「…働かないならそこから退きましょうよ」
「断る」
「はぁ…では失礼します!」
美鈴に腕を掴まれて投げられる。するとハンセイは華麗に着地して脛を蹴った。ちなみにだが俺の方は靴底に鉄かなんかを仕込んでたはずなので、バチクソに痛いはずだ。なんだけど、何故かそのまま肩を殴られかけた。頭おかしいんか?妖怪って痛みに対する耐性あるの?頭おかしいだけだろそれ。ハンセイは拳を避けて腹に一発。なんだおまえ、お前も頭おかしいのか。そういやそうだったな…
「早くここから出ていってください。最近は咲夜さんに詰められてるんですからね。あいつさっさと追い出せって」
「理解のない崇拝者だな。頭を消し飛ばせば治るかもしれん」
「嫌ですよ…あの人時間止めてくるし」
「動けば良いだろう」
「…ああ、そういう人でしたね…」
というわけで流浪の民。ハンセイが悪いんだ。ちなみに最後の悪あがきか何かで昼飯だけ食べていた。体の主導権も俺に戻ったからスタスタ歩いていると何やら変な場所を見つけた。階段が延々と続く山だ。ここ登ったら都合の良い廃屋な何かがあれば全然そこに住むんだけどな。まあまずはこの階段からだな…なんか、階段の先に鳥居がある気がするけどまあ良いか。そう思ってたら身体動かない。取られた。
「うわ、お前こんなところで何やってんだ?」
「流浪」
「ただの家無しかよ」
「門前は都合が良かった」
「聞いたぞ。タダ飯食らってんだろ?」
「…我を追及する努力家は館から本を盗むらしい。」
「そりゃ大変だな。その館の使者に寄付しに行くべきだ」
というわけで住む場所探してることを伝えるとこの先にある神社には期待するなと言われた。えっそうなの。というか人が?聞いてみればあの赤い巫女がいるらしい。ハンセイは途端に足の向きを変えることもなく、むしろ足の進みが速くなったことを感じる。お前頭おかしいんか?おかしいんだな?さっさと人里行くぞ。畜生、俺はなんで人里に向かって歩かなかったんだ。俺も頭おかしかったのか?
「…頼もう」
「嫌」
「振られてやんの!!」
「どうしたものか。」
「どうもしないわよ。それに人なら人里に住めば良いでしょ」
「確かに」
「不都合がある」
「たとえば?」
「…」
なんか黙ったぞこいつ。おい、どうすんだ。俺は人里を勧めるぞ。移動はお前、手続きはお前で、俺が住んでやる。面倒な部分はやってやるんだから文句はないな?ないだろ?あるらしい。というか俺には不都合が思いつかないぞ。あれか、住人との関わりか。アホかお前、何気にしてんだ。今更だぞ。ずっと痛いし恥ずかしい変な口調で動き回りやがって。俺が表に出た時すんごい面倒なんだからな。取り繕うのが面倒なんだよ。
「断られたぞ?おーい?」
「…どうしたものか」
「いつまでここにいるのよ…」
「悩みそうにもないのに悩みやがって」
「…決めた」
「えっ」
「あっそ。どこに決めたの?」
「竹林」
「げっ」
俺は何を見て決めたのか。俺の目…同じとは限らないが、少なくとも俺の目には人里らしきもの以外に見当たるものはない。竹林らしきものは見えた。とてもじゃないが人里の領土ではない。妖怪が闊歩する世界だ、不都合に目を瞑って人里で暮らすのも悪くはないと俺は思う。どうだろう?というかそうして欲しい。どうにかしてこいつの気分をそうさせなければ、今後の俺の寿命が。多分二ヶ月後くらいには常にこいつを恨む生活になりそうだ。
「ここか?」
「さらば」
「あ、おう…」
「ってなるわけないでしょーが!!」
「うぎゃっ!?」
魔法使いにドロップキックが炸裂。ちなみに喰らわせたのはよくわからない人。初対面。白髪の長髪はなんだろうか、抜けないの?髪の毛。まあそれは置いておき。とにかく変な人だ。ドロップキックで魔法使いが十メートル以上飛んだように見えるし、なんか所々燃えてるように見えたし、少し熱い。熱された後のような暑さを感じる。一体何がどうなっているのか。ちなみに魔法使いは何もなかったかのような顔で出てきた。寸前で逸らしたらしい。は?
「人かどうか怪しいな」
「そりゃどっちに言った?」
「両方だが」
「んで、お前らこの竹林に何しに来たんだ?面倒でしかないだろこんなところ」
「こいつがここに住むって」
「…は?」
どうにも頭のおかしい客だと思われたようだ。俺もそう思うというのは内緒にしても、確かにここに住むというのはかなり危険な気がする。竹林なんてあれだろ、家建てても床下から竹生えてくるのかもしれんのだぞ。まさかお前小さくなって竹に住むとか言わねえよな。いや流石にそれはないか。頭おかしい以前に身体おかしいからなそれは。しかし都合のいい邪魔が入った。白髪の人がハンセイを止めてくれる。竹林に入らないように全力で止めてくれるのだ。
「先人の知恵だ、やめときな」
「断る。先人の知恵なぞくだらん」
「はぁ…歴史は学んだほうがいいぞ?その他の専門家を紹介しようか?」
「ハクタクか。あのような紛い物が専門家?」
「私の友人だ。悪口はやめてもらえるか?」
「事実だ。後ろのハクタク自身もそう捉えてるぞ」
「!?」
白髪の人が後ろを向いたらすぐに竹林の中へ。争いは無用だということを学んだのか。良かった。それで良いんだ。ハンセイが学んでくれて俺は嬉しいよ。ただ竹林の中を考えなしに進むな。なんなら竹林に入るな。あ、こいつちょうど良さそうな川見つけやがった。絶対ここで暮らすつもりだ。服なんて一度も洗ってねえんだぞ。なんなら靴に関してはかなりのお気に入りだったのに。重くて振り回しやすい靴なのに、もう土だらけ。美鈴のところで破けなかったのは幸運と言うべきか。
「…まだ来るか」
「騙すなんて、酷いことしてくれるなぁ」
「黙れ。今手入れ中だ」
「何の?」
「靴」
「汚いな…」
いつから幻想郷にいるかはともかく汚ねえ。