「豆腐屋。いつも通りに頼む」
「はいよ」
人里で豆腐を買っていると、たまに騒ぎに会うことがある。たまにだが。その殆どは巫女か慧音によって解決され、それ以外は当人同士の解決か野次の数で変わるようだ。今回の騒ぎは何かな。何かがあるのかな?…騒ぎの音が近づいてくる気がする。豆腐を受け取り足早に人里を出よう。流石のハンセイも豆腐を無碍にされるとあってはかなり暴れることになるし後悔することになる。ちなみに豆腐の対価は金で、竹を切って生活費…豆腐費を得ている。竹を担いで里に来て、出て行く時には豆腐を持っている珍妙な人の出来上がりだ。
「いつも通り、な。木綿と絹だ」
「助かる」
「常連さんだからな。これくらいはいいよ」
ありがたい言葉と共に後ろからドンと大きい衝撃が伝わった。足を無理矢理に地面に埋め、豆腐屋に被害が及ぶことを防ぐ。え、骨折れたような音聞こえたよね?…あ、もしかしてまずいかな、これ。後ろを向けば巫女。どうやら、巫女が里で暴れている馬鹿を酔い覚ましという名目で殴り飛ばしたようだ。強い。どうやら人里では巫女が酔っ払いを殴り飛ばすのは恒例らしい。人が集まっている。更にはみんな熱狂している馬鹿どもだ。帰ろ。
「大丈夫かハンセイ」
「無論だ。」
「しかし酔っ払いが暴れるごとにこれではな…里が保たない」
「慧音は大変だな」
「いや、これが仕事だから別にいいんだが…」
何がいいのかさっぱりわからん。何言ってんだこの人。いやそんな場合じゃない。帰るぞ。そのままの勢いで人里を出て、一息。誰かに見られてるのか疲れてないからなのか、家までハンセイのまま。なんなら豆腐を保存するまではハンセイのものだった。体が戻り、思った通り足が痛いのなんの。骨曲がってるんじゃないの、これ。ていにお願いして治しに行こうかな。いやでもあそこ変な奴しかいねえしな。無理だな、こりゃ。竹を添木にでもすればいつか治るだろ。なお両足が痛いので俺は動けない。
「我のせいと言いたいのかこいつ」
「誰がなんて言ってるんですか?」
「いや、なに…なんでここにいる?」
「さあ、なんででしょう?」
「…出ていけ」
なんかね、わかんない。優曇華がいた。どうやら俺に対して結界のことを口外するなと言いに来たようだ。結界を直す事にしたため、口外したその瞬間永琳先生の矢が飛んでくると思えということらしい。盗聴器でも仕掛けられてるんじゃないのか。ハンセイが確認してくれたが、なかった。よかった安心だ。そう思ったのだが、どうもそういう意味ではないらしく。この場がバレたら矢で射殺すぞと言いたいのだとか。ハンセイなら確殺、俺なら確殺ってところか。
「…それは不味い」
「はい。ですから口外はダメですからね。それでは!」
「承知した」
そう言って優曇華は消えて行った。入れ替わりで誰が来ることもなく。春が来たんだから誰も彼もが自分の仕事に精を出しているので、まあ当然ここに来るわけはない。というか今優曇華いたんだから永琳先生呼べばよかったじゃん。あー、これもしかしなくても失敗したよな。クソ。ハンセイなら豆腐食ったら治ったりしないか?買い溜めしてるやつあったろ。多分衛生的にヤバいやつ。あれ、食っていいよな。でも俺の体で食っても意味ないのか?ハンセイなら治るのか?わからん。
「で、困ったわけか」
「出来ないこともないが、何せここ最近は人の出入りが少ない。我が出来てもだな」
「まあ、言っても私だってまともな人間じゃないからな」
「道理だ」
「お前今なんつった?…まあ良いか。私の場合、折れた骨ごと潰せば治るんだよ。見てろよ?っ…ほら」
「気狂いだな。治るからと言って平気で潰す奴は気狂いだ」
「酷い言い草だ…」
「…先日の通り魔を覚えているか」
「ん?あぁ、ハンセイの連れ込み○○○○○だな?」
「違う。その通り魔が何故かここに向かってきている」
「…なんでわかるんだ、それ」
「我がここに来た理由だからだ」
「ああ、だから竹の切れる音が聞こえるわけか。お前ふざけんなよ」
まあ、うん。竹が切れる音っていうか、切った後で倒れたりする音だと思うんだけど。ハンセイ、頼むから安静にしてくれ。俺が戻った途端にもがき苦しむ事になる。頼むから。こう、な?ほら。頼むから。俺はお前が生き延びることは信じてるけど、あの子が気絶した場合またなんて言われるかわからないから。怒られちゃうよ、よくわからない奴らに。だからさぁ…なんでまた会いに行って木刀持っちゃうのかなぁ…。お前もお前で気狂いだぞ。てかこれ木刀じゃない。仕込み刀じゃん。木刀の仕込み刀?馬鹿?
「では…いざ!」
「やれやれー!」
「ふんっ」
「その太刀筋は、もう見てます!」
大きな空振り。その横から木刀で横腹を思いきり叩かれぶっ飛ぶ。悲しいほどに飛び、そのまま竹林を爆走。妹紅が駆けつけ安否の確認をしてきたが、お前素直に審判やってんじゃねえよ。ハンセイ、頼むから安静にして?もう身体中痛いだろ?傷だらけだろ?ほら、通り魔がまた来たぞ。信じろ、竹の添木を。お前ならその足で逃げられる。俺はそう信じてるから。おい待て何してる。何両手で持ってんの?…待った。通り魔に向けて何するつもりだ?つーか通り魔が持ってるの真剣じゃない!?
「ぬんっ」
「お、鞘飛ばしか」
「あだっ」
「添木で叩くのも風情がある。そう思わないか、妹紅」
「何事もなかったかのように叩くな。しかも竹バラバラになってるだろうが。お前宮本武蔵か?」
宮本武蔵は竹を一振りで壊したらしい。
化け物。