「…」
「連れて来たわよ、紫」
「なんで背負われてるの?」
「医療ミスですって。全身麻酔で抜け切ってないらしいわ」
「…ここに人外向けの司法はないのよ」
「…黙れ、若作り」
「羨ましいわ。今日限りで老化が止まるなんて」
「ここで暴れるつもり?」
ハンセイに変わった。ので俺はもう安泰だ。頑張れハンセイ、俺の命運はお前にかかってるんだぞ。目の前には前会ったことのある紫ワンピース女が。妖怪だったのか。まあ…確かに日傘出しながら空飛んでるやつが妖怪じゃないわけないか。え、じゃあ巫女さんも…?え、こわ…近づかないで…?体がハンセイだから遠ざかれない。俺はなんて不自由なんだ。さっさと帰らせろ。と、ぐちぐちやってると唐突にその全身紫女が自己紹介して来た。なんだお前、こわ。しかも淡々と説明続けないで。怖いよ。
「貴方、どこの神なの?」
「え、神なの?」
「人に憑依してるのよ。内側の人間がどうなってるかはわからないけど…分からなかったの?」
「分かるも分からないも、人間でしょ」
「まあ、元は人間だけど…」
「心外な。我は神ぞ」
「うわ立った」
心外だな。まあ良いけど。とにかくこの…妙に若いことを主張してくる、名前も見た目も紫の人こと八雲紫の話を聞いてみる。ふんふん、似たような神を知っているがそいつは健在、更にそいつに聞いて見たが何も知らない。だからこそお前誰だって聞かれている、とのこと。お前誰?…え、ハンセイって誰なの?俺が幻想郷に出て来たのは紅魔館らへんだったし…後でひさしぶりに訪れてみようぜハンセイ。俺がこっちに来た時にはもうすでにハンセイだったもんな。な?
「…気が向けば」
「何がよ。それで、結局貴方誰?どこの神なの?」
「さてな。我は神だが、何処の神かも知らん」
「嘘でしょ。大体、アンタみたいな神は面倒なのよ。さっさと答えて」
「…我もほとほと、自分の拠り所を取られて困っている。取られたのだから、我も知らん。元は湖の神。そのはずだ」
「そのはずって…神がなんで拠り所を無くすのよ」
「知らん。取られた後、この人間の体がちょうど良く我に収まっただけだ。」
「なるほどね…中の人間は?」
「よく喋る。」
…おま、俺のこと体の相性がいい奴って見てたのか。お前…お前…泣くぞ…?お前が体の外に出たら許さん、妹紅に言って燃やさせてやる。いやでも、その場合俺は抜け殻になるのか?…いや、ハンセイとはこれからもやるべきだな。仲良くしようぜ。仲良く…出来るからばーか!俺のこと体で見てやがったな!許さん!もう許さん!体返せ!八雲紫も言ってるぞ、代われって。…あれ、代われないの?システムなの?それとも神様って名乗りまくって俺の体ごと神にしようとしてる?
「いやでも…あれ?」
「変われるじゃない。ほら、教えて。貴方はどうやって幻想郷に来たの?ハンセイは何処から現れたの?」
「…紫、私寝てるから」
「霊夢…巫女の仕事をしなさいよ」
「ヨウカイガイル」
「寝てて」
「…何処の誰だったとかはおれも覚えてない。何せここに来て年単位。ハンセイは…ここに来た時からずっといる」
「じゃあ完全にこっち産ね。幻想郷出身なのか、外の神なのか分からないけど…」
「こっちだぞ」
「…はぁ?」
何処の神かわかったらしい。八雲紫にしがみついて…背負われてとある湖へ。幻想郷の湖、しかも神がいた。そんなものはこの幻想郷には一つしかないらしい。…紫さんの背中、なんか安定してるな。巫女さんの背中…いや足?かな?は全然揺れるし浮遊感半端なかったし、なんなら二回地面に降りてもらったし。背中はダメって言われたし。本当怖かった。それに比べて紫さんの空と来たら。安定しすぎてもうね、寝れる。眠ろうかな。着いた。寝れなかったけど、空飛ぶ感覚が楽しかった。巫女とは大違いでな。
「それはありがたいわね。で、ここがその湖」
「…あの、霧しかないんですけど」
「元々、霧はなかったのよ。離れたら見えなくなるから」
「あ、はい」
「…ハンセイは?出てこないの?」
「出て来てるなら一人称は我。俺の時は出て来てないですね」
「わかりやすいのねぇ。」
もちろん、ハンセイが出て来てくれれば確かにありがたい。だが、それでも出てこない。なんでだろう。ハンセイの話ならこの湖を占拠している悪鬼悪霊魑魅魍魎…後なんだ?まあとにかく妖やらなんやらがいるんだろう。そう言うことですよね、紫さん。え、違うの?ここにいるのって誰なの?…妖精?は?妖精が湖占拠してるの?え、じゃあ何?ハンセイは妖精に負けるような脆弱な神様ってこと?え、弱い…あれ、体動かない。もしかして逆鱗に触れた?妖精に占拠された癖に?
「…我の身体にホラを吹き込むな。湖が戻れば消すぞ」
「強気なのね。それもかなり。ハンセイね?」
「ここを占拠したのは妖怪。そも、妖精はその後に住み着いた。」
「あら、じゃあ妖精じゃないのね?…じゃあ貴方、なんで取り返さないの?」
「…いや、何。面倒なのだ。」
とにかく妖精を見つけることから、らしい。紫さんから扇子を二個受け取り、そのままハンセイが手を振り回し始めた。え、何してんの?そんなお前、海の中でも大した影響出ないのに…あれ、なんか晴れ始めた。なんか霧薄くなって来た。え、嘘でしょ。本当に?本当に全部晴れさせるつもり?霧払いってレベルじゃないでしょ。つーかなんで…扇子?なんで扇子で霧払いを?化け物でしょ。何やってんの?…普通でかい葉っぱとかさ、そういうのじゃないの?
「今我が受け取るはずの力は妖精に流れている。その妖精から力を受け取れば戻るはずだが」
「…その妖精、見渡る?」
???「風に飛ばされた…」