もう六十五話だよ。長すぎだよ。
「お兄さん、随分と辛そうだね」
「貴様こそ、己より弱い存在をようやく見つけて嬉しそうだぞ。日頃が苦しいか?」
バテてきたな、妖精が。この道化師らしき何かは何をするわけでもなくバカみたいに弾幕をばら撒くだけ。それなら、なんとかなるのだろう。ハンセイが辛そう?バカ言え。辛いのは次俺が主導権を握ったときだ。多分歩けずに折れたような痛みと急激な疲労によって目が覚めるせいでなにもできないぞ。眠ることさえままならない。ふふ、くそが。なんで異変解決なんか…というか!これそもそも異変なのか!?わけがわからん、同盟国が襲われてもここまで大々的に出てこないぞ!出てくるのはでかいツラした国だけだ!
「…効かないな」
「水も無くなっちゃったし、そこら辺の石でも投げたら?つまんなーい!」
「肩で息をしながらいうセリフではないな。情けない」
「っ…まだ言うんだ…もう一回!やり直し!」
「出来るのか?」
「何〜!?このっ…あ、あれ?」
「時間だ。失せろ」
途端に、目の前の道化師崩れが落ちる。また血流どうこうしたんか?違うらしい。手順は明かさないとのこと。へー、お前でも隠すような奥の手があるんだ。知らなかった。…今更だけど、俺の声ってハンセイにはどう聞こえたんだ?やっぱりこう、脳内に響く感じか?俺は一切聞いたことないからわかんないな。さて次へ進もうとすると、足を掴まれる。誰だと思えば先ほどの妖精。何故?その疑問符が頭を支配しかけるが、頭の隅へ追いやる。とりあえずハンセイがやってくれるので。
「あら、クラピちゃんが虐められてる」
「ご、御友人様」
「後で彼女に言っておくから、寝てなさい」
「我は無視か?」
「無視してないわ。ただ、面倒だとは思ったけど」
「喧嘩を売るか」
「好きに受け取れ。私も手加減はしない」
…一目見てわかったことがある。この人、多分…狐だ!ほら、背中になんか見え隠れしてる!ハンセイもそう思うだろ!?…あ、ごめん多分違うわ。全然違う。なんだろ、何と見間違えた、今。しかしまあ、なんか。弾幕多いね。岩の影を移動することで、地形破壊するような威力の弾幕相手に延命工作。こう言う時はやはり、帰るほうが良いだろう。出来るならば。今、地球が視界に映った。やはりここは月なのか。悲しみと共に、少し後悔。俺が表に出て必死に訴えてたらここに来ることなかったんじゃない?
「だからって今変わんなくてもさぁ!」
「?」
「お前には言ってねえ!!」
「口調が変わったな。きゃらつくりとやらか」
「おー!キャビた言葉知ってんな姉ちゃん!ついでに手品とか興味ない!?」
「ない。では次だ」
ダメらしい。トランプを飛ばしてもかき消されるのみ。ハンセイに変えられて、そのまま逃げ回る。ざけんなよハンセイ、休憩したかったか?でも無理だ。お前と俺では絶対に無理だ。博麗の巫女達はいつ来るの?まだ足止めくらってるの?道化師崩れにかなり時間かけたはずだよね??…なんで来ないのかな。皆来てよ。泣いちゃうよ。俺が気を落としてもハンセイは変わらないので、存分に気を落とす。落ち込む。俺のこと殺す気であろう弾幕を避け続ける。そろそろストックホルム症候群で目の前の金髪女と永琳先生好きになりそうだわ。
「っ…限界だ」
「凄い、ここまで耐えるなんて」
「すまん、やっぱ無理だわ…」
「口調がまた変わった。多重人格か?いや、それにしては前よりもかなり弱い…何がしたい?」
「あ、いやもう寝るんで。ごめんだけど気にしなくて良いよ」
「…は?」
「今魔法で立ってるんだよね。疲れを忘れる魔法と筋力増強の奴ね。ドーピングだけど。俺はそれでもフラフラなのよ?」
「…私に関係ある?それ」
「大体俺はあっちから来たの!あっちにお家あるの!巻き込まれてるの!!知らなーい!」
「やはり月の都は卑劣だ」
恐らくはハンセイが限界を迎えたのだろう。俺は悲しいことに前線へと駆り出された。言い訳のように月面をごろごろして埃を撒き散らす俺を見て、目の前の金髪女は何も言うまいと言った感じ。二人の間で沈黙が流れる。気まずいな。博麗の巫女達が来れば良いのに全然来ないんだもん。もうあいつら裏切ってこっちに着こうかな。そんなに早く移動してたわけじゃないでしょ、ハンセイは。だからさっさと帰してよ。とか思って不貞寝してたら全員来た。やっほいこれで勝ったなガハハ!さあやったってください金髪女!遅れた分ボコッて!
「岩内さん、なんで寝てるんですか?」
「ハンセイが疲れ果ててな。俺も疲れ果てたし。流れ弾だけやめてね」
「すまん、マスパ打ったら死ぬかも」
「流れ弾(ガチ)は跳ねると無理ですよ?」
「そこにいるアンタが悪い」
「に、逃げなきゃ…!」
「待った。私はこの者と遊戯をしてる最中だ。そちらを先に終わらせたい」
「えっ」
「なら仕方ない」
「岩内さん、頑張ってください!」
「負けたら承知しないわよ。それこそ死ぬ気でやりなさい」
「負けたらモルモットですからね〜」
やるしかないらしい。ぐすん。こいつらにもストックホルム症候群が。発症したら最後…いやちげえ。帰ったら守矢か人里の中に引っ越さないと…鈴仙からの暗殺が可能性として存在してる気がしてきた。仕方ない、やるか。ハンセイ出てきて。ほら、疲れ果ててる場合じゃないよ。そうして入れ替わる。ハンセイが出てきたので勝ちの目がある。このまま全員でタコ殴りにしませんか?え?しない?あぁ、そう。お前ら流れ弾気をつけろよ。絶対当ててやる。文句なんか受け付けねえからな。
「続きといこう」
「待ってたわ。それじゃ、今度こそ貴方で仕留める」
Q.何故急にハンセイは入れ変わったの?
A.純孤から感じ取れる気配(ヘカーティア)のせいで精神が削れつつあるから。