似非気狂い   作:覚め

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親戚突撃


家庭訪問

「結構住み心地悪いですね」

 

「なんてことを」

 

「明かりもないのに住み心地がいいだなんて、岩内は外の世界では雨風に当たりながら寝てたんだね」

 

なんてことを。今俺は諏訪子神と早苗に家庭訪問をされている。何故?知らん。諏訪子神ガキになるとでも言ったのではないだろうか。そして住み心地が悪いとか。どうしてこんな目に。俺だって、出来ることなら湿度温度共に最高の家に住みたいさ。でもな、この幻想郷にそんなものはねえ。そんな物件はねえ。立地で選んで何が悪いってんだこのやろう。説明を求めるぞ。不透明な理由で住処をどうこう言われる筋合いはないんだ。つーかこんなに家大きくして明かりが必要になったのはハンセイのせいだし!

 

「…とりあえず岩内、引っ越そう」

 

「嫌です」

 

「親戚一同で暮らしましょう」

 

「嫌です」

 

「親御さんからのお誘いは断るものじゃないぞハンセイ」

 

「嫌です」

 

「そうだ、いくらお前でも一人の寂しさは覚えているだろう。孤独を埋めてくれる人間がいるのならそれを頼るべきだ。」

 

「慧音と妹紅がいるから良いかな」

 

「ったく…」

「照れてしまうな、これには」

 

「は?」

 

出まかせの嘘だったんだが、どうもマジだと受け取られたようだ。俺、お前たちの前で姿現したのって一桁の回数だろ。それで寂しさ紛れるかよ。でも俺はこんな寂しさが大好きなわけもなく。確かに寂しいけど、ここの竹林は雰囲気が良いので手放したくない。だから引っ越したくないのだ。後人里が近いのも良いよな。…あとはないな。大体、俺だって幻想入りした身なんだから、引っ越すのが面倒なのも知ってるんだよ。トランプと服…あれ、あと豆腐しか持って行くものがないぞ?おかしいな、もっとあったはずなのに。

 

「荷物もないですし」

 

「引っ越そうよ〜」

 

「嫌だ」

 

「私たちがここにいる限り、か…」

 

「ハンセイ、人里からは遠くなるが、それでも私たちに会おうと思えば会える。心置きなく引っ越すと良い。」

 

「あと病院も近いから良いよね」

 

「…参ったな、勝てない」

 

「やっぱり住む難易度で決めるべきじゃなかったんですよ諏訪子様」

 

「いやぁでも、神奈子が『妖怪に信仰される神様って凄いよね』の一点張りで…」

 

「あのデカい神様はそんなことで決めるのか」

 

なんだか男子中学生みたいな感性してるな。頭がおかしいとは言わないけど、流石に家を選ぶ時くらいは子供の意見も尊重してみてはどうだろうか。無理なのかな。無理なら仕方ないけど。そもそも最初は早苗を連れて行くのも迷ってたようだったから、家を決めてからの話かもしれない。そう考えるとどうだろう。うん、言い訳にはならないな。残念だがデカい神様は有罪となる。南無南無。これは仏教だったな。じゃあ、カシコミカシコミ。

 

「…山の中はちょっと」

 

「それ今思い付きましたよね?」

 

「病院があって山の中じゃない立地を選べば…!」

 

「そんな土地あったんですか?」

 

「ないことひない。ただ、里が少し遠い」

 

「論外だなぁ」

 

「ハンセイはそこまで人里を…」

 

「やったな、慧音」

 

「二人とも帰れ」

 

どうやら帰らされた様子。可哀想に。諏訪子神と早苗が残ったな。こいつらを帰らせて、さっさと寝よう。久しぶりの安眠だ。最近は色々怪我して大変だったからな。無傷の夜はかなり久しぶり。快適に眠れたらもう良いわ。よし、そうしよう。じゃあ次はこいつらを…どうやったら帰るんだろう、この人たち。引越しの話を諦めさせるためには…確か酒があったな。飲ませて帰らせよう。鬼の見舞い酒だ。俺は飲まないし、ハンセイも飲まないからちょうど良い。

 

「お酒ですか…実は私苦手なんですよね」

 

「でも早苗も飲むでしょ?じゃあ飲もうよ」

 

「俺も神も飲まないから、消費に困ってたんだ。」

 

「…良いお酒だね。鬼のもの?」

 

「よく分かったね。鬼の酒だよ」

 

「おー、お高い。早苗、飲まなきゃ損だよ」

 

「いや苦手なんですけどね」

 

飲んだら二人を横目に押し除け、竹を見る。いつぞやの異変から時が流れて竹も生えて来た。妹紅もそろそろ竹を回収して売りに行く頃だろう。そんな素振りを一切見せないことが少し不安だが、まあ良い。豆腐ならまだある。ハンセイもぶつくさ言わなくて済むはずだ。さて問題としては後…うん、まあ、いくつかはある。が、とにかく。あの二人が酔い潰れて、比較的マシな方に帰らせる。この作戦以外は少し危険が過ぎる。だからさっさと帰れ。酔い潰れろ。

 

「結構飲みやすいです」

 

「良いお酒だねぇ。つまみはないの?」

 

「見舞い酒だからね。酒以外はもらってない」

 

「へぇ…ま、それなら仕方ないか。」

 

「んー…」

 

「あれ、もう酔ってる」

 

「早いな」

 

「そりゃ鬼の酒だよ?度数は最低でも50はある」

 

「それダメじゃん!」

 

早苗の顔がかなり赤い。俺は精々25度とか、よくわからんけどそんくらいの酒だと思ってたんだよ。それがまさか50なんて、ハンセイ相手に送ったつもりなら神様用にもう少し度数が大きくてもおかしくはない。水を汲んで早苗に飲ませる。呼吸も心なしか少し浅い。それでいて吸っては吐いてを繰り返している。呼吸はそんなもんだと言われたらまあそうなんだが、それでも少しスパンが短い。外の世界でもこんなことがあったな。少し体を密着させてなけなしの保温。俺の布団はあまり暖かくないからな。

 

「…どうしたのさ?」

 

「バカお前これ、最悪死ぬぞ」

 

「んー…畏畏、いや違うか。神託どーん!」

 

「わっ!?…え、あれ?な、なんで私、岩内さんに抱きしめられてるんですか!?」

 

「おっと」

 

「あ、いやそのままでも別に良いんですよ?」

 

「…まあ、とにかく酒は飲むな。」

 

「あ、お酒かぁ…」




急性アルコール中毒を防ぐために水を飲ませる親戚のおじちゃん
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