異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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013.洗浄と街巡り

 とりあえず、昼食のために戻ることにした。昼の弁当買ってあるんだよな。お腹も減った。

 宿屋に戻って、さっそくボイルにコボルトスクロースの件を相談。

 10個なら冒険者ギルドより高く100ナールで買い取ってくれるらしい。

 ギルドの買取値と売値は4倍の開きがあるので、それでも割安なのだろう。

 他にも昼食とコボルトスクロース3個と交換とかでもOKとのこと。

 物々交換の方が効率的か?今は売却は保留にしよう。

 

 部屋で昼食を軽く終えて、少し休憩。

 汗が少し引いたので、井戸を借りて、盗賊の使っていた血まみれの装備を洗浄。

 結構...というか、かなり面倒臭い。

 

 何が面倒かって、洗浄も面倒なのだけど、アイテムボックスから取り出すのがね。

 だって、血塗れの鉄の剣も、前から持ってる鉄の剣も同じ場所に収納されている。

 血塗れの鉄の剣...とか表示されていたら、それで選別できるのに。

 なんか呪われたアイテムっぽくなるけど、識別が楽じゃない?

 アイテムボックスの収納場所を余計にとるから逆に不便か。

 

 まあ、後から収納した方が先に表示されて出てくるので、そこまで手間でもないのだけど。

 盗賊達から何を取得したのか、ちょっと記憶が曖昧だったので、探すのに手間取った。

 鋼鉄の剣と槍は昨日、今日と既に使っていたけど、改めて洗浄。

 鉄の剣2本と革の鎧4つ、革の靴2つ、皮の靴2つも洗浄したが、かなり大変だった。

 井戸のそばで大量に装備品を広げる訳にもいかないので、洗っては部屋に運んでというのが更に面倒。

 まあ、かさ張るのは革の鎧4つだったので、靴とかはある程度まとめて洗って収納してから運んだので、3往復で済んだのだけど。

 アイテムボックスはやっぱり便利だ。

 洗った革の鎧を手に持って宿屋の部屋に運ぶのだとか何事か?...って感じになるしね。

 

 ゴム手袋もないから、素手で布に水を浸してこするのも地味に面倒だ。

 こういう時には防水のミトンとかあると良かったのかも。

 

 そういえば、原作では鎧や剣に油を塗るとかあったっけ?オリーブオイルだったか。

 まだ、モンスターからドロップできてないな。でも、どれだけ意味があるのだろうか?

 血に塗れていようが、新品だろうが同じアイテムボックスに入る。

 武器屋、防具屋では、かなりばらつきのある装備品でも画一的な名称で売買されている。

 戦闘の時だって、どこに当たっても同様のダメージが入り、ザックリと刺しても壊れない。

 鑑定で見えてないだけの可能性もあるけど、武器や防具に耐久度といった数値はないだろう。

 正直、元の世界と違って、この世界で装備品メンテへのモチベーションが保てない気がする。

 率直に言って、無意味では?...と。

 

 まあ、でも意味があると言えば意味があるのだろうな。

 俺みたいに異世界から来て、無駄に知識があったりするから意味とか効率とか考えるけど。

 この世界の人達は、そんなことお構いなしに装備品を一生懸命作り、メンテに励む。

 それで、この世界が回ってるのなら、俺もそれに沿った行動を取るのも悪くないのかもね。

 

 剣道をしていた時だって、無駄に防具や竹刀に愛着を持っていた気もするし。

 案外、そういう目に見えないパラメータ(気合?)が勝負を決したりするのかもしれないし。

 

 ともあれ、部屋で乾かしてから、手持ちの装備品を整理してから売却するか。

 俺の部屋の中は、もはやクリーニング店の様相だ。

 アイテムボックスの中で乾燥が進むのなら良いのだけど、何となく無理っぽい気がしたので、部屋で陰干しを選択。

 アイテムボックスから取り出した濡れた装備品とか、武器屋、防具屋の親父に買取拒否されそうな気がしたので。

 こういう弱気なところは日本人気質がそのまま引き継がれてるのかもしれない。

 

 ベイルの世話人のところに行く予定だったけど、気分が削がれたし、血の匂いを落とすために他のことをしよう。

 クーラタルと帝都に行って、武器屋、防具屋巡りをするか。

 面倒なので、部屋からベイルの冒険者ギルドに直接ワープした。

 冒険者ギルドで冒険者を探し、帝都へ片道銀貨1枚で連れて行ってもらう。

 

 帝都の冒険者ギルドで武器屋、防具屋の場所を教えてもらった。

 

 まずは、武器屋に行って掘り出し物チェック。

 剣や槍、スタッフも空きスロット付きのものがチラホラある。

 やはり品ぞろえというか、全体の数が多いからだろう。その分だけ空きスロット付がある。

 ただ、割合的には予想通り、約10個に1個というところだ。

 スキルを付与して売るにしても、やはり鋼鉄からだよな。

 そして空きスロットの数はさほど多くない。欲しい装備品だと最大でも2つしかなかった。

 

 それにしても、ベイルで見た武器よりも見た目のバリエーションがある気がする。

 今、目の前にある槍なんて、銛というかトライデントでは?三つ又じゃん。

 でも、鑑定すると鋼鉄の槍...なんだよな。

 多分、攻撃力とかも変わらないんだろう。選ぶ奴とかは、もう趣味の世界なのでは?

 

 ただ、そうすると、この世界の装備品は見た目を除けば、それほど種類がないのかもね。

 ものすごい凝った、見た目がもの凄い...革の鎧(空きスロット無)とか。

 そして、見た目がすごく良さそうな装備品と、ものすごくノーマルなものとで空きスロットの数に差がある訳でもなさそうだ。

 このダマスカス鋼の槍とか全く普通の槍だけど、空きスロットは2つで、隣の凝った槍には空きスロットが無かったりする。

 

 そういえば、原作でも優秀な鍛冶師でも融合が成功する確率が高い訳ではないとか、ドワーフ娘が言ってたような気がする。

 だいたい鍛冶師は自分で作成した装備品に融合するから、本当にランダムなのだろう。

 しかも、その確率はジョブのレベルに関わらず、およそ10分の1..とか。

 ただ、優秀な鍛冶師...というかジョブのレベルの高い鍛冶師はグレードの高い装備品を作れるというメリットはあるのだろう。

 MPの差とかもあるのかもしれないが、ジョブのレベルもきっとある気がする。

 

 魔法使い用の武器も見たが、スキル付与するならスタッフくらいからだろうな。

 ワンドやステッキだと見劣りするというか、迷宮の高階層では使えないだろう。

 スタッフの方は空きスロットは1つのものしかなかった。

 売却狙いなら別に良いのだが、カードもないし、3割引用に合わせて買いたい武器もない。

 クーラタルの方を見てからでも別に良いか。

 

 防具屋の方も確認。

 鋼鉄やダマスカス鋼の防具や盾に目がどうしても行ってしまうが、予算がない。

 防具を買うなら、空きスロットが多いやつが良いよな。融合するカードも集めにくそうだし。

 売れ筋とか、オークションで何が高値がつくのかもリサーチ不足だ。

 防具の方の空きスロット有無の確率や数の分布も今までの予想通りだった。

 

 予想を裏切ったのは、やはり、その形状というか見た目のバリエーション。

 革の鎧一つとってみても、色や厚み、革の使い方や装飾もマチマチ。

 鑑定してみないと、何の鎧だが分からないものもある。

 ベイルの親父がヒィヒィー言いながら、防具鑑定をしていたのも納得だ。

 

 襲撃してきた盗賊達の防具とか、あまり変わったのはなかった気もするけど目立たない装備品を選んだ結果なのかな?

 各地の防具屋を探しまくれば、ピンク色した鉄製のビキニアーマーとかあるのだろうか?

 鑑定しても鉄の鎧と出て、見た目はアレだが、ちゃんと鉄の鎧の機能があるロマン防具。

 誰にとってのロマンかは置いておくとして。

 

 ビキニはないか。原作では下着もカボチャパンツだし、ブラジャーとかも未登場だったし。

 魔物に見た目の派手さが関係あるとは思えないので、対人向けの装飾なのかね。

 買いもしないのに、これ以上考えても無駄か。

 諦めて、クーラタルに行くために冒険者ギルドに戻ることにした。

 

 ギルドからクーラタルの冒険者ギルドに銀貨を払って送ってもらった。

 武器屋に行って、エストック(空)とスタッフ(空2)、スタッフ(空)2本を購入してしまった。

 エストックは強権でも付与すれば、きっと高値で取引できるはず。

 スキル付与してなくても、今使ってるレイピアよりは攻撃力もあるだろう。

 

 スタッフは知力2倍を付与すれば、これもオークションで売却可能だろう。

 しばらくは俺自身が使うだろうけど。

 3割引を設定していても、金貨3枚が飛んでいった。

 

 ただ、この金額は感覚的には非常に安く感じる。

 原作では、スタッフとダマスカス鋼の武器を購入して、金貨10数枚支払ったという記載があったように記憶している。

 ベイルの武器屋、防具屋の店主の話だと、ギルド固定価格で、街による価格差はないはずだ。

 感覚的には原作比、数分の一の価格な気がする。

 皮や鉄などのグレードの低い装備品の金額は原作とあまり差がなかったよな。

 よく分からないな。

 

 このグレードの武器は中級~上級者用装備だろう。

 一般的な探索者の稼ぎが分からないが、意外に入手しやすいのだろうか。

 まあ、市場調査はボチボチしていこう。

 でも、せっかくだから、装備品を徐々にグレードアップさせていくのを楽しみたい。

 

 これ以上、お金を使うと20万ナールを割ってしまうので、さすがに自重せねば。

 防具屋もなかなかの品ぞろえだったが、見るだけで我慢した。

 今なら、ダマスカス鋼のプレートメイルも装備可能だろうと思うと、ちょっと名残惜しかった。

 未練タラタラだな。

 

 適当な木陰から、ベイルの宿屋の自室にワープした。

 MPが結構減った気がするけど、気分が落ち込むほどではない。

 パーティを組まないソロだからってのと、レベリングの効果だろう。

 宿屋を出て、ビッカーに紹介された世話人の家に行くことにした。

 

 クーラタルと比べればベイルは小さな街なので、世話人の家も凄く大きいという訳ではない。

 それでも、最初に降り立った村の村長の家よりは遥かに立派な佇まいだ。

 というか、これは雑貨屋だな。前に来たことがある気がする。

 今日は市の開催される日ではないので、店舗という感じが全くしないが。

 

 ドアをノックして家主(店主?)に声をかけて、家を借りることを検討してると告げた。

 店主はパール(人間族 女 36才 商人Lv17)というおばさんだった。

 クーラタルの六区の世話人も女店主だったが、こちらもそんな感じなのだろうか。

 奥に通されて、条件面の確認を行うことになった。

 どうでも良いけど、ビッカーよりは全然レベルが高いぞ。強敵か?

 

「どのような家をお探しでしょうか?」

「街中で部屋が4部屋から6部屋ほどあるものを探している。

 期間はとりあえず1か月程度を見込んでいる。気に入れば延長するつもりだ」

 お試しで借りるので、期間は1カ月くらいにしておきたい。

 ここを最終拠点にするつもりはないので。

 

「なるほど、候補になりそうなのは、三軒ほどありますね。これから見に行きますか?

 近くなので、実際の家を見て、気に入れば金額をお伝えしますよ」

「では、お願いできるだろうか?」

 こちらの世界の家と相場を確認する良い機会だ。

 今は急ぎの用件もなく、迷宮探索も安定しているので、是非お願いしたいところだ。

 

 世話人に連れていかれた一軒目は、世話人の店からかなり近い場所の店舗物件だった。

 この世界の店というのは、元の世界と違って、店頭に商品を並べるスペースがなさそうなので、パッと見、普通の家か商店なのかよくわからない。

 この物件もそんな感じだ。正面からでは普通の家。だが、元々は商店だったらしい。

 玄関から入ると、正面は大き目な部屋で、まあ、商店だったのだろうな。

 その他の部屋も見たが、一階、二階と小さな部屋がいくつかあるだけの古びた家だった。

 うーん、ピンと来ないな。

 

「次の家を見せてもらっても良いだろうか?」

「そうですね。次に行きましょうか」

 世話人も、俺がイマイチ借りる意欲がないのが分かったのか、気にせず次の家に案内された。

 ただ外から見た感じでは、先ほどとあまり違いがない気がする。

 違いは分からないのだが、見た目の大きな違いが一つだけあるようだ。

 

「この家は、何故こんなに玄関...のドアが大きいのだ?竜人族の者でも住んでいたのか?」

「ああ、前の住人の要望ですね」

 世話人が何故か苦々しい顔をしている。曰く付きの物件なのだろうか。

 家をカスタマイズした上で、家賃払わずに逃げてしまったのだろうか?

 世話人の所有物件?他人の所有物件を斡旋しているだけじゃないのか?よく分からんな。

 

「この家は、元は染め物をやっていた関係で、水回りがしっかりしています。

 部屋数も先ほどの家よりも多くて、比較的新しく建てられたものです」

「外からは分からなかったが、中に入ると確かに新しい感じはするな」

 家の中に入って、一階の部屋を確認すると、厨房にあたる場所を廊下を隔てて、染め物をしていた作業場所らしき部屋がある。

 ただ、染料の汚れや臭いなどは特にしない。

 排水溝もあって、汚れた水はそこに流していたみたいだな。

 

「染め物をしていた割には、あまり汚れていない?」

「まあ、退去時というか逃げられた後に徹底的にきれいにしましたから」

 世話人が苦笑しながら、遠い目をしていた。結構大変だったのだろうか?

 

「とはいえ、染め物をしないのなら、この部屋を何に使うのか?...ってことでもあるよな」

「まあ、そうですね。それが貸す際の悩みどころでもあります。

 大家族の場合の大きな洗濯場って感じですかね」

 世話人が少しムスッとした表情で俺に相槌をいれる。

 染め物作業部屋と厨房&食堂を除き、一階は部屋が2つ、二階は主寝室が1つと部屋が3つ。

 納戸は一階に1つ、二階に2つあり、トイレは一階と二階に2つずつある。なんか、トイレが多いな。 

 

「なんかトイレが多い気がするのだが、何故なのだろうか?」

「前の賃貸人が染め物屋をやっていて、作業員が多かったので、その名残ですね」

 店舗兼社宅だったのだろうか?まあ、トイレが多くて困ることはないが、掃除が大変か?

 

 収納できる納戸が3つもあるのは、なかなか良いのではないだろうか。

 厨房は、この世界に来てまだ料理をしたことがないので、使い勝手は分からない。

 元の世界の給湯やコンロに慣れてると、そりゃ不便だろうけど。

 換気扇もないし、まあ煙を取り込むための煙突モドキはありそうだ。

 裏庭にちょっとした畑が出来るスペースがある。

 農夫、料理人、錬金術師のジョブを取得するための投資と思えば良いか。

 

「この物件は部屋数が多いが、さっきの家とこの家の家賃を教えてもらえるだろうか?」

 世話人が俺の言葉に意外そうな顔をしながら、少し考えつつ...

 

「そうですね。一カ月の賃料は前の家が3000ナール、この家が4000ナールですね」

 この家の家賃思っていたよりも安いな。

 原作主人公の借りたクーラタルの郊外の家が年間45000ナールだったか?

 こちらは中心街近くで36000ナールとか48000ナールとか...激安でもないか。

 ただ、この物件は部屋数が多いので、かなり割安感がある。

 いろいろと瑕疵がある物件だから、安くしているのだろうか?

 

「なるほど、ちなみに、まだ紹介してもらっていない家の方の部屋数とか、

 あと、この染め物作業場所みたいな部屋の有無とかは?」

「次の家は、初めに見た家と同じ部屋数で、そちらは普通の家...

 いえ、染め物作業部屋みたいなものはありませんよ」

 この物件は普通ではないと...まあ、良いけど。

 

「なるほど、では、この家を借りるとして、入居までに、

 家全体の掃除と外の庭の雑草取りとかをお願いすることはできるだろうか?

 もちろん、家賃とは別に料金は払うつもりだ」

「そうですね。入居前の掃除などはこちらでやらせることはできますよ。

 明日の午前中までに家の中と外の草取りなどを終わらせますので、

 追加で200ナールでどうでしょうか?」

「200ナールなら問題ないな」

「では、この物件を借りる勇気を称えまして、

 1か月の賃料と掃除代金を合わせまして、2940ナールでいかがでしょうか?」

 借りるのに勇気が必要な物件なのかよ?...まあ、良いけどさ。

 

「その金額で問題ない。では、契約をお願いする。入居は明日の午後からで良いだろうか?」

「この後、騎士団の詰所でインテリジェンスカードを確認して頂いた後に鍵をお渡しします。

 その後はもう出入りしてもらって構いませんよ。

 ただ、家具や荷物の運び入れは掃除をした後の方が良いでしょうね。

 契約は一応、明後日から数えて30日となります。

 25日目のところで、翌月の延長をするかどうか教えてください」

 

「なるほど、了解した。では、すぐに騎士団の詰所に行くことにしよう」

 俺はインテリジェンスカードのチェックをされても良いように、ファーストジョブを戦士に変更して、世話人とともに、騎士団の詰め所に向かった。

 




(2025/8/3加筆)
お読みいただき、ありがとうございます。

本作では、装備品は画一的な形ではなく、鑑定上の名称に対して、比較的自由な形を許容する表現しています。
トライデントでも、ハルバードみたいな形をしていても、鋼鉄の槍みたいな感じです。

理由は3つあって、その1つをここでお話します。
武器の種類(名称)を減らしたかったからというのが1つ目の理由です

公開していない裏設定で、装備品については、どの素材をいくつ使って生成するか等、私はテーブルで管理しています。
名前が違えば、素材の数も普通は違うし、攻撃力やら防御力やらも変えなければならず、管理し切れないし、私がそもそも覚え切れないという変なこだわりです。
そして、執筆する側が苦労する設定はきっと読者にもわかりづらいだろうという思い込みもあったりします。

素材の数も、攻撃力等もだいたい同じにするなら、そもそも、鑑定上も同じ名前で良いじゃんってことで、私は今回みたいな少し妙な設定にしました。
ビキニアーマーは多分登場しないと思います(現状、ストックしている話にも登場予定なし)。
絶対にないとは限りませんが。

残り2つの理由は序章が終わって、1章の中でお話しすることになると思います。
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