はぐれ者の先生補佐日記 作:誇り高いはぐれ者
「…い、」
「先生、起きてください。」
………?
何処だ、ここ
陸王、竜儀、禽次郎、角乃、熊手…どこだ?
指輪も…ウルフとレッドのしかねえ。常夏やファイヤキャンドルから手に入れた指輪も、オルカブースターもねえ。
「…一体、どうなってやがる?」
"………君は?"
「…あ?」
5
キュイーン!
50
スーパー戦隊
「…少々待っていてくださいと言いましたのに、お二人ともお疲れだったようですね。中々起きないほど熟睡されるとは。」
「…誰だ、テメェら?つーかここ何処だよ!」
"えっ、と……"
待っていてください?まるで俺が最初からここに居たみたいな言い方だな、と俺が思ったのも束の間、目の前の黒い髪の奴が話し続ける。
「……夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください。もう一度、改めて今の状況をお伝えします。」
「私は七神リン、学園都市キヴォトスの連邦生徒会所属の幹部です。」
「……キヴォトス?連邦生徒会?聞いたことねえぞ」
説明されてんのに、余計話がわからねえ……学園都市なんて場所も、連邦生徒会なんて組織も聞いたことがねえし、なまじ俺がテレビやスマホがねえから知らないだけだとしてもこんなデカい場所、一度はアイツらが話題に挙げるはずだし、そもそも知ってたとしてもここにいる理由にはならねえ。
「そしてあなた方は恐らく、私たちがここに呼び出した先生とその補佐…のようですが」
「あ?その言い方じゃ、まるで……」
"私たちがここに来た理由や経緯を、君も知らないみたいだね"
「……ええ、推測形でお話したのは、私も先生方がここに来た経緯を詳しく知らないからです。」
詳しく知らねえ?どういうことだ、と言おうとしたが、目の前の…リンだったか、はそれを察した様子で話し始める。
「混乱されてますよね。わかります。こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきてください。どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります。」
"やらなくては、いけないこと?"
「学園都市の命運をかけた大事なこと…ということにしておきましょう。」
横の…名前がわからねえから大人、としておくが…大人はこの状況でも落ち着いてんのか落ち着いてねえのかよくわからねえ……なんなんだ、こいつ?
"ついて行こうか。えっと…"
「遠野吠だ。お前は?」
"あー…「先生」でいいよ。吠くん。"
「…?」
名前を言えねえのか俺を信頼してねえのか知らないが、そう曖昧に返される。…にしても、その呼び方は
「なんだ、これ…!?」
そこにあったのは、東京の中心、いやそれよりもでけえかもしれない大都市だった。
"これが学園都市…"
「キヴォトスへようこそ、先生方。キヴォトスは、数千の学園が集まって出来ている巨大な学園都市です。これから先生方が働くところでもあります。」
「そういや、俺これから先生になんのか…やれんのか、俺に?」
「大丈夫です、遠野吠先生はあくまで補佐なので…」
「……そうか」
補佐だからって、俺みたいなやつが先生をやれんのか…?
「きっと、先生方がいらっしゃった所とは色々なことが違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……でも先生方なら、それほど心配しなくてもいいでしょう。あの連邦生徒会長が、お選びになった方々ですからね。」
……そいつ、そんなに信用されてんならそいつに頼れば良いんじゃねえか?と言おうとしたら、どうやら目的の階に着いたらしい。
(ざわざわ……)
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
来て早々聞こえたのは、そんな叫び声だった。菫色の髪に、アレは…ツーサイドアップって言うんだったか?そんな髪型の女子生徒なんだろうが……今更だが、コイツらどいつもこいつも頭の上に輪っかがねえか?この世界の生徒ってのは皆天使か何かなのか?
「…うん?隣の大人の方々は?」
「主席行政官、お待ちしておりました。」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について、納得のいく回答を要求されています。」
「あぁ…面倒な人達に捕まってしまいましたね。」
どんどん登場人物が増えていく…
「コイツらが…生徒ってことでいいんだよな。」
"まあ、そうだろうね。"
「……こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。こんな暇そ…大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています。今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うために…でしょう?」
「そこまで分かってるならなんとかしなさいよ!?連邦生徒なんでしょ!?」
さっきの菫色の髪の奴が叫ぶ。元から声がデカいのか、今が緊急事態なだけなのか…
「数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました。」
「スケバンのような不良達が、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
"これは………"
……治安、悪すぎだろ
何だよ、戦車やヘリが2000%増加って
「こんな状況で、連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
「………はぁ。」
ため息ついたな、今……というか、アイツ多分今内裏とは言えトップみたいな立場なんだよな?あんな態度で良いのか?………俺も人のことは言えねえか。
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました。」
「…え!?」
「…!!」
「やはりあの噂は…」
「結論から言いますと、サンクトゥムタワーの最終管理者が居なくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探していましたが…先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」
「……あ?先ほどまで?」
「それでは、今は方法があるということですか、主席行政官?」
「はい。この先生方こそが、フィクサーになってくれるはずです。」
「…あ!?」
「!?」
「!」
「この方が?」
"………私が?"
いや、補佐の俺が知らねえのも不味いけど、なんで先生のお前も知らねえんだよ…
「ちょっと待って、そういえばこの先生方は一体どなた?どうしてここにいるの?」
「キヴォトスではないところから来た方々のようですが…先生だったのですね。」
「はい。こちらの先生と、その補佐遠野吠先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名…?ますますこんがらがってきたじゃないの…」
俺だって聞きてぇよ、こんなの…
そんな時、横の先生が挨拶をする。
"始めまして。先生だよ。名前は…まあ、とにかく先生って呼んでね。"
「…遠野吠だ。」
とりあえず俺もそれに続いたが、相変わらず愛想が悪ぃからあんまり良い印象は持たれてないだろうな…
竜儀が「もっと愛想を良くしろ」と言ってるのが聞こえてくるみてぇだ……直せたら苦労しねぇんだよ。
「こ、こんにちは先生。私はミレニアムサイエンススクールの…い、いや挨拶なんて今はどうでもよくて…!」
「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと…」
「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください、先生方!」
"よろしくね。"
「おう。」
その後もなんか話してたが、俺にはあまりよくわからねぇ。シャーレっつーデカい権限を持ってる組織、ってのはわかったが…とりあえずそこに行くことになったらしい。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど…」
「シャーレの部室?あぁ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?」
「大騒ぎ…?」
「矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。」
「うん?」
どんどんリンの顔が険しくなっていってる気がするんだが……
「連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良達を先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?それで、連邦生徒会保有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに大事なものでもあるみたいな動きだけど?」
「……」
「まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、特に大したことな…あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーがきたから、また連絡するね!」
……この状況でデリバリー優先すんのかよ。リンがめっちゃプルプルしてんぞ…
"……大丈夫?深呼吸でもする?"
「……だ、大丈夫です。少々問題が発生しましたが、大したことではありません。」
なんかアイツらの方見てねえか?…まさか………
「な、何?どうして私たちを見つめてるの?」
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので私は心強いです」
「おい、まさか」
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう。」
と、言うわけでその辺に居た生徒4人を巻き込んで外に出たんだが………
「な、何これ!?」
「なんで私たちが不良と戦わなきゃいけないの!?」
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから…」
「それは聞いたけど…!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が…!」
そんな事を話してると、ユウカだったか?に銃弾が当たる。普通だったら致命傷なんだが……
「い、痛っ!?痛いってば!アイツら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」
「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されてはいません。」
「……お前ら、なんでそんなさも当然みてぇに銃弾当たって平気なんだよ…」
「平気じゃないわよ!痛いわよ!!それにうちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!?」
なんで銃弾当たって傷跡だけなんだとか、この世界さも当然のように銃持ってんなとか、言いてぇ事は色々あるけどよ…
治安が悪すぎるだろ……
「今は先生方が一緒なので、その点に気をつけましょう。先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です。」
「ハスミさんの言う通りです。先生方はキヴォトスではないところから来た方々ですので…私たちとは違って、弾丸1つでも命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を!」
「わかってるわ。先生方は戦場に出ないでください!私たちが戦ってる間は、この安全な場所に居てくださいね。」
"私が指揮する。任せて。"
「あ?先生、そんな事できんのかよ。」
「ええ!?戦術指揮をされるんですか!?まあ…先生ですし……」
そのまま、先生の指揮に従う流れになったが…本当に大丈夫なのか?
………にしても
「俺だけ何も出来ねえのは、嫌だな」
"……吠くん!?"
「吠先生!?何を…!?」
生徒相手で、しかも生身の相手だ。これを使うべきじゃねぇのかもしれないが…
それでも、年下の生徒に守られてばっかじゃ、先生じゃねぇだろ。そう思って、俺は右手に付けている何かの顔の指輪を外し、金の手甲のような武器……「テガソード」を取り出す。
「エンゲージ!」
『クラップユアハンズ!』
まず顔の横で2回クラップ、その後反対側で1回クラップ、目の前で円を描いて2回クラップ、その後頭上にも円を描いて1回クラップ……もはや完全に慣れきった動作を行い、俺は姿を変える。
『ウォー!オッオッオー!オー!ウォー!オッオッオー!オー!』
『ゴジュウウルフ!!』
「アオォォォォォォォォン!!」
「……ええ!?………ええ!?」
「なんですか、アレ…!?」
「何かのスーツ、のようですが…」
「というか、無茶です!姿が変わった程度で…!」
「な、なんか変だがやれ!ヘイローもないんじゃ…!」
そう言って撃たれた銃弾は、俺の体に当たって弾かれる。痛くねぇわけじゃねえから、右手のテガソードの刃でいくらか弾く。
"…!いや、でも、これなら…!ユウカ!吠くんと一緒に前に出て誘導を!他の二人は…!"
先生の指示が聞こえてくる。俺はどうやら前に出てりゃ良いらしい。
「…それなら、楽だッ!」
『フィニッシュフィンガー!ウルフ!』
「ライジングレッドウルフ!」
スズミだったか、の閃光弾で周りが動けなくなった隙に、体をエフェクトへと変えた俺は不良達の銃のみを斬り裂いていく。流石にその辺で手加減する分別はある。銃を壊されて唖然としてる奴らは、ハスミだったかが狙撃して気絶させていく。そうすると、あっという間に戦闘は終わった。
「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします…」
「……やっぱり、そうよね?」
「先生の指示のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです。」
「なるほど…これが先生の力………」
「じゃなくて!!」
「っ、んだよ急に大声出して。」
陸王だったらこの至近距離じゃ大ダメージ食らってただろうな…
「吠先生、なんですかあの…アレは!?姿が変わったかと思ったら、銃弾に耐性が出来るし、なんだか凄く素早く動くし…!」
「その点に関しては、私からも。先生は本来銃弾に当たれば致命傷のはずですが、傷などは…?」
「ついてねぇよ。ほら。」
そう言って俺は銃弾が当たった場所を袖をまくって見せる。大抵が腕とかその辺だったし、エンゲージしてりゃなんとかなるらしい。
"私からも説明が欲しいな。なんだか…スーパー戦隊、のようだったけど"
「スーパー…」
「戦隊…?」
「ああ。アレはゴジュウウルフつって、俺がエンゲージした姿だ。…このテガソードと、センタイリングを使って俺はあの姿に変身できんだよ。」
「…待ってください、色々と理解が追いつきません!!なんですかスーパー戦隊って、なんですかそのテガソードって!!」
「…つまり…アレはテガソードを使用することによって装着される特殊なスーツのようなもの、という解釈で大丈夫でしょうか?」
「まあ、そんなもんだ。」
「いやいやいや!スーツがあのテガソード?に格納されていたとしても、一瞬で装着される理由だとか、あのエフェクトみたいなのだとか、色々と…!」
"でもカッコいいから良いんじゃないかな"
その一言で、とりあえず俺の姿は流されることになった。…ユウカは納得いってなさそうだが。
そんな訳で、先に進んでいったんだが…
「もうシャーレの部室は目の前よ!」
『今、この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました。』
そう言って、リンから通信が来る。俺にも通信機器が配られたけど、これ便利だな。元の世界に帰ってからも使えんのか?
『ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になったあと、矯正局を脱出した生徒です。似たような前科がいくつもある危険人物です、気を付けてください。…特に吠先生は、いくら戦えるからと言っても無茶はしないように。』
「…わかった。」
実際俺は、変身前を狙われればそこで終わりだ。それは気をつけねえといけねえ。とりあえずエンゲージはしておくか…と、そうして進んでいたら、狐の面を被った和風な生徒に遭遇した。…アイツが、件のワカモって奴らしい。
「騒動の中心人物を発見!対処します!」
「フフ、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛らしいこと。」
「俺が犬!?違ぇなぁ!俺はオオカミだ!!」
そう言ってテガソードで銃へ向けて斬りかかるが、一歩後方にステップして避けられる。銃を撃たれる前にと、姿勢を低くしてまた斬りかかり、体勢を崩したところを…!
『フィニッシュフィンガー!ウルフ!』
「なッ…!?」
「ッラァ!!」
連続コンボ……と言っても、ノーワンに向けるものと違ってだいぶ手を抜いているそれで、ワカモを大きく吹っ飛ばす。…なんか違和感があるな。多分アイツ、相当強いはずだ。じゃねぇと矯正局…つまりは刑務所だろ?そんなところの脱走をして、その上こんな騒ぎを起こすなんて無理だ。つまり…
「ッ……!私はここまで、後は任せます。」
「……アイツ、手を抜いてたか。」
まあ、正直こっちも全力を出す気はねえし、そもそも出せねえ。手加減を間違って大怪我させちまうかもしれねえし、これくらいが丁度いいか。
「逃げられてるじゃない!?追うわよ!!」
「いいえ、生半可な行動をしてはなりません。私たちの目標はあくまでも、シャーレの奪還。このままシャーレのビルまで前進するべきです。」
「…うん、まあいいわ。アイツを追うのは私たちの役目じゃないってことね。」
「罠かもしれませんし。」
「はい。建物の奪還を優先で。このまま引き続き、進むとしましょう。」
"吠くん、大丈夫?"
「ああ、今ん所問題はねえ。それよりユウカがここまででかなり攻撃を食らってた気がするんだが…」
「え、私!?いや私は…」
"そっか。チナツ、治療をお願い。"
「わかりました。」
「……まあ、そういうことなら…って、建物の入口まで到着!」
チナツがユウカの回復をして、準備万端といったところで到着か。これならもう問題ないと、テガソードから指輪を外そうとした時……
「うん?この音は…」
「気をつけてください、巡航戦車です…!」
「…は!?」
おい待て、戦車まであんのかよ…!
「クルセイダー1型…!私の学園の制式戦車と同じ型です。」
「不法に流通されたものに違いないわ!PMCに流れたのを不良たちが買い入れたのかも!」
「……つまり、ガラクタって事だな!?」
「ええ、そういうこと!行くわよ!」
"ハスミは狙撃、スズミは閃光弾を!吠くんとユウカはタイミングをずらしてから突撃!"
「はい!閃光弾、投擲!」
"……今だ!"
「行くわよ!!」
「行くぜ!!」
…で、攻撃していくが…思ったよりも硬ぇな。それなら…
『ウルフデカリバー50!』
「今度は何!?どこから取り出したのそれ!?」
「オラァ!」
真っ赤な指輪、テガソードレッドの指輪を装填して、胸のリングから片刃剣、ウルフデカリバーを取り出す。ウルフデカリバーで何もないところを切り裂き…
「ねえ何アレ!何なの!?」
"いわゆる空間の穴的なやつじゃない?"
「ただの剣でそんなものを空けられている事に疑問を持って欲しいのだけれど!?」
「よう、邪魔するぜ。」
「はっ!?」
「コイツ何処から!?」
ウルフデカリバーで空けた穴で、戦車の内部に入ってやった。後は気絶させてやれば良い。
「っしゃあ!終わったぜ!」
「……まさか、今ので戦車に入ったの…?」
「なんというか、規格外な方ですね…」
とりあえず、建物の奪還は終わった。俺は…とりあえず外で見張りをすることになった。…まあ、その後特に何も起きなかったんだが。
※ワカモは別の出入口から逃げました
"吠くん。終わったから、入ってきて。"
「わかった。」
先生からの通信を聞いて、俺もシャーレの建物内に入る。そこに広がっていたのは…
「…吠先生も来ましたか。」
「…すげえ」
「ここがシャーレの部室です。ここで、先生方のお仕事を始めると良いでしょう。」
"私たちはこれから何をすれば?"
「シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない…という強制力は存在しません。キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを自由に部員として加入させることも可能です…」
「…マジですげえ組織なんだな、シャーレって…俺に務まるのか…?」
"大丈夫。2人で上手くやっていこうね。"
「面白いですよね。捜査部とは呼んでいましたが、その部分に関しては連邦生徒会長も特に触れていませんでした。つまり、何でも先生がやりたいことをやって良い…ということですね。……本人に聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま。我々は連邦生徒会長の捜索に全力を尽くしていますので、キヴォトスのあちこちで起こっている問題に対応できるほどの余力がありません。」
「連邦生徒会長ってのは、凄いやつなんだよな?こんな治安の世界纏めてたんだからよ。そんな奴が急に失踪って、一体何があったんだよ…」
「寄せられてくるありとあらゆる苦情、支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請……挙げていってはキリがありませんが…もしかしたら、時間が有り余っているシャーレなら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね。」
「相変わらず治安悪ぃなここ」
……待てよ、それ、つまり俺ら雑用なんじゃ…まあいいか
「それではごゆっくり。必要な時には、またご連絡いたします。」
「じゃあ、アイツらにも挨拶しとくか」
そう言って、俺たちは外へと出る。外には、4人がこちらを待って近くに立っていた。コイツらにも世話になったな…
「ええ。サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ。」
「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど…すぐ捕まるでしょう。私たちはここまで。後は、担当者に任せます。」
「お疲れ様でした、先生方。先生方の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?…特に吠先生は」
"皆お疲れ様。"
「これでお別れですが、近い内に是非、トリニティ総合学園に立ち寄ってください、先生。」
「(ぺこり)」
「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください。」
「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?先生、ではまた!」
"オフィスに戻ろうか。"
「ああ。」
そうして、俺たちはオフィスに戻る。壁のガラス越しに辺りを見渡すと、先ほども見た大きな街の景色が広がっていた。
「……これから、ここで過ごすのか」
また、はぐれものに戻っちまったのか…
…いや、もしかしたらこの世界にも、アイツらが来てるかもしれねえ。
そんな淡い期待を持って、俺はこの世界で先生として過ごすことになった。
多分続きません。