自分を英雄だと勘違いしている元男がダンジョンに潜るのは間違っている   作:札幌53位

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ファミリア入団、即離脱

──────仄暗い灯りが、俺を照らす。

周囲には、見知らぬ男女。脳裏にフラッシュバックするのは、鈍い痛みと強烈な閃光。そして、何者かの声。

 

「決めたわ。この子の名前は……」

 

そこで、俺はハッキリと自覚した。

 

「アエルテス。『黄金の炎』よ」

 

異世界転生を果たしているということに。

 

次に浮かんでくるのは、何故?という疑問だ。俺の最期の記憶は、轢かれそうになっていた女の子を助けようとして、ダンプカーに跳ね飛ばされたものだ。

ううむ、実にテンプレ的な。しかし、実際に轢かれてみて分かったが、あれは怖い。何より痛い。あれをテンプレ呼ばわりする人たちは一度轢かれてみるべきだ。俺もやったんだからさ。

 

「ナタリィ、その名前は…君の二つ名じゃないか」

 

「ええ、神様から頂いた有難い名よ。蜂蜜色の髪に、赤い瞳のこの子にピッタリだと思わない?」

 

どうやら、目の前で話している人々は俺の親…で、良いのだろう。父親の方は黒い髪に赤い眼のイケメン、ナタリィと呼ばれていたのが母親で、彼女は金色の髪に翠緑の瞳の美人さんだ。

そして俺は、アエルテスという名前らしい。意味は『黄金の炎』だとか。ううむ、ギリシャ的な世界なのだろうか?

 

「あえうえう…ううあ!」

 

名前を反芻して覚えようと思ったが、歯も生えていない俺の口からは間抜けな声しか出てこない。思わず癇癪を起こしてしまった。

 

「まぁ、ダイナー!この子、今確かに…」

 

「自分の名前を言ったのか…?アエルテス、オレがダイナーで、こっちがナタリアだ。ダイナー、ナタリア。言ってごらん」

 

「あいあー、ああいあ」

 

ダイナーとナタリアが目を丸くして驚く。俺の神童ぶりを見せつけて……いいや、17にもなって何をしてるんだ俺は。

もちろん、肉体年齢は0だが、それでも前世では立派な高校生をしていた身。この程度でドヤっては恥だ。

 

「なんて賢い子なんだ…!この子はやはり冒険者にすべきだ」

 

「そうね…私たちはLv.2だけど、きっとこの子ならLv.3…いいえ、Lv.5まで成り上がれる」

 

おっと?知らない単語だ。レベルというのがこの世界にはあるらしい。そして、20年(たぶん)ほど生きてもレベルが2程度、ということは1レベルごとの敷居が高いのだろう。

そして冒険者。なるほど、つまりは典型的な異世界という訳だ。転生者であるこの俺には、きっと最強のチート能力が備わっているに違いない。

 

 

……そう、思っていた時期が俺にもありました。

 

 

生まれてから5年目の夏、俺は歯も生え揃い、レベルを上げに村外れの森に一人で出かけた。武器はもちろん「ひのきのぼう」だ。歴代勇者は常にこうして旅に出たものだ。

仲間には村の子供ひとり…白い髪に赤い眼の美ショタ、ベル・クラネル君だ。彼はおっかなびっくりついて来てくれた心強い仲間だ。

 

「アエルテスちゃん…やっぱりやめようよぉ…」

 

「ベル、俺たちにはこの伝説の剣がある。大丈夫、俺はお前が力の種を持ち逃げしても怒らないぞ」

 

ああ、そうだ。俺の性別だが、女だったらしい。17年間連れ添った相棒は姿形もなく、親に似て顔の良いメスガキとなっている。

しかし、性別が何だと言うのか。勇者に性別なんかない。

 

「ちからのたね…?なにそれ」

 

「ああ…えっと……昔に、キーファという名前の男がいてな…魔王討伐の為に共に勇者と旅に出たはずなんだが、リソースをドカ食いした挙句に自分の都合でパーティから抜けて……って、そんな話は良いんだ」

 

ベル少年には時折、ドラクエの話を中心に俺が前世で体験したゲームや作品などの話をしている。こうしてやると、面白いくらいに目を輝かせるので、俺もつい話してしまうのだ。

 

「僕はぬすんだりしないよっ!?」

 

「だから連れて来てんだよ、信頼してるぜ?ベルくん」

 

森を数十分彷徨っても、スライムはおろかモーモンすら出ない。どうやら、この世界は治安がとても良いらしい。

……などと思っていたのも束の間。

 

『グギャアッ!』

 

「………ゴブリンだ」

 

素手の、石斧を持った緑肌の小学生ほどの背丈の亜人、ゴブリンが現れた。後ろから「ひぃっ」という小さな悲鳴が聞こえる。ベル少年は驚き、慄いているようだ。

 

「アエルテスちゃん…にげようよ…」

 

「いいや、こいつはここで倒す……こいつを野放しにしたら、別の人を襲うかもしれない」

 

「………っ」

 

今のはかなり勇者っぽかったんじゃないか?

ゴブリンに向かって棒を正眼に構えつつ、ベルを背後に睨みつける。

 

『グギャ……グギャアッ!』

 

ゴブリンも石斧を構え、互いに踏み込む。

 

「はぁぁっ!」

『グギャッ!!』

 

ゴブリンの斧を躱し、喉元に突きを入れる。元々剣道を(授業中に)齧っていた俺に死角はない。が、しかし。

 

ぼきり、と嫌な音が鳴る。突いたはずの「ひのきのぼう」は中折れし、ゴブリンには突き刺さらず、相手に苦しそうに咳をさせるのみだった。

あっという間に形成逆転。徒手空拳の女のガキである俺と、武器を持ったゴブリン。どちらが強いかなど明白。

 

「う、うぉあああっ!!」

 

『ゲホッゲホ……グギャ!?』

 

咽せているゴブリンにタックルをかまし、馬乗りになり、拳を握りしめて殴打する。

 

「オラッ!オラ!イヤーッ!」

 

『グェッ!グギッ、グァァァッ!』

 

「ごはっ」

 

ゴブリンの反撃だ!顔面にモロにパンチが突き刺さる。痛みで涙が出るが、ゴブリンと俺の体格は互角。体制が崩れた俺から離脱したゴブリンは、がむしゃらに殴りかかってくる。

 

「痛ってぇ……なぁ!クソ!」

 

『グギャーッ!ギャッ!グギャアッ!』

 

拳をスウェイで躱し、繰り出したのはミドルキックだ!ゴブリンの脇腹に突き刺さる。が、しかしゴブリンはものともせずに俺の鳩尾に拳を叩き込んでくる。

 

「うぐっ……おえ…なかなか、良いボディブローじゃ……がはっ!」

 

続けざまに叩き込まれるフック、付け焼き刃のボクシングではまるで相手にならない。パワーからして違うのだ、互いに素手ならば、より筋肉のある方が……強い!

 

「ぁ、がっ、やめっ……しゃあっ 喉元っ」

 

『ゲホォッ!?』

 

意識が朦朧として来たが、まだ骨は逝ってない。

疲れてきたのか、隙を見せたゴブリンの喉元に半分握った拳を叩き込む!

 

「……っ!あれは…」

 

ふと、ぐらついたゴブリンの影に石斧があるのを見つけた。咄嗟に駆け出し、斧を手に取り、追いかけてくるゴブリンに振り向いて、脳天に思い切り振り下ろす!

 

「はぁぁぁっ!」

 

『グぴッ?!!?』

 

ゴブリンは脳天をカチ割られ、そのまま灰になって爆発四散した。

肩で息をしながら、コロコロと転がってきた紫色の小石が俺の足元にくる。それを拾い上げ、拳で握り、天に掲げる。

 

それからの記憶はない。俺はその場で気絶したからだ。そして理解した。

 

この世界は、人間に厳しいと。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ベル・クラネルにとって、アエルテスという少女は初めて見た「英雄」であり、「冒険」だった。

幼い頃、ベルが祖父と住んでいた時、近所に住んでいたヘリオドーン夫妻の娘、アエルテスがベルを森に誘ったのだ。

 

アエルテスは、ベルと会うたびに聞いたことのない不思議な冒険譚の話をしてくれた。同い年であるのに、博識な様子でつらつらと語る姿は、幼いベルの脳裏にしっかりと焼きついていたのだ。

 

ある日、ベルはアエルテスに連れられて森へ探検に出かけた。その辺りにあった少し頑丈な棒を武器に、アエルテスは自分が勇者だからと鼓舞しながら森を進んでいった。

 

そして…ベルにとっても、アエルテスにとっても、初めての魔物が現れた。ゴブリンだ。

今のベルでは、最も簡単に屠殺できるような魔物。しかし、その日ベルの前で繰り広げられたのは、「怪物」と「人間」の死闘だった。

 

人も魔も、血みどろになりながら互いの命を賭けて戦う。時間にして、わずか5分ほどの戦いだったが、それは確かに、「冒険」であったし、5歳の子供が怪物に勝つという「偉業」であった。

 

「………という話があったんですよ。懐かしいなあ…」

 

「へぇ、そのアエルテス君は今でも君の憧れなのかい?」

 

教会のソファに腰掛けながら、ベルは自身の主神ヘスティアに笑いかける。

 

「憧れ…というよりは、どちらかといえば目標というか…ああいう冒険をしてみたいなぁって…」

 

「ぬぁにをぉ〜っ!?無茶は禁物だぞベルくぅん!」

 

もぎゃーっ!と喚くヘスティアをよそに、ベルの耳はノック音を聞きつける。教会をノックして入ってくる者など、ほとんどいないからだ。

 

「はーい、今出ます。神様、ちょっと行ってきますね」

 

「むぅ…誰だい、ボクとベル君のイチャイチャを邪魔する輩は!」

 

「イチャッ!?………行ってきます」

 

当惑しながら戸を開ければ、ベルの目の前に現れたのは──────。

 

「あれ?ベル君じゃん。何してんのこんなとこで」

 

金の色の、赤い瞳の少女が立っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

14歳になって、旅の許可が出たので迷宮都市(オラリオ)に来てみた。

5歳の頃に体験した凄絶な記憶から、しっかりと鍛えることを学んだ俺は、両親からしっかりと武術の手解きを経て、立派な剣士へと成長した。

 

そして気づいたのは、この世界には神の恩恵(ファルナ)というものがあるらしく、生身で魔物に挑むのは神代の時代のことらしい。

逆に考えれば、神代の人物と同じ偉業を成した俺は凄いのでは?

 

「そこの嬢ちゃん、オレらと遊ばねえ?楽しませてやるよ」

 

「お断りだ。男と寝るシュミはねえ」

 

()()()か……へへっ、この世は斯くも素晴らしい」

 

自慢だが、俺は実に顔がいいらしい。確かに、両親はイケメンと美女だった。その娘である俺も、相当に美少女なのだろう。

なので──────。

 

「自分、ごっついかわええやんけ。今からウチと遊ばない?」

 

このようなチンピラに絡まれることはしょっちゅうなのだ。よく分からない方言を使って絡んで来たのは、俺と同じくらいの背丈の、赤い髪に糸目の胡散臭い女。

 

「どこの方言だよそれは。悪いけど、この街に来たばっかなんだ。遊び場は知らないぞ?お嬢さん」

 

「なっ…ウチを……お嬢さん呼ばわり……!自分、おもろいやん。名前は?」

 

「ヘリオドーンのアエルテス。お嬢さんは?」

 

俺の勇者ムーブは、幼少期を過ぎても治ることはなかった。神代の英雄と同じことを成し遂げた俺には、きっとチート能力が備わっているに違いないし、選ばれし勇者であることに違いはないはずからだ。

 

「ロキ。【ロキ・ファミリア】の主神やっとるで」

 

などと、凄んだ様子で言ってくる自称主神。

なるほど。この子も──────俺と同じノリで生きているのだろう。それならば、乗ってあげるのもやぶさかではない。

 

「そんで…ヘリオドーンのアエルテスたんはどこの派閥(ファミリア)のモンや?」

 

「さあな。しかし、俺は……このオラリオに、神の恩恵(ファルナ)を受けに来た。神が、俺に視線を向けてくれればいいが…」

 

風を感じながらそう言うと、「ぷっ」とロキが笑いを堪えられずに吹き出した。こいつ、ハシゴを下ろしやがって……。そう思っていると、何やら凄まじい雰囲気をロキが放ち始める。

 

「その神が、ウチや」

 

ごくり、と喉から音が鳴る。凄まじいプレッシャーだ。息が止まり、脂汗が滲む。鼓動は信じられないほど速くなり、体が動かない。

だが、俺は選ばれし勇者だ。チート能力を持っているはず。故に、相手が神ならば…きっとどこかで会ったことがある。

人は未知を恐れる。故に、チート能力をもらった時に出会っているはずの神はもっと強大だったはず。

 

「………だったら、何だ?」

 

ガタガタに震えた、情けない声だったが、なんとか反抗できた。やはり俺は神代の英雄なのでは?

 

「へえ、根性あるやん。気に入ったわ、アエルテスたん、ウチ来る?」

 

ぱっ、とプレッシャーが解け、止まっていた呼吸が再開する。汗と涙でぐちゃぐちゃの顔を向けて睨みつけてはみるが、またあのプレッシャーをかけられたら俺は失禁する自信がある。

 

「………神ロキ、あなたのファミリアに…ベル・クラネルという少年はいるか?」

 

「居らんな。どんな子や?一応聞いといたる、ウチ顔広いし」

 

「白い髪に、赤い眼の、あどけない少年だ。歳は14。背は165C。」

 

少しの間唸ったあと、ロキは手で槌をついて「あの子か」と呟く。

 

「ドチビんとこの子やな。こないだベートが言っとったわ。せやけど、アエルテスたん。ドチビんとこはやめとき?零細ファミリア入ってもええことないで?」

 

おお、ベル少年…いじめられているのか君は。

可哀想に。お兄さん、もといお姉さんが慰めてやらなければ。

 

「ところで、神ロキ。ドチビ様というのは、どのような神なんだ?」

 

「ぷっ…ドチビは名前ちゃうわ!くくっ……おもろ…神会(デナトゥス)で話す話題増えたわ…!はぁ、えっとな。ドチビは名前やなくて、ヘスティアっちゅう女神やな」

 

女神か。そして零細ファミリアと言っていたことから……おそらくはヘス何某様とイチャイチャやっているのだろう。

元男として、それは邪魔するわけにはいかないな。

 

「そうか…ならば、お言葉に甘えてあなたのファミリアに入れてもらおう。」

 

「その言葉を待っとった!ファミリアの拠点(ホーム)行くで、着いといで」

 

ロキに言われるまま付いていくと、着いた先には豪勢な屋敷があった。広い庭に、手入れが行き届いた芝。門兵は明らかに俺よりも数段強い。

内装は非常に豪華で、さらには至る所に俺の両親並みや、それ以上の強者の気配がする。

 

ロキの部屋に着く頃には、連れてこられた捨て猫のように縮こまってしまっていた。

 

「ほんま君おもろいなぁ、さて…服脱いで。」

 

「えっ」

 

「服、脱いで?」

 

「ちょっ、いきなりそんな、積極的な…」

 

「ええから脱げぇい!」

 

ロキの魔の手が俺に迫る。抵抗むなしく、俺は剥かれてしまった。さめざめと泣いていたら、流石に不憫に思ったのかロキが説明してくれた。

どうやら、神の恩恵(ファルナ)を刻むためには背中に神血(イコル)を垂らし、ステイタスを記入する必要があるのだとか。

 

レベルに続いてステータスもあるとは。いよいよゲームじみてきた。

 

「ほい、完了〜!確認しいや」

 

──────────────────

【アエルテス・ヘリオドーン】

Lv.1

《基本アビリティ》

力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0

《発展アビリティ》

 

《魔法》

【】【】【】

《スキル》

【逆境奮起】

・逆境時、全能力の超高補正

・精神汚染軽減

・死への恐怖無効

 

──────────────────

 

ロキから手渡されたステイタスシートには、そのように書いてあった。言うに、これは今までに歩んで来た人生が記されると言う。

なるほど、確かに俺は思えば常に格上と戦ってきた。ゴブリン退治をはじめ、Lv.2である両親とのスパーリング、勇者ムーブによる恐怖の誤魔化し、そして転生した時に死んでいるが故の生死感の軽さ。当てはまっている。

 

「どや?確認できたかいな。自分、苦労してきたんやねえ…」

 

「まぁ、それなりにはな…」

 

「しっかし驚いたわあ。勇者だか英雄だかみたいな言動やのに、それらしいスキルは発現せんかったんやね。」

 

痛いところを突かれた。が、しかし。チート能力はきっとあるはずだし、俺は神に選ばれている存在のはずだ。

 

「さて……みんなに挨拶しに行って()いや」

 

そうして、俺は神ロキのもとで、勇者となるために冒険をするのであった──────とはならないのが現実だ。

 

「誰だこのガキ」

 

リビングに降りて、開口一番に言われたのがコレである。ガラの悪い狼人が不愉快そうに放った言葉は、俺に衝撃を与えた。

 

「雑魚に構ってる暇ねえんだよ、どっか失せろ」

 

「やめないか、ベート。ファミリアの新入りに向かってそれは無いだろう」

 

緑髪のエルフのお姉さんが庇ってくれたが、もはや俺のささくれた心は既に反撃態勢だ。

 

「ああ、それなら出て行ってやるとも。ステイタス更新の時以外は戻ってこない。だが、覚えておくんだな!次に出会った時、俺が雑魚かどうかな!」

 

ドアを蹴破り、両親から貰った武器を手に、俺はそのまま拠点(ホーム)を後にしたのだった。

 

 

・・・・・・

・・・・

・・

 

 

「と、言うわけで泊めてくれ」

 

「と言うわけで、じゃないよっ!?」

 

時間は夜。場所は廃教会前。見知らぬ赤い髪に眼帯の女の人に泊まれる場所を聞いたら、ここを提示されたのだ。

目の前には、俺の幼馴染であるベル・クラネル少年。随分と大きくなって、俺よりも7Cも大きい。

 

「どうしたんだい?そんなに騒いで…キミは?」

 

奥から「ロリ巨乳」を体現した存在が現れた。なるほど、これはロキが嫉妬するわけだ。

 

「初めまして、神ヘスティア。俺はヘリオドーンのアエルテス。このベル君の…まあ、昔馴染みだ。よろしく頼むよ」

 

にっこりと勇者スマイル(?)で会釈する。

 

「キミがアエルテス君かぁ!ベル君から話は聞いているよ。それでなんだけど……」

 

ヘスティアが俺に手招きをして、「ベルに懸想してないか」という内容の言葉を耳打ちしてくる。申し訳ないが俺は異性愛者だ。女の子の方が好きに決まってる。

大丈夫だ、と返すと、ヘスティアは安心したように胸を撫で下ろす。

 

「事情は聞かないでおくよ、今日は泊まっていきたまえ。た、だ、し!キミとベル君は離れて寝ること!」

 

離れて、の部分を強調してヘスティアは俺が泊まることを許可してくれた。これはありがたい。

 

こうして、俺の波乱に満ちたオラリオ生活が幕を開けたのだった。




【キャラ紹介】
☆アエルテス・ヘリオドーン
自分をチート能力を持った英雄か何かだと勘違いしている一般人。
根性だけは一人前であり、いつか自分が叙事詩に書かれた時のために自分が思う英雄・勇者ムーブを続けている。
母親は魔法使いで、父親は剣士だった。
実際のところチート能力はなく、神にも選ばれてはいない。
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