果に僅かな希望を見たが確実とは言えない

 

だからレミリアは破邪の秘法を一旦頭の隅に置き、まず一番一緒に居れる可能性が高そうな方法を確認しに行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日・白玉楼

 

「幽々子、聞きたい事があるわ」

 

既に帰っていた幽々子を朝一番に訪ねていた

 

「魔族って幽霊になれるの?」

 

聞いたのは魔族が幽霊になれるかどうか、魔族とは勿論バーンの事

 

「ふぁ~……何よぉ朝から……」

 

無理矢理起こされた幽々子は少し不機嫌気味だ

 

「いいから答えて!」

 

レミリアの怒声、余裕など無かった

 

「……魔族だってなれるわよ、生前に強い想いを持っていればね」

 

鬼気迫るレミリアの表情に気圧された幽々子は話しだした

 

まだこの時はバーンの死は感じれていないので幽々子には質問の意図がわからない

 

「そう……」

 

レミリアの表情が緩んだ

 

(ならバーンさえ強く生きたいと願えば幽霊になって一緒に……!)

 

希望が現実味を帯びてきた

 

だが希望は幽々子の一言で脆く崩れ去る

 

「異世界の魔族なんかだと無理だけど……」

 

「!?」

 

幽々子の悪気の無い一言はレミリアを落胆させるには充分だった

 

「そう……ありがと……この事はバーンには黙っておいてね」

 

悲しくそう言うとレミリアはすぐに白玉楼を出ていった

 

「わかったけど……何だったのかしら……?」

 

幽々子は眠気も相まり深く考えるのを止めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守矢神社

 

「神奈子!」

 

次にやって来たのは守矢神社、その前に一度紅魔館に戻り日焼け止めなどの準備をしている時にフランから食事の事は聞いた、友人を無下には出来ないレミリアは更に時間が無くなったと思いもう日が出ているが準備を止め体のダメージなど気にする事なく急いでやって来ていた

 

「……バーンの事ね」

 

神奈子はレミリアの様子にすぐに察した、バーンの呪いの事だと

 

「そうよ、何故黙ってたの?」

 

神奈子にバーンを起こす様に頼んだ友、レミリアもその内の一人、呪いの事を黙っていた神奈子が許せなかった

 

「……」

 

神奈子は押し黙る、弁解などするつもりは彼女には無かった、責めは覚悟していた

 

「……まぁ良いわ、貴方の気持ちはわかる、それより……」

 

自分達の事を想っての事だとわかっているレミリアは許せなかったが責めるのは止める、そんな事より優先する事があるから

 

「破邪の秘法……どうすれば契約出来るの?」

 

「……無理よ」

 

「なんで!?」

 

神奈子の答えに息を荒げさせる

 

「確かに破邪の秘法なら私や早苗達と組み合わせれば半日もあれば解呪は出来る、例え間に合わなくてもシャナクと言う解呪呪文と組み合わせれば死ぬ事はないわ」

 

呪いを解く事は可能だと告げる

 

「でも……」

 

しかし

 

「無理よ」

 

可能性は否定される

 

「だからなんで!!」

 

更に声を荒げるレミリア、そのレミリアに神奈子は渋々と語り始めた

 

「神の遺産って言うのは文字通り神が遺した物、でもそれはその世界の神がその世界にのみ許した物なの……ここまで言えばわかるでしょう?」

 

「……私、いえ私達幻想郷の者では契約出来ないって言いたいの?」

 

「そう、道具や既に修得している者が幻想郷に来る分には問題は無い、だけど私達幻想郷の者が異世界の神の遺産を契約する事は出来ないの」

 

「……どうやっても?」

 

「無理よ、神である私でさえその理には干渉出来ない、簡単に干渉出来てるなら世界の法則なんてとっくに乱れているし私も迷い無く破邪の秘法を得ているわ」

 

「……」

 

不可能を聞かされたレミリアは黙する

 

(……でも今はこれしか…… 縋れないのよ!!)

 

決意は完全に決まる

 

「神奈子……紫を呼んで」

 

「何をするつもり?」

 

「決まってるわ……破邪の秘法を契約しに向かうのよ」

 

「無理よ……諦めなさい」

 

 

「いいから早く呼びなさい!!」

 

 

神奈子へ怒鳴りつける、最早レミリアに余裕など全く無かった

 

 

無理だと告げられても

 

諦めろと言われても

 

その決意は折れなかった

 

 

バーンを救いたい……

 

 

それを成就させる為に不可能だと言われた道を進む事を決めたレミリア

 

もうそれしか方法が無いから

 

無理でも行かなければならない

 

バーンを想うが故に奇跡を信じて向かう

 

 

「……わかったわ」

 

レミリアの折れぬ心に神奈子は承諾する

 

そして神気を飛ばし紫に呼び掛けた

 

 

「……何かしら?」

 

 

呼び掛けに応えた紫が姿を現す、紫はレミリアを一瞥し様子を見るとすぐにバーンの事だと察した

 

「私を破邪の秘法がある世界へ連れて行きなさい」

 

「……それを彼が望むとでも?」

 

紫の諭す言葉、バーンの想いを知る紫だからこそレミリアの行おうとする行為がバーンの望む事では無いと知っているからこそ掛けた制止の言葉

 

「そんな事は関係無い!!私がバーンを助けたいから行くのよ!!バーンの意思は関係無い!!」

 

だがレミリアは止まらない、既に諦める事は諦めていた

 

(バーンが想う様に彼女もまたバーンを……)

 

レミリアの想いを受けた紫は目を閉じ考え込む

 

(……断れば私を殺しかねない目をしている……そこまでバーンの事を……想いの高は同じ……しょうがないわね)

 

そう思うと紫はスキマを開いた

 

「貴方の意思を尊重しましょう……神奈子、どこの世界か教えなさい」

 

「……最後に確認しておくわ、破邪の秘法は破邪の洞窟と呼ばれる場所の地下150階にあるの、その世界の実力者でさえ150階に辿り着くのに3ヶ月掛かっている、それでも行くの?」

 

神奈子の聞いた内容は要約すれば絶対に間に合わないと言う事だ、レミリアがいくら強くても残りの日数で辿り着き契約して帰ってくるのは不可能だと言ったのだ

 

「いいからさっさと教えなさい!下らない御託を並べてないで早く!!」

 

また怒鳴る、時間が無いなど百も承知している、今さらそんな事を言われてもレミリアは止める気など毛頭無い

 

「……良いでしょう」

 

観念した神奈子はスキマへ標の光を放つ

 

「これに着いて行けば破邪の洞窟の前まで行けるわ、あそこは邪気が強過ぎてスキマすら拒絶する場所なの、自力で行くしか無い」

 

「わかったわ……ありがと神奈子、紫」

 

道が拓けた事でようやく落ち着いたレミリアは二人に礼を言う

 

「……気を付けてな」

 

神奈子の見送りを受けたレミリアに紫が話し掛ける

 

「もし貴方が間に合わず洞窟の中に居たままだと迎えにも行けないから仕掛けをしておきましょう……今から3日後の正午、夕暮れがリミットよ、わかったかしら?」

 

「……わかったわ」

 

それを最後にレミリアはスキマへと足を踏み入れ標に導かれバーンの居た世界へとやって来、破邪の洞窟に入ったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に到る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな!!」

 

青年が怒鳴った

 

「ふざけてなどいない……余り私を侮辱するなら命は無いぞ小僧」

 

青年の怒りを受けたレミリアが不機嫌に睨み返す

 

「うるせぇ!バーンが……あの大魔王バーンが生きてる訳ない……!!」

 

レミリアの睨みに怯まず青年は怒鳴り返す

 

「生きてる訳ないんだ!!」

 

傍の女性の制止を振り払いレミリアに詰め寄る青年

 

「嘘だって言えよ!」

 

掴みかかる青年、レミリアは振り払おうとしたが青年の手の震えに気付きそれを止める

 

「これじゃあ……何の為にあいつが居なくなったのかわかんねぇじゃねぇか……」

 

「……」

 

青年の言葉に宿る悲痛な想いを感じたレミリアは暫し青年を見つめた後、口を開いた

 

「貴方……名は?」

 

突然の問いに一瞬戸惑った青年だがすぐに気を取り直し告げる

 

「……ポップだ」

 

「そう、ポップ……貴方達とそのあいつって奴がバーンを倒したのね、他の方の名は?」

 

レミリアの問いに他の3人は名を告げる、先生と呼ばれるのがアバン、二人の女性はマァムとメルルと言った

 

「……それでもう一度聞かせてくれないか?」

 

口調の変化と少しの友好的な態度に怒気が下がり冷静さを取り戻したポップと名乗る青年はレミリアに問う、今最も気になる事を

 

「バーンが生きてるってのは本当なのか?」

 

「本当よ、バーンは生きている……この世界ではなく私の住む異世界……幻想郷で」

 

「やっぱり嘘じゃないのかよ……」

 

再度答えられたバーンの生存に深く溜め息を吐くポップ、本来なら焦るべき事態なのに焦らなかったのはこの半年間にバーンが現れなかったのとレミリアの存在があったから

 

「何があったか聞かせてくれ、この半年の間に生きていたバーンに何があったかを……」

 

ポップは冷静に現状を理解する事にした、ここで混乱しても何も意味は無いと考えたからだ

 

「……失礼だけど貴方ってお気楽でバカに見えたのに意外にクールね……見直したわ」

 

「……いいから話してくれ」

 

レミリアの小馬鹿にした言葉を流したポップは促す

 

「良いでしょう……」

 

そしてレミリアの語りは始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これで全てよ」

 

「「「……」」」

 

全てを語り終えたレミリアは感想を聞こうと4人を見るが皆言葉が出なかった

 

(信じられないぜ……あのバーンが……)

 

ポップは苦い顔で下を向く

 

(友人を作って……)

 

マァムは驚きを隠せない

 

(その友人の為に戦って……)

 

メルルも複雑な表情で顔をしかめている

 

(友を……幻想郷を……世界を守ったのですか……)

 

アバンは静かに目を閉じている

 

 

とてもではないが到底信じられなかった

 

 

あのバーンが

 

人間を最低と罵り皆殺しにしようとしたあのバーンが

 

他人に迎合する事無く、配下にすら心を開かなかったあのバーンが

 

友を守る為に戦い

 

友の為に小さき世界を救い

 

今、死の淵に居るなどと

 

 

 

「……間違い無いんですね?」

 

最初に口を開いたのはマァム、まだ信じられない思いが強い

 

「信じる信じないは貴方達の自由……でもこの私、レミリア・スカーレットの誇りに懸けて嘘は言っていないと断言するわ」

 

真っ直ぐにマァムを見つめるその瞳はマァムを信じさせるには充分だった

 

「いっそ……あんたの作り話だったら良かったよ……」

 

肩を震わせ喋ったのはポップ

 

「作り話じゃないわ」

 

「わかってる!」

 

レミリアの否定に声を荒げた

 

「わかってんだよ……!あんたは嘘をついていないって……だから……どう考えたら良いかわかんねぇんだよ!!」

 

「バーンが生きてるだけだったらおれが倒しに行くさ!でもバーンはただ生きてるだけじゃなくてあんたを、あんたの世界を救った……バーンがやった事はおれ達……ダイがやった事と同じ……」

 

「それで今呪いで死にそうだなんて言われて……」

 

「どうしたら良いんだよおれは!?全部かなぐり捨ててまで倒したダイの想いを汲んでトドメを刺すべきなのか!知らない顔して死ぬのを待つのか!それとも……」

 

「バーンを……助けるべきなのか……!!」

 

ポップは葛藤していた

 

バーンの幻想郷での所業、それは自分の知るバーンとは全く異なる物

 

その強大な力を守る為に使ったバーンにポップは勇者と同じ心を感じた

 

だからこそ葛藤した

 

それはかつてある漢に感じた感情と似た物を感じたから

 

「ポップ……」

 

「ポップさん……」

 

マァムもメルルもポップの心情の吐露に掛ける言葉が無い、ポップと違い二人は漢との間にそこまでの感情が無かったから

 

「私にとっては過去のバーンはどうでも良いの、私は大魔王じゃ無い、今の……位を捨てて、何者でもなくなったバーンを救いたいから来た、それだけよ」

 

レミリアに再度告げられた目的に誰も喋らない

 

その言い様の無い空気が漂う中、ずっと黙したまま話を聞いていたアバンが口を開いた

 

「ポップ……」

 

静かに語り始めたアバンに皆は注目する

 

「貴方の気持ちはわかります、私とて今だ複雑な思いでいるのですから……」

 

「あのバーンが誰かを守る為に戦った……にわかには信じられない話です……」

 

「ですがレミリアさんの目が……想いが真実だと私に思わせるのです……」

 

レミリアに目をやるアバンは更に続ける

 

「確かに彼は私達と存亡を賭けて戦いました、そして倒したと思っていた彼は生きていた、力は抑えられていましたが……」

 

「それでも強大な力を持つなら私達の世界に戻り復讐する事だって出来た筈です、でも彼はそれをしなかった、そしてレミリアさん達と出会い……変わったのでしょう」

 

ポップ達に目を向ける

 

「彼のこの世界で行った事は許す事は出来ません、ですが今の彼は違う……大魔王は死に、バーンとして生き、バーンとして死のうとしている……話を聞く限りもうこの世界には現れないでしょう、ですから……」

 

アバンは少しの間を置いて告げた

 

 

 

「彼を……バーンを助けてあげませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

「……ん……」

 

縁側で霊夢は目を覚ました

 

「起きたか霊夢」

 

「バーン……」

 

傍に居るバーンを見ながら起き上がった霊夢は周囲を見回す、もう陽が沈む頃だった

 

「手荒な真似をした事を詫びよう……すまなかった霊夢」

 

謝罪に周囲を見回していた霊夢はバーンに向き直す

 

「別に良いわ謝らなくて、博麗大結界に異常は無いから」

 

そう言うと立ち上がり

 

「時間はまだあるの?」

 

「少しならな」

 

バーンに聞いた後

 

「ちょっと待ってなさい」

 

台所へと向かった

 

 

 

「はいお茶」

 

湯呑みをバーンに渡すと隣に座る

 

「それで?」

 

霊夢は問う、理由を

 

「余は明日死ぬ、だから出来る限りの事をしておきたかったのだ」

 

「死ぬ……?あんたが?」

 

聞かされた死に霊夢は驚きはしたがバーンの諦めた瞳に追求を止めて聞きたかった事を聞いた

 

「結界で何をしていたの?……悪意が無いのはわかってるけど一応ね」

 

「少しばかり細工をな、何、心配するな、結界に悪影響を与える類いでは無い」

 

「わかってるわよ、そうでなきゃ許す訳ないじゃない、本来ならあんた死刑よ?」

 

霊夢の言う通り博麗大結界に干渉する事は重罪にあたる、何故なら博麗大結界は幻想郷の要だからだ、だから定められた者以外は余程の事がない限り入る事すら許されない、破れば死罪、良くて幻想郷外へ追放

 

それ程大事な物なのだ、なのに霊夢が怒らないのは相手がバーンだったから

 

「あんただから許すのよ?あんたなら私は許す、他は知らないけどね……建前上は止めさせてもらったけどあんたを止めれる訳ないし」

 

霊夢はバーンなら大丈夫だと思っていた、明確な理由がある訳ではないが霊夢の心が大丈夫だと感じていたから怒らないし許した

 

「それで何の細工をしたの?」

 

「これから先の幻想郷の為……とだけ言っておこう」

 

「何よそれ……」

 

ぼかす言い方に不貞腐れてお茶を啜る

 

「願わくばそんな事態にならない事を祈っている、何度持つかわからんからな……」

 

同じくお茶を飲む

 

「霊夢……これをやろう」

 

懐から取り出した小さい棒状の者を渡す

 

「髪留め?……なんか邪気が凄いけど……」

 

渡された髪留めを渋く睨む

 

「それには一種の呪いが込められている、着ければお前の霊力と身体能力に負荷を掛ける呪いがな、それを着けて生活すればお前の力は自然と高まる」

 

「要らないわよこんな物……私は修行なんてかったるいからしないのよ」

 

髪留めを返そう差し出した霊夢をバーンは睨みつけた

 

「自惚れるなよ霊夢……」

 

その怒りを含む言葉に霊夢は圧倒されてたじろいでしまった

 

「それでもお前は幻想郷を守る博麗の巫女か!持ち前のセンスに頼るのもいい加減にしろ!」

 

「自惚れてなんかないわ!私は修行なんてしなくても大丈夫なのよ!」

 

バーンの怒声に気の強い霊夢も返す

 

「それが自惚れていると言うのだ!!」

 

更なる怒声が霊夢を黙らせた

 

「お前がムンドゥスとの戦いで死にかけたのは何故だ!?力が足らなかったからだろうが!」

 

「ッ!?」

 

バーンの指摘に顔をしかめた霊夢は精一杯の反論を返した

 

「……それを言うならあんたもでしょうが」

 

「そうだ、余も含めあの場の者は力が足らなかった……だがあやつらは強く有る為に研鑽を怠らなかった!お前と違って!」

 

反論はバーンに即座に一蹴される

 

「研鑽の結果の敗北ならまだ許せよう……だが元からあった力に胡座を掻いているお前に余等を非難する資格は無い!」

 

「……」

 

霊夢はこれ以上の反論が出せなかった

 

強くなろうとしている仲間に比べて自分は元から持っていた強い力の為に修行をしてこなかった、今までの異変はそれで充分事足りたからだ

 

だがバーンの言う通り今回の異変は違った、自分の力など全く通じず死にかけた

 

「そうね、あんたの……言う通りよ」

 

それでも霊夢が修行をしようとしなかったのはバーンの存在だった

 

自分が頑張らなくてもバーンが居れば大丈夫、そんな他人任せな考えが霊夢に修行をするという行為を行わせなかった

 

「自覚が足りなかったわ……博麗の巫女としての自覚が……あんたの死を聞いても私が強くなって代わりに守ろうって気持ちが湧かなかった、甘えてたのね……自分の力に……あんたに……」

 

自分が如何に甘く、自惚れていたかを悟る

 

「ありがとバーン……お陰で目が覚めたわ」

 

礼を言うと手に持つ髪留めを着けた

 

「……うっ!?……ッウ!?」

 

呪いが発動し顔を歪める

 

「……これで良い?」

 

苦しみながらも微笑んで見せた

 

「もうお前に心配は無い、これからの幻想郷は任せたぞ霊夢」

 

「任せときなさい!」

 

バーンの微笑みに力強く返した

 

 

「そろそろ時間だ……さらばだ霊夢」

 

「時間って……何の?」

 

死は明日、まだ猶予があるのに時間と言うバーンが霊夢にはわからなかった

 

「約束があるのだ……」

 

沈む間際の太陽を眺めながらバーンは言った、無表情だが嬉しさが滲んでいるのを霊夢は感じる

 

「そう……楽しんで来なさい」

 

霊夢は何故かすぐにわかった、約束とは7人の友の事だと、最後を共に過ごすのだと直感し、精一杯の笑顔と言葉で見送る事にした

 

飛んでいくバーンを見ながら霊夢は博麗の巫女として幻想郷を守るのだと心に誓った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カール王国

 

バーンを助ける

 

アバンから告げられた言葉に場はざわめいていた

 

「ですが先生……!」

 

マァムは意見しようとするが口ごもる、彼女もまた葛藤していた

 

「わ、私は反対です!あれだけ人間を殺したバーンを異世界を救ったからと言って私は許す事は出来ません」

 

メルルは反対だった

 

「これで賛成が1、反対が1、保留が1ですね、ポップはどうですか?」

 

「……」

 

ポップは悩んでいた、ダイを汲むのかバーンを汲んでやるのかそれともいっそ知らない顔をするのかを

 

「ポップ……貴方はもう答えを出しているんじゃないですか?」

 

そんなポップにアバンは告げる

 

「……」

 

黙るポップにアバンは心を読んだように話しだした

 

「貴方の選択肢にバーンを助けるとあった時点で答えは決まっていた、そうでしょう?貴方はバーンに……」

 

 

「ハドラーと同じ思いを持ってしまったから……」

 

 

ハドラーへポップが持っていた思い、それは仲間意識

 

ハドラーが誇りを賭け、仲間と協力し、努力して、正々堂々と戦う為に必死に頑張りぬいて……

 

その姿にポップはハドラーを自分達と同じだと感じ他人とは思えなくなった

 

今のバーンに対する感情はハドラーへ向けた物と同じなんだとアバンは言ったのだ

 

「……やっぱ先生には敵わねぇな」

 

ポップは苦笑した

 

「そうだよ先生……先生の言う通りおれはバーンにハドラーと同じ思いを持っちまってる……二人には悪いけどさ」

 

マァムとメルルに謝るとポップは二人に告げた

 

「おれはバーンを助けたい、でもこれはおれの勝手な行動だ、だから二人が嫌なら止めてくれて構わない!」

 

ポップの宣言を受けた二人は驚き、複雑な顔をしながらも答えた

 

「好きにしなさいよ、私だって迷ったけど今のバーンなら助けてあげたいし……」

 

「ポップさんがそう言うなら……」

 

二人の了承にポップは笑うとレミリアに向いた

 

「これが答えだ、助けてやるよバーンをさ」

 

レミリアに誇らしげに語るポップ、だがレミリアの表情は変わらない

 

「茶番が終わったのは良いけど、助ける方法は?まさか助けたいだけなんてオチはないでしょうね?」

 

「……やっぱ口が悪いなこの吸血鬼のお嬢ちゃんは……まぁいい!アバン先生なら……」

 

ポップが口にしようとした瞬間だった

 

 

ブゥン

 

 

レミリアの回りをスキマが覆う

 

「なんだ!?」

 

身構える4人だがレミリアだけは悟った顔をしていた

 

「時間切れね……」

 

レミリアはすぐにわかった、これは紫の仕掛け、時間が来ればスキマがレミリアを強制的に送り返す仕掛けなのだと

 

「待ちなさい!!」

 

すぐに悟ったアバンが叫び、懐から金色の羽を取り出し投げた

 

「じゃあね……バーンの事は任せて……」

 

ブゥン……

 

スキマが閉じきりレミリアはこの世界から消えた

 

(間に合わなかったか……)

 

アバンは悔しくレミリアの居た場所を睨み付ける

 

レミリアの居た場所には黄金の羽が静かに床に刺さっていた

 

「先生!」

 

ポップが詰め寄る

 

「……帰ってしまったのでしょう、彼女の世界、幻想郷に……」

 

呟きながら床に刺さる羽に歩む

 

「この破邪の秘法を……救う手段を知らずに……」

 

レミリアの消えた後を眺める4人はもう自分達ではバーンを救う事が出来ないのだと

 

レミリアに任せるしかないのだと

 

顔を伏せるしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷・無縁塚

 

「……」

 

そこに立ち尽くすのはレミリア、戻って来た、夜を迎えた幻想郷に

 

(あの人間……ポップは何か手が有る様な事を言いかけた……そしてアバンは何かを渡そうとしていた……)

 

ポップの最後の言葉とアバンの行動を思い出す、それに何かを感じていれば運命は変わったかもしれない

 

(……無理ね、少々の事で死の呪いは解けない……あいつ等が破邪の秘法でも持ってない限りは……)

 

しかしレミリアは感じなかった、その訳はレミリアの持つ誇りのせい、人間を下に見る彼女は人間では役に立たないと思ってしまったのだ

 

 

それは運命の悪戯

 

 

バーンを救える者はレミリアの前に確かに居た

 

しかしそれを手に出来なかった

 

運命を変えようとしたレミリアを嘲笑うかの様な

 

 

悲しき運命の擦れ違い……

 

 

「ふぅ……」

 

息を吐いたレミリアは宙に浮かぶ

 

(もう残されたのはこれしか……)

 

約束の場所に向かうレミリアはある手段を行う事を決める

 

(貴方が命を賭して私達を守ったのなら……次は私の番……)

 

確固たる決意を内に秘めレミリアは向かう

 

 

 

バーンとの時間を最後にしない為に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編です、もう少しですね……

ダイのキャラ達の口調はうろ覚えなので間違ってたらすいません、東方キャラにも言える事ですが……

突然ですが余談です、私がバーン様の台詞の中で一番好きなのは「これが……余のメラゾーマだ……」からカイザーフェニックスまでの一連の台詞です、カイザーフェニックスが好きなのも相まりよく本編で清く正しいブン屋が焼かれかけるのはそのせいです。
皆様はバーン様の好きな台詞は何ですか?


次回はバーン最終章レミリア編の終わりになります、頑張ります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。