似非気狂い   作:覚め

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僧侶、ブチギレ。


アマの邪気

「何だ、この轟音は」

 

「さあ?」

 

湖まで響く轟音。轟く音と書くが、これは違う。轟くどころではない。大気どころか地面ごと揺れてる気がしてならない。つまり…振音。あ、今かっこよく決まったわ。ハンセイが表に出てるから口に出さないのが悲しい。まあ言ったところで恥ずかしい過去に落ちるだけだが。ならば言わなくてよかったな。人魚も水面から顔を出してどういうことかと詰め寄るくらいには、響いている。何でこんな目に?みたいな顔もしている。これがあざといというやつか。騙される男の気が知れん。

 

「このままじゃ、湖の魚まで騒ぎ出すのよ!?」

 

「五月蝿い。見当がつく」

 

「じゃあ早く解決!神様!」

 

「無理だな。正直に言えば、今回の轟音を収めるのは不可能だ」

 

「どうして?」

 

「親権争いのようなものだからだ。犬どころか豚ですら食わん」

 

…じゃあ何でさっき何の音だとかほざいたの?えっ…は…?ま、まあとにかく。親権争い、轟音。それを聞いた途端に頭を抱えたくなった。轟音は知らないが、親権云々の話となれば出てくるのは聖白蓮と豊郷耳だ。どちらもできれば相手したくない奴ら。だからハンセイは朝から霧の湖にいたのか。なんてこったなぁ…と、勝手に思っていると。悪魔崇拝者が出てきた。うん、どうやら十六夜咲夜も復活したみたい。やる気を戻して意気揚々と傘を刺している。比喩なしに、身体に。

 

「…何かいうことない?」

 

「えっ、言っていいやつ?」

 

「良いと思う?」

 

「ですよねぇ」

 

「十六夜、お前は何をしているんだ」

 

「…前回の異変時、逆らったら思ったより楽しくて」

 

「ね?これ。これなのよ。おかしいでしょ?」

 

「私で例えれば上半身だけ水に突っ込まれてる感じかな」

 

「人と魚の境目に牛をぶち込まれた気分よ」

 

談笑。決して談笑などではないが、とにかく談笑。尚、後ろまで僧侶と神子が殴り合いの喧嘩をしているのは気にしない。気にしないったら気にしない。すると急に振り向き、水が二人を襲う瞬間を見る。なるほどハンセイが止めたということか。残念ながら止まることはなく。殴り合いが加速して行き、ハンセイが全力で頑張ります強めた圧力で水を放つ。理科室の蛇口と同じように、水圧の高い状態で放たれた水が、一瞬で二人を襲う。ちなみに理科室の水圧が高いのは早く薬品を落とすことを目的としているためらしい。

 

「頭が冷えました」

 

「礼は伝えるよ。ただ…こころが今日どこで寝るのかという話の中断はしないでほしい」

 

「どうでも良い騒音ね」

 

「人魚はヘビメタが嫌なのよ…」

 

「続き、ですね?」

 

「無論だが?確認したということは、やはり私を恐れているのかな?」

 

「殺しますか」

 

「なんて短気な…私なんかこれなのに。部下がこれやってきたし」

 

「そんなひどい術者が存在するのですか」

 

「従者じゃなくて術者よ。わざと?」

 

「…はい」

 

「おい今の間は何だ」

 

「わざとでしょ」

 

「始めるなら他所でやることだ。湖の生態系を壊すつもりか?」

 

「であれば、この方に」

 

「辞めて欲しいなら彼女に」

 

あーめんどくさ。もうどっちも自分から辞めるつもりないじゃん。何でこんなのばっか幻想郷を彷徨いてるのかな。少し不快。湖付近でやるなというだけで何故こんなにも拒絶するのか。ハンセイやっちまえ。信仰してやるからやっちまえ。お前ならこいつらをここから退かすくらいは出来ると信じてるぜ。…あれ、信仰ってこんな感じだっけ?どっちかっていうと信頼じゃないかな、これ。やっべ〜わかんね。まあとにかく、信仰しました!ほれ、やれ!やってくれ!

 

「ん?」

 

「ほう…信仰を得たのか。誰からの信仰かな?」

 

「いや、そもそも湖に住む妖怪や生物が信仰してない神なのよ?信仰とかってあるの?」

 

「我とて神だ」

 

「え、じゃあ何?信仰されてないこいつに私負けたの?フランと一緒に?」

 

「そのようかと」

 

「さて、それは置いて続きと」

 

「させん」

 

うおおおお!聖白蓮吹っ飛ばした!ハンセイすげええええ!…次は神子だな。こいつには気をつけろよ。なんか神様吸収してくるから。なんかわかんないけどね。大体神様吸収ってなんだよ。わけわかんねーよ。神取られ…つまりKTR未遂者だろ?信仰されたハンセイでもかなりきついんじゃないかな、これ。というわけでそこの人魚がどうにかしてハンセイを信仰してくれますように。お願い!頼む!…あ、頬杖つきやがった。この湖の生態系、大丈夫か?

 

「ありがとう、これで今夜もこころと共に」

 

「貴様もだ」

 

「ぐぇっ」

 

「よく飛ぶわね」

 

「打ち上げ花火も同封だ。すぐに破裂する」

 

「うわっ…やりすぎじゃない?」

 

「…それはそれとして、人魚。何故我を信仰しなかった?」

 

「いや、してたわよ?でも…貴方が魔界に行ってる間、そこの吸血鬼にここが取られてたんだもの。抗ってみたけど貴方は来ないし。信仰する気も失せたし」

 

「そいつ、水辺で打ち上がってペチペチしてただけよ」

 

「ちょっ」

 

何やってんだ、こいつは。本人に再現させるか。人魚を抱えて水辺に投げ出し、様子を見る。周りをキョロキョロしながら見て回り、観念した様子でペチペチとその場で跳ね始めた。…何が楽しいんだろう。こんなの見て。隣にいる悪魔崇拝者は見飽きたような反応を示し、十六夜咲夜は少し笑いを堪えている。何やってんだか。ちゃんとしようよ。俺はこのシュールさがすこしツボに入りかけた。跳ねなければツボだった。ハンセイは数回跳ねた人魚を抱えて湖に放流。人魚は顔を赤くしながら水中へと消えた。

 

「…まあ、今回は私も悪かったわね」

 

「私は笑いました」

 

「えっ!?」

 

「魔界に行ったことを知っていたのは意外だったな」

 

「…何しに行ってたの?」




Q.何で魔界まで行ったの?
A.興味があったから行っただけ。目的はない。
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