自分を英雄だと勘違いしている元男がダンジョンに潜るのは間違っている   作:札幌53位

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若干1話に詰め込みすぎました。
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逆境を照らす黄金

 

 

朝。

俺の一日は、心地よい入浴から始まる。

昨日【ヘスティア・ファミリア】に行ったところ、ヘスティア直々にベルの探索休止と接触禁止を言い渡されたため、オラリオの宿屋に泊まることにしたのだ。

 

それにしても、バベルにこんな大きな風呂があるとは。やはり元日本人として、風呂は欠かせない。今までシャワーで済ませていたのがバカらしくなる。

普段、ここは人がいっぱいらしいが、朝風呂をしに来る奴なんてほとんど居ないため、貸切状態なのだ。

 

「ふんふ〜ん♪」

 

思わず鼻歌を歌ってしまうほど心地が良い。

この世界に生まれて14年が経つ。俺の魂にこびり付いたミームは落ちないが、曲ともなると歌詞を忘れてしまう。

国歌斉唱ぐらいしかマトモに思い出せないのだ。

 

「それ、何の歌かしら?」

 

「これはねえ、俺たちの魂で…ファッ!?」

 

いつの間にか、隣にとんでもない美女がいた。妖艶さの中に少女らしいあどけなさも持ち合わせたその美貌。その胸は豊満であった。

俺が童貞でなければすぐに落とされていただろう。

 

「あら、驚かせたかしら?ごめんなさいね。私はフレイヤ、貴女も朝に入浴するのが好きなのかしら。だとしたら気が合うかもしれないわね?」

 

そっと顔を近づけてくるフレイヤさん。

 

「…………ヘリオドーンの、アエルテス…です」

 

ガチガチになりながらも、なんとか堪える。

こんな美人と混浴して固まらない者のみ俺に石を投げよ。イエスもそう言うと思う。

 

「ふふっ、緊張しているの?それは私が【フレイヤ・ファミリア】の主神だから?それとも……」

 

「…俺のような者が、高貴なる御身と共に湯浴みなど失礼千万。失礼させていただく。」

 

心の中の欲望が「おい待てェ失礼するんじゃねェ」と抗議してくるが、これ以上フレイヤさんの隣にいると頭がおかしくなりそうだ。

 

「あら、美神との湯浴みを辞退するなんて。そんなに魅力ないかしら?私」

 

「だぁーっ!綺麗な(ひと)と風呂に入るとリラックス出来ないんです!すみませんね!」

 

そう叫んで、慌てて浴室から出る。何やら背中が熱い気がしたが、まぁ気のせいだろう。

 

 

多少のハプニングはあったが、朝の入浴を終え、次は買い物だ。しばらくポーションを使わない序盤のRPGスタイルだったので、流石に薬草くらいは買っておこうと思う。

 

「薬草って売ってますか?」

 

ギルド職員さんによると、【ディアヒケント・ファミリア】というところがポーションを卸しているらしい。

つまり、その原料である薬草も売っているはず。

 

「売ってるわけねえだろ、頭おかしいのか嬢ちゃん。看板読めるか?ポーション屋だぞお前」

 

とんでもない塩対応だ。だが、俺は昨日学んだ。

冒険者とは口が悪いものである。故に、多少の挑発には屈しないことを。

 

「はぁ……天下の【ディアヒケント・ファミリア】でも薬草すら売ってないとはな。他の製薬系ファミリアに頼もうかなぁ?」

 

フリーマーケットでよく見た交渉仕草をしながら、冷たい素ぶりをみせる。美人の冷たい顔は威圧感があるので、美少女たる俺ならば多少の効果はあるだろう。

 

「チッ…いいか嬢ちゃん、ポーションの素材である薬草を直接食ったり、貼ったりしても()()()()()があるだけで、実際にはポーションを飲んだ方が良いんだ」

 

「へえ、そうなのか?」

 

興味深いことを聞き、思わず振り向いてしまう。

 

「ああ。よしんば効能のある薬草を自分で煮込んで簡易ポーションを作ったとしても、【錬金】や【製薬】のアビリティが無い奴の作ったポーションなんか効果はないに等しい」

 

「なるほどな…すまなかった、ポーションを買わせてくれるか?」

 

貴重な知恵を授けてくれた薬屋のおじさんに謝罪し、ポーションを買うことにした。知識もつけていかないとな。

そんなこんなでダンジョンに潜って、いまや六階層なのだが──────全然余裕だ。モンスターの出てくる頻度は多い。だが、処理が間に合っている、

 

ウォーシャドウという、黒い影のような魔物が集まって襲ってきたが、長剣でしっかりと対応すればなんの問題もない敵だ。

いつまでも耐久ばかり伸ばしているわけにもいかないので、こうして力と器用を伸ばすためにも「安全な戦い」をする必要がある。

 

「六階層は余裕だったな。七階も行ってみるか…」

 

ポーションもあるので、余裕だ。そう思っていたのも束の間。

 

「多い……!数が多い………!」

 

俺はキラーアントの群れに囲まれていた。

 

確かに、キラーアント単体ならばあまり強くはない。甲殻は硬く、機動性も高いが、長剣ならば少し力を入れるだけで切り裂ける。

だとしてもだ。一撃で殺し切れれば良いが、そうでない時は悲惨だ。こいつら、死ぬ間際に仲間を呼ぶのだ。

 

『ギチチチッ!』

 

「だぁ、もう!虫に悉く縁があるなぁ!?」

 

パープル・モスといい、キラーアントといい、なぜこうも虫の大群に襲われるんだ?俺の名前は確かに『黄金の炎』という意味だが、だとしても火の中に飛び込む虫じゃあるまいし。

 

「群がられるなら、可愛い女の子が良かったなぁ!?」

 

持ってきた松脂で剣に火をつけ、ワンチャン虫特攻がないか試行錯誤しながら剣を振る。

 

『ギッ──────』

 

「よし…!燃えてる奴は鳴かない!これで…!」

 

ばさり、という羽音。俺にとっては聞き馴染みの、毒を纏いし恐るべき蛾。パープル・モスも、この戦いに飛び込んできたらしい。

じりじりと焼けるように背中が熱くなる。それと同時に、焦りが消えはじめ、力がどんどん湧いてくる。

 

ダンジョンは悪辣だ。ギルド職員さんはそう言っていた。

 

「だが───失策だったな、ダンジョンの悪意よ!」

 

パープル・モスを斬ると、そこに火が付き、鱗粉ごと燃え────それを確認し、振り払う!

途端に炎が充満した室内(ルーム)は地獄絵図となる。甲殻類が焼けるような匂いと爆炎に包まれ、俺もその煽りを喰らうが、火精霊の護衣(サラマンダーウール)の編み込まれた戦闘衣(バトルクロス)のお陰で大幅に軽減された。

 

「げほっげほ…!灰が口に…ぺっぺっ」

 

炎の中で立つ俺に怯んだのか、はたまた連鎖爆発でパープル・モスの群れごと焼き払われたのか。だが、しばらくは魔物も湧かないだろう。

ダンジョンの壁を傷つければ、魔物は湧かなくなるらしいからな。

 

「ふう……先に進むか。ん?」

 

魔石などのドロップアイテムを回収しようと周りを見回すと、まだ生きているキラーアントがいる。鳴き袋が焼けたのか、ただもがいている。

 

「………なぜ、斬られているんだ?」

 

俺は確かに、パープル・モスの鱗粉を使った粉塵爆発で一掃したはず。大抵の場合、炎を帯びたフレイモスで斬られた魔物は斬られたとたんに内側から発火し、爆発四散するのだが。

 

「断面が…焼けてる。炎の斬撃……?」

 

もしや、と思いフレイモスを見る。普段と変わらない。松明に火をつけ、フレイモスを炙る。すると、だんだんと刀身が金色に輝き始めるではないか。

 

「ただの長剣…じゃない?もしかして」

 

薄々と疑惑を抱きながら、キラーアントにトドメを刺して魔石を回収する。数にして60ほど。最初は4体だったのに、どんどん増えていったのだ。

増えていくときの絶望感たるや。増え続けるドラ焼きに恐怖した青ダヌキの心境も窺えるというものだ。

 

地上に戻り、魔石を換金して今日の稼ぎを確かめる。8万ヴァリスとちょっとだ。これで暫く余裕が持てるな。

 

「冒険者さん、冒険者さん、サポーターはご入用ではないですか?」

 

「君は……?」

 

見れば、フードを被った少女が笑顔で俺に話しかけて来ていた。こいつ、換金所から出て来てすぐの俺に声をかけるとは良い度胸だ。気に入った。

 

「良いだろう、分け前は…俺の歩合制で、稼ぎの一割をくれてやる。それでどうだ?」

 

「構いません、お願いします!」

 

こいつ、嘘だろ?稼ぎの一割って超絶ブラックだぞ。毎日死にかけるような思いをしてダンジョンを探索するのに、たかだか数千ヴァリスしか稼げないなんて狂ってる。

 

「構わないわけないだろ、サポーターって非戦闘員だろう?文字通り命張って手助けしてくれてる人が、そんな低賃金で満足するわけがない。」

 

「え、えと…リリはそれでも……良いんですけど…?」

 

突如、俺の頭に浮かんでくる『マッチ売りの少女』の童話。きっとこの子は荒波に揉まれ、辛い思いをしてきたのだろう。

俺が守護(まも)らねば。勇者は、困っている人を決して見捨てないものだから。

 

「分かった。雇おう──────ただし!」

 

「はい?」

 

「報酬は折半だ。それで良いな?それと、一つだけ約束して欲しい。」

 

「え、ええっと?良いんですか?そんなに…はい。」

 

「君が何かに脅かされているのなら……俺を頼れ」

 

勇者スマイルを向け、「また明日な」と言い残して立ち去る。後ろから「変な人…」というデレのセリフを頂いたが、ここで反応しないのが勇者だ。

 

明日は、きっと良い日になるぞ。

待っていろ、サポーターのリリちゃん。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「俺が、ガネーシャだ!!!!」

 

大声で叫ぶ男神の声と共に、神会(デナトゥス)が始まる。ロキは早速からかいがいのある女神(ヘスティア)を見つけると、こっそり近づいてその豊満を揉みしだく。

 

「むぎゃああーーっ!?いきなり何をするんだロキぃ!」

 

「ドチビが似合わん格好しとるから、ちょいと揶揄ったろ思てな?」

 

「にゃにをぉ〜っ!ふんっ!キミは男装した方がマシだったんじゃないのかい!?ほは、ほおほひっはふはぁ(こら、頬を引っ張るなぁ)!」

 

閑話休題。

 

一通り落ち着いた女神たちは、その話題を自派閥の眷属(こども)達の話に移し替えていた。

 

「そういえば、ヘスティア。自分眷属(こども)できたらしいやん?どないな子なん?」

 

「……健気で、頑張り屋で、たまに鈍感だけど、良い子だよ」

 

いじらしい少女のような口ぶりで言うヘスティアに、ロキはそれなら、と人差し指を立てる。

 

「ほ〜ん、ええやん。ウチもな、新しく加入した子がおるんよ。」

 

「キミのところは人数も多いだろう?それはもうガッポガッポ入って来てるんじゃないのかい?」

 

「んなわけあるかアホウ。血が尽きてまうわ」

 

「で、どんな子なんだい?キミがヴァレン何某くん以外の話をするなんて珍しいじゃないか」

 

愉快そうに、ロキは話しだす。

 

「そん子…アエたんはな、初めて会うた時にウチのことをお嬢さん呼ばわりしてきたんや。そんで、ちょいビビらせたるか思て、神威をチラつかせたら…ガタガタ震えながら『何の用だ?』なんてカッコつけて…」

 

「キミの威厳が足りなかっただけじゃないかい?」

 

「だとしても、や。神の威圧に耐えられる子なんてそうそう居らん。それも、神の恩恵(ファルナ)刻む前のケツの青いガキが耐えられる訳あらへん。」

 

くつくつと笑い、愉快そうに口を歪める。

 

「そんで────ああ、そうそう。165 C(セルチ)ぐらいの、白い髪で赤い瞳の…ベルって子やな。ドチビ、お前んとこの子を探しとった。」

 

「待ってくれ、アエたんって…」

 

「そ、ヘリオドーンのアエルテスたんや。今日日こんな名乗りをあげる子なんか殆どおらん。いつの時代や〜って話よ…それこそ、神々(ウチら)が来る前の英雄かって」

 

ヘスティアが眉間に皺を寄せる。

 

「アエルテス君、ボクの【ファミリア】の拠点(ホーム)に入り浸ってるよ……それと彼女、ベル君…ボクの眷属(かぞく)の幼馴染なんだってさ」

 

「マジかいな!?運命、あるもんやねぇ…」

 

「ベル君、アエルテス君に誇れるようになるまで会わない〜って言うもんだから、昨日の夜に接触禁止出しちゃったよ…」

 

「え、ならあの子どこ泊まっとるんや…?」

 

「どこって、そりゃあキミのとこの拠点(ホーム)じゃないのかい?」

 

「いや、それがな?アエたん、Lv.5冒険者になるまで拠点(ホーム)に入り浸る気が無いらしいねん。お金もあんま無さそうやったし、どないしとるんやろ…」

 

突如として慌て出した二神(ふたり)のもとに、もうひと柱の神がやってくる。美神、フレイヤだ。

フレイヤは二人を一瞥すると、にっこりと微笑み、楽しそうねと声をかける。

 

「げっ、フレイヤ……」

「上機嫌やな自分。なんや、また新しい男でも見つけたんか?」

 

「ええ、そうよ。」

 

妖艶に笑みを零すと、フレイヤは窓の外を見遣る。

その視線の先には──────。

 

「気になってる子ね、二人いるの。」

 

「ほーん、どんな子や?」

 

「一人は、透明な子。もう一人は、黄金の子。特に透明な子のほうは…ぜひ欲しいわ。」

 

「おー怖。ウチの子には手ぇ出さんといてな〜」

 

「がるるる…!」

 

睨む悪神(ロキ)と吠える処女神(ヘスティア)。フレイヤはくすりと笑って応えて、その会合は幕を下ろした。

 

神会(デナトゥス)からの帰り道、ロキは酔った頭で歩いていると、ふと月明かりに照らされた城壁の上を見て、微笑む。

 

「なんや、意外と打ち解けとるみたいやね」

 

視線の先には、小柄なアマゾネスと剣姫、そしてそれに同時に相手取らされている黄金の子(アエルテス)があった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

死ぬかと思った。冗談抜きに。

倒れている城壁の、ひんやりとした石の感触が心地よい。

 

事の発端は、俺が拠点(ホーム)に帰る途中だったアイズ先輩とティオナを見つけ、土下座をして修行を付けてもらおうと頼み込んだことからだ。

快く承諾してくれた二人は、アイズ先輩との訓練場所で俺をしっかりとボコボコにした。

 

一人ずつ来るのかな、と考えていた俺が馬鹿だった。

アイズ先輩とティオナは、息の合った連携でもって俺をしばき回し、これまでにないぐらい背中が熱くなり、なんとか、辛うじて、生き延びることができた。

 

「ほら起きて〜、夜通しやるって息巻いてたじゃん。まだ4時だよ、日が出てくるまであと40分もあるんだから、頑張って!」

 

「休憩は終わった?なら再開しよう」

 

鬼だ。この人たちは。

だが……ここで倒れたままでは、決して強くはなれないだろう。

 

「やってやる………やってやるぞ俺ァ…!」

 

フレイモスを杖にして立ち上がり、じりじりと背中がまた焼けるように熱くなり始める。この二人に囲まれる、ということがどれ程の逆境かがそれだけで分かる。

悠然と構える二人に、俺は剣を正眼に構え、雄叫びを上げて飛び込む。

 

「うおおおおおおおおっ!!!!」

 

「はいはーい、アタシが受けるね」

 

前に出てきたティオナが剣を打ち合おうと大双刃(ウルガ)を差し出してくるが、それを避け、地面を削って出た火花をフレイモスに吸わせつつ振るう。

 

「はいダメ!」

 

直後に腹に強い衝撃を喰らう。蹴りを入れられたのだろう、そう確信した瞬間に回転を入れ、フレイモスを振るって黄金の炎刃を飛ばす。

 

「器用になったね」

 

「ぼはっ、ぐふ……」

 

地面に転がりながら見たのは、アイズ先輩に簡単に散らされる炎刃だ。やっと見つけた必殺技も、この人たち相手には児戯に等しい。

 

「はぁ、三半規管、狂う……ッ!」

 

フラフラになりながらも立つ。身体が苦痛に慣れてきたのか、はたまた彼女たちが加減してくれているのか。

多分、どっちもだろう。

 

「もうやめとく〜?そろそろ限界みたいだけど」

 

快活な声が聞こえてくる。正直、それには甘えたいが……それ以上に、「見返したい」という気持ちの方が大きくなっている。

16時から始めたこの鍛錬、12時間も戦い詰めだが、そこまで行くとアドレナリンとか関係なく、止めるに止められない局面まで来ている。

 

「真っ直ぐいって、ブッ飛ばす……右ストレートでブッ飛ばす……!」

 

「いいねえ、その意気だよ!」

 

「まだ、立つんだ……いいね」

 

今俺を立たせているのは、前世で読んだ漫画のセリフだ。「Plus Ultra(さらに向こうへ)」。限界を超えた先で、人は英雄(ヒーロー)になる。

 

「チートでも、なんでも良い……俺に……力を…!」

 

次目覚めた時に、俺に最強のチート能力が覚醒しているように願いながら、最後の力を振り絞り、駆け出す。

 

「烈日よ、俺に力を…!」

 

そう言い放つと同時に、太陽の光が差し込む。

 

「うわっ、まぶし…!」

 

自棄で放った斬撃は、そのままティオナの胸元に──────吸い込まれず、その衣服を軽く裂いた程度で留まり、俺はそのまま崩れ落ちた。

 

 

・・・

・・

 

 

「今日は気絶していないんだな」

 

「すごい眠い」

 

毎度のようにリヴェリアさんに治療してもらい、たまたま起きていたロキにステイタスを更新してもらった。

 

「エグい伸び方しとるで。自分、どんだけ無茶したんや…」

 

──────────────────

 

【アエルテス・ヘリオドーン】

Lv.1

《基礎アビリティ》

力:G231 耐久:E452 器用:G203 敏捷:H134 魔力:I0

《発展アビリティ》

 

《魔法》

【リュクシオン】

付与魔法(エンチャント)

・自身を含めた周囲に延焼する。

・詠唱式『我は光、我は終。汝が炎抱く限り、全てを灰に帰さん。我を包め、光封の鎧』

【】【】

《スキル》

【逆境奮起】

・逆境時、全能力の超高補正

・精神汚染軽減

・死への恐怖無効

──────────────────

 

「──────。」

 

思わず絶句した。今までの伸びとは比べ物にならないくらい伸びている。それに、魔法だ。俺が欲しくてやまなかったもの。

きっとチート性能なのだろう。間違いない。やっと俺のチートが花開いたのだ。

 

「────。」

 

「…無言で口をパクパクさせるな。おめでとう、お前が望んでいた魔法だぞ」

 

リヴェリアさんが呆れたように言う。

どうしよう、今すぐにでも色んな人に自慢して回りたい。そわそわしていると、ロキとリヴェリアさんが顔を見合わせ、破顔した。

 

「行っといで、せやけどドチビんとこには行くんやないで」

 

「勿論だ!ありがとう神ロキ!愛してる!」

 

ステイタスの更新で強化された脚でバベルの鍛冶屋に行く。俺の戦闘衣(バトルクロス)を作ってくれた職人のもとへと辿り着くのに、前は数十分掛かっていたのが、今では十数分で着くように。

 

「おやっさん!俺、魔法覚えたよ!」

 

職人さんに言うと、わざわざ作業の手を止めて俺の方を向いてくれた。

 

「おお、それは良かった。どうだ、記念になんか買ってくか?」

 

「買う!火耐性が上がるやつが良いな!」

 

「予算は?」

 

「8万ヴァリス!」

 

「それなら、その戦闘衣(バトルクロス)に鎧を付けてやる。魔法の火で鍛えた鉄でな、大抵の炎は受け付けねえよ。これを溶かせるのは、アンフィス・バエナぐらいだ」

 

「そんなに良いものを?」

 

良いのだろうか。そんな逸品、たかだか8万ヴァリスのはずがない。

 

「お嬢ちゃんには、俺の贔屓になって欲しいからな。それに────俺の師匠が打った武器を使ってるんだ。きっと大成するだろうさ、先行投資ってやつだ」

 

「……フレイモスのことか?」

 

「ああ。そいつの銘は……野暮か。まあ、そういうわけだ。俺のことはカルドニアと呼んでくれ。よろしくな、嬢ちゃん」

 

「ヘリオドーンのアエルテスだ。よろしく、カルドニア」

 

心の中で、俺はどこか固い絆が結ばれたように感じるのだった。




【人物紹介】
☆カルドニア・メイア
【ゴブニュ・ファミリア】所属のLv.3冒険者であり、鍛冶師。
オラリオ暗黒期に「戦鍛冶姫」と呼ばれたLv.4冒険者ナウセイアに師事する。
師は闇派閥にも武器を卸していたため、「疾風」の手にかかり死亡。以降、自分で剣を打ちながらも、師の作品の使い手を探している。
その過程で胸に傷を負い、戦いからは退いている。
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