朝起きると、何故か肩が痛い・・・・・・手当のスキルで治したはずなのに幻痛というやつだろうか?
原因を作った張本人は、既にベッドに居ない。
窓を開けると、ヴィルマと模擬戦をやっているのが見えた。
あれだけ昨晩ノックアウトしたのにタフだな。
体の動きがキレキレに見える。
昨晩の会話で彼女の事が少し理解出来た気もするけど、あれって俺に愛情を抱いてるかと言うと微妙な気もするな。
一番良いモノを手に入れたいっていう所有欲じゃないだろうか。
奴隷として来てもらって、直ぐに愛情や忠誠を期待するのは無理だと分かってはいるけど。
俺にはそんなカリスマ性なんてないのだし。
何度か肌を合わせて、徐々に好きになってもらえたらぐらいの気長な気持ちでいこう。
今日は奴隷オークションの日だ。
奴隷商人限定で高スペックな奴隷は出てこないという話だったが、我が家に馴染める者が一人でも獲得できると良いのだが。
最近、急激に人が増えたので、少し落ち着いた方が良いのではないかと思いながらも、勢いに乗ってしまえと思う自分も居る。
多分、勢いで買ってしまうのだろうという予感がする。
・・・・・・
朝食を終えて出発準備を整えたので、エネドラに午前中の商談の最終確認をした後、ターヘラの冒険者ギルドにワープで飛んだ。
ギルドを出てアルマーの奴隷商館に向かった。
ドアをノックすると、間もなくアルマーが出てきた。
直ぐに出発するのかと思ったが、応接室に通された。
「オークションの目録が送られてきまして、先に御覧になった方が良いのかと思うのですが」
「そうか、助かる。見させてもらおう」
目録を見たが、確かにびっくりするような奴隷は居ない・・・・・・というか、これ見ても探索者以外はレベルが分からないので、フーンという感じでしかない。
名前、年齢、性別、ジョブ、種族、出身地、希望最低落札金額くらいしか書いてない。
目録だから、詳細プロフィールなんて無理か。
年齢は結構マチマチだけど、さすがに年老いた者は少なく、若い者が多い。
性別は男が多い気がする。戦闘職が結構の割合を占めるからだろう。
戦士、剣士、僧侶、探索者、神官、巫女、薬草採取士か。
探索者のレベルは低い気がする。この年齢でこのレベルだと選ぶ気にはなれないな。
薬草採取士は若い女性の二人くらいしかいない。
鍛冶師、竜騎士、魔法使いはさすがにいない。
商人や錬金術師もいないが、こっちはたまたまだろうか。
農夫もいないのは村人と同じ扱いでオークションにはかけないのだろう。
種族は人間、獣人系が大半で、ドワーフがほんの少しだけいる。
エルフ族もエマーロ族も鬼人族もいない。
種族が偏っているので、この世界の悪意を少し感じてしまうは気のせいだろうか。
エルフ族はひょっとしたら、別枠扱いなのかもしれないな。
出身地はよく分からない地名が多い。村レベルなのか街レベルなのか分からないが。
まだ行ったことのない地域があるということだな。それはそれでワクワクする。
この情報で希望最低落札金額を見ても、全く購入の是非が分からない。
総じて、この目録を見て選ぶ気にはなれないな。
いずれにしても、オークション会場に行って確認するしかないな。
鑑定で見てレベルが分かったとして、びっくりするような者が居るとも限らないが。
「アルマーの方は、この目録を見て仕入れたい奴隷はいないのか?」
「そうですね。そもそも、購入資金がないと難しいので」
うっ、この前、剣術指南所の取引でこいつの利益を奪ってしまった俺としては胸が痛い。
この奴隷商館もコンサルティングした方が良いのだろうか?
安い奴隷を買ってきて、パワーレベリングして高レベル探索者か冒険者にして売り払うとかすれば簡単に稼げはする。
だけど、こちらの手の内を簡単にバラす訳にもいかないから無理か。
せめて、アルマーがこちらの利になる交換条件を出せるものがあれば話は変わるのだが。
資金を貯めて、地道に商売してもらうしかないか。
普通は皆そうしている訳だし。頑張れ、アルマー!
「そうか、では、そろそろ出発しないか?」
「はい。行きましょうか。場所はドブローの商人ギルドになります。
今回、ドブローの奴隷商館が会場を借りています」
ドブローか。肉三種盛りを用意しないとならないのだが、ずっと放ったらかしだな。
「こちらの絨毯を使って下さい」
「ドブローの商人ギルドには行ったことがないので、冒険者ギルドに移動しよう」
フィールドウォークの詠唱をして、ドブローの冒険者ギルドに繋いだ。
先にゲートをくぐり、アルマーが後に続く。
タケダ家以外の者と街と街の間を移動するのは妙な気分だな。
こんなゲートをくぐること一つで情が湧きそうになるのか。
オークションに行くので気分が少し高揚してしまってるのかもしれない。
冷静にならないと。
ギルドの壁に出て、受付の職員に商人ギルドの場所を確認。
教えてもらった道順は分かり易かったので、直ぐに目的地に着いた。
さすがにクーラタルの商人ギルドや帝都の建物と比べると小さい。
この建物に、あの目録の奴隷メンバが全員入るのか?
ちょっと無理っぽい気がするけど。
現地に着くと、ここからはアルマーが主役で俺は護衛のオマケ扱いだ。
アルマーが受付でチェックを受けている間は待つしかない。
周りをチラ見した感じでは、全然オークションっぽくもなく、イベントの雰囲気も感じない。
現代のイベント会場のイメージに引き摺られ過ぎなのかも。
アルマーに目配せされ、無口で忠実な護衛のフリをしてアルマーの前に立つ。
周りに殺気を飛ばす気はないが、護衛としての最低限の振る舞いをしないとね。
奥に進み、普段オークションをしているであろう広いホールのような場所に入る。
これは、確かにオークションをやっているという感じだ。
ステージのような場所に司会の者がいて、袖に奴隷を連れている商人がいる。
それを取り囲むように、商人の連中が席に座っている。
ただ、満席というよりは閑散としていて、空いてる席の方が非常に多い。
オークションにかけられている剣士もどこか、やる気のなさそうな感じだ。
声を出して、金額を叫んだ者がいるが、それ以外の者は退屈そうな感じだ。
オークションで盛り上がっていますという雰囲気じゃないな。
淡々と仕入れているって感じなのかもしれない。
最低金額での落札が決まって、次の戦士の男に移った。
戦士のアピールポイントを商人の男が説明してるが、事務的であまり気合が感じられない。
鑑定で見ても、これからオークションにかけられる戦士の男を購入したいという気にはならないな。
戦士の男はLv7。
レベル以前にオークションにかけられる男自身が何かをしゃべる訳でもプレゼンする訳でもないので、この男のことが全く分からない。
先程の剣士もそうだが、この戦士もやる気のなさそうな感じに見える。
竜騎士や魔法使いだと、ジョブそのものがスペックで付加価値なのだけど、このオークショだと購入判断が厳しいな。
次の僧侶の男に移って、別の商人が説明をし始めても同様な感じだ。
ああ、これは時間の無駄だな。
アルマーに護衛として不自然にならないように小声で話しかけた。
「オークションにかけられない村人ジョブの者達の居る場所に行きたいのだが」
「では、移動しましょうか。この会場を出て、右側の出口から出た外になるようです」
外になるのか。それなら、この会場のキャパが小さくても問題ないな。
アルマーの前に立ち、出口へと向かった。
廊下で歩きながら、小声でアルマーに確認。
「オークションにかけられる前に、その奴隷と面談というか会話は出来るだろうか?」
「いえ、それは出来ないことになっています。
村人や農夫のようなオークションにかけられない者には面談が可能です」
えっ、ダメなの?じゃあ、オークションで購入するとか無理っぽい気がするぞ。
というか、分かったぞ。
このオークションって、業者の不要品セールって位置づけだ。
訳ありというか問題を抱えて、持て余している奴隷を売ってしまおうというやつだ。
そもそも売れるような奴隷なら、ここではなく季節の境目の客向けのオークションに出すか、普段通りに売っても売れるから、ここに出さないのかもしれない。
真面目に鑑定して、面談するという普段通りの奴隷商館巡りのやり方でいくしかないな。
対象は村人と農夫のジョブだけになるけど。
外に出ると、多くのテントが張られた広場のような場所に出た。
こっちの方がイベント会場っぽいな。
しかも、オープンな場所に奴隷が突っ立っているので、鑑定し放題だ。
鑑定しても、村人ジョブが農夫ジョブの者が多く、たまにオークションに出されるであろうジョブの者がいる感じだ。
後者は面談不可だから、選択肢から外れるな。
事前の打合せ通り、アルマーが一つのテントに近づき、村人ジョブの奴隷を展示している商人に話しかけた。
「商人や探索者を志していた奴隷がいれば話を聞きたいのですけど」
「はぁ?そこに突っ立ってるから、勝手に聞いてくれ」
奴隷商人の方は売る気があるのだろうか?
村人ジョブの者に、そこまで手間をかけられないってことなのかも。
やはりバルク品扱いなのだろうか。
アルマーが商人にした質問と同様の質問をしたが、質問された人族と狼人族の奴隷はそもそもブラヒム語が話せなかった。
これは不採用だ。
次のテントに行き、同様のやりとりをしたが、ブラヒム語が話せた村人は生粋の農夫だった。
農夫でもブラヒム語をちゃんと話せる事に驚きを感じた。
だが、商人も探索者も興味がなさそうだったので不採用。
その後のテントでも、条件に合わない奴隷達が続いた。
粘り強く、質問してくれるアルマーに段々悪い気がしてきた。
パワーレベリングして、結構レベルは上げてやったけど、アルマー自身はなんの実感もないのだろうな。
さっきも思ったが、こうやって情が湧いてくるのだろうか。
俺の気持ちは全然、高揚しておらず下降気味だが。
次のテントは当たりっぽかった。
3人の若者が商人と探索者をそれぞれ志していたと回答してきた。
ブラヒム語も普通に会話可能。
ちゃんとブラヒム語が話せてもバルク品扱いにされてしまうのか、村人ジョブは切ないな。
(鑑定)
ピコ(人間族 男 15才 奴隷)
村人Lv2
ビンス(人間族 男 15才 奴隷)
村人Lv2
リック(人間族 男 15才 奴隷)
村人Lv2
全員が金髪で、リックが中肉中背、それを少し引き締まった体にしたのがビンス、少しふくよかにしたのがピコという感じだ。
奴隷の割には年相応の元気な若者に見える。
15才だし、奴隷になったばかりなのだろう。
アルマーと事前に決めておいた面談希望のサインを出す。
サインを理解したアルマーが頷いた。
「ここにいる三人と個別に面談することは出来ますか?」
「おっ、そうかい。別に良いぜ。商談室に行こうか」
売れると思ったのか、売り主は少し機嫌が良くなったようだ。
ギルド内にある商談室に三人を連れて歩き出した。
アルマーの後に俺も続く。
三人とも同じ村出身の幼馴染。
ドブローの近くの鉱山で大規模な事故があり、三人とも親が亡くなり奴隷となったそうだ。
奴隷商人がひとしきり三人の説明をすると中座してくれた。
「名前と奴隷になる前になりたかったジョブについて、もう一度お話しして下さい」
「ピコと言います。村にいた時は、成人したら商人になりたいと思ってました。
この二人が村の外をいろいろ旅したいと言っていたので、
一緒に各地を回りながら商売をしたいと思ってました」
「僕の名前はビンスです。
子供の頃から自分の知らない遠い所に行ってみたかったので、
ゆくゆくは冒険者になりたいと思ってました。
三人で力を合わせれば、どこにでも行けると思っていたのですが、
鉱山の事故でこんな事になり夢は実現できなくなりました。
それでも三人で力を合わせればきっとお役に立てると思います。
三人まとめて雇って頂けないでしょうか?」
「俺・・・・・・僕の名前はリックです。
ピコとビンスの二人と力を合わせれば頑張れると思います。
事前にいろいろと調べたり準備するのが得意なので役に立てると思います。
三人とも雇ってもらえないでしょうか?」
なんだか分からないけど、とても仲が良いのだろうか。
バラバラに行動すると力が発揮できないのだと困るな。
アルマーからサインが出たので、俺が質問することに。
「我が家に来てもらうことになった場合、別々に行動してもらうことがあると思うのだが、
三人一緒に行動しないと良い結果が出ないのだろうか?」
「そんな事はありません。別に村に居た時も、別々の家で別々のことをしていましたし」
ビンスが冷静な回答をしてきた。それはそうか、別に家族という訳ではなかったようだし。
「三人とも家事、炊事や掃除などは出来ますか?」
「家では普通に料理や掃除はしていたので大丈夫だと思います」
アルマーの質問にピコが返事をした。
「自分よりも年齢が下の者の面倒を見たことはあるだろうか?」
「村の年下の子供達の面倒を見させられていたので出来ると思います。
ブラヒム語もビンスは教えていたり、魚の釣り方をピコが教えていたりしたので、
子供達には好かれる方だったと思います」
リックは何を教えていたのだろうか。まあ、良いか。
うーん、これは採用かな。やる気があるという点だけだが評価は出来るだろう。
あとはカラダンの手腕に期待するか。
少なくとも、現時点で条件は満たしていて、及第点はありそうだ。
アルマーに購入指示のサインを出す。
「分かりました。これで面談は終了です」
三人には奴隷契約の意思表示はここではしない。売り主側との条件闘争が残っているので。
こちらの想定以上の金額なら見送ることもあり得るからだ。
面談を終えて、売り主に入ってもらった。
ピコ達三人は元居た場所に戻されて、ここには売り主とアルマーと俺だけだ。
「単純作業をする安い奴隷を探しています。
村人のジョブの者を数名ほど探してほしいと言われているのですが、
あの三人の値段をそれぞれ教えて下さい」
「一人5万ナールだな。それが相場だ」
5万か別に高い訳ではなく、むしろ安い?
・・・・・・でも、ただの村人ジョブでしかないと思うと高いのか。
この奴隷商人はブラヒム語がしゃべれる事くらいは、さすがに知ってはいるだろう。
それでも、村人のジョブではブラヒム語を詠唱して使えるスキルがある訳ではない。
一般的な作業をするのに、ブラヒム語が使えた方が多少付加価値が上がるという程度だろうか。
俺の感想を他所に、アルマーが意外に粘り強い交渉をして、4万ナールまで価格が下がった。
この後、俺が交渉すれば3割引きになるのだが、それは残念ながら今回の交渉では使えない。
三人まとめて12万ナールで確定した。
『村人三人ごときにここまで交渉するなんて・・・・・・』と相手の商人も愚痴っていたが、それほど怒ってる訳でもないので、お互いに損のない価格で交渉が出来たのかもしれない。
三人は後で迎えに行くので、その時に契約することにして他を回ることにした。
契約するのは、もちろん仕入れを行うアルマーだ。
なんか、もうオークションはどうでも良い気がしてきた。
このまま、アルマーとテント巡りをしよう。
既にカラダンに要望されていた候補の奴隷はクリア出来ているが、まだ他にも候補がいるかもしれない。
次のテントはブラヒム語が話せないので外れだった。
その次のテントもブラヒム語が話せない村人だったので、外れだったのだが。
ミモザ(人間族 女 38才 奴隷)
薬草採取士Lv9
目録で見た薬草採取士には、この名前がいなかった気がする。
女性にしては、やや長身で金髪の女性。
肝っ玉母ちゃんという感じではないが何か圧を感じなくもない。
ジョブやレベルには、これと言って惹かれるものはない。
だけど、エネドラと相談していた件で面談してみるか。
アルマーにサインを出すと、俺の選択に驚いたようだが、面談を売り主に申し出てくれた。
この女性は年齢がかなり上なので、オークションではなく直売りの対象になるらしい。
・・・・・・
奴隷商人の説明を受けた後、中座してもらい直接、質問することにした。
盗賊の襲撃を受けて旦那さんが死亡し、税金が払えずに奴隷落ちという定番パターンだった。
アルマーからの質問で家事全般は全く問題ないことは確認できた。
「出産の経験はあるだろうか?」
「子供は二人産みましたのであります」
なるほど。その子はどうしたのかという野暮なことは訊かない。
「他人の出産の補助をしたことはあるだろうか?」
「さすがに、産婆さんの手伝い等に立ち会ったことはありません。
近所の奥さんの子供の乳母を短い間だけやっていたことはあります」
それなら大丈夫か。
エネドラと相談して、もう少し年齢が高く、人生経験がありそうな奴隷を増やそうという話を前からしていた。
俺のせいではないと思うのだが、奴隷の年齢層が少し若い方に偏っているのが前から気になっていた。
アルマーに購入のサインを出した。
ここでもアルマーは頑張ってくれて、3万5000ナールで購入に漕ぎつけた。
・・・・・・
その後もテントをひたすら回った。
フラウス(狼人族 ♀ 21才 奴隷)
巫女Lv10
銀髪で奴隷にしては珍しく長髪で、髪を後ろで束ねている。
狼人族で巫女のジョブか。ラファと同じと言えば同じなのだが。
この者もオークションの目録になかった者だが、見ればそれも納得だった。
若い女性なのだが、体が傷だらけだった。
顔にも大きな傷があり、売り主の話ではオークションには出せないので、村人や農夫と同じ扱いで作業奴隷兼戦闘奴隷の扱いらしい。
・・・・・・
売り主の話では、探索者パーティが全滅した際に一人だけ生き残ったとの事。
ブラヒム語も問題なく会話可能だと。
迷宮から一人で生きて帰るのは、かなり
チートスキルでこなしてる自分と違い、実際の迷宮の現実は厳しい。
アルマーと俺だけになり、直接質問となった。
家事が出来るか等はアルマーが質問したが、あまり上手ではないとの返事。
迷宮探索についての質問は俺の方で行うことになっているのでバトンタッチした。
「かなり厳しい状況から生還した訳だが、今後も迷宮探索をしたいと思っているのだろうか?」
「自分が別のパーティに救われる直前に、背負っていた仲間が毒でやられて死んでしまった。
全体手当をかけることも出来ないほど、消耗していて・・・・・・救えなかった。
誰も死なすことなく、今度こそは巫女として仲間の役に立ちたい・・・・・・と思っています」
「つらい事を訊いて悪かったな。希望については了解した」
アルマーに購入のサインを出した。
この後のアルマーと奴隷商人の交渉は結構、シビアな戦いとなった。
戦闘職だから値を吊り上げようとする売り主と、体や顔の傷などを理由に値下げしようとするアルマー。
更に非処女だからという理由で粘るアルマー。
フラウス本人の前では、とても聞かせられないようなバトルだ。
双子の契約の際には性奴隷の説明すらできなかったのに、成長を感じさせるやりとりだった。
だが、その成長の証跡はナナイにも聞かせられない。
アルマーの頑張りもあってか、最終的には6万5000ナールとなった。
これで、一通りのテントは回っただろうか。
なんか思っていたオークションと全然違ったが、目的は果たせた気がするので撤収するか。
まずは、このテントでフラウスの奴隷契約を締結した。
アルマーに渡しておいた小袋から代金を払ってもらい、俺のパーティに入ってもらった。
次に幼馴染三人組のいたテントに行き、同様に代金を支払いパーティに入れた。
最後に薬草採取士のおばさんの居たテントに行き、代金を払った。
6人パーティなら満員なので、おばさんのパーティ加入は保留だ。
小声でターヘラへ戻る旨をアルマーに伝えた。
商人ギルドの壁からアルマーの奴隷商館にフィールドウォークでゲートを繋げて、先にアルマーに戻ってもらった。
アルマーがパーティから外れ、薬草採取士のおばさんをパーティに加入させた。
そのあとは、逐次ゲートをくぐってもらい、最後に俺がくぐり抜けた。
ようやく、オークションが終わった気になったが、思っていたよりは時間がかからなかった。
実際、オークションに参加してないからというのと、アルマーの頑張りによるものだな。
「アルマー、申し訳ないが我が家の者を連れてきたいので、
ここで五人と一緒に待っていてくれないだろうか?」
「はい。大丈夫ですよ」
俺がアルマーにため口で話をして、アルマーが丁寧な口調で俺に話し掛けるのを聞いて、当惑する五人。
後で説明するから、待っていてくれ。俺はアルマーの配下ではなかったのだよ。
「アルマー、今回の俺との取引は正規の取引だ。
ちゃんとアルマーの利益も加えて、俺と契約を結ぶようにしてくれ」
「えっ?仕入れ価格に手数料乗せるだけなのでは?
対価に迷宮でのパーティ加入をさせてもらっていますよね?」
「それはオークションに参加させてもらう対価であって、
仕入れの手間に対する対価は正当な利益としてアルマーは受け取るべきだ」
アルマーの今日の頑張りがなくて俺一人が頑張って交渉していたのなら、アルマーが言った通りの仕入れに手数料乗せただけにしたかもしれない。
真っ当な働きには真っ当な報酬が必要だと思う。
「じゃあ、ちゃんと計算しておいてくれよ。俺は一度自宅に行って、直ぐに戻ってくるから」
「分かりました。お待ちしております」
カラダンを連れてくるために、フィールドウォークの詠唱を偽装しながら自宅にワープした。