異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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080.士爵との取引(その2)

 冒険者ギルドを出て、騎士団の詰所に向かうと相変わらずドーガが門番をしている。

 サボってるのかと思いきや、意外に真面目なのだろうか。

 

「お、また来たな。盗賊でも狩ったのか?」

「そうだな。ベイルの迷宮で盗賊に出くわした。

 そのインテリジェンスカードの提出もあるのだけど、

 今日はちょっと士爵様に御相談があって来たのだ」

 俺の返事にドーガはニヤニヤしている。

 

「それは相談じゃなくて、悪巧みじゃないのか?」

「どう捉えるのかは相談を受ける者次第かもな」

 俺は両手を広げて、ヤレヤレという仕草をした。

 

「まずは、これだ。盗賊のインテリジェンスカードのはずだ。

 それで、士爵様との面会の予約はできるのか?」

「ほいっと。これは士爵様に渡してくるよ。懸賞金との交換ぐらいは問題ないだろう。

 この前よりは忙しさがマシになったけど、面会の方は確認してみないと分からないな。

 盗賊討伐作戦の功労者からの面会だから邪険にはしないかもな」

 ホントかよ。

 

 まあ、話を通してくれれば良くて、都合が悪ければ別の日に来るだけだな。

 今回はゴッゼル士爵との取引で直接対決になるから、ちょっと緊張する。

 

 ドーガは奥に引っ込み、しばらくしたら懸賞金の袋を持って戻ってきた。

 

「まずはこれが懸賞金だな。それで、今から面会可能だそうだ」

「そうか。面会を申し出て、いつも直ぐに会っていただけるというのは申し訳ないな」

 話が早いのは助かるけど、そんなに直ぐ面会希望が通るのもどうなのかね。

 

「今日って、カミーユ爺さんは居るのか?」

「ん?今日は別の街に行っているから不在だな」

 おっ、マジか。塩爺が居ない方が初回の交渉としては好都合な気がする。

 

 後で詰めの交渉する時に文句を言われそうな気もするけど、居なければ初めから門前払いにはならないだろう。

 

 ドーガに連れられて、いつもの執務室に案内された。

 そしていつも通り、ノックをして誰何される前に、こいつはドアを開けて入っていく。

 俺も続くしかないので部屋に入り、勧められるままにソファにかけた。

 

 士爵様は書類仕事が忙しいのか、俺は待つだけの状態だ。

 

 やがて一区切りついたのか、彼女は俺の前のソファに座り、お互いに挨拶を交わして本題に入ることになった。

 

「それで、今日は相談があるのだとか」

「はい。相談というよりは取引と言った方が正確なのかもしれません」

 今回は、塩爺がいないから直球で攻めてみよう。

 

「ほう、取引か」

 相変わらず怜悧な表情で、何を考えているのかよく分からない。

 

 盗賊討伐作戦の序盤で、アミルに抱え上げられて後方に連れていかれた時は口調が乱れていた。

 だが、俺は背中を向けていたため彼女の表情は拝めなかった。

 どんな表情だったのかスゴイ興味があったのに、非常に残念な気分になったものだ。

 

「先日の盗賊討伐作戦の際には、寄付という形を取らせていただきましたが、

 今回は僭越ながら対等の立場で、お互いの利益となる取引の提案となります。

 率直に申し上げますが、

 タケダ家から士爵家側に住居、装備品と一定額の金銭または生薬を供与いたします。

 その対価として、こちら側の望むものは3つです。

 一つ目は騎士団の業務時間外で良いので、我が家の者に戦闘訓練を施していただくこと。

 二つ目は士爵家パーティが迷宮で得たドロップ品、カードを我が家に納めていただくこと。

 ただし、食材のドロップ品は納める必要はありません。

 三つ目は士爵家側で得た戦争の情報を差し障りの無い範囲で提供していただくこととなります。

 契約期間は一年間で、詳細はそちらの契約書に書面で記載されております」

「随分と我が家に具体的な対価を供与するのだな。誰かの入れ知恵ではないのか?」

 彼女はドーガの方をチラリと見た。

 

 ドーガは視線を逸らしたが、それは自白しているようなものだろう。

 

 はい、士爵家の窮状をリークしたのはコイツです・・・・・・とは言えないので、俺はポーカーフェイスを貫いた。

 それなのにドーガは彼女から見えない所で、ニヤニヤしている。

 バレても、怒られたりはしないのだろうか。

 塩爺が居ないから調子に乗っているのではないか?

 

 ドロップ品やカードの引き渡しは、特に個数や枚数の記載がないから、士爵家側の自己申告だ。

 元の世界の契約なら、そんなザルの契約はできないが、今回は貴族である士爵家の当主を信用しての契約となっている。

 実際、この真面目な彼女が我々を騙そうと、ドロップ品の個数やカードの枚数を胡麻化すとはとても思えないから。

 甘いと言えば甘いのだが。

 しばらく様子を見て、どうしても信用が置けないようなら、翌年は契約しないだけだ。

 一年間だけでも真面目にドロップ品やカードを納めてくれれば、収支計算上はトントンだ。

 

 俺の3割引スキルや迷宮での生薬素材、拾得した装備を考慮に入れて収支計算すれば、半年も経たずに黒字になり、住居を新規購入した初期投資分も含めて利益が出る仕組みだ。

 なので、特別リスクの高い取引だとは考えていない。

 

 だが、こちらが提示した契約書もろくに見ることなく、彼女はソファから離れてデスクの方に移動してしまった。

 ありゃ、交渉決裂か?士爵家の貴族としての誇りを傷つけてしまったかもしれないな。

 

 ・・・・・・と思っていたら、大き目の箱を持って戻ってきた。

 座りなおした彼女は箱を横に置いて、話を始めた。

 

「其方は、商人であり迷宮探索者だと申していたが、

 スキル融合した装備品やモンスターカードも商っているのか?」

「取引を行なっているという意味では、おっしゃる通りでございます」

 今日もルークとカードの取引だから、嘘ではないだろう。だが、どういう話の流れだ?

 

 彼女は考え事をしているようだったが、箱から何やら取り出してテーブルに並べ始めた。

 これはモンスターカードか。カードは14枚ある。

 

 鑑定で確認すると、コボルト6枚、ウサギ3枚、はさみ式食虫植物3枚、サイクロプス2枚が置かれている。

 カードの横にメモが添えられているが、混ざって分からなくならないようにという配慮か。

 ・・・・・・だが、一部だけカードとメモの組み合わせに誤りがあるぞ!

 コボルトとサイクロプスだが、メモとカードに不一致があるペアが二組あるじゃないか。

 

 間違いを正したくなるのだが、何故それが分かるのかという話になり、ややこしくなるので指摘ができない。

 こういう間違いって、普通に起こるものなのだな。

 やっぱり鑑定スキルは偉大だ。

 

「其方がカードを取引しているというのなら、このサイクロプスのカード2枚を

 コボルト1枚とはさみ式食虫植物1枚に交換という取引はできないだろうか?」

「えっ?それはしかし・・・・・・」

 こちらは、カードの取引のためにここに来た訳ではない。

 

 それに、彼女が指し示したサイクロプスのカードの1枚は実はコボルトなのですけど。

 まあ、本当に取引をすることになれば、普通は商人ギルドのギルド神殿を使って、そこで誤りに気付くから問題ないのだろうけど。

 

「それと、もし鍛冶師の伝手があるのなら、紹介してもらえないだろうか?」

 そんな個別の取引はしたくないな。

 

「ここに参りましたのは、モンスターカードの取引のためではないのですが。

 失礼ですが、何故そこまで熱心にカードの取引やスキル融合の話をされるのか

 教えていただけないでしょうか?」

「むっ、これは失礼した。

 近々、我が家に私の妹である巫女を迎え入れるため、スキル融合した武器が欲しいのだ。

 スキル融合は失敗が多いので必要なカードを前々から集めていたのだが、

 妹を迎え入れるのに、時間があまりないので焦ってしまった。申し訳ない」

 こちらが訊いておいてアレだが、ちょっと士爵様、ぶっちゃけ過ぎじゃないか。

 

 そこまで内情を暴露してしまうのは貴族としてどうなのだろうか?

 何か今のゴッゼル士爵は、彼女と初めて会った時のイメージと全然違うのだけど。

 クール美人かと思ったのだけど、意外に妹想いの暴走お姉さんキャラだったの?

 

 それとも、それすらも貴族としての交渉術なのだろうか。

 実際、俺は彼女に同情してしまっている気もするのだが。

 

 この当主である姫様が感情面とか貴族の矜持とかで暴走した結果、家が傾いてしまったのではないだろうか?

 本来は参謀役であるべき塩爺があんな感じだから、暴走に更に拍車がかかるのかもしれない。

 

「カードのメモからしますと、

 詠唱中断かMP吸収のスキルを融合した武器をお求めなのでしょうか?」

「そうだ。強権の鋼鉄槍か、吸精の鋼鉄槍を考えている」

 カードは中途半端に集まっているが、十回に一度の成功だとすると賭けの部類だよな。

 

 メモの間違いはあるものの、ペアになっているのが6組、俺との交換が成立すれば7組か。

 勝算がない訳でもないが、運が悪ければ全滅ということもあり得る確率だ。

 

「では、今回の取引の契約内容にそちらで所有の14枚のカードと交換にタケダ家側が

 強権の鋼鉄槍か吸精の鋼鉄槍を提供すると追記しましたら、いかがでしょうか?」

「それで、私はこの契約書に署名をすれば良いのか?」

 いやいや、待て待てっての。

 

 その契約書は修正前のものだから、署名してはダメでしょ?

 

「契約書は新しい内容に修正いたしますので、

 もし合意いただけるとしても、署名は修正版をお持ちしてからのこととなります」

「そうか。では、修正版の契約書を速やかに持ってきてもらいたい」

 こんなに即決しても大丈夫なのだろうか?

 

 それに、こちらにだって準備というものがある。

 裏の家の内覧や購入、その他にもエネドラ達と相談したり、諸々段取りをしなけれならない。

 

 ドーガの方に視線を向けると、相変わらずニヤニヤしていやがる。

 

 おかしいな。確かに俺は悪だくみの計画をして、ここに乗り込んだはずなのに、いつの間にかペースを握られてしまっている。

 塩爺に居てもらった方が良かったのだろうか?

 でも、爺さんが居たら、決闘でカードを寄越せとか言ってきたか?

 チンピラじゃあるまいし、さすがに騎士が平民からカードをカツアゲしたりはしないか。

 

「参考までにお聞きしたいのですが、この14枚のカードを集めるのに

 どの程度の期間を要したのでしょうか?」

「そうだな、半年では無理だったから、200日程度だったか」

 彼女がドーガの方を見ると奴も頷いているので、その程度の期間なのかもしれない。

 

 約半年強で14枚か。1年なら26枚から28枚というところか。

 毎日、迷宮に入っている訳ではないのだろうが、それなりの頻度では入っているのだな。

 カードの種類が偏っているから、特定の階層に集中して入っているのか、それとも誰かと交換したのかもしれないが。

 

「明日の午後に契約書をお持ちしますので、

 そこで最終判断をしていただければと思いますがいかがでしょうか?」

「5日後に妹が到着するので、それまでになんとかしたいのだが・・・・・・」

 なんだって?それはいくらなんでも計画に無理がないか?

 

 貴族の無茶振りって、こういうのを言うのか。

 

 俺が話を持ってこなかったら、どうなっていたのだろうか?

 ドーガの方を見ると、まだ笑っていやがる。

 しかも見えないように、こいつは腹を押さえている。

 横っ腹が痛いほど、おもしろがっているのか?

 

「条件面ですが、金銭ではなく、そちらの書面に記載のある生薬の提供にさせて頂きますが

 よろしいでしょうか?」

「それで、問題はない」

 本当に考えて判断しているのだろうか、不安になってくる。

 

 塩爺が後で知って激怒して、ちゃぶ台をひっくり返す事にならなければ良いのだが。

 仕方がない。こちらも、対抗策を用意しておくか。時間があまりないのだけど。

 

「あと、こちらで住居を提供するにしても、

 家具類などは今、お使いのものを運んで利用して頂けると考えて良いのでしょうか?」

「むっ、そうだな。今、各自が使っている家具は各自で運ぶしかないが、

 私の妹や新しく来る者には買い与えなければならないな。

 この前の懸賞金が残っているので、それをあてれば良いか」

 そのセリフは口に出さずに心の中に秘めて、端的な回答だけしてもらえれば良いのですが。

 

「では、こちらで用意する住まいに関しては、清掃を行なった上で引き渡します。

 家具類や調度品、調理器具などは士爵家側で用意して頂けるということで、こちらは考えます」

「それで問題ない」

 本当に問題ないのだろうか。

 

 この後、発生するかもしれない引っ越し後の面倒事の問題の振り先は誰かいないものか?

 妹君以外で新しく増えるメンバにその苦労人役を押し付けたい気分だ。

 塩爺は論外だし、ドーガは上手い事言って逃れそうだから頼りにならないし。

 

 なんだか引っ越しのコーディネータになった気分だ。

 

 この前から、経営コンサルタントをやったり、転職エージェントをやったり、今は引っ越しのコーディネータになったりしている気がする。

 いせはれのマルチジョブって、そういう意味ではなかった気がするのだが。

 実際には、誰もやらない面倒ごとの解決屋をしているだけなのかもしれない。

 

「明日、最終決断をして頂きますが、

 今の予定では賃貸物件に入居していただくのは3日後で考えておきます」

「それで問題ない」

 本当に考えて返事をしているのだろうか・・・・・・とってもとっても不安だ。

 

 これ以上、ここに居ても仕方がないので、ドーガと共に執務室を出て門へと向かった。

 

「お前らの家具類の輸送とかって本当に大丈夫なのか?」

「まあ。大丈夫だろう。街の外に引っ越しするなら別だが、同じ街だしな」

 誰が輸送業者の手配をするのだろうか、俺はしないぞ。

 

 たとえ、引っ越し業者の十人分以上の働きができる俺でも絶対にお断りだ。

 

「そちらの家の者で、誰か料理をできる者はいるのか?

 調理器具は亡くなった奴の親から借りていた家で使っていたものがあるのだろうけど」

「妹君が誰か連れてくると言っていた気もするから大丈夫じゃないか?」

 さすがにケータリングサービスまでは引き受けられないから、手を出さないぞ。

 

「爺さんって、あと5日で妹君が来るって、こんな時にどこをほっつき歩いているんだ?」

「んー、モンスターカードを融通してくれそうな知り合いの所を回ってみるとか言ってたな。

 多分、無理だと思うけど」

 全てにおいて非効率過ぎる。家が傾いた理由が見えてきた気がする。

 

 一年契約にして正解だったかも。

 カードと素材がそこそこ入手できたら、翌年は契約更新しない手もあるかな。

 そこで、揉めそうな予感もするけど。1年あれば元は取れているはずだし。

 

「お前、なんか悪い事を企んでいるだろう?」

「それは、いつものことだから否定はしないな」

 もう、こいつの前で猫を被る必要もない気がしている。

 

「じゃあ、またな。と言っても、明日も来るのだろうけど」

「そうだな。明日もここに来なければならないな」

 

「ところでドーガ、お前は今暇だろう?俺と一緒に来いよ」

「はあ、なんで俺が?」

 こいつも巻き込んでしまおう。

 

「いや、これからのお前の人生に影響するかもしれないことだから、

 俺と一緒に来た方が良いということだ」

「え、俺は門番の仕事があるのだけど」

 いやいや、居なくても大丈夫だよ。

 

「さっきまで執務室に居て、門番なんて誰も居なかったのだから、

 もう少しぐらい居なくても大丈夫だろう?

 いいから、俺と一緒に来いよ。お前の力が必要なのだから」

「はあ、なんだか分からないけど、手短に頼むぜ」

 嫌がるドーガの手を引いて、ベイルの世話人の家に行くことにした。

 

 いつものこととはいえ、忙しくなってきたな。

 

・・・・・・

 

「・・・・・・という訳で、我が家の裏手の物件の内覧をさせてほしいのだが」

「はい。今から大丈夫ですよ」

 世話人と店を出て、ドーガと一緒に件の物件に案内してもらうことにした。

 

 物件は、ついこの間まで使っていたので、それほど埃っぽくはなかったが、それでも清掃が必要な程度には汚れていた。

 ただ、建物に酷い傷みがあるなどは無さそうだ。

 こちらも専門家ではないので、自信をもって断言はできないが、今の物件を借りる時もそんなものだったので心配しても仕方ないだろう。

 同じ大工が作ったという話だから、ある程度は大丈夫だと思いたい。

 

「ドーガ、この物件がお前達が住むことになる予定の家だ。

 まだ清掃されていないが、入居までにはこちらで責任を持って清掃してから引き渡す。

 今まで住んでいたお前らの家と比べて、

 著しく見すぼらしいということがないかどうか、お前の意見が欲しいのだ」

「部屋の数も多くて、広いし大丈夫だと思う。今の家の方が古くて狭いから快適になると思う」

 

「今の家に住まわせてもらっていた人数は何人なのだ?」

「迷宮で死んでしまった奴も含めて6人だから、この家なら7人ぐらいは住めるだろう。

 多分、大丈夫だと思うぜ」

 そうか、こいつに確認してもらって良かった。

 

 相手が貴族だから住居の満足度のレベルとか分からないんだよな。

 家を購入して貸したものの、気に入らなくて文句を言われても困るので。

 

「そうか、それが確認できて良かった。わざわざ引っ張ってきて悪かったな」

「まあ、俺も住む家のことだから別にいいさ。それにしても立派な家だな。

 家賃も結構するのじゃないか?」

 俺には3割引のスキルがあるから、それほどでもないのさ。

 

「この前の懸賞金で購入するから大丈夫だ」

「購入するのか、さすが商家の当主は違うね。まあ、住めれば俺はなんでも良いけど」

 まあ、快適に暮らしてくれれば、こっちも購入する甲斐があるってことだ。

 

「これで俺の用件は終わりだ。仕事の邪魔して悪かったな。もう帰ってもらっても大丈夫だ」

「おお、じゃあ、明日の契約も頼むぞ。

 今更、契約がダメになって、新たに住む処を探すのは無理だから」

 契約を認めるかどうかは、そちらにかかってるから、そこまで責任は持てないよ。

 

 というか、カードもだけど、あと5日で妹が来るってのに住まいが決まってないのに驚きだ。

 

 ドーガは手を振りながら、去っていった。

 

 さて、あとは世話人の店に戻って、今後の話の調整だ。

 

・・・・・・

 

「それで、明日の午後に借り主の最終決定が行われるので、入居の決断がなされたら、

 この物件は俺が購入しようと思っている」

「賃貸ではなく、購入ですか?凄い決断力ですね」

 もう、毒喰らわば皿までという感じだ。

 

「なので、この物件は決断が下るまでは、誰にも貸し出しや売却をしないでほしい。

 ここだけの話だが、貴族絡み案件なので慎重に進める必要があるのだ」

「貴族案件なのですね・・・・・・分かりました。留意しておきます」

 もう、この世話人も巻き込んでしまおう。負荷分散だ。

 

「それで、購入を決断してからの話だが、工事をしてもらいたいことがある。

 今の俺の物件と新しい物件を一つの家のように柵で囲ってほしいのだ。

 むろん、それぞれの玄関は出入口となるので、その部分に柵は不要だ。

 特に、両方の裏庭を繋げて使えるようにしたいのだが、

 その繋げた裏庭同士を外から見えない程度の高さの柵で囲ってほしいのだ」

「なるほど。それほど大がかりな工事ではないですけど、それなりに人手は必要ですね」

 まあ、一軒の家のようにするため、柵で囲むというのがポイントなのだ。

 

 これで、拠点規模の数値が増えてくれることに期待している。

 増えなかったら仕方ないと諦めよう。

 

「今の家もそれなりに大きな家ですが、もう、大きい一つの邸宅って感じになりますね」

「そうだな。一つの家にしてしまったが方が防犯上、便利なのでな。

 明日、購入する際に見積を提示してほしい」

 士爵家は、我が家に隣接する交番のような役目にしてしまおう。

 

 昼間は留守なのだろうけど。いや、使用人が一人来るのだったか。まあいいや。

 交番の近くの家が泥棒に入られにくいのと同じ理屈だ。

 防犯上、盗賊に襲われにくくなる事を期待したい。

 ベイルはまだまだ物騒だというイメージが俺にはあるので。

 まだ、ベイルの方にまで護衛部隊を派遣する程、人材にゆとりがない。

 

「分かりました。

 明日のお昼までに見積もりを作っておきますので、午後にいらした時に確認して下さい」

「急で申し訳ないが、よろしく頼む」

 

 世話人の店を後にして、次にやることを考える。本当にやることが多いな。

 次は我が家の新規参画者のパワーレベリングだったな。

 フラウスとミモザのレベルを上げて、迷宮攻略、後方支援で活躍できるようにしないと。

 

 迷宮に行く方が、駆け引きもないし本当に楽だよな。

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