異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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103.ドブローの盗賊(その1)

 鍛冶師ギルドを出ると昼飯時だったので腹が減った。

 こちらの世界では昼食は標準ではないが、ドブローでも屋台はポツポツと存在するようだ。

 肉串を数本買って食べたけど、ちょっと微妙な味だった。

 異世界に来て間もない頃にベイルの屋台で食べた時は結構美味いと感じていたのに。

 

 普段からエネドラ達の作る美味しい食事を食べていると、こういうところで弊害が出るな。

 贅沢な悩みかもしれない。

 

 自宅に戻って昼食を食えただろうけど、戻るとヴィルマ達に捕まる気がしたので躊躇した。

 午後は単独行動をしないとダメだと思っているので。

 アミルのことを思うと、今日は出番なしと伝えてやりたい気もしたが、まあメンタル強化だ。

 

 腹を満たしたので、もらった地図を頼りにまずは索敵していくか。

 クリアにするエリアは、商隊の向かった鉱山に続く街道の方からにしよう。

 

 

 ドブローの中心街を抜けて城壁の出口を通り、鉱山方向に歩いてみる。

 地図では分からなかったが、結構小さい街道だな。

 街道をずっと見渡すと馬車の姿は見当たらない。

 

 ワーレンの言っていた商隊はずっと先に行っているのだろうけど、他の馬車も全く見えない。

 盗賊に襲われるかもしれないので、馬車を使わずに冒険者を使っているのだろうか。

 もしくは襲われる心配がないほど、商隊がたくさん集まったタイミングで出発しているとか。

 ワーレンからは今日の午前に出発した馬車の特徴は聞かなかったな。

 

 周囲は森だから視界が非常に悪い気がする。

 別にジャングルの中に街道が通っている訳ではない。

 街道をただ馬車で行くだけなら何の問題もないのだが、この左右の見通しの悪さは盗賊が奇襲を仕掛けるには絶好だ。

 伏兵を隠すのに十分な密度の森というか木々だと感じた。

 

 索敵スキルが便利とはいえ、視界が通らないとクリアにはならないので森に足を踏み入れる必要があるか・・・・・・いや、それでは効率が悪過ぎるな。

 視線をあちこちに向けながら、少し小高い丘のような場所にこっそりワープで移動。

 こういう時は元の世界から持ってきた双眼鏡が威力を発揮する。

 ワープの移動距離が延びるからだ。

 

 高所から周囲を見回すと、視界が通る分だけ索敵でクリアなエリアが広がる。

 双眼鏡を使っても索敵でクリアとなるエリアが広がったりはしない。

 自分を起点に一定の距離までしかクリアにならないのが索敵の仕様だからだ。

 はじまりの村近くに居た隣国の戦士や冒険者と戦った時の対応でそれは確認した。

 

 そして赤い点がいくつか見える・・・・・・が、この動きは野良のモンスターだろうか?

 クリアになったエリアでは、こちらから姿が見えなくても赤い点の動きはマップで分かる。

 双眼鏡で確認可能な奴はモンスターと断定できるが、他は正直よく分からないな。

 これだけ距離があると鑑定も有効にならない。

 この赤い点の中に盗賊が一人で歩き回っている場合もあるのだろうか。

 

 双眼鏡で人影を捉えて赤い点と合致すれば盗賊とほぼ断定できるのだが、目標は簡単に見つけられない。

 うっそうとした森の木々の間を動き回っているのだろう。双眼鏡でも確認するのが困難だ。

 かなり入念に特定方向を見続けないと盗賊かモンスターかの判別は難しそうだな。

 

 

 商隊を追うか、赤い点をしらみつぶしに確認するか・・・・・・迷うな。

 索敵のマップで赤い点をもう少し観察して、不自然な動きがないかを確認すれば分かるだろうか・・・・・・ダメだな、諦めるか。

 

 高所となる場所を双眼鏡を使いながらワープで転々と移動して、クリアなエリアを広げていく。

 森が広がっていると索敵の効果が激減するので、ざっとでもエリアをクリアにしておきたい。

 特定のエリアを精緻に確認するよりも、今は情報量を増やすことを優先しよう。

 

 街道から離れすぎない程度に高所から高所へワープで移動。

 移動した高所を中心に東西南北全ての方向に索敵スキルで確認する。

 都合よく高所となる場所が等間隔にあったりしないし、高所から見ても視界の通らないところは諦めるしかない。

 多少まだら模様だが、テンポよくワープ移動ができたのでクリアなエリアは広がっていく。

 

 もらった地図を見る限り、鉱山に至るまでの距離の1/5程度の距離まで来ただろうか。

 こちらの世界の地図の精度や縮尺なんか当てにならないかもしれないが。

 

 だが、街道をゆっくりと走っている馬車を双眼鏡で見つけることができた。

 あれがワーレンの言っていた商隊からどうかは分からないが、守るべき対象ではあるだろう。

 護衛らしき者も同行しているのが見えた。

 

 馬車の進行方向に先回りしながら、高所移動を駆使して索敵を繰り返す。

 完全にクリアにはならないが、高所を移動しながらの索敵はかなり効率的だ。

 目視でモンスターが確認できる場合はワープで移動して討伐を行い、多少なりともMP回復をさせた。

 この比較的短距離のワープでどれほどMPを消費するのかは分からないのだが、何もしないよりはマシだと思いたい。

 

 高所移動を繰り返すと、森の少し開けた所や崖沿いに建物が確認できた。

 小屋・・・・・・らしき建物が1つ・・・・・・いや2つほど存在する。

 

 そして、双眼鏡で見る限りでは一つの小屋の傍に人影が見える。

 索敵も鑑定も有効な距離ではなく、盗賊と断定はできない・・・・・・が確認する価値はあるな。

 高所からでなければ、小屋を見つけることなどできなかっただろう。

 街道からも死角だし、分かりにくい場所にある建物だから怪しい気がする。

 元の世界なら空撮で直ぐに見つかるかもしれないが、この世界にそんなものはない。

 

 街道を進む馬車の進行方向は索敵でクリアにしたから、怪しそうな小屋から確認を行うか。

 馬車の方は街道を外れて休憩を取っているようだから、今のうちか。

 

 今居る高所とは別の小高い丘へワープで移動。

 それなりの太さの木の幹がアチコチにあるので、移動には困らない。

 ゲートから出る場所は小屋からは死角になっている位置だ。

 それでも出会い頭に盗賊と出くわす危険性はあるかもしれない。

 索敵でクリアになっていないエリアもあるのだから。

 なるべく音を立てず慎重に行動しなければ。

 

 小屋の近くには焚火のそばに座っている者がいる。さきほど見た人影だろうか。

 索敵で見ても赤い点だ。

 

 そして、焚火から少し離れたところに死体が転がっている。

 性別は不明だが鑑定で死体となっているから、こいつらに殺されたのだろう。

 仲間割れで死んだということもあり得るのか。

 どちらにしても、殺したのはこいつらに違いない。

 

 双眼鏡で見てみると、死体はどうも男っぽい風体だ。

 装備品は奪われたのか、薄着の状態で俯せで横たわっている。

 焚火の炎の揺らめきで、死体の男の横顔にゆらゆらと光が当たっているのが見えた。

 

 焚火にあたっている男は時々、死体の方に視線を向けるが特に何の表情も読み取れない。

 

 

(鑑定)

 

 

盗賊Lv19

装備 鋼鉄の剣 硬革の鎧 革の靴 革のグローブ

 

 思っていたよりもレベルが高いし、装備もそれなりだ。

 こいつが盗賊集団の中でどの程度の役割なのか・・・・・・見張りの下っ端でこのレベルならかなりの実力の盗賊集団になる。

 

 問題は小屋の中に何人居て、どの程度の実力なのか。

 そして、外に居る奴を各個撃破するかどうか。

 はじまりの村では人質が居て冒険者の奴が居たから、相手に気取られないことに重きを置いたが今回はそこまで神経質になる必要はないか。

 だが、小屋の中に捕まっている者がいるかもしれないな。

 ワーレンは生き残りはいないと言っていたが、捕まっている可能性もあるだろう。

 

 まずは小屋に窓がないか、ぐるっと回って確認するか。

 幸い、はじまりの村と違って、小屋の周囲のさほど離れていないところに木や林が多数ある。

 隠れながら確認して回るには絶好の環境だ。

 

・・・・・・

 

 確認した限りでは小屋の窓は開いているし、窓のサイズも結構大きい。

 強行突入は可能そうだな。

 索敵のマップで、外の見張りが動き出していないことを確認。

 

 まずはワープで窓から少し離れた小屋の外壁にゲートを繋ぐ。

 ゲートから顔を出して、こちらを見られる位置に人がいないことを確認。

 静かにゲートをくぐって外壁に張り付き、中の様子を聞き耳を立てて窺う。

 

 小屋の中から複数人の男の声が聞こえるから人が居るのは間違いない。

 声の数からすると結構人数が多いのかもしれない。

 

 突入するか。鑑定しながら、盗賊だけを切り捨てよう。

 

 

(オーバーホエルミング)

 

 超速スキルをかけて、窓枠を飛び越えて小屋の中に突入。

 

(索敵)

 

 赤い点が7つ!・・・・・・多い・・・・・・とグレーの点が2つ?

 

(グニッ・・・・・・)

 

 何か踏んづけた。あ、人質か?

 

 

(鑑定)

 

 

(注)主要盗賊以外は名前、年齢などは省略しています

 

ロンバウト(人間族 男 39才)

兇賊Lv18

装備 硬革の靴 盗賊のバンダナ

 

盗賊Lv38

装備 硬革の靴

 

盗賊Lv25

装備 硬革の靴

 

盗賊Lv22

装備 革の靴

 

盗賊Lv20

装備 革の靴

 

盗賊Lv18

装備 革の靴

 

盗賊Lv16

装備 革の靴

 

リディ(狼人族 ♀ 26才)

探索者Lv11

 

パラミツ(狼人族 ♀ 25才)

僧侶Lv10

 

 

 盗賊達は休憩していたのか、靴ぐらいしか履いてない。

 今がチャンスだな。

 

 

 兇賊の奴に近づき、デュランダルで首を刎ねた。

 盗賊Lv38の奴は硬直のエストックで滅多刺し。

 結果を確認することなく、盗賊Lv25、22、20の奴の首を次々とデュランダルで刎ねた。

 一息つく間もなく、盗賊Lv18と16の首も刎ねた。

 こんな小屋に盗賊が7人?しかも兇賊がいたぞ。

 

 再度、索敵スキルを使うと部屋の中にグレーの点が二つ、外に赤い点が一つ。

 室内の盗賊は全滅した。

 

 オーバーホエルミングが切れると、そのままドアを開けて焚火をしてる奴にダッシュで近づく。

 

「何だてめぇ・・・・・・」

 焚火にあたっていた盗賊は立ち上がろうとした。剣は腰に差したままだ。

 

(オーバードライブ)

 

 

 外に居た盗賊Lv19に何もさせずに首を刎ねた・・・・・・これで終わりか。

 索敵で見ても、近くに赤い点は見当たらない。

 

 うーん、兇賊Lv18と盗賊Lv38は実力者っぽかった感じだが、他の六人は迷宮でもよく見かけるレベルの盗賊だ。

 人数は多いが、この程度の戦力で商隊を目撃者も残さずに全滅できるのだろうか。

 

 人質二人に確認してみるか。

 

 ドアを開けて小屋の中に入ると、二人の人質は震えていた。

 

「おい。お前達・・・・・・」

「こ、殺さないで・・・・・・なんでもしますから」

「わ・・・・・・わ、私もなんでもしますから、殺すのだけは・・・・・・」

 

 室内に転がる盗賊7人の死体と血だまり。これでビビるなと言うのは無理か。

 でも不可抗力なのだけど。

 

「落ち着け。ドブローのギルドの依頼で盗賊探しをしている者だ。別に盗賊の仲間ではない」

「ほ、本当に?」

 本当にそうなのですよ。顔は少し怖いかもしれないけど。

 

「まず、名前と所属を教えてくれ。お前達は盗賊の仲間ではないだろうな?」

「ち、違います。リディと言います。ドブローの探索者ギルドに所属しています」

「私はパラミツです。シュポワールの僧侶ギルドに所属しています」

 名前とジョブは一致しているな。所属までは分からないが、それは別に構わないか。

 

「お前たちの仲間はいるのか?他に人質になっている者は?」

「私達は6人パーティでしたが、二人以外は全員殺されました」

 外にあった死体は一つだけだな。

 

「ちょっと待て、今、縄を・・・・・・これは鎖か。手を動かすなよ。危ないから」

 デュランダルで、背中に回された両腕を繋ぐ二人の鎖を断ち切った。

 

 デュランダルだと、野菜に包丁を入れるようにアッサリと鎖が切断できるな。

 装備品でもない鎖だから楽勝なのだろうか。

 

「小屋の外に死体が打ち捨ててあった。一人だけだが・・・・・・」

「あれは、剣士のベイトです。陽気な仲間だったのに・・・・・・」

 リディが泣きながら説明してくれた。

 

「他の三人は?」

「街道で襲撃を受けた際に殺されました。

 降伏したのに・・・・・・その後、私達三人はそのままここに連れてこられたのですが、

 ベイトは見せしめのために殺されました。

 私達二人に逃げたら・・・・・・殺すぞってことで」

 パラミツが蒼白な顔で説明してくれたが・・・・・・言葉以上に酷い光景だったのだろう。

 

「護衛していた商人はどうなったのだ?」

「私達とは別の場所に連れていかれたと思います。

 奴隷商人のザフトさんという方です。その他の店の者は全員殺されました。

 街道の北と南に分かれて盗賊が潜んでいるようです。

 私達は森の北の方向を延々と歩かされて、ここに連れてこられました」

 盗賊のアジトが二か所以上あるということか。

 

「商品となる奴隷達が居たのか?その者達も連れ去られたのか?」

「いえ、何か鉱石の輸送と奴隷を売った帰りだったので、奴隷も商品もなかったようです」

 商品である奴隷も居ないのに、奴隷商人を連れ去ったのか。身代金目的か?

 

 先程発見したもう一か所の小屋はここよりは小さな猟師小屋レベルの建物だったから、南のアジトとは多分違うのだろう。

 まだ、探し出さないとダメか。

 

「盗賊達の人数は分かるか?」

「休憩中に森の両側から一斉に襲われたので分かりませんが、

 十名を遥かに超える人数だったと思います。

 降伏した際に地面に俯せにさせられて、

 その後に目隠しをさせされたので正確な人数は分かりません」

 手慣れている感じだな。本当に盗賊集団なのだろうか。

 

「盗賊達の中に探索者や冒険者のような奴がいたか分かるか?」

「分かりませんが、ここに南側の盗賊達が来る時は徒歩で来ているようでした。

 ここまで歩くのが大変だと言っていましたので」

 ってことは、ある程度は南北で連絡を取り合ってるということか。

 

 このまま放置していると北側の盗賊集団が全滅したことがバレるか。

 戻って騎士団を呼んでくる時間もなさそうだな。

 直ぐに動いてくれるとも限らないし。

 

「お前たち、普段使っていた装備品は?」

「全て取り上げられて、南側に持っていかれました。

 そういえば、その時もアイテムボックス操作を詠唱している者は居なかったので、

 その場に探索者や冒険者は居なかったのかもしれません」

 そうか、だが盗賊集団の中に本当に居ないとまでは断定はできないな。

 

 話ながらも、小屋にある荷物を確認して回る。

 

 それなりの金額の金貨、盗賊達の装備品が数セット。

 鑑定してみると、一つだけスキル融合装備品があるな。微妙なスペックだが。

 

激情のレイピア(攻撃力2倍)

 

 その他の武器は、鋼鉄の剣、レイピア3本、シミター2本か。

 あとは硬革の防具が多い。盗賊集団にしては豪華過ぎる装備品だ。

 はじまりの村の時のような、身代わりのミサンガは存在しなかったが。

 

 そして、リュックの中に手紙か。内容は・・・・・・また、このパターンか。

 手紙はドブローのワーレンに押し付けよう。俺の手に余る内容だ。

 

「ドブローまで送って・・・・・・」

 ドブローまで二人を送り届ける時間は無さそうだ。赤い点が6つこちらに近づいてきた。

 

「今すぐ、そこにある剣だけを持って、森の中に隠れていろ。何かが近づいてくる。

 多分、南側の盗賊達なのだろう。俺が全員、斬り伏せる」

「えぇ?」

 意味不明な発言だが、これ以上説明している時間が惜しい。

 

 ドアを開けて飛び出した。

 

 小屋の壁にゲートを開いて、赤い点6つの背後にある丘にワープで移動。

 

 索敵でもう一度確認すると、なんてこった・・・・・・。

 休憩している馬車の方にも赤い多数の点が近づいている。

 敵の数が多すぎるぞ・・・・・・文句を言ってる暇があるなら盗賊を倒すか。

 

 北の小屋に近づいている6つの赤い点の後方の木の幹へワープで移動。

 

 ゲートを出るなり、

 

(オーバーホエルミング)

 

(鑑定)

 

 

盗賊Lv27

装備 鋼鉄の剣 硬革の鎧 硬革の靴 硬革のグローブ

 

盗賊Lv26

装備 鋼鉄の槍 硬革の鎧 硬革の靴 硬革のグローブ

 

盗賊Lv24

装備 鋼鉄の剣 硬革の鎧 革の靴 革のグローブ

 

盗賊Lv22

装備 鋼鉄の剣 硬革の鎧 革の靴 革のグローブ

 

盗賊Lv19

装備 シミター 硬革の鎧 革の靴 革のグローブ

 

盗賊Lv17

装備 シミター 硬革の鎧 革の靴 革のグローブ

 

 こいつらレベルもそこそこ高いし、装備品が盗賊にしては良過ぎだろう!

 

 

 手近な盗賊の背中から袈裟懸けにデュランダルで斬り伏せ、次の盗賊の首を刎ねる。

 

 こちらを振り向こうとした盗賊の首も刎ね、次々と斬り伏せていく・・・・・・最後の盗賊も腹にデュランダルを突き入れ瞬く間に盗賊を全滅させた。

 索敵で確認しても、この近くの赤い点はなし。

 

 このぐらいのレベルの盗賊と装備品でも、デュランダルなら一撃なのか。

 こっちのレベルが高いのとボーナス武器のチート性能のおかげだろうな。

 

 人質になっていた二人は森の中に隠れようとしているが、こちらに近づいてくる。

 隠れろと言っても、どこが安全か分からないから仕方ないか。

 

 この死体の数々を見つけて、騒がれても困るな。

 注意してやる時間も惜しいのだが。

 

(オーバーホエルミング)

 

 超速スキルをかけて、ダッシュで二人の近くまで走る。

 二人に見つかる前に、立ち止まってスキルが切れるのを待つ。

 

 やがて、二人の姿が見えて、こちらに気付いたようだ。

 

「おい、こっちに来るな。この近くに盗賊達が居るから、向こうの方で大人しく隠れていろ」

「・・・・・・!」

 小声で話す俺の切迫感が伝わったのか、二人は回れ右して急いで逆方向に走っていった。

 

 ちょっと可哀想だが、全てが終わったら探し出して安全な所に送り届けてやるか。

 索敵でグレーの点を探せば、すぐに見つかるだろう。

 防具は装備してないけど武器はちゃんと持っていたようだから、モンスターと万が一遭遇しても問題ないと思いたい。

 

 それより馬車の方に急がないと。

 

 ワープを駆使して、馬車が見える一番近くの高所まで移動した。

 

 馬車の方はグレーの点が8つ。そのうち戦闘力がありそうな者は・・・・・・6名か。

 探索者が2名、剣士1名、戦士1名、僧侶2名、商人2名。

 

 戦闘が可能な者は一番レベルが高くてLv20台前半か。

 

 まだ、南側に散在している盗賊達が攻撃にかかる様子はない。

 北側にいた盗賊達や合流しようとしていた盗賊達と連携して馬車を襲うつもりなのだろうか。

 さきほどの二人も両側から襲われたと言ってたな。

 北側の盗賊達は既に全滅させたが。

 

 移動してきていた集団が小屋にいた盗賊達への連絡係を兼ねているとなると、襲撃までの時間はまだ余裕があるか。

 南側の赤い点の周囲を回るように高所移動を繰り返して、布陣している盗賊達の周辺を索敵でクリアにしていく。

 

 赤い点は17個か・・・・・・多い。

 

 赤い点の全部を鑑定で確認できないが、兇賊Lv22や盗賊のLv30台が3人もいる。

 他はLv20台がほとんどで、Lv10台が少しか・・・・・・ちょっと厳しい相手だな。

 

 北の小屋にいた盗賊が8人、そこに近づいてきた盗賊が6人。

 合計で31人だったのか・・・・・・こんな人数は、はじまりの村の盗賊襲撃イベント以来だ。

 兇賊や高レベルの盗賊が居て装備が充実しているから、14名を先に殲滅してなかったら絶望的な戦力差だったかも。

 

 頭数もこちらが少なく、防壁もない街道の傍で奇襲か。そりゃ生き残れないだろうな。

 

 馬車側が有利と言えないし、乱戦になりそうな状況でヴィルマ達を呼ぶ訳にもいかない。

 

 他にも盗賊の援軍が来て増える可能性も否定できない。

 ここに居る者達が全てとは限らないし、他にもいると覚悟しておくべきだろう。

 

 だが、今更逃げるという選択肢もないよな。

 現状では勝ち負けで言えば、負けるとは思えないし。

 こちらが無傷という訳にはいかないが、盗賊を追い散らすことぐらいは最低でもできるだろう。

 

 どのくらい時間があるか分からないが、相手の奇襲にカウンターをかける準備をするか。

 いや、それよりも散開している盗賊達を各個撃破して、すり潰すのが良いな。

 

 馬車が休憩を終えて、出発しようとし始めた。

 

 盗賊達は北側の合流を待たずに、鬨の声を上げて馬車に向かって襲撃を開始してしまった。

 準備も不十分だが、戦うしかないのか。

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