異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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091.セレナ

 朝から、修練場で模擬戦をやっている。結構、ガチだ。

 寝ていたところをイレーネに起こされて(噛みつかれて)、朝の訓練のお誘いを受けたからだ。

 もう少し、甘々の起こし方はしてくれないものだろうか。

 

 昨日、我が家に加わったばかりのミラとマヤの二人も早速参加しているようだ。

 レドリックとレイモンドがついて、木刀と木の盾を持った模擬戦を代わる代わるやっている。

 見た感じは、昨日のアランの商館で見た戦い方と変わらないな。

 木刀で力任せに打ち込みをしている。

 

 思っていたよりも体幹が良いのか、打ち込んだり打ち込まれたりしても体の軸は全くブレてないように見える。

 体がデカいと上体に力が入り過ぎて重心がずれてしまい、軸が簡単にブレそうだが、そういったことはなさそうだ。

 それだけでも、優秀な前衛になれる素養があるのかもしれない。

 

「主ぃ~やるぞぉ~」

 はいはい、うちの娘達は朝から元気だね・・・・・・年寄り臭い感想を抱いてしまう。

 

 ヴィルマ、イレーネ、ケリー、マリーと模擬戦を重ね、ラファとヘルミーネまで参戦してきた。

 最後の二人は昨晩の話の延長で、主としての俺の力量を測ってるのではないだろうな。

 まあ、楽勝で勝たせてもらったけど。

 

 他にも訓練の途中にアミルがスキル融合を行なった武器を持ってきたものだから、護衛組の連中の士気がダダ上がりになってしまった。

 武器に限ってだけど、スキル融合武器が潤沢に配備されると迷宮探索が捗るだろうな。

 盛り上がる気持ちも分からなくもない。

 

 あっ、竜革のジャケットまで配っている。アミルの奴、無理したのだなぁ。

 ありがたいのだけど、本当に無理しないでほしいな。

 ああやって渡された側が喜んでいると、止めろとも言いづらいな。

 アミルもすっごい良い笑顔だし。

 

・・・・・・

 

 盛り上がった朝の訓練を終えて朝食に突入。

 訓練の盛り上がりそのままに、朝食もかなり賑やかな状態だ。

 

 ヴィルマ、イレーネ、ケリー&マリーのテーブルにミラとマヤが一緒にいる。

 テーブルの上にスゴイ量の肉が盛られた皿が置かれているのだが、アレ全部食べ切れるのか。

 狼人族グルーブの中にミラが入っているのだが、全く違和感なく肉をがっついている。

 幸せそうな笑顔だから良いか。

 

 ミラもマヤも、筋骨隆々って感じではないのだよな。

 ちゃんと女性らしい曲線も維持しつつ、体も大きくなっているようだけど。

 うん、スゴイ速度で皿の上の肉が無くなっていく。

 あのテーブルは前衛グループだから、二人はやっぱり近接戦闘向けということで正解なのか。

 

・・・・・・

 

 朝食を終えて、アミルとミラの二人と玄関へ。

 ミラとマヤには、俺の方から装備品を朝食後に配布した。

 

ミラ(ドワーフ族 ♀ 15才 奴隷)

探索者Lv2

装備 鋼鉄の剣 鋼鉄の盾 竜革のジャケット 竜革の靴 ダマスカス鋼の額金 竜革のグローブ

    身代わりのミサンガ

 

マヤ(狼人族 ♀ 15才 奴隷)

剣士Lv3

装備 鋼鉄の剣 鋼鉄の盾 竜革のジャケット 竜革の靴 ダマスカス鋼の額金 竜革のグローブ

    身代わりのミサンガ

 

 防具の方はタケダ家の標準装備と鋼鉄の盾。武器だけは様子見で鋼鉄製の剣だ。

 レベルが上がり、上位のジョブが見えてくれば良い武器に更新しよう。

 

 

 まずはターレの迷宮の方に顔を出すために、冒険者ギルドにワープした。

 アミルとミラを連れて、ターレの迷宮の入口に向かった。

 そして、いつもの探索者の騎士団員がいる。

 

 もう顔見知りなので、こちらを見ると気さくに話しかけてくれる。

 

「おはようございます。今日は三人ですか。

 そういえば、昨日は来られなかったようですね」

「そうだな。昨日は別件があってな。

 その前日に5階層と6階層を攻略して7階層まで到達した。

 6、7階層の案内は必要だろうか?」

「あ、はい。報告がありますので、お願いします」

 

 騎士団員をパーティに入れて既定の金額を受領。

 探索者の兄ちゃんは、一人で迷宮の外に戻っていった。

 

「先に探索者Lv10にしてからの方が分かり易いから、二人は自宅に戻って待っていてくれ」

「確かにそうかもしれませんね」

 クーラタルの自宅にゲートを繋げて帰宅させ、ベイルの17階層の中間部屋にワープした。

 

 魔物部屋の状態を見ると、今日は満タンだ。

 育成対象は通常部隊がミラ、マヤ、レドリック、レイモンドの四人、小荷駄隊はピコ達三人だ。

 

 ベイルの17、16階層の魔物部屋を殲滅した時点で、ミラの探索者がLv10になった。

 一度、アミル達の所に戻ろう。

 

 クーラタルの自宅に戻り、作業部屋にいたアミル達に合流。

 

「じゃあ、ベイルの3階層でコボルトと戦うので良いかな?」

「はい。ご主人様、それで大丈夫です」

 

 ベイルの3階層の小部屋にワープ。

 

 索敵で見て、モンスター2匹のグループを探す。

 アミルはアイテムボックスからこん棒を取り出して、ミラの武器と交換している。

 何やら話しているので、二匹を同時に攻撃するコツを教えているのだろうか。

 

 コボルト二匹のグループを探してはミラに攻撃させるのだが、なかなか同時に攻撃するというのが成立しない。

 ミラは少しでも手前のコボルトを全力でこん棒で振り抜き、返す刀でもう一匹をブッ飛ばす。

 戦い方としては間違ってはいないのだが。

 

 一匹に軽く当ててもう一匹にも当てるというやり方が、全力攻撃するいつもの感覚と違って分かりにくいのだろうか。

 

「やり方を少し変えるか。俺が手本を見せるからアミルも真似してみて。

 ミラは俺が合図をするまでは攻撃しないように」

「私がご主人様の真似をするのですか?」

 準備のやり方を真似してもらうのだから、アミルに頼むのだ。

 

 コボルト二匹のグループを探しだして、まず俺が前に出る。

 一匹の足を引っかけて、ケツを蹴り飛ばして転ばせながら遠くに追いやる。

 

 近づいてきたもう一匹の足をかけて転ばして、素早くコボルトの前に回って俯せ状態のコボルトの両手をグローブで掴む。

 足をバタバタさせながら起き上がろうとしても、腕力の差で起き上がることはできない。

 この前、アルマーの奴隷が僧侶のジョブ取得するのに使った手法だ。

 

「アミル、俺の真似をしてこのコボルトの腕を二本掴んでおいてくれ」

「ええぇ~大丈夫ですか?そんなことして」

「大丈夫だから、早く掴んで」

 アミルはなんとか俺の真似をしてコボルトの両腕を押さえる。

 

 コボルトはジタバタしながら、やはり起き上がることはできない。

 

「案外、コボルトって力がないのですね?」

「いや、俺達と比べるとそりゃなぁ・・・・・・」

 Lv3のコボルトと比べりゃ腕力は比較になるまい。

 

 遠くに追いやったコボルトがまた近づいてきたので、再び足をかけてすっ転ばして同じ要領で俯せの状態で両腕を掴んだ。

 俺の方は子供にジャイアントスイングの遊びをするように両腕を掴んだまま振り回して、もう一匹のコボルトの両足の部分に俺の掴んだコボルトの両足が重なるように位置を調整。

 うん、この両足の重なり方なら大丈夫かな。

 

「ミラ、そのこん棒でコボルトの足の部分を叩き潰すようにひたすら打ちつけてくれ」

「えっ、あっ、はい、それでは」

 ミラが振りかぶって、こん棒を地面に向かってガンガン打ちつけ始めた。

 

 何回かやれば、そのうち一回くらいは同時に当たるだろう。

 

 二匹のコボルトはギャーギャー言っていたが、そのうち二匹とも同時に煙に変わった。

 

 ミラの待機ジョブを確認すると鍛冶師のジョブが無事取得できていた。

 

 

「アミル、これで大丈夫だったみたいだ」

「取得できていたのですね」

 アミルの言葉に頷いた。

 

 ミラは自分が何をさせられてるのか、全く理解できないままポカンとしている。

 

「じゃあ、クーラタルの自宅に戻るぞ」

「はい、ご主人様」

 理解が追いつかないミラと三人でクーラタルの自宅にワープした。

 

「じゃあ、俺は迷宮に・・・・・・」

「ご主人様も作業部屋に一緒に来てください」

 まあ、ちょっとぐらい付き合うか。

 

 三人で、二階の作業部屋に移動して、テーブルの椅子にそれぞれかけた。

 

 アミルがミラの方を向き、話しかけた。

 

「ミラは今、鍛冶師になりました」

「え?はぁ?」

 ああ、アミルはこれを言ってみたかったのか。

 

 この世界に来て、ベスト3に入るぐらい言ってみたかったセリフなので気持ちは分かるな。

 

 アミルが俺の方を向いて、左腕の所をトントンと指で叩いてる。

 ああ、あれをやるのですね。

 

 騎士のジョブをセットして、ミラの左腕を持ちながら無詠唱でインテリジェンスカード・オープンを唱えた。

 

「インテリジェンスカードを見てみなさい」

「えっ?何故、インテリジェンスカードが?えぇぇ...何故、私のジョブが鍛冶師に?」

 自分が経験したことをミラにも経験させたかったのですね。

 

 ミラがアミルと俺の顔を交互に見ながら混乱している。

 アミルがとっても良い笑顔をしている。悪い笑顔というのかもしれないが・・・・・・。

 

「もう、後のミラへの説明は任せても良いよな?

 まだ鍛冶師になったばかりだから、いきなりミサンガを作成させたりするなよ。

 やるとしても、午後からだからな」

「はい。大丈夫です、ご主人様!」

 本当に大丈夫だろうか。

 

 まあ、説明をいろいろしている間にレベルは爆上がりするから大丈夫か。

 

「じゃあ、俺は迷宮に行ってくるので。後は任せたぞ」

「はい。お任せ下さい」

 ミラのことをアミルに任せて、俺はクーラタルの17階層にワープした。

 

・・・・・・

 

 その後は、クーラタルの17、16階層、ザビルの17、16階層の魔物部屋を殲滅した。

 全滅パーティもカードドロップもなし。ひたすらドロップ品拾いの単純作業。

 

 ミラは鍛冶師Lv12、マヤは剣士Lv17、レドリックは剣匠Lv27、レイモンドは冒険者Lv22、ピコ達は探索者Lv38まで上がった。

 もう少しレベリングをしたかったのだが、セレナ様の対応をする時間なので打ち止めにした。

 

 自宅にワープで戻り、エネドラに声掛けをして急いで二階の自室に。

 

 着替えを終えて、玄関に向かうとエネドラも既に着替えて準備万端の状況だ。

 二人でベイルの玄関にワープで移動した。

 既にカラダンが待ち構えていた。待たせてしまったかな。

 

「では、士爵家に向かおうか」

「はい、旦那様。一応、ドロップ品などの記録帳も持っていきます」

 さすがに昨日の今日で、ドロップ品やカードが納品されることはないと思うけど。

 

 三人で士爵家の前に移動。

 

(索敵)

 

 既に一度、家の中に入っているので外からでも索敵で内部の状況が丸見えだ。

 家の中の不在状況が分かると、いろいろと悪事ができてしまうのだが・・・・・・。

 青い点がいくつかとグレーの点が見えるな。セレナ様が到着済なのかは分からないか。

 色と点の数は分かっても一階だけだし、誰なのかまでは分からないから来訪して確認するしかないか。

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 ドアをノックすると・・・・・・ドーガが出てきた。ここでも門番なのか?

 

「お疲れさん。もうセレナ様は到着されているのか?」

「引越で本当に疲れたよ。誰かさんは手伝ってくれないし・・・・・・全く」

 いや、俺は引っ越し業者じゃないのだから。

 

「それで、セレナ様は?」

「もう、着いてるよ。今、二階で荷解きをしていると思う」

 装備品を展示する場所はあるのかな?

 

「それで、セレナ様の装備品をお出しする場所ってあるか?」

「ああぁ~、今、各部屋は荷解きで大変な状況だから難しいかもな」

 じゃあ騎士団の詰所でやるか?・・・・・・さすがにそれはないか。

 

「裏庭でやるか?さすがにそれは拙いか?」

「いや、それしか無いかもしれない。ちょっと聞いてくるわ」

 俺の返事を待たずにドーガは家の中に戻っていった。

 

 なんか詰所でも、ここでも俺とドーガの振る舞いって変わらないな。

 

「裏庭に鎧等の装備品を出すことになったら、地面に敷く敷物なんて我が家にあったっけ?」

「旦那様、そんなに立派な敷物ではないですけど、作業部屋にあった気がします」

 とりあえず、それで凌ぐか。

 

 暫くすると、ドアが開いて・・・・・・出てきたのはキャロル。

 

「タケダ様、昨日はありがとうございました」

「こちらの方こそ、取引した素材やモンスターカードを有難く利用させてもらっているので」

 グレーの点はキャロルだったのか。

 

 グレーの点は複数あったからジーク様も来ているのかもな。一応、婚約者らしいし。

 

「あの・・・・・・後でドロップ品と生薬を取引していただきたいのですが」

「そうか、じゃあ後でアイリス家の方に行くから、そこで話をしようか」

「はい、よろしくお願いいたします」

 

 ドアを開けて、ドーガが出てきた。

 

「悪いが裏庭の方に置いてもらえるか?」

「分かった。敷物とかの準備もするので、終わったら声をかけるから」

「ああ、それで頼むわ」

 なんか、バタバタだな。

 

「では、私はカラダンと敷物を取りに行ってきますので、

 旦那様は先に裏庭の方で待っていて下さい」

「分かった。宜しく頼む」

 

 俺は、裏庭の方に回る・・・・・・と、キャロルも一緒に付いてくるようだ。

 

「ジーク様はセレナ様が到着されるので、お出迎えという事なのか?」

「そうですね。婚約者でもあるので何か手伝えることでもあれば・・・・・・という感じですね」

 キャロルの顔に特に不満や不信感などは見受けられない。

 

「最近、ちょっと貴族の勉強をし始めたのだけど、教えてもらっても良いか?

 いや、もし礼を失することだったら指摘してほしいのだけど」

「私でよろしければ」

 いや、キャロル以外に直接教えてもらえそうな人間が思いつかない。

 

「前に会った時にさ。ジーク様はアイリス家の嫡男で、

 ロータス様は庶子で継承権がどうこうって話をしていたじゃないか?」

「騎士団詰所の執務室での話ですね」

 そうそう、その話。

 

「貴族の事に少し詳しい人に聞いたら、士爵位って子供に継承できないって聞いたのだけど」

「ああ、爵位は継承できないのですけど、子供が同じ士爵位を得た時に家名は継げるのですよ。

 継ぐというか、自分が死んだ際に誰に家名を譲れるのかを遺言できるということですね」

 いろいろと決まりごとがあるのだな。爵位なんて大層なものだから当たり前か。

 

 遺言なんて話が出てくるところを見ると、ジーク様の父親の病状は思わしくないのだろうか。

 

「それで、アイリス家の名を残すことができるって事なのか。

 なら、庶子のロータス様でも士爵位を得たのなら家名を継げるってことなのか?」

「理屈の上ではそうですね。

 ロータス様はそれを固辞しているので、継ぐのだとしたらジーク様ですけど」

 アイリス家も複雑だな。まあ、兄弟で合意しているのなら他人がとやかく言う話ではないが。

 

「タケダ様は、商家でありながら迷宮探索者だとも伺いましたけど、

 セレナ様以外の者には、既に全員お会いしていますよね。

 あの場に居た者達で、迷宮攻略ができると感じられましたか?」

「・・・・・・」

 いきなり直球な質問だな。

 

「それが、答えなのですね。分かりました。

 でも、ジーク様は迷宮討伐できると私は信じています」

「そうか・・・・・・」

 できるとも、頑張れとも安易な言葉はかけられない。

 

 彼らを鑑定で確認して、いせはれの小説を読んできた者としては限りなく厳しいと思う。

 

 この娘やジーク様達が迷宮討伐を目指すのは子供の頃から刷り込まれた貴族教育のせいなのだろうか。

 現代の感覚では教育については、人材育成のメリットと戦争や思想を誘導するデメリットの両面をどうしても考えてしまう。

 人が生き抜くために貴族教育は必要であるということで、この世界は回っているのだろうか。

 

 エネドラとカラダンがやってきた。

 重苦しい空気を取り払うには丁度良いタイミングだ。

 

「敷物はあったか?」

「はい。まずは、これを敷いてみましょう」

 カラダンが地面に敷物を敷き始めた。

 

 そんなに悪くはない気がする。

 アイテムボックスから装備品を取り出して並べてみた。

 

 硬革の鎧、ダマスカス鋼の額金、竜革のグローブ、竜革の靴を数点、配置した。

 

 こんなものかな。

 

「準備ができたのですよね。私がセレナ様を呼びにいきますので」

「ああ、よろしく頼む」

 キャロルが玄関の方に去っていった。

 

「どうかされましたか?旦那様。

 何やら深刻そうにキャロル様と話されていたようですが」

「ああ、キャロルからこの前、装備品を渡した者達で迷宮攻略が可能かどうか問われたのだ。

 咄嗟の質問だったのだけど、即答できなくてな」

 エネドラは複雑な表情をした。

 

「迷宮攻略ができるかできないかなど、他人に問う話ではないと思いますが・・・・・・」

「手厳しいな。

 確かに他人になんと言われようと、自分達がやりたければやれば良いし、

 止めたければ止めればよいだけだと思う。

 質問していること自体が、弱気の証拠なのかもしれないな。

 彼女はジーク様が迷宮攻略できることを信じていると言っていたが」

 キャロルが去ったのに、また重苦しい雰囲気にしてしまった。

 

「まあ、タケダ家としては取引先が簡単に失敗しないことを祈るばかりだな。

 祈ってばかりでなく、こちらに利がある限りは支援も行うが」

「そうですね。それでよろしいのではないでしょうか」

 商売に徹すると決めているのだが、本人達の熱意や真剣な態度を見てしまうとどうしてもね。

 

 やがて、キャロルが数人の者を連れて裏庭にやってきた・・・・・・が、これは?

 

「ゴッゼル家のセレナです。其方がタケダ殿か。我が家の迷宮攻略への助力、感謝致す」

「お初にお目にかかります。タケダ家の当主、ユキムラ タケダと申します・・・・・・」

 目の前に現れた少女の言葉は俺の感覚でも貴族っぽい言い回しで、特に問題はない。

 

 問題はないのだが・・・・・・何故か、スピーカーから流れてくる音声のように聞こえてしまう。

 それぐらい、目の前の少女と口から出てくる言葉にギャップがあるのだ。

 

 ・・・・・・というか、この娘、本当に15才か?俺には10才くらいにしか見えないのだけど。

 

 

(鑑定)

 

 

セレナ・マキシナント(人間族 女 15才)

巫女Lv5

 

イネス(人間族 女 17才)

薬草採取士Lv2

 

 

 確かに、マキシナントという名前で士爵様と同じ名前だ。そして15才。

 巫女のLv5。ジーク様の戦士のレベルと比べると少し見劣りするか。

 レベルは子供時代の貴族のパワーレベリング次第かもしれないけど。

 

 ジョブ取得のためには巫女だと精神統一とか精神修養が必要だよな。

 この子供のような娘が精神修養?滝に打たせた?

 幼児・・・・・・は言い過ぎか、児童虐待じゃないか?

 

 お付きの者は家事担当の人だな。イネスという名前だと確かキャロルも言っていた。

 薬草採取士なのか。昔のチクルスと同じようなレベルか。雰囲気はかなり違うけど。

 

 

 セレナ様は金髪で長髪だけど、背が低いので本当にお人形のように見えてしまう。

 これで、迷宮探索に向かうのか?

 あの吸精の鋼鉄槍って結構長いのだけど、あれを振り回せるのだろうか?

 ってか、ジーク様、この少女と婚約していて、最終的には結婚するのか。

 

 おしゃまな子・・・・・・というか、見た目詐欺というか・・・・・・合法ロリ?

 

 いくら貴族関係者でも、こんな娘と最終的に結婚するなんて問題ないのか。

 貴族の作法も身に付けているようだし、しゃべっている内容も真っ当。

 ただ、声がすっごい可愛いのだけど・・・・・・なんだコレ。

 

 近くにいるゴッゼル士爵様も今まで見た事がない程、柔和な表情。

 こんな連中で迷宮探索しても本当に大丈夫なのだろうか。

 

「えーと、では、そちらにあります装備品からお好きなものを選んでいただければ・・・・・・」

 

 目を輝かせながら、装備品の方に向かっていった。

 子供のおもちゃではありませんと言いたくなる。

 本当に迷宮に入るのか・・・・・・大丈夫か。

 

 近くにいるジーク様は婚約者というよりは妹を見るような目で見てるような。

 別にどうでも良いのだけど。

 

 ちょっと、後でドーガに探りを入れておくか。

 これで、塩爺がセレナ嬢を姫様以上に猫可愛がりするようだと、早々に支援契約に見切りをつけた方が良いかもしれない。

 

 やがて選び終わったようで、選択した装備品をロータス様がアイテムボックスに収納していた。

 ってかロータス様、居たのですね。意識がぶっ飛んでいて気づきませんでした。

 

 用事は済んだとばかり、ゴッゼル家の人々は去っていった。

 

「タケダ様、大丈夫ですか?」

「ダイジョウブデスヨ」

 キャロルの主人こそ、こんなので迷宮攻略は大丈夫か?・・・・・・と俺は問いたい。

 

 残った装備品と敷物を片づけ、キャロルの相談事のためにアイリス家に移動することにした。




お読みいただき、ありがとうございました。
90話(貴族の矜持、葛藤、野心)の話と88話(アイリス家の人々)の話の内容に一部、矛盾があったので修正しました。
88話側の方ですね。ジークの名前からアイリスの名称を削除しました。
士爵を領地無し貴族の設定にしたせいで、かえって複雑な状況にしてしまい反省。
全部、同じにすれば良かったのですが、後の話の展開もありまして・・・・・・。
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