自分を英雄だと勘違いしている元男がダンジョンに潜るのは間違っている   作:札幌53位

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正義の味方

 

「答えなさい。その剣を…どこで手に入れたのですか」

 

夜。人気のないダイダロス通り、緑衣のエルフが俺に木刀を突きつけながら睨みつけ、問いかけてくる。

すでに幾度も攻撃を受け、全身が軋むように痛い。

 

「……は、刺客ということか……そう簡単にはいかないか……。」

 

「答えなさいと、そう言ったはずです」

 

「ぐっ……は、げほ、げほ…!」

 

苛烈な攻撃が俺を襲う。アイズ先輩よりも遅いが、それでも殺気が篭っている故に、疾く、鋭い。

 

「人に物を訊く態度じゃねェ、な…!もっと素直になって出直して来やが…ごっ!?」

 

「答える気が無いのなら……ここで死になさい」

 

背中が燃えるように熱い。間違いなく、これは逆境だ。鈍い痛みに脳を回転させる。

なんで、こうなったんだっけ──────。

 

・・・

・・

 

朝、俺が【ヘスティア・ファミリア】の拠点(ホーム)に行くと、ベルがいきなり抱きついてきた。

 

「アエルテス!僕、魔法生えたよ!」

 

「マジかよ」

 

どうやら、【ファイアボルト】という魔法らしい。速攻で撃てて、なおかつ威力も高いのだとか。俺の【リュクシオン】とは大間違いだなチクショウ。

などと羨んでみるが、俺の魔法にも優れているところはある。付与魔法(エンチャント)である上に、スキルとのかみ合いが良いのだ。

 

要するに、適材適所だ。

 

「良かったじゃないか。精神力疲労(マインドダウン)には気をつけるんだぞ。」

 

「じゃあ僕、ダンジョン行ってくる!大丈夫、すぐ帰ってくるから!」

 

ダッシュで走り去ったベルを見送り、俺は朝飯を食うために露天で何か買おうと思い、大通りを歩いているとシルさんに出会った。

どうやら、買い出しに来ているようだ。

 

「あら、こんにちはアエルテスさん。」

 

「はいこんにちは。ご機嫌いかがですか?」

 

「まずまずです♪」

 

そういえば、この間渡した本はどうなったんだろう。試しに聞いてみるとするか。

 

「あの本ですか〜?ベルさんにあげちゃいました!」

 

「あっ、ふーん…」

 

じゃあ、あれ魔導書だったってこと?それなら、ヘルメスは俺にそんなたいそうな物を寄越してきたということか。

いや納得できるかそんなこと!?

 

「むふー、どうやらあの本の価値に今更気がついたみたいですね?」

 

「はい…」

 

「まあ良いじゃないですか、ライバル…なんでしょう?」

 

「……負けたくない存在ではあるけど…うーん」

 

ベルは幼馴染だ。だが、それと同時に俺はベルの前を歩いていたいという気持ちもある。かと言って、見下したいわけでもない。

 

「まあ、ベルが嬉しそうだったから…いいか」

 

・・

・・・

 

「『我は光、我は終。汝が炎抱く限り、全てを灰に────』ぐはっ!?」

 

違う、なぜ今こんなことを思い出しているんだ俺は。

 

「慣れない平行詠唱をするからです。『今は遠き森の空────』」

 

エルフが木刀で俺をボコボコにしながら、魔法を詠唱しはじめる。だが、そろそろ目が慣れてきた。木刀を頭で受け止め、片手で松脂を塗りたくり、地面にフレイモスを擦り付けて発火させる。

 

「『無窮の夜天に鏤む無限の星々 愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。』」

 

「遅え…!【ファイアボルト】!」

 

勢いよく叫んだのは、()()()()()。手を突き出し、魔法が発動するかのように見せかける。

 

「っ…!?チッ…!」

 

ブラフに引っかかったエルフに、炎の斬撃を飛ばす。チャージ2日、フレイモスの放射機能から放たれる黄金の炎刃は、軽く人間程度なら消し炭にできる威力だ。

 

「けほっけほっ……『汝を見捨てし者に光の慈悲を。来れ、さすらう風、流浪の旅人…』」

 

「バケモンが…!」

 

渾身の一撃はエルフを確かに焼いた筈。だが、その衣服の一部と僅かな手傷を与えただけで留まる。詠唱は止まらない。

ならば、直接叩きつけてやるのみだ!

 

「おおッ──────!」

 

フレイモスを虎眼流のように構え、袈裟に振り下ろし、そのまま力で思い切り斬り返す。すなわち、秘剣・燕返し。元々鍛錬を積み、更に神の恩恵(ファルナ)の刻まれたこの肉体であれば───可能。

 

「獲った…!」

 

がつん、と二度強い音が鳴る。だが、よく見れば、薄皮一枚を切り裂いたのみで止まっている。この時、初めて理解した。

上級冒険者と下級冒険者が大人と子供?いいや、違う。その差は、ゾウとアリだ。勝てるはずがない。

 

「『空を渡り、荒野を駆け、物事よりも疾く走れ。星屑の光を宿し敵を討て』」

 

「……はぁ…こりゃ、まずいな。」

 

【逆境奮起】によって強化されたステイタスであろうとも、差は歴然。エルフの背後には、緑色の光球がいくつも浮かんでいる。

 

「単刀直入に訊くが……ここから俺が助かるにはどうしたらいいんだ?」

 

ダメ元で聞いてみるが、エルフはその目の奥の憎悪を消すことはなく、腕を前に突き出す。────魔法が、来る。

 

「そんな道は、ありません。【ルミノス・ウインド】!!」

 

ここから、なんとかする方法は…無いのか?

俺は本当にここで死んでしまうのか?まだチートもマトモに使えてない。世界を、人々を救えていない。

 

こんなところで、終わって良いはずがない。

 

 

・・・

・・

 

 

「アエルテスちゃんはさ、どんな大人になりたいの?」

 

ある秋の日、ベルが俺にそう聞いてきた。

その日は晴れていて、雲一つない、綺麗な空が見える日だった。

俺とベルは、村の近くの、麦畑がよく見える丘の上で空を見上げながら寝転んでよく話していたものだ。

 

「そうだなあ…誰かのために傷つける人、かな」

 

日本人の心に、幼い時から根付いているヒーローは、自分の顔を飢えた子供に食べさせていた。彼は、誰にとっても最高のヒーローだ。

 

「わぁ…!僕はね、ハーレムを作りたいなー!おじいちゃんがいつも言ってるんだ!オラリオに行って、ダンジョンで可愛い女の子と出会って…」

 

「ははっ、夢がいっぱいだな」

 

無邪気に笑うベルの顔が眩しくて、借り物の理想を掲げている俺が馬鹿らしくなって、このまま二人で田舎暮らしも悪くない。なんて考えたりもしたっけ。

 

「アエルテスちゃんは、きっと…すごい英雄になれるよ!」

 

「そうかなぁ」

 

「うん!御伽話の、英雄みたいに!」

 

 

・・

・・・

 

 

「ごほっ」

 

随分と、懐かしい夢を見た。

どくどくと、血が流れ落ちる。せっかくカルドニアが仕立ててくれた装備に、でかい穴が空いてしまっている。

修理費が嵩むなあ、などと思いつつ、抉れた脇腹を見て、思わず苦笑する。

 

「何が可笑しい。」

 

「……この剣の…出所を吐いたら、お前、そいつらを殺しに、行くんだろ…」

 

「………」

 

「だったら、げほっ!はは、言えねぇよ……」

 

フレイモスは、父親が持っていたものだ。カルドニアの師匠が作った武器だ。こいつにそれを教えれば、俺の両親はきっと殺される。

カルドニアも、きっと巻き添えを食らう。

 

「貴女は……闇派閥(イヴィルス)ではないのですか…」

 

「知らねーよ、そんなの…」

 

血が一滴流れるたびに、俺の背中の熱は上がっていく。たぶん、このままだと俺は死ぬ。この期に及んで、神様はチートを寄越さないらしい。

……だが、それならまだチャンスはあるはず。俺はまだ、神様の目に届くほどの存在ではないのなら、ここで越えるだけだ。

 

「ならばっ…何故、答えなかった!貴女が傷を負う必要などなかったはずだ!」

 

「…………お前には、わかんねえよ…」

 

普通の冒険者なら、確かに脅された段階で吐くだろう。だが、生憎と俺は異世界転生してきたチート勇者だ。吐くわけがない。

 

「誰かが傷付かなきゃ、いけないなら……そりゃあ…俺が、そうすべきだろ…ンなことも、分からねえようじゃ……まだまだ………ごほっ、ごほ…!」

 

被弾回数は三回。脇腹と、頭と、胸。手と足はまだ動く。死ぬほど痛いが、相手は動揺している。今のうちに、詠唱しなければ。

 

「………っ」

 

「悪ぃけど…俺の、正義を……通させて、もらうぞ」

 

相手は明確に混乱している。今も頭を抑え、何かの幻影に釈明している。

 

「『我は光………我は終。汝が炎抱く限り、全てを…灰に帰さん。我を包め、光封の鎧』…」

 

「っ、やめなさい!それ以上動けば…」

 

さよならだ(アリーデヴェルチ)。【リュクシオン】!」

 

胸から炎が噴き出し、それは炎の外套(マント)となって俺を包む。エルフは目を見開いて、口元を抑える。

流石に自分ごと燃やす魔法は見たことがなかったらしい。

 

足元に炎を集中させ、爆発させる。軽いこの身体はいとも容易く爆風によって宙に浮く。これで離脱する。追手はない。

飛んでいる最中に、【ディアヒケント・ファミリア】の医院を見つけた。

 

「よし……もう、限界…」

 

俺はそのまま、頭から突っ込んで気を失った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

リュー・リオンは、飛び去っていった少女が残した残焔を手で掬い、その手が火傷することも厭わず、ぎゅっと握る。

 

「アリー、ゼ…」

 

思い返されるのは、『星屑の庭』での一幕。

恒例の、「正義とは何か」についての議論。

 

「リオン、正義の味方っていうのはね。きっと誰かの代わりに泣いてあげられる人だと思うの!」

 

思い返されるのは、先程自分が打ちのめした、燃え盛る黄金(アエルテス)の言葉。

 

「誰かが傷付かなきゃいけないなら、それは俺であるべきだろう!」

 

リューとアエルテスの間には、特段特別な関係はない。ただ、時折訪れて食事をねだる彼女に門戸を開けて、ミアの作った賄いを提供する────それだけだ。

訪れるたびに満面の笑みで挨拶し、美味しそうにご飯を食べ、それを見守る。それだけの関係だ。

 

「………ぅ」

 

吐き気が込み上げるが、それをぐっと飲み込む。傷は殆どないはずなのにフラつく脚を引きずりながら、人のいないダイダロス通りを歩く。

しかし、リューの視界の先に一人の伊達男が見える。

 

「やあ、『疾風(リオン)』ちゃん。随分と具合が悪そうじゃないか。大丈夫かい?」

 

「……貴方が言っていた、『戦鍛治姫』の武器の持ち主は…悪ではありませんでした。どういうことですか…神ヘルメス…!」

 

伊達男────ヘルメスは、ひとつため息を吐いて肩をすくめる。

 

「オレは『オラリオに混乱を齎した女』としか言ってないよ?彼女は少し前、『サポーターの悪夢』と呼ばれる怪事件を引き起こして混乱を起こしたのは事実だ」

 

「なんのために…なんのために、私とアエルテスをぶつけたのです…!」

 

「そりゃあ、決まってるだろ」

 

ヘルメスは役者がかった身振りで説明し始める。アエルテスと、リューを巻き込んだ、己の奸計を。

 

「アエルテスちゃんには、試練が必要だ。」

 

「試練、だと…?」

 

「とある神の遺した二人の英雄の卵。先に孵ったのは、黄金の炎だった。だが、英雄に必要なものは『信念』だけじゃあない。」

 

強さと苦難も必要なんだ、と言い、ヘルメスは楽しそうに笑う。

 

「……今日、彼女は死んでいたかもしれないのですよ!?」

 

「そしたら、器じゃなかったというだけだろう。オレの本命は別にいるからね。」

 

「貴方という神は……」

 

リューがヘルメスを睨みつける。だが、ヘルメスは意にも介さない。

 

「けど、今日やっと確認できた。アエルテスちゃん、彼女はやはり英雄になるに相応しい。君もそう思わないかい?」

 

「………」

 

「そんなに彼女が気になるかい?なら、【ディアヒケント・ファミリア】の医院に行ってみると良い。さっき、そっちの方に炎が落ちていったからね。」

 

「………この事は、決して忘れません。」

 

リューは駆け出す。去り際にヘルメスが手を振ったが、リューはそれを無視した。

 

即座に着替え、普段着で医院に駆け込む。

そこには銀の聖女(アミッド)が金髪の少女を治癒している最中であり、その表情は極めて深刻なものであった。

 

「どうして、傷を癒すたびに燃え盛るのこの患者は……!?」

 

「アミッド…彼女の容体は。私も治療に参加します」

 

自分で傷つけておいて、随分と勝手な事だと思いつつも、安らかに眠りながら燃えるアエルテスをただ黙って傍観するわけにもいかず、口を出した。

 

「リオン?…今は詮索は止しましょう、抉れていた脇腹は修復完了、頭の裂傷も塞がりましたし、胸の傷も然程深くはありませんでした。何か、魔法のような何かを殆ど完璧に防いだのでしょうね。」

 

「………っ」

 

「しかし……この炎が厄介です。装備で護られているのが幸いしましたが、消しても消しても消えないんです。」

 

「……水をかけてみてはどうでしょうか」

 

「そんな馬鹿な!燃えている人間に水をかければ、ショック死します!」

 

「……なら、今は魔法を掛け続けるしかありませんね」

 

リューは、その夜。一眠りもしなかったという。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

知らない天井だ。本当に知らない天井なのはこれで二回目だ。

 

周りを見ると、ぐったりと倒れているリューさんと、おなじく倒れている知らない銀髪の人、そして気楽そうにリンゴをつまんでいる俺の主神ことロキがいた。

 

「お、やっと起きた。アエたんがホンマにくたばりそうやって聞いたから駆けつけてきたんやで?せやけど、実態はいつもの燃え尽き症候群やん」

 

「やる気無くしたみたいに言わないで欲しいかな。でも実際死にかけたんだよ、変なエルフに襲われてさ。てかそれ俺のリンゴだろ。くれよ」

 

「嫌や!心配したウチの気持ち返してぇや!せっかくアイズたんがLv.6になったんに、祝う間もなくこれやで?」

 

む、それは申し訳ないことをした。

起き上がり、なぜか用意されている服と鎧付き戦闘衣(バトルクロス)を着込む。

 

「ああそれ、アエたんの専属やっちゅう鍛冶屋が置いてったで。火耐性はそのままに、防御力を底上げしたらしいわ。ま、(こま)いとこは本人に聞きや」

 

「あ、ステイタスのほうは…?」

 

「新しいスキルが生えとったから、ちゃんと確認しとき。」

 

──────────────────

【アエルテス・ヘリオドーン】

Lv.1

《基礎アビリティ》

力:E457 耐久:B738 器用:E412 敏捷:F371 魔力:D524

《発展アビリティ》

 

《魔法》

【リュクシオン】

付与魔法(エンチャント)

・自身を含めた周囲に延焼する。

・詠唱式『我は光、我は終。汝が炎抱く限り、全てを灰に帰さん。我を包め、光封の鎧』

【】【】

《スキル》

【逆境奮起】

・逆境時、全能力の超高補正

・精神汚染軽減

・死への恐怖無効

完全燃焼(オルド・イリウス)

・炎に対する高耐性

・火炎誘引

──────────────────

 

「ことごとく炎に縁があるな、俺」

 

「発現経緯は〜…ま、言わんでも分かるやろ。自分への戒めやと思って、これからは慎重に生きる事やな」

 

「はい…」

 

まぁ、十中八九魔法を使いすぎたのが原因だろう。それにしては、自分で発動した回数と時間に魔力の上昇量が見合わない気がするが。

俺の無事を確認したロキは、祝賀会やるからアイズ先輩に祝いの連絡を入れておくように言伝してから立ち去っていった。

 

「………ぅ…はっ!?アエルテスさん、無事で……鎮火、してる?」

 

「あ、おはようございます。」

 

「うう…治療………そうだ、寝てる場合じゃないっ!?……うわああああ起きてる!?」

 

「あ、おはようございます。」

 

ぐったりと倒れていた二人が起き上がる。口ぶりからして、二人が重傷の俺を助けてくれたのだろう。感謝しないとな。

 

「アエルテスさん、その……もう、平気ですか?」

 

「おかげさまで助けられました。ありがとうございます」

 

深々と頭を下げて感謝を伝える。なにやら気まずそうにしているリューさん。銀髪の人はホッとしたように胸を撫で下ろしている。

とても心配を掛けてしまったようだ。申し訳ないな。

 

「あなたが燃えながら窓を突き破って私の部屋に突撃してきた時は驚きましたよ。まったく…何があったかは聞きませんが、自分を大事になさってください。」

 

「善処します。」

 

銀髪の人はアミッド先生というらしく、アミッド先生曰く、俺は夜中燃え続けていたらしい。俺の精神力(マインド)からして十数分もすれば火は消えるはずだが……?

 

まさか、回復魔法に使われた精神力(マインド)を燃やしてさらに燃えていたというのか?俺は。だとしたら物凄い欠陥魔法なのではないか?【リュクシオン】君。

 

「それにしても、すごい魔法でした…いくら治癒しても、砂をかけたり揉み消そうとしても、焼けている部分を根本から治療しても燃えているとは……ここまで行くと呪詛(カース)なのでは?大変な人に呪われましたね…」

 

「アッ……ッスネ……」

 

違うんですアミッド先生。自分で燃えたんです。

などとは言い出せる雰囲気ではなく、薬液と治癒のポーション、対呪詛(カース)の専門家への紹介状まで書いてもらって、俺は無事に退院した。

 

せっかくだから、とリューさんが俺を『黄昏の館』まで送っていってくれることになった。

美人エルフさんと一緒に歩くのは、男の夢だ。【フレイヤ・ファミリア】の陰険メガネエルフと俺を襲ってきた謎エルフはリューさんを見習うべきだな。

 

「………アエルテスさん。ひとつ、訊いても宜しいでしょうか。」

 

いよいよ目的地に着こうという時、リューさんがそう切り出してきた。

 

「何かな、俺に答えられる事ならなんでも答えるよ」

 

「………あなたは、何のために剣を振るうのですか?」

 

決まっているだろう。そんなもの。

 

「当然、誰かを守るためだよ」

 

「それで、あなたが傷つくことになっても?」

 

「ふふん。知らないようだから教えてあげよう!」

 

胸を張り、不安そうなリューさんを元気づける為に、俺は高らかに言う。

 

「正義の味方は、誰かの代わりに泣いてあげるものだからだよ。」

 

リューさんの顔が少し緩んだのを感じたので、俺は黙って振り向いてクールに去る。イギリスで一番お節介な男も、きっと同じようにしたはずだ。

 

「アエルテス」

 

風が吹く。

 

「──────。」

 

告げられた言葉に、俺は黙って微笑み、グッドサインを送った。




【スキル紹介】
☆完全燃焼(オルド・イリウス)
・炎に対する高耐性
・火炎誘引
約9時間に渡って燃え続けたが故に発現したスキル。火炎耐性の面で見ればアタリの部類のスキルだが、どのようなものであれ火炎を誘引するため、ヘルハウンドや小竜、アンフィス・バエナなどの火を使う怪物からの火炎攻撃を全て受けなければならなくなる。
また、味方の炎であっても誘引するため、炎の魔剣や火炎魔法もアエルテスに向かっていく。
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