「鬼?」
「そう。鬼」
「…だからなんだ?」
「鬼が宴会を開いてたってだけだ。私たちには関係ない」
「え?お前らも宴会してたじゃん」
…なんだこいつ。ツノ生えて、子供。瓢箪片手にぶらり…いや、ゆらりゆらゆら。酔っ払いか?子供なのに?ほらハンセイ、注意してあげなきゃ。何無視してんだよ。子供が酒飲んでるんだぞ。ほら妹紅も。…いやそもそも子供が竹林にいることを叱らなきゃダメか。瓢箪の中身も拝見しろ。ちゃんとやれ。ていうか完全にこの子を無視してないか?二人とも大人気ない。あれか?酒飲んでる若者が怖いのか?全く、大人としての威厳が皆無だな。ツノもどうせ飾りだろ?…そういや翼生えてるやつがいたな、幻想郷って。
「おーい!」
「後は…これ、小遣いな」
「何故?」
「んー…欲?」
「は?」
「ま、あれだ。家燃やしかけたことへの謝礼もある。受け取ってくれ」
「…?」
「おーい?見えてる?見えてるよなー?」
そろそろ邪魔になってきたよな、この子。しかしこんなでかいツノが生えてる人外…となると、鬼?あれか?さっき話してた鬼とか?ハンセイ、やっぱ注意しなくて良いぞ。こいつただの飲んだくれだ。無視しろ。そのうちどっか行く。婆ちゃんも人外の類には反応するなと言ってた。ん?そうなると美鈴とか慧音もだな。でも大体、人間も人外もあんま違いがないんだよな。誰も妖怪が美人とか話してくれなかったぞ。いや獣もいたにはいたけど。美人は言えよ。俺だって美人見たいよ。
「…妹紅、この鬼はなんだ?」
「あ、ちゃんと鬼なんだ。でも私知らない」
「はんっ!私の名を聞けば泣く子も黙る!鬼の四天王が一人、伊吹萃香だ!」
「…竹林に住まう魑魅魍魎が一人、藤原妹紅」
「おい私を曲解して伝えるな」
「竹林に住まう、天上の神から天下の人まで。ハンセイ」
「ナルシストが!」
「付き合ってやったぞ、帰る」
「あー待てハンセイ。後二本タケノコ引っこ抜きたい」
「ぬぅ」
「え、あの、無視…?」
伊吹萃香はしょぼくれた。なんかもう嫌になったんだって。私もう死ぬ、もうマヂマリ…らしい。帰れ。そういうと何やら意気揚々と私にこんな屈辱、許さんぞ!と言ってどこかに行こうとしたところでリベンジ通り魔と衝突。…この二人何やってんだ?通り魔は竹で頭部直撃。伊吹萃香は無視と、かなり面倒な奴らの対応をしてたけのこを引っ張る。妹紅から見れば質の良し悪しがあるらしい。ハンセイも分かってはいるようだ。が、残念ながら俺にはわからない。
「…ダメだな」
「片手間!片手間で返り討ち!」
「あー可哀想に。よしよし」
「妹紅、余分に三本抜いたが良いか?」
「別に構わん。」
「…通り魔はいつまでここにいるんだ?」
「うぅ〜!」
「あ、どっか行っちゃったよ…どうすんのお前」
「どうするも何も、そもそも通り魔はダメだろう」
「確かに」
妹紅に連れられたけのこを売りに行く。しかしハンセイは結局豆腐しか買わず。そういえば、件の鬼にあてられたのかわからないが、十五夜に月を見ようと寺子屋に集まる宣言をされた。妹紅に。どうしてそんな活動ばかりするのか。ハンセイも同じ疑問を持っていたらしく、どうやら不参加の意見を告げている。しかし抵抗虚しく、そのまま参加が決定してしまった。可哀想なハンセイ、俺は参加しないが。しかし月見か。外の世界では一度もしたことがないな。月見るより目の前の現実見て絶望してた。
「凡そまともではない」
「…今私のことまともじゃないとかほざいたか?」
「誤解だ。」
「だろうな。ちなみに誤解じゃなかったら抱きついて燃やしてた」
「…流石の我でも死ぬか…」
「死ねよ?生物として」
そんなこんなて里を出る。出た際に巫女とすれ違った。酔っ払いでも暴れてたかな?それともただの買い出しか?わからないな。大体巫女ならもうちつと立地がまともなところに建てろよ。なんで里から遠いのさ。可哀想だろ?…こう、女の子が一人で…そう、空飛んで弾幕張る女の子が…あれ、女の子…?ダメだ、これを女の子として認めると隣の妹紅はビームを撃つことになる。炎は出るけどビームは出ないだろ?…出ない、よな?出したところ見たことないだけかな?
「慧音は月見を了承しているのか?」
「してるよ。酒は持ち込むなって言われたけど」
「当然だ。あそこは寺子屋だろう」
「お堅い奴らめ…じゃあ餅を喉に詰まらせたらどうするんだよ?」
「酒は必要か?」
「ない!が、多分なんとかなる」
「今度妹紅が死ぬ時には酒を掛けてみるか」
「ごめんって」
家に着いて妹紅と分かれ、そのまま豆腐を保存室にぶち込み、寝床に転がる。こうなれば俺のもの。久しぶりに動く体を伸ばしつつ、さてどうしよう。久しぶりに肉に棒でも刺して焼いてみようか。豆腐は…良いかな。普通に食いたくない。最近では食いすぎて少し拒否反応が出る。じゃあそういうことで、やることが決まれば早く。別の保存室から肉を取り出して直火焼き。色がちょうど良く焼けてきたかなって色になったら食べる。うん、美味い。美味いんだけど、外の世界にある焼肉のタレが欲しい。
「いやー、良いね。肉は」
問題があるとすれば、それを共に食べて共に騒ぐ人がいないことだろうか。ハンセイがいる限りおそらくこの瞬間の虚無感は逃れようがない。よほどのことがない限りはハンセイも消えない。となれば、やはり俺は一人寂しく食べるしかないのだろう。肉も味気が無くなる。
「…ダメだ、寝よ」
地の文→ハンセイの意思疎通は可能、ハンセイ→地の文は存在しない