そりゎあ、ヘカーティアに会えるんだからさ?
目が覚める。月。後日談を聞いて帰って飯を食って諏訪子神と早苗を追い出し、寝た後だ。目が覚めているはずだ。でなければ、おそらくは目の前に見覚えのある金髪女が夢にまで出てきていると言うことになる。ストックホルム症候群もここまでくれば大したもので、恐怖心よりも何故か感心が来る。喜ばしくも何もないが、とりあえず場の確認。今体を動かしているのはハンセイだ。目の前には金髪女と…なんか、変なよくわからんものを付けた赤髪の女。変なものっていうのは…多分、地球と月と…赤い何か。
「またか」
「…来ない方が良いって、伝えたはずだけど」
「あら純孤、こいつらが?」
「貴様がことを起こさなければ起きることはなかった」
「…あの…わ、私も…?」
まずいな。とてもまずい。何がまずいって、ジュンコ?さんの隣にいる赤髪。こいつ、まずい。本能が常に離れろと警告してくるし、逃げろと言ってくる。ハンセイも同じ状況であってほしい。しかしながらそれは望めず。今この場にいるのはハンセイと鈴仙。後戦力にはならないが俺。たった三人。逃げたい。つーかまた侵攻すんなよな!強制的に連れてこられちゃうだろ!助けてくださいお願いします!!無理?あー、死んだなこれ。月の奴らも来いよな。泣くぞ?割と本気で。
「鈴仙、そっちの女を頼む」
「はい!?い、嫌だ!私だってまだやりたいことが」
「モルモットを代わってやる」
「っ…ってなると思います?」
「二ヶ月間」
「っ!よし!やる!やっちゃうぞ!!」
「さて…」
「私の相手をする気?」
「無論だ」
よりによって赤髪の前に立った。どうして?ハンセイは水を操り、手始めにその水をぶつけようとした。そのはずだ。恐らく。俺はハンセイではないが、長いこと一緒だから少しはわかってるつもりだ。だから言おう。水が消えた理由がわからない。ハンセイが驚いた顔をしていないことを祈る。それを確認したのか、ハンセイは全力で走り出した後に赤髪に対してトランプを数枚投げた。ふん、もう良いさ。数枚欠けてるトランプなんだから。欠けたトランプなんていくら投げても良い。まだストックはある。
「賢明よ。ただ、私に楯突く事以外だけどね」
「っ!」
「『貴方は私に楯突いた』。それだけの理由で貴方を地獄へ堕とす。」
「神は死なぬ。消えてもまた生まれ直すのみ」
「でしょうけど、その人間はどうかしらね?」
あ、俺殺される感じ?やっぱハンセイ逃げよう?逃げない。トランプと小石の投擲のみで戦うハンセイはまあすごいとは思うが、今のところ刮目すべきところはそこではない。目の前の赤髪は未だ弾幕を放つことすらしていない。な?怖いだろ?あ、弾幕撃ってきた。やり方わかんなかったのかな。まあ弾幕はジュンコと同じように物がぶつかったくらいではなくならず。もはやヒステリックを起こした人間のように近辺の小物を投げまくる。水も水圧で飛ばしてみるが、でかい弾幕…いや、月では…?は…?
「驚いた?私は月と地球と異界の神。貴方よりも位は断然上。その私に楯突いたんだから…生きて帰れると思うな!」
「で、あろうな。故にこちらを引き受けた。貴様相手になかなかの博打だが…」
「あら、人間の意識を封じ込めるつもり?無駄よ。貴方の放つ神通力なんて、私からすれば爪に傷もつかないし。」
「舐めるな。無傷?ならば物を頼るまでだ」
「面白いこと言ってくれるわね」
意識が途切れる。やったぜ!と言いたいが…なんとも。ジュンコ相手にこれで勝ったのかと言えば微妙。つーか多分負けてた。しかし、武器なんてある訳もないのに、何に頼るのか…トランプ?それにしては些かどころかかなーり変な言い方だ。目を開け、体を起こそうとして、すんなりと起きる。あれ、筋肉痛がない。歳かな…いや違う。疲労感が一切ない。すげぇ、一体どんな物を頼って勝ったんだ?と、目の前を見てみる。目に映ったのは、その場で服の汚れを気にする乙女な赤髪が立っていた。無傷で。
「どっこいしょ…」
「ん、貴方が…人間の方ね?」
「そうだけど」
「そう、それは良かった。一つ言うことがあるから、聞いてもらえる?」
「何?」
「貴方の神様、死んじゃった」
だろうな、と思えた。意識が軽いと言えば良いだろうか。例えば心霊に憑かれると肩が重くなる、と言うのと同じで俺は今意識が軽い。数年ぶりに身体が一人。微かな違和感が重なってハンセイの死を実感している。ぶっちゃけ、俺としては…とても大事だ。ハンセイが関わっていた人間関係が面倒になるためだ。妹紅と慧音は勿論のこと、それこそ命蓮寺とか。別に今じゃなくても良かっただろうに、何故このタイミングなのか。と言うのは目の前の神が決めたからではあるんだよなぁ。
「貴方はどうするの?私に楯突いて地獄行きか、このまま帰って月を見捨てるか」
「…そうだなぁ。トランプも無事だし、超絶ミニスカの女もいるし…色々面倒だな」
「私の下着を見ようとした罪で地獄行きね」
「鈴仙のことだ。ま、手品だけでも見ていってくれよ」
「…私に向かって手品を?それはそれは、どんな手品かしら?」
まずトランプを全て相手に見せる。その後、ケースに入れる。右手から左手、左手から右手。ケースに入れたトランプが移動する。一枚ずつジョーカーに変えていっているが、気付いてるかどうか。そしてもう一つ。ハンセイに対して少しの情はあった。というか、かなりあった。俺はハンセイがいなければ空を飛ぶことがやっとの竹林住まいの男だ。悲しいけど事実。受け入れて弔い合戦といかせてもらう。口をあくびのように大きく開け、魔力波。成功するかは運次第だが、成功した。しかもかなり出せた。過去一どころか未来一かもしれん。3秒ほど出した後、口を閉じてみると、目の前には無傷の赤髪が。
「…へえ?」
「じゃーん、トランプが全部ジョーカーになりました〜」
「手品の種も仕掛けもわからないとは…まさか、魔力で私の視界を塞いだ三秒間で入れ替えたのかしら?そうじゃなかったらあの魔力は何だったのかしら…ねぇ?」
「手品とは関係ないよ。弔い合戦なだけ」
ヘカーティア「地獄行き!地獄行き!!」
クラウンピース「ミニスカなのが悪いと思います、御主人様」
ヘカーティア「これはおしゃれ!それはそれとして見ようとした奴は地獄行きよ!」