自分を英雄だと勘違いしている元男がダンジョンに潜るのは間違っている 作:札幌53位
「………行った…みたいだな」
18階層まで行くことになった俺たちは、魔物の群れをやり過ごしながら、何とか16階層まで歩みを進めることができた。
リリの提案で、13〜16階層にある縦穴を使おうと言われたので、その通りにしたら物凄く早く着くことができた。
「……前回、17階層で
「そのゴライアスを俺が倒すのじゃダメなのか?」
「アエルテス様がいくら強くとも、リリたちを守りながらゴライアスを討伐するのは不可能です。」
む。そこまで言われたら試してみたくなるのが俺という生き物だ。だが、リリとヴェルフを護りながら戦うとなれば無理があるだろうな。
「……とにかく進みましょう。時間との勝負です、早く行かなければ…」
「なら、あの群れを突っ切った方が早いな。ちょっと見てろ、俺が全部片付けてくる。」
そういって歩みを進め、儀礼剣を取り出さずにフレイモスを使って背後からミノタウロスを襲う。首を刺して、そのまま体重を乗せれば─────すとん、と首を落とせる。
『グルッ……キャン!?』
「はいダメー。炎吐いても無駄でーす。オラッ逃げんじゃねえ!」
逃げ出したアルミラージを踏みつけ、そのまま介錯。ゴウランガ!哀れな白兎は首を刎ねられ絶命!残るはよく分からない芋虫とバットバットのみ。
飛んでくるバットバットを回転斬りで3枚におろし、芋虫は炎で焼き切る。
これで一つの群れが一掃された。手慣れたものだな。
「おーい、今のうちに早く行くぞ〜」
モンスターの塵と血で一張羅が台無しだ。18階層に洗濯できる場所があればしっかり洗おう。
そう思っていると、ヴェルフが言いにくそうに話しかけてきた。
「なあ、アンタ…アエルテスって言ったか。どうしてずっと笑顔でいるんだ?」
「変なことを聞くな。ピンチだからこそ笑うんだぞ。そうしたらなんか元気になる」
「そりゃ空元気って言うんじゃ…まぁいいか。変なことを聞いて悪かった」
痛いところを突くな。だが、否定はしない。
そうして、適度にリラックスしながら…正確には、リラックスしていたのは俺だけだが、比較的ベル達の負担を少なくしながら、16階層中頃まで辿り着く事ができた。
「『燃え尽きろ、外法の業』……【ウィル・オ・ウィスプ】!」
ヴェルフの魔法が火を吹こうとしたヘルハウンドを内側から爆発させる。なるほど、これが
「ここからは
ものすごく臭い袋を出して、リリがそう言い始めたので、俺は若干距離を取った。匂いが移るのはちょっとな。
しかし、その効果は凄まじく、まさにドラクエで言うところの聖水のような効能だった。もしかしたらニンニクとか詰まってるのかもしれない。
だが、それも1時間もすれば効果は切れてしまう。俺たちは地図のない状態で歩いているため、全く進めていないのに効果が切れることだってある。
それに──────。
「ヴェルフ、ヴェルフ!……
「ベル、残念だがリリも倒れているぞ。俺が前線をやる。ベルは二人を頼めるか?」
Lv.1の二人が中層を歩くには、この場所は厳しすぎる。かれこれ半日以上休まず歩き通しだ。ベルにも疲れが見える。
俺は目の前に現れたミノタウロスの首を一刀の下に両断し、その血を浴びる。
「荷物は捨てて行け。どうせ持てない。」
Lv.2の膂力でも、元から鍛えていなかった上に疲労困憊なベルではヴェルフとリリを運ぶので精一杯らしい。持ちにくいと言うのもある。
「ここから先は17階層だ。迅速に行くぞ。」
穴に飛び込み、17階層へ入る。巨大な壁が俺たちを出迎える。なるほど、これが『嘆きの大壁』か。壮観だな。
「ベル、俺がゴライアスが出るか見張ってるから、早めに行ってくれ。ここまで来たらもう大丈夫だろ」
「だけど……」
「行くんだ。ほら、早くしないとゴライアスが湧いてしまうぞ」
「……ごめん。」
ベル達を見送り、嘆きの大壁を見上げる。待つこと5分、ベルが18階層への道に辿り着く────数十秒前に、壁が割れる。
その音を聞き、慌てて走り出すベル。あのペースなら間に合うだろう。だが、万が一のこともある。
「────来いよ、ゴライアス。勝負しようぜ」
儀礼剣を取り出し、天に掲げる。
『ゴアアアアーーーッ!!!!!』
「黎明をくれてやる!」
現れたゴライアスに、初手でチャージ全消費、フルパワーの黄金の炎刃を叩きつける。
凄まじい爆発と共に、ゴライアスが大きくよろめく。傷口には黄金の炎が散っているらしく、ゴライアスの表皮を焼け焦がしている。
『ゴアアアア!?』
「混乱してやがるな…畳み掛けるぞ、ゴライアス!」
跳躍し、ゴライアスの腕の上ほどまで上昇したあと、回転をかけて斬り下ろす!だが、剣は皮膚と若干の肉を裂いた程度で止まる。
Lv.2だとこれが限度か。おそらく、魔法を使っても勝てそうにないだろう。ならば────この場は、限界まで戦ってから退くのみ。
「及び腰なのは癪だが……」
そのまま腕に斬り込みを入れながらゴライアスの首元に向かって走っていく。7
「生憎、今は守るべき相手もいないんでな!」
首元にフレイモスを叩き込む。そのまま表皮を斬り抜け、地面に降り立ってから足元を斬りつける。デカブツ相手にはお似合いの戦法だ。
すかさず地団駄を踏んでくるゴライアス。回避は…し切れないな。
「…っ、ぐ…!重っ…!?ぐっ、うぐおっ…!!」
地団駄一回で骨がミシミシ言っている感覚がある。たまらず飛び出すと、逃げ出した先に拳が飛んでくる。
なるほど、これがLv.4相当の
「がっ………!?」
そのまま大壁に叩きつけられ、情けなく地面に落ちる。意識を手放しそうになる────が、身体の芯から活力が漲ってくる。
なるほど、これが『不屈』の効果というわけだな。
『ゴアアアアッ!!!』
「はは、面白えじゃんか…!」
再度、追撃してくるゴライアスの攻撃をギリギリで躱し、腕を斬りつける。鮮血が俺の頬に当たるが、気にせず斬撃だ。
もう一度怯ませて、ここから逃げる必要がある。そうしたら、あとは地上に戻るだけだ。
「…………はぁ、クソ。いつから俺はこんな臆病になったんだ。」
ゴライアスを撃退し、安全に地上に戻ろうとしたが────
敵を前にして、逃げ出すのは勇者のやることじゃない。これまで見てきた作品の中で、チート転生者たちが敵を目の前にして逃げ出しただろうか?
いやまあ、探せばあるかもしれないが。
俺はそれをしたくない。
「それに……テメェ、硬いだけであんま痛くねえなぁ!」
勇者のような笑みを浮かべ、臆病な自分を追い出す。
きっと、ベル達の護衛や【タケミカヅチ・ファミリア】の護衛で気が弱っていたのだろう。逃げ出すなんて、俺らしくない。
「『我は光、我は終。汝が炎抱く限り、全てを灰に帰さん。我を包め、光封の鎧』────焼き尽くせ、【リュクシオン】ッ!」
胸から炎が噴き出し、それは外套となって俺を包む。足に炎を纏わせ、フレイモスに炎をチャージしていく。
その間に、ゴライアスへ吶喊し、炎の噴射で加速した刺突を奴の目玉に叩き込む!
『グォァァアアアアア!??!!!?』
さらに、そのまま顔面の上で跳躍し────フレイモスに溜まった炎を刃に変え、振りかざす。
「暁炎を剣とす!」
黄金の炎刃がゴライアスの顔をズタズタに焼き、その目からは涙が出てくる。よほど痛かったのだろう。顔を斬られた生き物は大抵こうすれば泣くからな。
覚えておいて損はない。
『ギャアアアオオオオアアア!!!!!!!』
「よっ……と!ははっ、当たり!」
顔の上にいる俺を叩き潰そうと、ゴライアスが俺めがけ拳を振り翳してくる。しかし、俺はすでに跳躍している。
そのまま顔面に自分の渾身の一撃を叩き込み、悶絶するゴライアス。
「【タケミカヅチ・ファミリア】は駆け引きを大事にしてると言ってたっけな。なるほど、こりゃ真理だな。」
この時、調子に乗ったのが間違いだった。
「さっさとトドメを──────ぼぐっ」
明滅する視界。かろうじて見えたのは、腕を振り抜いたゴライアスと、俺が地面に転がった跡だ。口の中はすでに鉄の匂いでいっぱいだ。
「てんめ…ヤケクソで、当てやがってからに…!」
俺とゴライアスは同じ体勢で起き上がり、俺はポーションを飲み、ゴライアスは拳を振り上げる。来る、と思った瞬間に回避し、俺のいた位置に拳が振り抜かれている。
「っぶねえな!オイ!」
『───ッ、ゴアアアアアアッ!!!!!』
何かが身体を通り抜ける感覚。すまんな、
「隙あり、だぜ────【
黄金の炎槍が飛び出し、ゴライアスの胸に浅く突き刺さる。これでいい。これは
再びゴライアスが俺に拳を振り下ろさんとしてくるが、俺はそれに合わせ、炎槍を構える。
「これで最後だ…!【
「【リル・ラファーガ】!」
突如、ゴライアスの上半身が消し飛ぶ。
金色の影が、俺の前に現れる。困惑の声が漏れ、フレイモスを持つ手が脱力し、思わず膝をつく。
「……大丈夫?」
きっと、この少女は───アイズ・ヴァレンシュタインは、特に善悪とかは無いのだろうな、と痛感した。
◆◆◆◆◆
アイズに連れられ、地上に爆速で戻ってきたアエルテスは、ロキの大きな笑い声と共に迎えられた。
「おまっ…アエたん……!ぶふっ…なんやその不貞腐れた顔……!」
「別に。何でもないですよマジで」
明確に不機嫌そうなアエルテスは早急なステイタス更新をロキに頼んだ。少しでも気を紛らわしたかったのだ。
更新している最中も、ロキは絶えず笑っていた。
「んふふ……ほい、出たで。」
──────────────────
【アエルテス・ヘリオドーン】
Lv.2
《基礎アビリティ》
力:G217 耐久:F384 器用:G203 敏捷:H192 魔力:F321
《発展アビリティ》
不屈:I
《魔法》
【リュクシオン】
・
・自身を含めた周囲に延焼する。
・詠唱式『我は光、我は終。汝が炎抱く限り、全てを灰に帰さん。我を包め、光封の鎧』
【】【】
《スキル》
【逆境奮起】
・逆境時、全能力の超高補正
・精神汚染軽減
・死への恐怖無効
【
・炎に対する高耐性
・火炎誘引
──────────────────
「帰る!」
ぷんすこ湯気を立てながら扉を開け、出ていくアエルテスに「家はここやん」と呟くロキだったが、すでにアエルテスはアイズと共にダンジョンへと潜っていってしまっていた。
3時間ほど経って、アイズとアエルテスが18階層まで戻ってくると、ちょうどベル・クラネル一行が目を覚ました頃合いだった。
「アエルテス!ゴライアスは……?」
起きがけにベルは彼の寝顔を見守っていたアエルテスに聞くと、不貞腐れながら「倒した。アイズ先輩が」とだけ言って、そのままどこかへ移動していく。
(たぶん自分一人で倒したかったんだろうなあ)
などと思いつつ、ベルは仲間たちの起床を待った。そのころ、アエルテスは【ロキ・ファミリア】の設営したキャンプ、その本陣へと足を運んでいた。
「よく来たね、アエルテス。初めての中層はどうだった?」
「フィン団長、俺悔しいです」
「ベートから聞いたよ。一人で頑張ってたところをアイズに助けられたんだってね。ご愁傷様。でも、骨が幾つか折れていたんだろう?」
「なんでベートから…?まぁいいや。とにかく、俺も強くなります。次の遠征は連れて行ってくださいね」
「Lv.3になったらね。」
しょんぼりとしながらフィンのもとから離れ、やることが無くなったのか適当な樹木を相手に空手トレーニングを始めたアエルテスに、一人近づく者がいた。
他でもない、ベート・ローガである。
「おい雑魚女、調子はどうだよ」
これまで、ベートはアエルテスに近づくことはなかった。だが、Lv.2を迎え、強化種を倒し、ゴライアスさえ倒しかけた者を、もはや雑魚とは見做さなくなったのだ。
「………」
「アイズに手柄取られたんだってなァ。そりゃあお前が弱ェからだ。テメェに足りねえモン、教えてやろうか?ま、雑魚は雑魚らしく這いつくばってても良いけどなァ」
ベートなりの激励である。だが、彼にライバル心を抱いているアエルテスからしてみれば、それは挑発以外の何物でもなかった。
「テメェぶち殺すぞクソ犬が」
回し蹴りをベートに放ったアエルテスだったが、その攻撃は軽く防がれる。
「…俺と、闘ろうってのか?」
「伝わらなかったかぁ?犬っコロ…!ワンと鳴かせてやるよ!」
近くに刺してあったフレイモスを手に取り、アエルテスが構える。ベートはアエルテスが落ち込んでいないことを確認すると、蹴りの構えを取り、獰猛な笑みを浮かべる。
「来い、胸ェ貸してやるよ」
「そうか────よッ!」
ノーモーションから放たれる炎刃。ベートは軽く弾くが、その弾いた隙をついてアエルテスが肉薄する。
それにベートは対応し、蹴りを顔面に叩き込む……前に、アエルテスはくるりと空中前転し、剣の峰でベートを思い切り打撃する。
「随分とやるようになったじゃねェか。口だけのカスじゃないってこったな!」
しかし、ベートは腕でそれを防ぎ、そのまま回し蹴りをお見舞いする。バックスピン回避でやり過ごしたアエルテスは、そのまま炎刃を連射する。
どれもチャージ時間1分程度の軟弱な炎だ。だが、喰らったことのないベートには、
「本命は────これだよ!」
「チッ…なにっ!!」
ゴライアスに傷をつけ得る攻撃。それを警戒していたベートは、本命以外を捨て置こうと被弾覚悟で動く。
だが、真の本命は、本命と叫んだ炎刃の
「……やるじゃねェか、アエルテスゥ…!」
間一髪で回避したベートは、惜しみない賞賛を贈る。それに、アエルテスは少し寂しそうな、嬉しそうな顔を見せる。
「やっと…名前で呼んでくれたな」
「チッ…調子に乗んなよ。次は俺から行くぞォ…!」
楽しくなってきた、と言わんばかりのベートだったが、その頭にぽかんと一撃を受ける。騒ぎを聞きつけて来たリヴェリアである。
「こら。俺から行くんじゃない。アエルテスを回復させるのは誰だと思っている?」
「………チッ、こっから面白くなるとこだってのによ…おいアエルテス!」
「何?」
「今度から
「まあ大胆。でも、ありがとね」
アエルテスは、にっこりと笑うと、そのまま仰向けに倒れた。疲労が溜まっていたのか、すっかり眠ってしまったのだ。
・・・
・・
・
時間は流れ、夜。ヘスティア達ベル・クラネル捜索隊が18階層『
ヘルメスは、
「今度は何をやらかすつもりですか、ヘルメス様」
「決まってるだろ?連れ出すのさ、夜の街に……ごめんって。そんな睨まなくてもいいじゃないか。怒った顔も可愛いなあアスフィ」
ぽんぽんと頭を撫でるヘルメス。
「もうやだぁ…」
「────んで、結局何するかって言うとだね。オレがあげた
「えっ今気づいたんですか?」
「ああ違う違う。
「……………どこから、そんな金が」
「フレイヤ様からパクった☆」
というよりは渡すように言われたんだけどね、と付け加え、ヘルメスは静かにアエルテスのテントに侵入する。
「どれどれ……ふむ、白か…」
「何を確認しているんですか…!」
ヘルメスはたんこぶを作りながらも、眠っているアエルテスが目を開けたらすぐに見れるように
まるで、寝起きドッキリのような仕掛けだ。
「ふむ……C〜Dはあるな。よし、出ようか」
アスフィに蹴り飛ばされてヘルメスが退室し、その音でアエルテスが目を覚まし────再び眠りについた。
「よし、成功だな。ズラかるぞアスフィ」
「ああもう…!ほんとヤダこの主神…!」
◆◆◆◆◆
ぼんやりと、仄暗い光が俺を包む。
歌え、
誰だ……?ここはどこなんだ?
天より火を盗みし紅き神、████のことを。
灰より都市を築かせ、
燃ゆる剣で民を裁き、
勝者と敗者の名を等しく焼いた、その御業を。
この声は…聞き覚えがない。だとしたら、やっと来たのか。神様が…俺に視線を向けているのか?
汝、終焉を呼ぶ光なり。
その炎は都を照らし、また焼き尽くす。
何のことだ…なんなんだ一体?
形のない何かが、だが確かにあるそれは、俺に視線を向けると、金色の炎を俺に注ぎ始める。
「ぐ………っ!?あが…っ!!?」
ジュウジュウ音を立てて皮膚が焼けていく。そして、炎が俺の血管に、神経に、筋肉に、内臓に入っていく。全身を裂かれるような痛み。
涙が溢れるも、それは霧となり、余計に俺を苛んでいく。
「誰か……いないのか………!父上…母上……ベル…ロキ……アイズ先輩…リヴェリアさん……フィン団長…!」
もがくたびに煮えたぎる血は流動し、黄金の炎がうねるように肌に巻き付く。
それと同時に、幻視するのは俺がオラリオを焼き払っている姿。燃える炎のような金色の髪を靡かせ、冷え切った目で、燃え盛る人々を見ている。
『苦難の果てが、こんな光景だというのか?』
幻影は言う。俺こそが、安寧を焼き、混乱を齎す大火なのだと。
おまえは火を欲するか、あるいは滅びを選ぶか。
拷問のような感覚が、長い時間続く。
いつしか涙も枯れ、問いに向き合わなければならないことを悟る。
「おれは…」
もう、良いんじゃないのか。
貴女はよくやったよ。痛いのにも耐えて、苦しいのにも耐えて、らしくない英雄ごっこも堪能したじゃないか。
「だまれ…」
燃え尽きてしまおう。私と一緒に。
「…………だれだ、てめぇ…しってる、気配だ」
俺の自我に、誰かが入り込んできている。それも、俺の手では逆らい切れない存在────
「ロキ……っ、いま、だけでいい…!おれを、見ろ!」
このまま、終わるわけにはいかない。
たとえこれが、俺に救世を諦めさせようとする神の試練だったとしても。
だったら、俺はその責務を全うするのみ。
「たとえ……ほのおが、おれをやきつくしても…」
拳を握り、焼け焦げた身体を起こす。
「次の火が、人を焼くのだとしても…!俺は、照らしてみせよう…新たなる、黎明を!」
手を伸ばし、光を掴む。
誰かが、微笑んだような気がした─────。
・・・
・・
・
目を開けると、心配そうに見守る人々に囲まれていた。場所は【ロキ・ファミリア】のテントで間違いはないだろう。
アイズ先輩を筆頭にして、リヴェリアさん、フィン団長までいる。
「え、っと……?すみません、今起きました。何か事件があったんですか?」
きょとんとしながらそう聞くと、フィン団長は若干呆れ混じりの顔で「大丈夫そうだね」と呟いた。一体なんだと言うんだ?
「アエルテス、君は夜中じゅう魘されていて、様子を見に来たラウルが近づいたら燃えたんだよ。覚えはないかい?」
「なにそれ知らん……怖…」
ふむ、と考え込むフィン団長。続けてリヴェリアさんが話し始める。
「おそらく、この
リヴェリアさん曰く。何者かの策謀に引っかかった俺は、何かしらの神に手を加えられた
それに抵抗してくれたのは、他でもないロキからもらった
「魘されている時のことは覚えているか?」
「……それが、全く。」
寝ている間にロキから見られたような気がしたが、本当にそれだけだ。
「……寝汗がすげえや。水浴びしてぇ…」
汗でベタベタになった服と身体を清めたいと言うと、どうやらこれからアイズ先輩たちも水浴びをしに行くらしい。
これは好機と思い同伴させてもらうことに。無論…俺は少し離れたところで浴びさせてもらうが。
「はぁ……気持ちいい…………」
18階層、『
アイズ先輩たちが入っている池のすぐ近くであるので、まぁ何があっても安心だな。
「装備についた血汚れも落ちたし、水は気持ちいいし……極楽とはこの事よな…」
悠々と寛いでいると、木の上から視線を感じる。池の中の石を手に取り、すかさず投擲!聞き慣れた「ぐえっ」という声と共に、がさかざと落ちる音が聞こえてきた。
「………ベル?なにしてんのそんなとこで…」
「ちっ、ちち、違うんだ!これはヘルメス様があっ」
あの不審者か。なるほど、理解した。
「なーに恥ずかしがってんだよ。今更減るもんでもねえでしょう。それより、ほら。誰かに見つかんないうちにどっか行きなー?」
「わ」
立ち上がり、特に隠すこともせずに注意すると、ベルは顔を真っ赤にして走り去っていった。あ、お前そっちはアイズ先輩たちの──────
「う、うわあああああああっ!!!!!!!」
言わんこっちゃない。
…だが、やはりベルも思春期なのだろうな。女の子の裸体には一丁前に興奮するらしい。まあ、性欲が無かったら人間としてちょっとアレだもんな。
「おーい、アエルテス〜!そっちにアルゴノゥト君来なかっ……なんですっぽんぽんで仁王立ちしてるの?」
「あ、ティオ────どわぁああっ!!!」
俺に声をかけにきたティオナは、服を着ていなかった。いやまぁ水浴びをしているのだから当然っちゃ当然なのだが、それにしたって無防備にすぎる。
「アエルテス、何かあったの…?」
アイズ先輩まで来た。当然ながら俺は水の中に潜り、何も見えないようにしている。鍛え抜かれた耐久さえあれば5分や10分息を止めるなんてわけもないことだ。
「あははっ!アルゴノゥト君とアエルテスって幼馴染なのホントなんだね〜!反応が似てるもん」
違うんだティオナ。これはな、童貞なら誰でもこうなるんや。堪忍してつかあさい。
結局、窒息して気絶しかけた俺は後悔と共に水浴びを終えたのだった。
【アイテム紹介】
☆
だが、実際はフレイヤによる「魂の洗浄」を狙ったものであり、あわや前世の人格が綺麗な形に歪められるところであった。抵抗するためには、強靭な意志と、主神の視線が必要。
また、これを