明日が面倒だ。とても憂鬱だ。そう思っている理由は、目の前の要塞にある。ハンセイは氷精とも言っていた。で、今。ハンセイが出て氷精の相手をしている。どんな具合にと言うと、カマキリ相手に片手で遊んでいるようなものだ。神の力の大部分が戻ったからか、なんなら湿気で遊んでる。バケモンか、こいつ。そういや神だったな。氷精は訳もわからずぐるぐるパンチを繰り出しており、なるほどこれは、確かに見ててアレだ。可愛らしいと言うよりもとても面白い余興だ。
「あ、明日も挑んでやるー!」
「逃すと思うか」
「うわぁぁぁぁ!」
「…氷精の能力で凍らせれば良いだろう?」
「あ、そっか…はぁ!あ、氷の壁できた…謀ったな!?」
「どうかな」
ちなみに明日どころか今日すらも憂鬱で面倒である。この後に最近音沙汰なしだった通り魔が控えている。やめてほしい、そういうの。まあ氷精に関しては恐らく数日経てば忘れる。問題は通り魔。こいつどうにかしないとやばいよなぁ…来た時点でハンセイになるから別に良いんだけど、斬られて痛い思いするのはハンセイじゃなくて俺なので。神の力を見せつけてやれ。大体ハンセイの…神通力っつー奴は何なんだ。言ってみろ。言わなきゃわからんぞ。
「見ての通り、水気…水を操る。どうする?」
「関係ありません。いざ慎重に!」
「遅い」
「なっ」
水気を操ったのだろうか。通り魔が動かなくなった。え、どういうこと?…?よくわからない。仕組みを言え、仕組みを。それは通り魔の心境とも同じだったようでハンセイが淡々と話してくれた。水蒸気で無理やり止めてるらしい。何その力技。つーかこの家に水蒸気とかあるの?あるわけなくね?だって、竹の骨組みと申し訳程度の岩で覆われた屋根だけだよ?むしろよく氷精はぐるぐるパンチできたな。こんな狭苦しい空間で…作ったのは俺だけど…もうちょっと広くあるべきか。
「ええい、この家邪魔ですね!」
「あっ」
「さ、これで刀が振るいやすくなりました!さあ、仕切り直して勝負です!」
「…木刀か」
「私も木刀を使います。さあ、これで平等!初めぃ!」
片手で木刀を振って通り魔の頬を直撃。相手はとんでもなく飛んでいった。あーあ、しらね。なんてことはできず。ハンセイが建て直す様子も見れず。仕方なく俺が妹紅からずっと借りっぱなしの鋤で無理やり竹を取る。そろそろ正しい道具を使わなきゃならんよな。分かってはいるんだけど…これならもう、一軒家を建てるか借りる貸した方が良いのでは?ほら、なんか、あるだろ。ここに人がいるなら賃貸もあるんだろうし。…金もない俺がどうやって借りるんだ…馬鹿だな。馬鹿だよ。
「はぁ…」
「ため息か?」
「妹紅か。なに、家を斬られた」
「…は?」
「件の通り魔だ。少し、力を込めてしまった」
「ああ、だから飛んでいく何かが見えたんだな?」
「知らん」
「え、じゃあ何だったんだろ」
「大方巫女だろう。里で酔っ払いが暴れたのやもしれん。今に野次馬が騒ぎ出す」
「巫女かぁ…ま、そうだろうな。そうだ、また月見しないか?新月に誓いごとしようぜ」
「そうか。なら妹紅は性格の改善を願うと良い。叶えてくれるやもしれん」
「お前馬鹿にしてるだろ」
「箱入り我儘娘だな、人と関われば必ず馬鹿にされる」
「…はぁ?」
石が積まれていく。石というより岩なのは否めないが、とにかく積む。竹と、斬られた縄は使えないので新調しなきゃな。妹紅持ってる?髪の毛しかない?カッスカスだろやめるわ。そんなやり取りの後、竹を燃やされる。また、集め直し。しかしその前に縄を新しく買わなければならない訳で。それこそ水で…竹の劣化が早まるだけか。じゃあダメだな。かと言って眠れないから時間も流れない…竹を取るのに時間をかけすぎて夜になった為、里は開いてない。ダメか…
「野宿だな」
「待て。今から足を折る」
「へ?」
「…恐らくだが急患ならば寝床があるはず。」
「輝夜のところかよ!?」
「そうだが?」
「…っ、あーもう!竹を燃やしたのは私だしなぁ…家、来るか?」
「良いのか?」
「良いよ。ただし性格がどうとか言ったら私の家で本能寺の変だと思え」
「信長が妹紅で我が光秀か。」
「どう考えても逆だろ、逆。お前が焼かれるの。」
「…何故?」
ハンセイ、流石にイタズラがすぎる。そろそろ明日の作業で俺に変わった途端に転げ落ちて死ぬ可能性もある。まずいだろ。…その場合、こいつって湖に戻るのかな。戻るんだったらダメか。どう言えば良いんだろ。…もしかしてこれ、詰み?くっそ、頼むぞハンセイ、さっさと妹紅の家に失礼して寝るんだ。あの川が近いという最高の立地を手放すなよ。あ、てゐの肉どうしよう。ハンセイ、水の分身かなんかで受け取って。あれ、俺が結構楽しみにしてる毎日の行事だから。
「…散らかっているな」
「うっせ!」
「して、先客がいるようだが?」
「ああ、慧音か。たまにこっちで寝てるんだよ。掃除するとか言ってすぐ寝てるんだよな」
「単に面倒なだけだろう。治しても治らない癖だ、諦めている」
「なっ」
「人を招くというのにこの散らかりの様。妹紅…」
「う、うるさい!私はお前と違って契約書とかいっぱいあるんだよ!それこそタケノコと金の取り引きとか、そういうの!一年に一度は片付けてるし!」
「…そろそろ黙ったらどうだ?滑稽だぞ」
「出てけ」
その晩、外の気配に気づいた慧音によって回収されるまで外で座ったまま寝ていたとか何とか。