ロキシー=ペリパトスは冒険者を勧めない 作:Tamariba sizuku
「当初の目的の場所に来るまで、随分と時間が掛かってしまいましたね......。」
「女史様のおせっかいが働いたからなのは間違いがないでしょう。」
「それに反対をしなかったのはどこのどなたですかね?」
「......お戯れを。」
そんな他愛ない会話をしながら私たち二人はようやっと冒険者ギルドにたどり着くことが出来た。魔物たちの掃討を終わらせた後、それらを放った男の行方はどうしようかという話になったがもう一人のお転婆な同行者が何とかしてくれる、という風に言っていたのに従い、一度ここに立ち寄って合流を図ろうという算段だ。最初に抑えた男たちが暴れていないかも心配だったし、アスターは襲われていた少年のその後が気になっているようであった。すべての結果を正確に知るのであれば、ここで待っているのが一番の得策だろう。
「......失礼します。」
久々に訪れる冒険者ギルドは少し雰囲気があったり物々しさのようなものを感じて尻込みをしてしまった。扉に手をかけるまでにも少々時間が掛かったが、そこはアスターが後押ししてくれた。別にギルドマスターの部屋に入るわけでもなし、緊張しすぎている節はあるのかもしれない。
目の前に移る光景は実に自然なものであった。入口を開けて一番に見えるのは受付。いくつかの用途ごとにカウンターが用意されており、職員がそれぞれ応対を行っている。その他にも......受付の側ではなく、入口周辺の冒険者のたまり場である併設された酒場に目が留まる。クエストの休息がてら、同じ目的で訪れた同志たちと交流を交わす場。
「おいおい。こんな真昼間からこんなとこ来ていいのかよ~。」
「はは、思ったより受注してたヤツが早く終わってな。それでなんだが、その報酬関連でお前に耳寄りな話があるんだが......。」
お互いにクエストの良し悪しを茶化しあったり、お互いに情報を共有したり。......懐かしいものだ。冒険者として駆け回っていた時は日常のように感じていたものも、久々に触れてみると中々感慨深かったりする。少し感傷に浸って観察に勤しんでいたからだろうか。こちらに気が付いた冒険者に話しかけられる。
「おや、綺麗なお嬢さん。なんかこっちで話してる事で気になることでもあったか?」
「あ、えっと。」
少々たじたじになっていたところをすかさずアスターがフォローしてくれる。
「じょ......スピカ様は少々世間知らずなところがありまして。不快に思われていたら申し訳ありません。」
「ん、お付きの星の子かい。そりゃ少し意地悪なことをしたかもしれないな。」
「......えっと、ごめんなさい。」
頭を下げて謝罪の言葉を述べる。はしたない行動をしてしまったことを反省すると同時に、肩に乗るアスターをつつく。
「何故女医と同じような扱いをしたのですか。」
「それは、この場ではそれが一番適切かと思いまして。......後は、その場のノリでしょうか。」
「もう!」
懲りない小動物にデコピンを食らわせるが多少身じろぎをするばかりで動揺しているようには見えない。全く、よく出来た召使いだこと。
「ははは、仲がいいんだな。残念だが、俺が目的じゃないことは確かみたいだ。他に目的があるのか?」
冒険者に指摘されたことでようやく、本来の目的を思い出す。脱線が過ぎた。
「はっ......そうでした。ありがとうございます。」
「いいってことよ。それじゃ俺はこの辺で。」
「ええ、ありがとうございました。」
「それじゃあな。」
そのように言葉を交わした後、彼はお酒の席に戻っていった。
「良識のある方でよかったですね。これで女史様が不埒な輩に絡まれたらと思うと、肝が冷えます。」
「それは、そうですね......。あの方が優しくて良か......。」
そのように胸を撫でおろそうとした直前だったろうか。
「いやー!あのお嬢さんべっぴんだったな!話せてラッキーだったぜ!」
「いいなぁ!お前だけずりぃぞ~?」
そんな声が聞こえてきたところで、一気に気分が冷める。
「......もう少し声のボリュームを下げればいいものを。」
「いいんです、アスター。昔もギルドではいつもこんな扱いを受けていたのを思い出しました。」
ここでようやく自然体になれたような気がする。