自分を英雄だと勘違いしている元男がダンジョンに潜るのは間違っている   作:札幌53位

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水の迷都へ

 

「武装したモンスター…」

 

ギルドの受付カウンターで、ローズさんが俺にダンジョンに潜るなら、と教えてくれた。十中八九、異端児(ゼノス)だろう。

 

「そう。リヴィラの街の冒険者も手酷くやられてるらしいの。あなた、これから下層を目指すなら気をつけてね」

 

「うっす、まぁほどほどにします」

 

「…分かってんのかな」

 

とうとう被害がリアルタイムで出てきたか。リドには悪いが、見かけたら討伐させてもらおう。

やはりモンスターはモンスター。人の言葉が話せても、所詮は分かり合えない運命(さだめ)だ。あの時始末しておけばよかった。

 

「分かってるよ。見かけたらなるべく早く殺す。」

 

「違う。本当に話聞いてたの?リヴィラのLv.3、Lv.2冒険者からなる混成パーティが壊滅させられたから、あなたは一人で無茶しないで、見かけたらすぐ逃げること!分かった!?」

 

「……はい」

 

しっかりと怒られてしまった。ローズさんは下層を目指すなら、と言って親身になって下層で出てくる魔物やギミックを教えてくれた。

そして、決して一人で無茶をしないことも。

 

「はあ、結局5時間も絞られた…これじゃ今日は行けても18階層だな。今日はあっちで泊まるか」

 

「おや、アエルテス。これからダンジョンですか」

 

「リューさん!お店以外で会うのは戦争遊戯(ウォーゲーム)以来だね」

 

「相変わらず壮健そうで何よりです。」

 

にっこりと花のような笑顔を向けてくるリューさんに微笑み返して、18階層を経由して下層まで行く計画を話した。

む、とリューさんは少し固まり、仲間の有無を聞いてきた。やはり一人で下層は厳しいのか?

 

「特に考えてないけど…やっぱ、仲間は必要?」

 

困ったな、仲間がいると偉業にはならないんだけどな。黒いゴライアスの時も、食人花の時もそうだった。

故に、今回の下層行きも一人で決行しようとしていたのだが。

 

「はい。冒険者ならば、頼れる仲間を作っておきなさい。あなたの幼馴染もそうしているでしょう。」

 

「ううん…頼れる仲間かあ。」

 

そう言いながら何人かの顔を思い浮かべてみる。

アイズ先輩…は頼れるが、多分俺の出番はない。ティオナ、ティオネも同列だ。俺が戦う間も無く全て終わらせそうだ。

その点、ディックスとグランは俺にちゃんと華を持たせてくれた。まあ、本人たちは「面倒だから」と言っていたが。

 

「数人思い当たるのはいるけど……うん?」

 

目の前のリューさんの顔を見る。その表情は相変わらず笑顔のままだが、耳が激しく主張している。

なるほど、つまり──────信頼できる仲間は目の前にいたようだ。

 

「リューさん、今日時間あれば、18階層まで一緒に行ってくれない?」

 

手を差し伸べて言うと、リューさんは嬉しそうに探索(デート)のお誘いに乗ってくれた。

その仕草にドキッとしつつ、俺はエルフに対する警戒心を強める。この種族、顔が良すぎる。多分なんか頼まれたら何でも聞いてしまいそうだ。

 

「全休を取ります。少し待っていてくださいね」

 

一緒に『豊穣の女主人』まで行き、ミア母さんに全休を申請してくれた。最初は呆れていたミア母さんだったが、最終的には折れてくれた。

やはり、娘さんを俺にください!と頼み込んだのが功を奏したか。

 

「あ、アエルテス。ああいった言葉は心に決めた方に言うものです。そんな大胆な…」

 

「リューさんを勝ち取れるなら幾らでも言うよ」

 

はっ、このエルフかわいいなぁオイ!?

だが手は出さない。彼女にはシルさんというお似合いの相手がいるし、密かにベルに気がある様子なのも分かる。

尤も、本人は気がついていないようであるが。

 

「ま、いいか。行こうか、リューさん」

 

「ええ。」

 

しかし今だけは俺がリューさんの時間を独り占め出来る。それだけで充分だ。俺はそれで良い。

 

 

・・・

・・

 

 

いざダンジョンへ潜ると、やはりリューさんの技巧には目を見張るものがある。

木刀のような火力の低そうな武器でヘルハウンドなど一撃で伸してしまうし、儀礼剣を使って俺がヘイトを吸引しつつ魔物の相手をしていると魔法が飛んできてカバーしてくれるし。

 

「……一旦片付きましたか。アエルテス、怪我はありませんか?」

 

「お陰様で。俺は耐久の伸びが良いから、ワンチャン狙えたかもだけど…ここから長いからな」

 

「む。成長目当てに敢えて攻撃を受けるのは良くない。そう言った積み重ねが冒険者を死へと追いやりますから」

 

「それもそうか…」

 

だが実際、ピンチになれば首筋が痛んでくるはずだ。実質的なカナリアを持っているのだから、そうそう危機に瀕することは少ない。

それに、だ。難局は打ち破ってこその勇者だろう。

 

探索はとんとん拍子に進み、想定していたよりもずっと早く18階層に辿り着いた。

 

「着いて…しまいましたね。」

 

「そうだね…どうしよっか、観光でもしていく?」

 

「いえ。貴女は下層に行くのでしょう、ならばここで止まっている場合ではありません。ですが…今日は、貴女と一緒にここで野営しましょう」

 

「よし来た」

 

時刻は大体20時頃。野営の支度を済ませ、リューさんが作ってくれた弁当を二人で食べて、ちょうど眠くなってくる頃。

リューさんが眠った後、美少女と同じ部屋で寝ることになり目がギンギンになった俺は、しっかり眠るために酒をかっ食らおうと比較的安いと噂の酒場に来た。

 

「いらっしゃい、お嬢ちゃん。ガキに出せるのはミルクぐらいだが、あいにく切らしててな。大きくなってから出直しな」

 

「じゃあ水のエール割り100%で、舐めてんじゃないぞ」

 

「舐めてんのはお前だろクソガキが……」

 

店主と睨み合っていると、横から聞きなれた声が掛かってくる。ドスの効いた、粗暴でハスキーな声。ディックスの声だ。

 

「ようアエルテス。この間ぶりか?」

 

「ディックス!いると思ったぜ。今回こそ下層に潜ろうと思ってな。知り合いの女の人に一緒に来てもらったんだ。」

 

「へえ、そりゃ良い。店主!こいつに蜂蜜酒(ミード)を。俺のツレだ。────んで、下層に行くんだっけか。なら…あの儀礼剣はここに置いていけ」

 

店主が酒を注いで持ってくる。ディックスはLv.5なので、顔も広いのだろう。

それにしても、儀礼剣を置いていけとはどういうことだろうか。

 

「下層のモンスターは湧く量が尋常じゃねえ。お前のヘイト吸引の剣は有用だが…下層じゃ命取りだ。ってのは建前な」

 

「お、おう。建前なのか」

 

「俺は考えた。お前の儀礼剣がありゃ、あのモンスターどもを寄せ集められるんじゃねえかってな。ただ、それをお前から奪うのは偲びねえ。だから貸してくれよ」

 

ふむ。確かにそうだ。どうせ貰い物だし、ヘルメスは信じられないし、ディックスは信用できる仲間だ。貸してしまおうか。

 

「いいぜ、後で返してくれ」

 

「おう。それと、明日は俺たちも19階層あたりを探る。途中まではついて行ってやるよ」

 

「ありがと。頼りにしてるよ」

 

「お前のお陰でこの辺りにいるってのが分かったからな、お安い御用だ」

 

次の日。酒のおかげでリューさんと共寝できた朝、俺は早起きして朝食を作り、二人で食べてから別れた。

ディックスたちは既に19階層の入り口で待っていたので、遅れてきたことを謝りながら出発することにした。

 

「もはや19階層は見知ったようなもんだな……って、あれは…竜女(ヴィーヴル)?」

 

「レアモンスターか…捕えるぞ、急げ!」

 

19階層半ばで、俺たちは竜女(ヴィーヴル)を発見した。それも、容姿の整ったものだ。十中八九…異端児(ゼノス)だ。

こいつが知恵をつける前に捕らえて、仲間の位置を知っていたら吐かせて、始末する。

 

「待て、あれは…ファイアバードと【リトル・ルーキー】?」

 

「ベルがここに…?すまんディックス、少し助けてくる!」

 

「分かった、俺たちは竜女(ヴィーヴル)を捜索する。しくじんなよ!」

 

その声に押されてフレイモスを引き抜き、ベルたちの方へ駆け出す。ぐん、と力を入れて跳躍し、ファイアバードの首元を狙って─────刺す!

 

『クェエエエッ──────!?』

 

「ちいっ…浅い!」

 

殺し損ねたファイアバードが暴れ、火を噴く。狙いはベルと…誰だ?もう一人いる。ベルの影になって見えないが、背は低い。

いや、今はそんなことどうでも良い。

 

「ベル!その子を連れて離れろっ…!はぁっ!」

 

そう叫び、ぐりんと首に入れた刃を回転させ、絶命させる。バラバラとファイアバードが塵に変わり、魔石が地に堕ちる。

すこし割り込み気味だったが、ファイアバードは見つけ次第即刻始末が言い渡されている危険モンスターだ。

多少は目をこぼしてほしい。

 

「……ふう…っ、はぁ…温いな。ベル、無事か?」

 

ファイアバードの血で塗れているが、まぁダンジョンの中にいるんだ、多少の流血など些事だろう。

そう思って近づいてみると─────ベルは、何かを隠すように小さな少女?を庇っている。火精霊の護衣(サラマンダーウール)で隠れた身体から、青い髪が見えている。

 

また女をたらし込んだのかコイツ。

ハーレムの夢はどうやら順調みたいだ。

 

「アエルテス!ポーションを持ってない?!怪我してるんだ!」

 

「ああ、持ってるけど……誰、その人。」

 

「そっ…それは、その……」

 

言い淀むベル。これは…俺にも言えないことなのだろうか?ということは……大人な関係か。幼馴染にシモのことがバレるのは嫌だもんな。

俺だって嫌だ。分かるよ。そっとしておくか…

 

「アエルテス!そっちに竜女(ヴィーヴル)はいたか!?」

 

「いや…ベルと…その女だけだ、そっちはどうだ?ディックス」

 

「こっちもダメだ。」

 

再び捜索に乗り出すディックス。それを見送り、俺はベルに向き合い、足を踏み出す。幼馴染として、新しいハーレム要員ちゃんはチェックしておかないとな。

 

「さて、アンタは何も─────っと、何のつもりだ、ベル」

 

女の子に近寄ろうとすると、ベルが立ち塞がってくる。そんなに見せたくないのか?そこまで警戒されると色々勘繰ってしまうぞ。

 

「近づかないで」

 

「理由は?」

 

「言えない!」

 

激しい口調で俺を離そうとするベル。その手はナイフを抜かんとする勢いだ。それほどまでに、お前は俺を拒絶するのか。

そうか──────なら、もういいか。

 

「……どうしてもか?」

 

「アエルテスには関係ない、離れて」

 

「…………。」

 

思えば、ベルが俺をここまで拒絶するのは二回目だ。だが…直接伝えられるというのは、少し痛い。

長年一緒だった幼馴染からの拒絶の言葉は、思ったよりも深く突き刺さった。結局、ベルから離れられていなかったのは俺の方かもしれない。

 

「ほらよ、ポーションだ。そいつに飲ませてやれ」

 

「…ありがとう。」

 

踵を返して、そのまま20階層への道を歩き始める。そろそろ19階層をくまなく探したディックスたちがそこに行く頃だろうから。

 

「じゃあな、【リトルルーキー】」

 

結局、長い付き合いの俺よりも、見ず知らずの奴に行くのか…という裏切られた気持ちになった俺は、ベル・クラネルから離れ、ディックスの元へと歩んでいく。

ディックスたちは俺が来るのを待っていたようで、合流し次第20階層へと潜っていった。

 

 

・・・

・・

 

 

「ふッ!はッ!でりゃあああっ!」

 

向かってくるリザードマンの喉を突き、そのまま縦に引き裂き、敵の群れにその血を浴びせると同時に黄金の炎刃を喰らわせる。

溜まった鬱憤を晴らすかのように、斬って、刺して、燃やし尽くす。

 

「荒れてるな、アエルテス。【リトルルーキー】になんか言われでもしたのか」

 

「俺に言えないことって……なんだよッ!『我は闇、我は始。星なき夜の底より来たりて、黄昏を齎さん。全てを呑み込め、終末の黒焔』…【フォルネス・イグニオン】ッ!」

 

剣に黒焔を纏い、マッドビートルを甲殻ごと切り裂き、その絶叫を無聊の慰めにする。魔石を稼ぐためでも、経験値(エクセリア)を得るためでもない。

ただの憂さ晴らしだ。どうせ死んでもダンジョンから産まれ直すんだ、少しは付き合ってもらおう。

 

「はぁ…はぁ……よし、落ち着いた。」

 

俺には、とある欠点がある。

感情がある一定以上の閾値を超えると、リセットされるのだ。おそらくは【逆境奮起(アグニ・コロナ)】の影響だろうが。

血と炎で汚れた服を払いながら、焼け野原になった24階層を眺める。

 

「お前もイカれちまってたんだな、共感するぜ。今、お前感情を無理やり抑え込まれただろ…テメェに命令していいのはテメェ自身だ。そうは思わねえか」

 

「ああ。その通りだ」

 

ディックスたちはこれから18階層へ戻るという。ここでお別れだ。彼とは何かと通じ合えるものが多かった。

儀礼剣を渡し、俺は25階層──────下層に降りていく。

 

ダンジョン25階層にある巨大な滝、通称『巨蒼の滝(グレートフォール)』。第二の死線(セカンドライン)とも、新世界とも言われるこの階層に、俺は一人で足を踏み入れていた。

 

「……綺麗だな…」

 

圧倒的な水晶洞窟じみた光景。そして絶え間なく流れる大瀑布は、未だ荒んでいる心を癒していく。海や滝のリラクゼーション効果をとても感じる。

 

『ギチギチギチチィッ!!』

 

「カニ…?ブルークラブか」

 

沢のほとりで寛いでいると、甲殻類特有の声を発しながら迫る影が3つ。青い甲羅のカニだ。彼らはカニだからと言って横歩きはせず、前進するらしい。

どこぞの狩猟ゲームで見慣れた俺にとっては割と普通の光景に見えるが、この世界の人々は度肝を抜くらしい。

 

「まあ、犬はイヌとは鳴かないし、カニもカニとは鳴かんよな…戯言だ、忘れてくれ」

 

迫ってきたブルークラブに斬撃を喰らわせる。動きは意外と機敏。だが甲殻を纏っていようと所詮は生き物だ。

特に、水棲生物に限って、奴らは火に弱い。

 

「水属性が火属性に強いと思ったか?水はな────100℃で蒸発するッ!」

 

『ギピュッ!?』

 

松脂で火がついたフレイモスを叩きつけた場所から、ブルークラブの甲殻が赤くなっていく。それと同時に、カニ特有の良い匂いがしてくる。

 

「はああっ……!」

 

熱され、脆くなった甲殻をぶち抜き、叩き斬り抜く。ブルークラブは即座に塵になりながら爆発四散。続く二匹目はハサミを向けてきたが、これをバックスピンで回避し、思い切り蹴り上げる。

 

「日の呼吸、伍ノ型─────陽華突ッ!」

 

右手でフレイモスを握り、柄尻を左手の掌で押しながら炎を纏って突き抜く。ブルークラブは内側から溢れる炎に耐えきれず爆散。魔石をその場に落とした。

 

「……海洋生物相手には、やっぱこれだろう…失せろ

 

腕は千切れていないが、威圧を込めて睨みつけてからヤケクソのようにフレイモスを叩きつけまくって討伐する。

結果的に倒せてれば良いんだよこんなの!

 

「……ひとまず片付いたか。魔石は回収しておこう」

 

背嚢(バックパック)は大きめのものを持ってきた。下層の魔石の平均価格は一つ1万ヴァリス以上だ。

ここでたくさん稼いで、美味いものでも食おう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

アエルテスが下層行きを敢行している中。

ベル・クラネルは、ファミリアのメンバーたちと18階層の人気のない場所を歩いていた。当然、その背後には先ほど助けた竜女(ヴィーヴル)の少女がいる。

 

「それで、ベル様?その方は一体誰なんです」

 

「えっと…その」

 

思い返されるのは、幼馴染(アエルテス)竜女(ヴィーヴル)の少女、そして自分に向けた、ドロっとした黒い眼差し。

自分に見せたことない、どこかよそ行きの笑顔が、ベルの脳裏から離れなかった。

 

「ベル…?わたしは、ベル?」

 

「あっ、ちょ……!」

 

自分のことを「ベル」だと思っている竜女(ヴィーヴル)の少女が首を傾げながら前を向く。そして、視力の良いリリは、その額に輝く赤石にいち早く気がついた。

 

「……っ!?竜女(ヴィーヴル)!ベル様、離れてください!それはモンスターですっ!」

 

「待ってリリ!違うんだ、助けを求めてたんだ、モンスターから追われてて…」

 

信じられないものを見るような目でベルの仲間たちがベルに視線を向ける。

リリはクロスボウを構え、ヴェルフは大刀を、(ミコト)は刀を。春姫はその背後に隠れている。全員がフォーメーションを組み、危険なモンスターと対峙する構えをとる。

 

「ベル様!まさか、見た目が良かったから助けたなんて言いませんよね?!どんなに取り繕おうとも、怪物(モンスター)怪物(モンスター)です!」

 

「ベル、そいつから離れろ。もしそいつを庇ってるのを見られたら……【ヘスティア・ファミリア】は終わりだ」

 

「待ってよリリ、ヴェルフ…!この子は涙を流してた!助けを求めてた!だから、僕は……」

 

「だから救いたい、と?それではモンスターに欲情する怪物趣味を疑われてしまいます!」

 

逼迫した状況。竜女(ヴィーヴル)の少女は、怯えた視線を向ける。遥かに整った容姿。ともすれば、神秘的とさえ思えるその見た目は、冒険者を惑わすのに最適であった。

 

「……どうするんだ、ベル。そいつを拠点(ホーム)に持って帰るのか?お前が決めろ、ファミリアの団長はベル、お前だ。」

 

ヴェルフの厳しい言葉。しかし、ベル・クラネルは覚悟を決める。二度の昇華(ランクアップ)を果たした少年は、幼馴染とは真逆の選択をした。

 

「僕は、この子を助けたい。」

 

きっぱりと言い張ったベルに、ヴェルフは納得したような、満足そうな顔をして「決まりだな。」と述べる。

そして、【ヘスティア・ファミリア】の拠点(ホーム)まで戻ってきたベルは。

 

「はぁ……ベル君、君は女の子なら誰でも助けちゃうのかい?」

 

と、ヘスティアに呆れられていた。無論、言葉の上手いリリがこれでもかと安全性を力説した上でのリアクションである。

 

「……あ、そうだ神様。アエルテスと何人かが、この子を探してたみたいなんです。もしかしたら、何か知ってるかもしれません」

 

「アエルテス君がぁ?というかベル君、この子について話さなかったのかい?ベル君にゾッコンなあの子の事だ、きっと事情を話したら分かってくれるさ」

 

「それが……」

 

ベルから全ての経緯を聞いたヘスティアは、静かに机に突っ伏し、唸るように呟いた。

 

「女心が分かってなさすぎる……確かにベル君らしいといえばらしいけどさ…いや分かるよ?キミだって必死だったんだろうさ…」

 

「ベル様…おそらくアエルテス様から見れば、古くからの付き合いの殿方が、自分には言えないような関係性を仄めかして、挙句近寄らせないというのは…些か……」

 

「ま、その竜女(ヴィーヴル)を探してる連中の仲間ってんなら警戒するのも妥当だが……反応からして、絶対嫌われただろ」

 

「ベル殿、きっと鬼殺隊炎柱・煉獄杏寿郎でもあるアエルテス殿ならば分かってくださいますよ」

 

「ベル様…いけず……」

 

「ベルをいじめないで!」

 

猛バッシングである。特に女性陣からの反応は、ほとんど軽蔑に近かった。彼女たちは恋する乙女であるが故に、自分がそのシチュエーションに置かれたら…という想像をよりかき立てられたのだ。

 

「それで…この子の名前はどうするんだい?いつまでも竜女(ヴィーヴル)君と呼ぶのは偲びないだろう。」

 

「ベル、お前が決めろ。お前が拾ってきたんだ、責任もって世話してやれ」

 

「え?ええと…じゃあ……ウィリュジーネ、でどうかな」

 

「……ぷふっ…ベル様、それ…御伽話の、水の精霊様の名前そのまんまじゃないですか…っ」

 

「なら、略してウィーネ君だ!どうだい、覚えやすいだろう」

 

ウィーネと名付けられた少女が、元気な声をあげて返事をした。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

二日かけて地上に戻り、ギルドで魔石やドロップアイテムを換金してもらう。今回の探索だけで、90万ヴァリスの大儲けだ。

 

途中、何かを探している様子のベル・クラネルとヴェルフを見つけたが、無視して帰った。

 

「おかえりアエたん、随分と帰りが遅かったんちゃう?」

 

「ロキ、聞いてくれ。俺…28階層まで行ったよ」

 

「おお〜、すごいすご────はぁ?」

 

やはり驚いているな。ロキめ、普段は細めている目を丸くしていやがる。この顔が見られただけでも十分としよう。

結局、これといった難局はなかった。むしろ、魔物の湧きが少なかったのもある。

 

「十分な偉業やん…?ほな、ステイタス更新しよか」

 

 

──────────────────

【アエルテス・ヘリオドーン】

Lv.3

《基礎アビリティ》

力:F317 耐久:E461 器用:F300 敏捷:F314 魔力:F396

《発展アビリティ》

不屈:H 解放:I

《魔法》

【リュクシオン】

付与魔法(エンチャント)

・自身を含めた周囲に延焼する。

・詠唱式『我は光、我は終。汝が炎抱く限り、全てを灰に帰さん。我を包め、光封の鎧』

・解放式【エン・リヴィオ】

【フォルネス・イグニオン】

・侵食魔法

・命を削る黒焔を纏い、射出する。

・詠唱式『我は闇、我は始。星なき夜の底より来たりて、黄昏を齎さん。全てを呑み込め、終末の黒焔』

【】

《スキル》

逆境奮起(アグニ・コロナ)

・逆境時、全能力の超高補正

・精神汚染軽減

・死への恐怖無効

・刻印顕現中、成長補正

完全燃焼(オルド・イリウス)

・炎に対する高耐性

・火炎誘引

──────────────────

 

 

「んん?あんま伸びてない…?」

 

アイズ先輩との鍛錬や、自己流の魔力トレーニングを含めてもあまり伸びていない。まさかとは思うが────成長期が終わったのだろうか?

 

「考えうることとしては二つ。アエたんの成長期が終わってしもたか、()()()()かや」

 

「足りない、というと……?」

 

ロキが言うに、俺はこれまで逆境を乗り越えることで強くなってきたのだという。だが、ここ最近は弱者を蹂躙してばかりで、逆境を乗り越えるどころかそれから逃げているのではないか、ということだった。

 

……耳が痛いな。確かにそうかもしれない。

 

「ま、アエたんも前なら苦戦しとった相手に苦戦しなくなって、逆境そのものが少なくなってきとるんはええ事やと思うで」

 

「もう中層の敵じゃ相手にならんってこと?」

 

「そゆこと♡これからは下層メインで探索するんやね」

 

それと、水精霊の護符(ウンディーネクロス)を忘れないように、とロキは伝えてくる。

水精霊の護符(ウンディーネクロス)は確か、水中での動作補助をしてくれる装備だったはず。だが、俺はこれでも前世で水泳を嗜んでいた。

 

多少流されたぐらいじゃびくともしない。

 

「大丈夫だって安心しろよ〜」

 

「賭けてもええで。アエたんは絶対流されて痛い目見る」

 

「おっけ、じゃあ100万ヴァリス出すわ。ロキは秘蔵のお酒出してね」

 

そういって、俺はアイズ先輩との鍛錬に向かった。

結論から言おう。俺は、結局100万ヴァリスを失う羽目になったのだ。

 

だが、それを知らない俺は、呑気に剣を振るっていたのだった。




【アビリティ紹介】
☆解放
条件を満たすことで、全アビリティに超高補正。
《条件》
1.戦闘開始からカウントして、合計2分45秒の間攻撃を受け続ける
2.戦闘開始から20分が経過。これは攻撃を当てることで1秒ずつ追加で減っていく。
3.孤立無援を条件2を達成するまで維持
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