似非気狂い   作:覚め

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今回の異変で無視された多々良小傘「ひーん」


聖人君子

「寺?」

 

「ああ。つい最近神社が新設されたと思えば、何故か寺が…。里から離れてはいるが、距離が短いからと足を運ぶ者も多い」

 

良いことじゃないか。多様性の時代って奴だ。寺の教えが何かは知らないが、とにかく心の支えが増えるのは良いことだろうし。心の支えが増えれば里全体の揺らぎは小さくなるだろう。宗派の対立?それは知らん。神も仏も寛容ならば争うことは神の本意でもないからやめさせることは可能だろうし。問題があるとすれば、後一つくらい別の宗教が入ることだな。なんか、ヤバくても許容されそうで怖い。ま、宗教作ろうなんて頭おかしい奴がそんなにいるわけないから良いか。

 

「…慧音、わざわざ足を運ばなくても良いだろう」

 

「いや、こう言った類のものは直接足を運ぶべきだ。どのような思想かもわからん」

 

「度し難い。我は」

 

「おー、二人とも。こんなとこで何やってんだ?つーかここにこんなのあったか?」

 

「妹紅、少し黙れ」

 

「はい?」

 

「…行ってくる!」

 

「帰りたい…」

 

「慧音!?」

 

慧音突撃。それとともに謎の轟音。一体何が。中を覗いてみれば、そこには異様な光景。どうなってんだ…?と。どうやら慧音が入って早々虎と出会い、それにびっくりして後頭部を異様に頑丈な柱にぶつける。それを見ていた子供が大声でその音を再現した結果、先ほどの轟音が発生したようだ。妹紅、待て。燃やそうとするな。こいつは多分アレだ。毘沙門天代理。何でこんな格好してんのか、なんでこっちを見て威嚇してくるのか。諸々おいて、一つ言うことがあるなら、何やってんだお前。

 

「…何ですか」

 

「うわ喋った!」

 

「うわしゃべった!!!!!」

 

「…口、閉じろ」

 

「ん!?」

 

「いや、すみません助かりました…この子はやまびこでして。他人の声に反応してそれを大きな声で復唱しちゃうんです。」

 

「良い。さて…慧音はどうする」

 

「置いておくわけにもいかないだろ…ハンセイ、持って帰るぞ」

 

「…あの、失礼ですが関係は…?」

 

「友人」

 

「だな」

 

「なるほど」

 

どうやら今はこの寺の住職が布教しに行ったらしい。変な奴。ちなみに俺も一度だけ聞いたことがある。俺としての個人的な感想を言えば…そうだな。死んだ後の墓場には困らなさそう、と言う感じだ。非常によろしくはないだろうが、まあ…それは仕方ないか。寺に併設された謎の墓場があると言うだけで釣られた人間も数人いたはずだ。多分な。まあそこから死ぬまで続く奴が何人いるかは知らないけどね。ここの住職は確か、聖という奴だったか。…あいつ、バケモンだろ?争い事にならないと良いけど…

 

「御三方も仏の教えを受けてみませんか?」

 

「失せろ。我は神である」

 

「私はそもそも輪廻転生やめてるし」

 

「慧音は里の教育者だ。教育者が何かに傾倒するのはよろしくない」

 

「あぁ…わかりました。」

 

慧音を担いで里へ。何か誤解されそうな雰囲気があるも、まあ…妹紅が隣にいればある程度信頼はされるだろう。少なくとも誤解は…まあ、その、なんだ。やめとくか。考えるの。ハンセイなら堂々としていられるだろうから、誰が何を言おうと、まあ何とかなるだろ。良し、じゃあ寺子屋行くか。寺子屋に慧音を運び入れ、目覚めるまでうちわで慧音の顔を扇ぐ。妹紅はやめろ。お前は体温高いだろ。やめろ。あ、怒ったから炎出した。外でやれ。中でやるな。

 

「ちっ!」

 

「ん…んぅ…っ…ここは…?」

 

「寺子屋だ。虎を見て失神など、情けない」

 

「だ、誰だって虎は驚くだろう!?なあ、妹紅!」

 

「私も最初の方は驚いたけど、最近は全然」

 

「…は?」

 

「不死者は天敵を天敵と思わないからな。やめておけ」

 

「箱入り娘なのかワイルド娘なのかわからないな」

 

「馬鹿にしてる?」

 

そうして寺の訪問は虎にびっくり!で終わるわけもなく。慧音と妹紅が寝て、俺も此処でお泊まりかぁ、なんて思っていた時に訪問者が。誰だろう、寺子屋に用事か?まあどっちにしろ俺が出るしかないのだが。声を出しながら戸を引き、相手の顔を見る。戸を引いて締める。…今のは聖だ。何故此処に?いや、それよりも…何で入れた?何で入ってこれてるんだ?里の中は日中からいないと、里外の奴は基本居られないはずだ。無論中にいても見つかれば追い出されるはずだ。なんでいるの?

 

「…何だ」

 

「今日、寺を訪ねたと聞いたので、お話がしたいのかなと…」

 

「それは慧音だな。虎を見て失神した」

 

「そうですか、お詫びも兼ねて少しご挨拶を」

 

「それには及ばん。本人も寝ている。では」

 

「お待ちください」

 

閉めようとした戸に足を挟まれた。なんて奴。足を挟まれたまま話が進む。少しでも良い、話を聞いてくれ、お詫びもしたい。繰り返されるその内容に辟易とし始めたその時、戸を閉める力が緩む。その瞬間に挟まれた足によって戸が全開に。少し予想外。窒息死させるべきではないかな、ハンセイ。さっさとさ、こう、いや無理か。水の抵抗がないような動きする奴だもんな。…無理では?つまりこいつ、察することに、無理では?あ、でも悪魔崇拝者にしてやった技使えば…だめだ、筋肉で血流回し始めそう。やめるわ。

 

「おや、力が緩みましたね。これは入っても良いということですか?」

 

「そろそろ退くことだ。罰を加えるぞ」

 

「怖い方ですね。ですがそんな方さえ変えてしまう教えがっ…あら?」

 

「血管を内部で破裂させ、内出血を起こした。自然治癒で治る程度のことだ。まだやるなら、手のひらが腫れて使えなくなると思え」

 

「…そうですか。失礼しました」




Q.どうやってハンセイは妖怪に負けて居住権を失ったの?
A.血管を持たない妖怪が多く、血流をどうこうされても関係のない奴が多かったため。
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