朝食を終えて、ヘルミーネ達が迷宮に出発するのを見送った。
自分が迷宮に行かずに別のパーティを見送るのは不思議な気分。
ここ最近、俺はまともな迷宮攻略をしていない。
魔物部屋の殲滅とかばかりなので、ガチでモンスターへ剣を振るうのが無性に恋しくなる。
二階に上がろうとして、チクルスに呼び止められた。
「昨日、お願いされた試作品と同じものを3つ追加で作成しました。
この中に4つ入っていますので確認をお願いします。
作成した際のメモもこの中に入っています」
「ああ、忙しいのにありがとう。使わせてもらうよ。
メモの方も確認させてもらう。
また何か分からない事があれば教えてもらうかもしれないので、よろしくな」
小袋を受け取り、ニコニコ顔のチクルスと別れて自室に戻った。
チクルスは裁縫の腕を認められたのが嬉しかったのだろうか。
最近は俺の服を繕う機会もなかったので、裁縫の腕を見る機会がなかったが、試作品の出来を見ると彼女に頼んで良かったと思った。
これがどの程度、ペルマスクで評価されるか・・・・・・は時間が結構かかるかもしれないな。
ただ、あの現場を見てしまうとどうしてもね。役立つ事を祈ろう。
・・・・・・
玄関からベイルの旧宅にワープ。
まずは世話人のおばちゃんにもらった賃貸物件の確認だ。
住所と賃貸料のメモを見る限り、やっぱり我が家の真裏の物件のようだ。
玄関を出て、裏庭の方に回って改めて真裏の家を見ると我が家と同じ建物構造に見える。
内装とかは当然違うのだろうが、裏に空地があったり建物の外観がほとんど一緒だ。
同じ大工が作ったのだろうか。今まで全然気づかなかった。
土地の面積も同じくらいで隣接しているのなら、いけるかもしれないな。
あとは、取引を持ち掛けた際の士爵家の返事次第か。
取引が成立しなければ、そもそも裏の家を手に入れても意味がないからな。
まあ、完全に意味がない訳でもないか。別の使い道があるので。
これ以上、外から見ていても仕方ないので世話人の店に向かうことにした。
・・・・・・
「もらった物件のリストを見て、俺の家の裏にあった物件を外から見たのだけど、
あの家はもう誰も住んでいないのか?」
「そうですね。つい最近ですが引っ越ししましたね」
そう都合よく引っ越しなんかあるのかな。また夜逃げされたのじゃないのか?
「一応、言っておきますけど、
夜逃げ等ではなく、ベイルでそこそこ稼いだのでクーラタルの街に移住したようです」
「そ、そうか。それはめでたいな」
おばちゃん、エスパーかよ。
「物件の内覧をされますか?」
「いや、今日は忙しいのでまたの機会にさせてくれ。
入居しそうな借り主の確認もまだ取れていないのでな」
俺一人じゃなくて、エネドラやカラダンの意見も確認してみたいしな。
「では旦那を呼んでくるので、少し待っててください」
前回は問題の物件を俺が買ったから、今回も売りつける気満々だな。
大して時間も空けずに、おばちゃんが家具職人の親方のおっちゃんを連れてきた。
「よう、特注の品がいろいろ出来てるぞ」
「いろいろ?背負子だけじゃなくて、染め物のデカいタライも出来ているのか?」
おっちゃんはニッコリと笑いながら頷いた。山賊のような笑顔だ。
「まずは、背負子の方を見せてくれるか?」
「おお、いいぞ。裏に回ろう」
家具倉庫の方ではなく、工房の方に直接連れていかれた。
「これだ」
おっちゃんは、木製の背負子に手を置きながら、俺にドヤ顔をしてきた。
若手に作らせたのじゃなかったのか?実はおっちゃんも手を貸したのだろうか?
しかし、デカいな。これを背負うのか。
まずは、上部の天板を開いて中を確認。
想定通り、養蜂箱の板のないような作りになってるな。
これに鏡を布で包んで差し込んでいくと。見た感じは大丈夫そうだ。
あとは、実際に鏡を買って挿入してみないと分からないな。
布はこの日のために大量に買い込んであるので、なんとかなるだろう。
それにしても、デカいけど本当に背負えるのか?
背負うためのベルトに該当する部分は革製等ではなく金属製だ。
ベルトというよりは、ジェットコースターの体を固定する器具のようだ。
丈夫じゃないと万が一切れた時に商品が破損して大惨事になる。
つまり、この背負子は非常に重たいということだ。
「お前、これを本当に背負うつもりなのか、弟子たちが三人がかりで運んでいたぞ」
「ああ、背負うために作ってもらったのだからな」
どうやって背負うかな。
誰かに持ってもらって背中に乗せてもらう訳にはいかないし。
とりあえず、背負子の前に行き、背中を向けて、金属製のデカい持ち手にしゃがみながら両肩を入れた。
・・・・・・っと、ヨイッショっと。
あれっ、全然楽勝で担げるじゃないか。良かった。
「おいおい、なんだこれ。お前、どんだけ力があるんだよ。
店の奴隷達が家具を届けた時に客が一人で運んでいたって言ってたけど、
冗談じゃなかったのだな」
「そういや、そんなことしてたな」
でも、この中に更に鏡を入れる訳だから、空荷の時に背負えなかったら話にならないよ。
デカい背負子を背負って、スタスタとおっちゃんの周りを一周した。
「うん、大丈夫だ。こちらの望み通りのモノだ。ありがとうな」
「そ、そうか。まあ、気に入ってくれたのなら良かったわ」
これを背負って、ペルマスクに行くと目立つかな。
でも仕方ない。ペルマスクと自宅をチマチマ往復なんてしたくないのだから。
この背負子にいくつ鏡が収納出来るだろうか。
30枚は無理だろうな。20枚もちょっと厳しいか。
今回の納品対象の10数枚が収納出来れば助かるな。
「それで、例の染め物のデカいタライだけど、一つ出来上がったぞ。持って帰るか?」
「いやいや、さすがに持って帰るって・・・・・・いや、俺なら出来るのか?」
落ち着け・・・・・・俺は客だぞ。あのデカいタライを担いで家まで持って帰ることはないだろう。
「荷台に載せるぐらいなら手伝ってやっても良いぞ。運ぶのはやってくれよ」
「おっ、今から直ぐでも良いか?荷台に載せるのが一番大変なんだよ」
まあ、そうだよな。上げ下ろしが一番負荷がかかりそうだし。
「ちょっと待ってろ。今、荷車を用意してくるから」
「ああ、分かった」
とりあえず、暇なので家具の倉庫に行き、ブラブラと中古品を眺める。
そういえば、子供達用のベッドも増やした方が良いのだよな。
この倉庫には結構、ベッドがたくさんあるな。
でも一つや二つの話ではないから、カラダン達と相談して別の機会にするか。
戻ってきたおっちゃんに荷車の所に連れていかれた。
周りに奴隷らしき者が2、3人いる。
一人は見たことがあるような。前に我が家に運んでくれた人かな。
「で、この荷台に載せれば良いのだな?」
「ああ、頼むわ」
まあ、俺がやった方が早いだろうから仕方ない。
出来上がった巨大なタライを両手で抱え上げて、荷台に載せた。
載せた後は、奴隷らしき店員がロープで固定している。
「このまま、お前の家に運んでしまっても良いのだろう?」
「そうだな。俺も背負子を背負って一緒に行くか」
結局、運送スタッフのような事をやってるな。
背負子を背負って我が家に歩き出そうとすると、店員の奴隷達が荷車を動かそうと懸命に頑張っているのが見えた。
俺は片手で荷車の引き手を引っ張ってやり、荷車の始動を手助けした。
「お前、そんなデカい背負子を背負って、片手で荷車を引っ張るとかトンでもないな」
「手伝ってやってるんだから、別にいいだろうが!」
チンタラやられる方が時間がかかって嫌なのだよ。
今日は鍛冶師のジョブにしたアミルもパーティに入ってるから、腕力増強編成なのだよね。
そのまま、荷車と一緒にベイルの我が家に歩く。
玄関のドアを開けて、背負子を降ろし、表の荷台に向かう。
ロープを解いてくれたので、そのままタライを抱え上げて慎重に玄関のドアをくぐらせた。
ドアの高さが結構、ギリギリなのだよね。
「じゃあ、お疲れ様。運んでくれて助かったよ」
店員達は苦笑しながら、荷車を曳いて戻っていった。
タライはいったん今は使われていない風呂場まで移動させた。
思っていたよりも時間を取られてしまったな。
旧宅の玄関からゲートを開いてクーラタルの自室へ繋ぎ、背負子を置いてきた。
背負子の出番は午後以降だ。
エネドラとカラダンの待つ食堂へと急いだ。
「悪い。遅くなった。今からターヘラに行こうか。
それとボーデはまだ寒いのでコートを着た方が良いぞ」
「はい。旦那様」
エネドラ達はいったん自室に戻ってコートを取りにいった。先に言っておけば良かったな。
でも、ギルドの隣とか言ってたからコートは大袈裟だったか。
まあ、暑ければ脱げば良いか。
カラダンは最近まで平民で、商店の店員として恥ずかしくない程度の服は持っていた。
だが、取引となるともう少し質の高い服が必要なので、今日はレイモンドから借りたらしい。
双子やカラダンは、そのうちエネドラに連れられて帝都の洋品店巡りだな。
エネドラは加入済なので、カラダンをパーティに加えてターヘラの冒険者ギルドにワープ。
ギルドを出て、おばちゃんの店まで三人で向かった。
「瑪瑙は昨晩の話の通り、原石を20個購入、
エネドラが身に着ける装飾品を一つ購入するってことで良いのだよな?」
「はい、旦那様。
装飾品は女性に売れ筋の逸品を私が選びます。
エネドラ様は昨晩お渡しした装飾品のリストにあったように、
大きさや色、形、模様等に特徴がある原石を複数種類選んでみて下さい」
宝石なんて選んだことがほとんどないから、新鮮な気分だな。ましてや原石なんてね。
「私だけでなくて、旦那様も気になる品がありましたら、選んでみてはいかがでしょうか。
カラダンも私の選択に拙い点がありそうだったら、遠慮なく指摘するようにして下さい」
「はい。エネドラ様」
どっちかというと、俺はエネドラ用に装飾品を選んでみたいな。
でもプレゼントじゃなくて、商売のプロモーション用だから無理か。
「そういえば、ベイルでの子供たちの受入準備の方はどうなのだ?
ベッドなどの家具類を揃えなければならないだろう」
「そうですね。
明日の午後、ナナイさんに説明して、
ベイルに子供達に来てもらうのは明後日の午前中にしたいと考えています。
相手側の準備状況も全く分かりませんし、
双子は里帰りで明日は剣術指南所に泊ってもらおうかと思っています。
明日中に家具だけは移動させておいて、
掃除は子供達にさっそく自分でやってもらおうと考えております」
確かにそれが良いか。
「家具類はクーラタルの予備だけでは不足じゃないか。今日中に買い足すか?
カラダンはどう考えている?」
「ベイルの二階に私が一つ部屋をもらって、
食堂、風呂場、作業部屋を除くと空き部屋が4つあります。
その空き部屋にそれぞれ一人用のベッドを3つずつ置いたらどうかと思っています。
一部屋は、これから増える店員用にする予定です。
来る子供達の男女比も分かりませんから、
どのような子達が来ても対応できるようにしておく必要があると思っています」
シングルベッドが12台?いや、13台か・・・・・・それは、なかなか準備が大変だ。
ダブルベッドサイズだと、子供達の相性もあるだろうからシングルの方が良いか。
一緒に寝たければ同じベッドで寝れば良いのだし。
「じゃあ、今日空いてる時間でベイルの家具屋に行って買い揃えるか。
さっき家具屋に行ったけど、小さめのベッド12、3台ぐらいなら倉庫に置いてあったぞ」
「なるほど、では今日どこかの時間でお願いいたします」
おばちゃんのホクホク顔が目に浮かぶな。
・・・・・・
おばちゃんの店に着き、奥の部屋に通された。
エネドラから、我が家がこの店と瑪瑙の取引をしたい旨を説明。
ニヤリと笑うおばちゃんが奥に引っ込んで、瑪瑙の装飾品と多数の原石を持ってきた。
テーブルの上に所狭しと並べていく。なかなか圧巻の状況だ。
原作だと琥珀の原石は数があまりない感じだったけど、瑪瑙の方は鉱石だから採れるだけ採れちゃうのかな。
物凄い数の原石が並んでいる。
色も形も様々で、縞模様のバリエーションも多彩だ。
なんの知識もなかったら、何を基準に選べば良いのだよって感じだ。
もう、フィーリングでしか選べないだろう。
エネドラが選びながら、カラダンが助言して、おばちゃんが舌打ちするという面白い光景。
俺の出番は無さそうだ。
というか、俺に宝石選びのセンスがない事は早々に理解出来てしまった。
原石が1個800ナールから1000ナールで大小様々なものを計20個購入。
瑪瑙のブレスレットを1つ60000ナールで購入。
3割引をセットしたので、合計55020ナールを支払った。
カラダンが小声で『ブレスレットは2、30万ナールぐらいで売れる逸品です』と言ってる。
ほんまかいな。まあ、これは売り物ではなくプロモーション用だけど。
瑪瑙がこれだけあるなら、需要がある所に大量に売りさばく手もあるけど、ペルマスク以外で高額で売れる遠隔地があるのかって話だよな。
ペルマスクだけなら、鏡の装飾で使う以上には売れないだろうから需要は頭打ちになる。
大量に仕入れて不良在庫を多く抱えるのは避けないとね。
「そういや、あんたに言われた食料の方はさっそく送りつけておいたよ」
「そうか、仕事が早くて助かる」
この、おばちゃんはなんだかんだ言って、孤児院の連中には誠実なので信用できる。
「別に契約通りのことをやってるだけで、感謝される筋合いはないね」
「まあ、今後もよろしく頼むよ」
相変わらずの憎まれ口だ。
おばちゃんの店を出て、ボーデの冒険者ギルドにワープ。
確か冒険者ギルドの隣って言ってたよな。
ギルドの壁から出て、暇そうにしていた職員の一人に琥珀商の店を確認。
こっちの店って、外観が店のように見えないから微妙に探しにくいのだよね。
隣って、どっちの隣だよって思うよ。
ギルドを出て、言われた通りの隣の店のドアをノックした。
店頭に商品も並べてないから、本当に分かりにくい。
看板でダイヤの宝石マークでも出しておいてほしいが、この世界では無理か。
・・・・・・と、思っていたら、なんかネックレスっぽい木の板がぶら下がっていた。
これで判断しろ・・・・・・と、一見では無理だろう。
これがネックレスを意味するとか分かるか?まあ、もう迷わないけど。
やがて、原作通り、猫耳の従業員が出てきたので、紹介状を渡して用向きを伝えた。
応接室に通され、暫くする年嵩の猫耳店長がやってきた。
「こちらは公爵様直々の紹介状でございますな」
「そうだな。ちょっとした成り行きで書いて頂くことになった」
「琥珀はどちらでお売りになるのでしょうか?
帝都やこの近辺ですと手前どもも商売をしておりますので困ってしまいます」
「ああ、ペルマスクだな。
大量に売る訳ではないのだが、そちらの商売に支障があるだろうか?」
「ペルマスクですか。それなら問題ございません。
こちらは、ネックレスに仕立てたものとなります」
店長は大小様々な琥珀を使ったネックレスを並べていく。
エネドラの前にひと際大きな琥珀を使ったネックレスを置いた。
右腕に付けた瑪瑙のブレスレットを見たせいだろうな。
カラダンに目配せすると、店主から見えないように右手の指を三本立てて見せてきた。
購入する際に、カラダンの目で見てどれがベストなのかを伝えるサインを決めていたので。
右から三番目。つまり、エネドラの前に置かれた一番大きな琥珀のネックレスがベストか。
「ネックレスだけでなく、原石にも興味があるのだが。
ペルマスクに持っていけば売れるかと思ってな」
「原石ですか。数は多くはありませんが、こちらにございます。
一つ800ナールで10個ほど在庫があります」
原石の入った小箱を出して、フタを開けて見せてくれた。
一部が粗削りされて中身が露出された琥珀だ。
値段も数も原作通りか。
瑪瑙と違ってこちらは数が少なく、全て購入するから選ぶ必要はない。
エネドラに視線を向けると、お任せしますのサインが戻ってきた。
「では、こちらのネックレスをもらおうか。それとそこにある琥珀の原石を全てもらおう」
「左様でございますか。そちらは当商会自慢の逸品にござます」
どれでも自慢してるのではないかと言いたくなってしまうが、自重した。
原石が1個800ナールで10個購入。
琥珀のネックレスを1つ50000ナールで購入。
3割引をセットしたので、合計40600ナールを支払った。
エネドラには早速、琥珀のネックレスを付けてもらった。
プロモーション用とはいえ、瑪瑙のブレスレットと琥珀のネックレスを付けて、彼女はどう思ってるのだろうか。
少しだけ恥ずかし気に、それでも嬉しそうでもあり誇らしげにも見えるのは贔屓目だろうか。
琥珀のネックレスにタルエムの小箱を付ける商談をするのは、ネックレスの受注をもらってからにするか。
店主に礼を告げ、また取引のため来店させてもらう事も伝えて店を後にした。
「まだ昼食まで時間があるな。ベイルの家具屋に行くか」
「はい。旦那様」
冒険者ギルドに戻って、壁からベイルの自宅にワープした。
「カラダン、部屋をもう一度見てくるか?」
「そうですね。念のため一回り見てきます」
玄関で靴を履き替え、カラダンは二階へと上がっていった。
「今日の取引はどうだったと思う?」
「そうですね。今のところ、カラダンへの注意点は見当たりませんでした。
ただ、実際のお金のやり取りは旦那様がやってましたので、
やはり金銭のやり取りが発生する場合は今後も注意が必要だと思っております」
そうそう、そうやってチェックする習慣をつけておいた方が良いと思う。
「分かった。俺の方も注意を怠らないようにするので、今後もよろしく頼むぞ」
「はい。承知しました」
カラダンが降りてきたので、家具屋に向かうことにした。
・・・・・・
「お前、あれだけ家具やら桶やらタライを買ってるのに、まだ買うのか?
しかもベッド10台以上購入ってなんだ?家具屋でも始めるのか?」
「必要があって買うのだから問題ないだろう?」
確かに購入数は異常だ。
ここで買った家具の全ては、クーラタルの家に引っ越す際に拠点間物資輸送で送ったからな。
今、ベイルの旧宅の部屋はすっからかんだ。
ベッドを13台、食堂用の大き目のテーブルを一つ、椅子を22脚、食器棚1つ、タンスを7つ、テーブルを2つ購入しようとしている。
うん、なんだコレって感じだ。
「気にするな。気にしたら負けだ」
「負けって、なんだよ。まあ、たくさん買ってくれるのは有難いからいいのだけどさ」
なら、四の五の言わずに売ってくれ。
俺とおっちゃんの会話はスルーして、エネドラとカラダンは淡々と家具を選択している。
その横のおばちゃんは満面の笑み。
例のクーラタルに引っ越した家から大量に家具を引き取ったのに、すぐ売れたかららしい。
おばちゃん、まる儲けだな。
「今度は手伝えないけど、今日の夕方くらいに運んでもらえるか?」
「まあ、母ちゃんから言われてるから大丈夫だけどよ」
結局の俺もおっちゃんもおばちゃんの掌の上か?いや、俺は違うぞ。
おばちゃんのホクホク顔に対抗して3割引きをセットしたけど、勝利の感慨はない。
こっちは必要経費だから負けではないのだ。
支払いを済ませて、店を後にした。
ペルマスクから戻った後に、今日の夕方は家具の大移動大会だな。
大変だけど拠点に家具等が運び入れられて、子供達の受入準備が整っていくのは妙に嬉しい。
家具を置く前に旧宅の各部屋の掃除をしなければならないが、留守番組の手の空いた者や午後の迷宮探索から戻った双子にやらせるらしい。
双子も剣術指南所の子供達のためだから、きっと頑張るだろう。
二人と一緒にワープでクーラタルの自宅に戻った。