アランの商館に行き、守衛をしている者に取次ぎを依頼。
そろそろ夕方が迫っているが、今回はじっくりと交渉だ。
幸い他に商談などはなかったようで、すぐにアランと面会ができた。
この前、面談したドワーフのアミルの購入についての相談だ。
アランはアミルではなく、狼人族の剣士の娘を推してくる。
ドワーフということから鍛冶師を得ようとしているのが丸わかりなのだろう。
鍛冶師の奴隷はお勧めしないことを丁寧に説明してくれている。
顧客の立場に立った模範的な対応だが、今はアミルが優先だ。
値段の話はまだせずに、個別面談の希望を出す。
アランが退出して、アミルと一対一で面談する機会をもらった。
アミル(ドワーフ族 ♀ 16才 奴隷)
探索者Lv3
原作で主人公と奴隷契約したドワーフ娘は髪のボリューム量の多い女性(♀)だったが、アミルは黒髪のショートヘア。
小柄という点は共通している。
胸の比較は・・・・・・分からない。体格相当だと思うことにしよう。
耳が細いとか細くないとかもよくわからない。アランも特に何も言ってなかった。
年齢も鑑定で既に分かっている。俺より一つ年下だな。
アランから事前に聞いているが、迷宮で一緒に戦うことには問題ないと。
探索者のレベルが低いのは迷宮での経験が3カ月程度だかららしい。
3か月でレベル3というのが高いのか低いのか、ちょっとよく分からない。
俺のように経験値ボーナスがないし、攻略速度などパーティー次第かもしれない。
初心者レベルだが、それはこっちで何とかできるので問題ない。
こんな娘をモンスターの跋扈する迷宮に連れ込んで、一緒に戦えと言うのは鬼畜の所業?
初年度奴隷で性奴隷になることも了承済らしい。
元の世界ではコンプライアンス遵守をしていた模範的社会人だったので、背徳感が半端ない。
怯んでいる訳にはいかないので、堂々と面談しないと。
「君には、俺と一緒に迷宮に入ってもらいたいのだが、迷宮で戦うのは大丈夫だろうか?」
「は、はい。迷宮での経験はまだ・・・・・・少ないですが、迷宮で戦うのは・・・・・・問題ありません」
ブラヒム語の会話レベルを確認するために、いったん異世界言語(全言語)を外して、会話を試みているのだが・・・・・・うん?ちょっと、まだ会話が拙い感じだな。
「ブラヒム語は今、この商館で勉強しているのだろうか?」
「はい。ドワーフの言葉とブラヒム語を両方話せる・・・・・・方はいませんが、
ブラヒム語を教えて・・・・・・もらってます。
元々少しはしゃべれましたが、ここで10日ほど学んで・・・・・・います」
原作のドワーフ娘と主人公の会話はかなりスムーズだった気がするのだが。
ヒロイン属性を持った彼女はやはり凄く優秀だったからってことなのだろうか?
10日ほどでどれほど向上したのかは、よく分からないし、彼女も説明ができないようだ。
別に今のままでも俺の異世界言語(全言語)があればコミュニケーションに問題はない。
スキル詠唱や今後やってもらいたい諸々の調査にブラヒム語のレベルは高い方が良いはず。
パーティーメンバー間の会話もブラヒム語になるだろうし。まあ、アランとの交渉材料かな。
「書物を読んだりするのは経験があるだろうか?」
「はい。本が置いてある集会場・・・・・・や、近所の家に読ませてもらいに行って・・・・・・ました」
話した感じだと頭の回転もそこそこ良い。
書物を読むのも苦手ではなく、協調性も問題なさそうな印象だ。
やはり初めの見立て通り、購入する方向で問題ないな。
「迷宮探索を主にやってもらうつもりなのだが、
雑用とか料理とかも可能ならやってもらいたい。どうだろうか?」
「掃除や草むしりなどは、奴隷になる前からやっていたので問題ありません。
農作業や料理はあまりやっていなかったので、ご期待・・・・・・に沿えないかもしれません。
でも、努力いたします」
できそうもないことをできないとハッキリ言ってくれるのは好感が持てるな。
苦手なことを無理やりやらせる気もないが、それは今ここで言うのはやめておこう。
「ドワーフの種族固有ジョブである鍛冶師については、どう思っている?」
「鍛冶師はドワーフの中でもとりわけ優秀・・・・・・な者しかなれないと思っています。
あこがれの存在・・・・・・ではありますが、私がなれるかどうかは正直分かりません」
「力というか腕力には自信がある方か?」
「村のドワーフの中では、平均・・・・・・的な方だったと思います。
迷宮探索でお役に立てればと思っています」
鍛冶師にはなりたいものの、自分に適性があるかどうかは懐疑的な感じか。
まあ、それもこっちで何とかするので問題ない。現時点で本人には伝えられないが。
「何か、俺が君を迎え入れる場合の希望等はあるか?
衣食住、迷宮探索、何についてでも構わないが、あれば聞かせてほしい」
「えっ?ご主人様に望むことは特にありません。買っていただけるだけで感謝・・・・・・してます」
うーん、固いな。でも、奴隷としてはそんなものか。
無理に希望を聞き出すのも難しいし、契約後に改めて確認した方が良いかもしれないな。
面談が終わってアミルが退出して、アランとの価格交渉に入る。
まず、率直にブラヒム語の会話能力に懸念がある旨を伝えたところ、若干渋い表情となった。
ブラヒム語のレベルについては、分かっていたようだ。
直接的な値切り交渉で若干だが値段が下がり、ブラヒム語のレベル上げのために更に5日ほど商館で学習させる条件を追加してもらった。
5日って微妙だが、ないよりはマシだろう。
契約にあたって遺言で俺の死後は解放する条件を加え、手数料を払うことにした。
もちろん3割引対応のためだ。
元々20万ナールを18万ナールまで値引き、遺言手数料が追加で300ナールだが、最終的には12万6210ナールとなった。
面倒なので790ナール追加で支払って、アミルを預ける追加の5日間の食事や湯桶の利用等、少し豪華にしてもらうように頼んだ。
まだ手元に来た訳ではないが、13万ナール以下で一人目の鍛冶師候補の奴隷を入手した。
交渉自体はまあまあ成功ではなかったか?
原作主人公のメンバーと比べるとちょっと小粒かもしれないが、今後に期待だ。
アミルを迎え入れるのは5日後なので、アランに礼を言って宿屋に戻ることにした。
もう日も暮れて、外で活動するのは難しい。
今日、入手した盗賊達の装備品を宿の裏の井戸で洗浄するのは明日以降だな。
この世界に来て思うのは、1日の活動時間が日の出日の入りに依存するところだ。
迷宮に入れば時間による明るさは意識する必要はないので、やろうと思えば24時間戦える。
命のやりとりが伴うなので、実際にはそんなことはしないのだが。
ただ買物するにも、外で作業するにも日が暮れてしまうと何もできない。
部屋の中にいても、夜はランタンがないと何もできない。
そのランタンの明るさも元の世界と比べるまでもないレベル。
夜の残業が当たり前だったサラリーマン時代を懐かしむ日が来るとはね。
故郷(?)を懐かしみながら、トボトボと旅亭に戻る。
うなだれている訳ではない。足元も暗いので注意が必要なのだ。
索敵はマップ表示で敵の有無が表示されるが、足元の石ころの危険までは教えてくれない。
俺は夜目が利くので、まだマシだと思うけど。
店主のボイルから鍵を受け取り、夕飯を済ませて部屋に戻った。
湯桶をもらって体を拭いてさっぱりしたところで、今後の方針の再確認。
まずは当面の計画目標の進捗だが、
①新規ジョブ取得とレベリング :種族固有ジョブの鬼武者を取得済
⇒可能なタイミングで魔法使いの取得。槍でモンスターを倒して騎士のジョブを取得する
②資金集め :元の世界から持ち込んだ物品の値付け(ビッカー頼り)
⇒ビー玉は2個で13000ナール(残り48個)。鏡は紹介状待ち
③資金集め :魔結晶の結晶化促進(細々と日々実施)
⇒1日1300ナールほどの魔結晶は可能(レベリングを犠牲にしたボス周回で改善可能)
④パーティーメンバーの拡充(1人~2人) :第一候補は前衛メンバーの鍛冶師
⇒アミルが5日後に来ることになった。次も前衛が良いだろう
⑤拠点の確保 :ベイルで試行を検討
⇒ベイルに1か月程度お試して借りてみて、拠点構築のスキルを試したい
⑥モンスターカードの購入の窓口確保 :未進捗
⇒商人ギルドに出向き、適切な商人の伝手を手に入れる。コボルトハンターとの伝手を入手済
⑦鍛冶師による装備の作成 :未進捗
⇒アミルの鍛冶師のジョブ取得後に鍛冶師ギルドに正式加入するか検討しよう
⇒魔法使い用の装備強化や詠唱中断のスキル付与も考えたい
⑧ベイル以外の街の確認及びワープ地点の拡大 :未進捗
⇒まずは、帝都、クーラタルからか。そのうちペルマスク方面とかも
⑨装備品の充実 :防具の拡充と武器のチェック
⇒鎧と靴しか防具を装備していないので、そろそろ頭と手の装備を拡充したい
⇒ベイル以外の街で掘り出し物がないかのチェックもしたい
そろそろ魔法使いのジョブ取得を目指そう。マジで風呂に入りたくなってきた。
初回魔法利用はMP全解放か。
コボルトLv3ならいけるだろう。
MP上昇効果のある英雄と僧侶のレベルを30近く上げてから挑戦しよう。
レベリングだけなら、3階層ボスのコボルトケンプファーのボス周回が良いかもしれない。
ボス周回やりながら、結果が思ったほどでなかったら4階層に移動するか。
コボルトケンプファーを倒すのに夢中になってる未来が予想できなくもないが。
パーティーメンバーは次も前衛が良いだろうが、あまり焦って増やしても失敗するか?
アミルとパーティーでの戦闘の慣らしをして問題点を洗ってからでも遅くはないか。
もう少し余裕資金ができてからかな。
早いうちに拠点構築のスキルを試したい。
正式な拠点はクーラタルあたりで借りる方が良いだろう。
ただベイルは家賃が安いらしいので、事前に試して拠点選びのポイントを確認しておきたい。
切実に風呂に入りたい・・・・・・だけでなく、料理人や錬金術師、農夫などのジョブも手に入るし。
鬼人族の種族固有ジョブはなかなか衝撃的だった。
もっと言うと魅力的というか、興味深いというか。
鬼武者ジョブを取得後にレベリングをしながら、武器をいろいろと交換しながら試してみた。
鬼武者取得前というか鬼武者取得するために、フラガラッハとほむらのレイピアを装備した。
フラガラッハは両手剣、ほむらのレイピアは鋼鉄の片手剣で普通に戦えた。
鬼武者取得直後に鬼武者のジョブをセットして武器を変えて試してみた。
フラガラッハとほむらのレイピアと銅の剣は持って、何とか素振りができる。
銅の剣を鉄の剣に変えるとダメ。素振りもうまくできないので戦闘では使えない。
銅の剣を3本にして、三刀流(?)にしようとしてもダメ。
しばらく、フラガラッハとほむらのレイピアの二刀流(?)で戦ってレベリング。
鬼武者がLv10になったところで、フラガラッハとほむらのレイピアと鉄の剣にしてみると、三刀流は使いこなせた。
鉄の剣を鋼鉄の剣に換えるとダメ。
銅の剣を3本にした三刀流はギリギリ使いこなせた。一本を鉄の剣にするとダメだった。
銅の剣の三刀流は殲滅力がないので、実戦では使えない。
というか、フラガラッハがなしでは近接戦闘は成立しない。
それはともかく、武器の装備数は筋力というか腕力上昇の補正次第ということか?
鬼武者と英雄には腕力上昇の補正がある。
試しに英雄のジョブを外すと、三刀流はできなくなったので確定だろう。
その後、しばらくフラガラッハとほむらのレイピアの二刀流で戦ってレベリング。
鬼武者がLv19になったところで、フラガラッハとほむらのレイピアと鋼鉄の剣にしてみると三刀流は使いこなせた。
鬼武者のジョブレベルも上がってるが、同時に英雄も上がっている。
多分、今のレベルだと鋼鉄の剣とダマスカス鋼の剣を入れ替えて三刀流は無理だろう。
鬼武者のレベルを30とか40にすればできるかもしれない。
夢が広がるというか、脳筋パラダイス?
魔法使いを取得して、いつかは魔道士、遊び人といった魔法使いの三刀流も使いたい。
英雄や勇者といったパーティー全体に良い影響を与えるジョブは外しがたい。
探索者、冒険者といったパーティーを組むジョブは必須だよな。
まあ、魔法攻撃セット、近接脳筋セットという使い分けをしていくか。
いつか四刀流とかもできるのだろうか?
片手剣であれば、かなり高レベルまで各ジョブを上げればエストック四刀流はできるか?
オリハルコンの剣は元よりダマスカス鋼の四刀流も恐らく無理だろう。
多分、今、実戦レベルの三刀流ができるのはフラガラッハの特殊性にあるはずだ。
原作では、デュランダルは初登場時から限定付きで13巻で限定解除していたよな。
フラガラッハも同じで多分、限定付きだ。
でなければ鬼人族とはいえ、低レベルの俺がぶん回せるはずがない。
限定付きのフラガラッハは銅の剣と同じ程度の腕力で使える利用制限ではないだろうか?
もちろん、破壊力は銅の剣と天と地の差があるのだが。
これからレベリングが進んで、鬼武者の上位ジョブや勇者を得たら武器の制限が緩和する?
エストック2本とフラガラッハとダマスカス鋼の剣やオリハルコンの剣は実用に耐えるかも。
まあ、破壊力重視じゃなくて、状態異常重視にして、状態異常のスキルを付与したエストック4本で暗殺者と博徒のセットで運用も良いかもしれない。
両手剣ではなく、同じ両手武器の槍を使うのはどうだろう。
リーチがある分、強権系のスキルをつけて、詠唱中断のカバー範囲も広がるか?
可能性をいろいろ考えると、胸が熱くなるな。
まあ、まだレベルも30を少し超えたジョブが出てきた程度だから道のりは遠い。
何よりも鍛冶師も得ていないし、ダマスカス鋼の装備品すら持っていない。
先を見据えておくのは悪くはないが、地に足をつけた迷宮探索が先だよな。
まずは、風呂・・・・・・じゃない、魔法使いの取得に向けて頑張ろう。
ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)
探索者Lv33 英雄Lv22 鬼武者Lv19 剣士Lv28 薬草採取士Lv32 商人Lv26
装備 フラガラッハ ほむらのレイピア アルフレイル 皮の靴
所持金 23万1370ナール
今日は盗賊も倒したし、迷宮でちょっとした知己も得た。一人目の奴隷も得た。
なかなか濃い一日だったな。
明日から、魔法使いジョブの獲得に向けて気合を入れてレベリングだ。
アミルが来るのが待ち遠しい。
迷宮は命のリスクがあるので、あまり浮かれすぎないようにしないとね。
盗賊も思っていたよりも出没しているみたいだしな。
索敵で見つけ次第狩って、資金源にさせてもらうけど。
早く風呂に入りたい・・・・・・と思いながらベッドの上で意識を手放した。