そして、ああぁ...
「あれっ、またあんたか?」
この門番と顔を合わせること3回目。なんか、騎士団の詰め所に日参している感じだよな。
世話人も若干、怪訝そうな表情だが、特に突っ込みを入れることはなかった。
門番は奥に引っ込んでいった。そして...
「また、其方か...」
例の美人騎士様がいらっしゃいました。
今回は世話人がいる手前、特段、塩対応ではない。丁寧な対応でもないのだが。
「えーと、この辺りで家を借りることになりまして...」
なんか、羞恥プレイのような...いや、ポーカーフェイスだ。恥ずべきことはしていない。
俺は、インテリジェンスカードを確認してもらうため、腕を出した。
インテリジェンスカードが確認され、盗賊ではないので、契約可能であることが証明された。
美人騎士様はさっさと奥に引っ込み、門番はまた暇そうな顔で守衛任務に戻っていった。
俺は、世話人と店に戻って、1カ月の賃貸料の金額を支払い、代わりに家のカギをもらった。
もう、かなり時間を食ったので、日暮れが近づいている。
迷宮に戻る気はしないので、家具を見て回りたいのだが、市の日でもないから無理か。
ベッドや大きなタライ(風呂)がどうなるのか気にもなるのだけど。
...というか、世話人の店が家具屋兼用店舗だったよ。この商売上手め!
裏の入口から案内されると、家具を扱ってるのは世話人の亭主だったようだ。
入口から入ると大きな倉庫のようなスペースに家具とか桶とかがたくさん置いてある。
カンテラをいくつか置いて、明かりを点けながら、世話人は売る気満々だ。
ベッドは元の世界でいうところのダブルサイズ、シングルサイズ等が普通に置いてある。
ベッドそのものは中古っぽいけど、マットや掛け布団などは新品をつけてくれるようだ。
タライは水をストックしておくものや、洗濯用のものなど、様々なサイズが置いてある。
そして、原作に登場したような、巨大なタライも置いてある。
原作だと受注生産で10日ほどかかるって話だったのでは?
気になったので、店主に、その巨大なタライの件を確認すると、
「染め物をするから、大きなタライを作ってくれと言われて作ったまでは良かったのだけど、
その依頼主の奴が夜逃げしやがってよ。
こんなデカいものを買ってくれる物好きはいないので、この通り、売れ残ってる訳よ」
店主は苦々しい顔で俺に説明してくれた。
こいつは、タライと言っても円形ではなく正方形だ。
「ちなみに、これを買うとしたら、いくらぐらいなのだろうか?」
「はっ?お前正気か?染め物でもやるのか?」
「いや、染め物をやる気はないが、ひょっとして使えるかなぁ...なんて。
水とか入れた後に、下にある栓から、ちゃんと排水できるようになってるんだろう?」
「おう、よく分かってるじゃねぇか。ちゃんと排水できるぞ。本当に本当に買ってくれるのか?
買ってくれるなら、1000ナールで良いぞ。
元々売ろうとしていた値段より全然安いが、売れないのにずっと持ってるよりマシだからな」
「このタライの上にかぶせて、中が見えないようにできるような板はないだろうか?
板は何枚でも構わないのだが、タライの上側全部を覆えるサイズのものが欲しいのだが?」
お風呂に風呂蓋の板は重要だ。せっかく温めたお湯が冷めてしまうからな。
「染め物用にこれ作った時の板があるから、それもつけてやろう。
本当は染め物やるんじゃないのか?」
店主が勘違いしたのかもしれないが、なんかニヤニヤしている。
別に勘違いさせたままにしておこう。
店主が獲物を見つけたような目で見てくる。
結局、キングサイズっぽいベッドを1つ、シングルサイズベッドを1つ、風呂候補の正方形のタライを1つ、大き目のタライを2つ、中小のタライを10個と風呂イスの代用になりそうな小さいイスっぽいものを6つほど購入することにした。
その他にも箪笥を4つ、食器棚を2つ、オープンタイプの棚を3つ、食卓用のテーブルを1つ、椅子を12脚、机を3つ、小さめのテーブルを4つ、網かごの大小のものを6つ購入して、3割引込みでも全部で14700ナールとなった。
あれっ?お試し用の賃貸だったのに、家具を本格的に買ってしまったような。
そして、気づけば、試し家賃の5倍近い値段の家具を買っている。
クーラタルで20万を割らないように...と思っていた頃の自分が懐かしい。
数時間前の話だが。
クーラタルで正式に家借りた時にワープで運べるかな?...無理っぽい気もする。
いや、本気で住む気にならなければ、真の意味での実験にはならないはず。必要経費だ。
出費は結構な額だが一気にたくさん購入したので、損した気分は全くしない...と思おう。
一方で世話人はホクホク顔で、明日の午後一番で届けてくれると言ってくれた。
3割引で購入したのに、負けた気がするのは何故だろう?
明日は午前中迷宮で、午後から家具の運び入れだな。
店を出て、新居の方を確認すると、何人かの奴隷らしき人たちが掃除に向かうようだった。
もうすぐ陽が落ちるのに申し訳ない気分だが、邪魔しても悪いので、宿屋に戻ることにした。
ボイルから鍵を受け取って、自室に戻った。
陰干ししてあった装備はほぼ完全に乾いている。これなら売却できるだろう。
だが、もう日も暮れたので、アイテムボックスに仕舞って終了。
一階の食堂に降りて夕食をとることにした。相変わらず、ここの食事は美味い。
家を得てからも、食事だけはここで食べるのも悪くないかもしれないな。
コボルトスクロースで夕飯代金の代替は出来るのだろうか?明日、確認してみよう。
食事を終えると、湯桶は後で取りに来ると伝えて、カンテラだけもらった。
家を借りたことで、試せることを試しておきたいからだ。
カンテラの明かりをつけて、ベッドに座って、拠点構築のスキルを使ってみる。
拠点構築のスキルを意識すると、まずは、拠点の指定からしろと。
この宿を借りたときには出なかった候補が出たので、ベイルの新居を指定。
あと、所属とリーダ名を指定しろというので、俺の名前を登録した。
「うぉっ」
思わず叫んでしまったが、拠点経営のシミュレーションゲームみたいだ。
それとも、MMORPGのクラン設立みたいな感じなのだろうか?
えーと、いろいろ試したいけど、俺一人だと出来ることが限られるな。
おっ、倉庫とかおもしろそうだな。いろいろ収納できるのなら、結構便利かも。
拠点の規模とか防衛力とかシミュレーションゲーム好きだった自分には、たまらない要素だ。
屋敷なのに、『主城』って、なんだ?主城とか支城とか構築できるのだろうか?
【所属/リーダ】タケダ家/ユキムラ
【名 声】2/1000
【拠点名】ベイルの屋敷<主城>(1/4)
【メンバ】なし
【規 模】4/10(屋敷) 【防衛力】1/100
【維持費】48000ナール/年
【資 金】0ナール 【食 料】0日分
【ギルド神殿】0/2 【魔結晶】なし
【ギルド】なし
【特 産】なし
【倉庫1】(2500)
【倉庫2】(2500)
ただ、この宿屋に居ても何ができるかイマイチ分からない。
ワープで、カンテラを持ったまま、新居に移動して確かめよう。
ワープで出た先は、食堂にする予定の部屋だ。カンテラを持っていても結構暗いな。
食堂を見回すと、『照明を設置しますか?』『冷暖房を設置しますか?』と浮かんでくる。
何それ?...設置できるのなら便利だ。
とりあえず、暗いので照明を設置してみるか。
食堂の天井に目を向けて、照明を設置...できなかった。
「魔結晶が設定されていません。魔力がないと設備設置はできません」
って、表示された。ほんと、拠点経営ゲームかよ?
急いで宿に戻り、リュックに入れてあった青魔結晶を持ってきて登録してみた。
一度、登録して取り外しもできるようだ。とりあえず、この青魔結晶は拠点で利用しよう。
【魔結晶】青(3142/9999)
登録すると、魔結晶に蓄積された魔力が見える。
これは、魔力を蓄積させた量が見えて売却時に便利ではないだろうか?
ただ、設備設置の便利さを考えると、売却よりも拠点で積極的に使った方が良い気もする。
そういえば、原作では魔結晶はギルド神殿で使うとか言っていたような。
この拠点もギルド神殿と似たようなものだろうか?神殿ではなく、ただの邸宅だが。
まあ、いろいろ試しながら今後のことは考えよう。
それよりも照明の設置だ。食堂の天井に照明を設置してみた。
シーリングライトとは言わないが、なんか円形の白っぽいものが設置された。
あと、木製のレバースイッチみたいなのが壁のところに出現した。
無骨な木製っぽいレバーでオン/オフの表示も特にない。まあ、見りゃ分かるか。
とりあえず、木製のスイッチ(レバー?)を動かすと...照明らしきものが点灯した。
結構、明るいじゃん!これでカンテラ生活から抜け出せるな。
宿屋から持ってきたカンテラの火をいったん消した。
必要があれば、またライターで点火しよう。
照明を設置したことで、拠点の魔結晶の数値が10ほど減少した。
照明を1個設置する毎に10消費するのか?
部屋毎に照明つけると、この家では魔力100もあれば足りるか?
いや、トイレが確か4つあったし、廊下とか玄関にも照明つけたいな。
まあ、200から300ぐらいは魔力が必要か。
1日つけっ放しにしたら、魔力をどのくらい消費するのだろうか?
それから、設置した魔結晶を交換...するタイミングで照明が外れてしまわないか?
いや...これは、設定した魔結晶に俺の方で魔力を直接補充できるみたいだな。
とりあえず魔力を補充してみる...うーん、よくわからないが俺の魔力が減ったのだろうか?
そして、魔力が補充されたのか、魔結晶の魔力が10ほど増えた。
体感的には、さほど気分が悪くなったりはしていない。
魔力枯渇限界まで補充してみて、補充前/補充後の数値比較すれば、自分のMP値が分かる?
知ったところで、誰とも比較できないし、気分が悪くなるまでして調べたいものではないか。
ボーナスポイントを一時的に変更して、MP回復速度20倍にして、こまめに補充するか。
フフッ...人間充電池になった気分だ。なんか、そういうマンガとかあったよな。
他には、倉庫1、倉庫2とかも気になるな。
アイテムボックスから皮の靴を取り出して、倉庫に入れてみる...ん?
まずは、倉庫の設置場所を決めろと。
二階にあがって...と。廊下と階段にも照明を設置っと。
そして、書斎兼主寝室候補の部屋に入り...ここにも照明を設置する。
主寝室の壁のところに納戸があったよな。ここに倉庫1を設置しよう。
設置する候補に、倉庫1、倉庫2、食糧庫...も候補なのか?
とりあえず、倉庫1を設置してみて...皮の靴が入った。
2500の空きは50×50の冒険者あたりのサイズなのだろうか?
それもフリーで2500個のアイテムが収納可能なのだろうか?...分からん。
今、さすがにアイテムボックスのものを移すのは面倒だし、明日の午後以降だな。
倉庫2は一階の納戸にするか?
食糧庫には何が入れられるのだろうか?
迷宮アイテムじゃないパンとかも格納可能なら嬉しいのだが。ちょっとワクワクしてきた
でも、試すのは明日の午後以降だな。食糧庫は普通に厨房横の納戸に設置だろうけど。
【ギルド神殿】0/2
2個までならギルド神殿を登録できるということ?
迷宮討伐してギルド神殿を得たら、冒険者ギルドとかを設立できる?...妄想が広がるな。
国に許可を得ずに設立しても良いのか?...伝手もないし、今は誰にも確認できない。
【資 金】0ナール
アイテムボックスから取り出して、資金として格納は出来るようだ。
これは、特に設置場所は選ばずに勝手にアイテムボックスのように出てくるようだ。
この拠点に登録したメンバなら、資金を自由に使えるのだろうか?
パーティメンバを増やしてからでないと分からないな。
【規 模】4/10(屋敷) 【防衛力】1/100
拠点の規模や防衛力という数字も気になる。この家は規模4で屋敷レベルということ?
もっと大きな家を構えて規模が大きくなると、インフラが充実するとかないだろうか?
例えば、防衛設備を設置できるとか?国盗りゲームじゃないからないか?
防衛力って、柵を設置するとか、ドアを鉄製にすると数値が増えるとかだろうか?
特産品は何か拠点で作り出せば、登録されるのだろうか?
それとも、何か拠点のある地域の特産品が作成できるのだろうか?...謎だ。
拠点リーダは俺だが、登録メンバが、どこまでのことが出来るのかも検証してみたい。
いろいろ楽しみだが、今晩のところはここまでかな?
明日の午前中には清掃が終わるのですべてはそこからだな。
その後はアミルを迎えてからメンバ登録して、いろいろ試してみよう。
照明とか設置するのにパーティメンバに内緒とか無理だろうし。
拠点構築のスキルだけでなく、俺の諸々の内密事項もどこまで明かすか考えないとな。
倉庫1や照明は外して...魔結晶に魔力が元に戻ってきて、数値が増えた。
照明を使っていたが、短い時間では2か3ぐらいしか減らなかったようだ。
消費電力(魔力)もどの程度かは今後検証だな。
ライターでカンテラの明かりをつけて、最後に食堂の照明を外して...魔結晶はそのまま登録しておくか。どうせ明日以降も使うだろうし。
【魔結晶】青(3140/9999)
ワープで移動しようと思ったところ、「拠点間移動」「拠点間物資輸送」というメニューが浮かんでくる。
拠点構築のスキルによるものか?...それぞれ試しに選ぼうとしてみたところ、「複数拠点を所有していないため利用できません」と怒られた。
そりゃそうだけど、だったらメニューを選ばせようとするなよな!...と独り言。
気を取り直して、今度こそはカンテラを持って、ワープで宿屋に移動した。
ベイルの宿屋に戻り、部屋にカンテラを置いて、受付に行き、湯桶を2つもらった。
体を念入りに拭いて、明日の計画をザッと考えよう。
まずは当面の計画目標の進捗だが、
①新規ジョブ取得とレベリング :魔法使い、騎士を取得済。魔法使いのレベリングを重視。
⇒明日の午後以降、どこかで農夫、錬金術師、料理人のジョブ取得を行う
②資金集め :元の世界から持ち込んだ物品の値付け(ビッカー頼り)
⇒ビー玉は2個で13000ナール(残り48個)。鏡は紹介状待ち
③資金集め :魔結晶の結晶化促進(資金に使うか拠点に使うかは要検討)
⇒1日1300ナールほどの魔結晶は可能(レベリングを犠牲にしたボス周回で改善可能)
④パーティメンバの拡充(1人~2人) :第一候補は前衛メンバの鍛冶師
⇒アミルが4日後に来ることになった。次も前衛が良いだろう
⑤拠点の確保 :ベイルの賃借した家で試行(一カ月契約)
⇒明日の午後、新居を引き渡しの予定。いろいろ試そう。拠点の魔結晶に融合が可能か要検証
⇒アミルを加えたら、拠点メンバがどの程度のことが出来るのか要検証
⑥モンスターカードの購入の窓口確保 :未進捗
⇒商人ギルドに出向き、適切な商人の伝手を手に入れる。コボルトハンターとの伝手は入手済
⑦鍛冶師による装備の作成 :未進捗
⇒アミルの鍛冶師のジョブ取得後に鍛冶師ギルドに正式加入するか検討
⇒魔法使い用の装備強化や詠唱中断のスキル付与も考える
⑧ベイル以外の街の確認及びワープ地点の拡大 :帝都、クーラタルは確保済
⇒ペルマスク方面、ボーデ方面は未
⑨装備品の充実 :防具の拡充と武器のチェック
⇒鎧と靴しか防具を装備していないので、そろそろ頭や手の装備も充実させる
⇒掘り出し物チェックの街巡り。ワープ拠点拡大しながら確認する
ビッカーからの連絡はまだないな。
まあ、すぐには無理だろうな。この世界は電話とかないし。
明日の迷宮探索はどうするか?
魔法使いのことだけ考えるのなら、今日と同じく3階層のボス周回か?
エストックも手に入れたし、4階層でも大丈夫だろうが、最大3匹か。
その分、経験値が入るのだろうが、どちらが効率的だろうか?
3匹相手なら、ストーム系の魔法を使うのもアリか。そうすると魔法使い装備か。
フラガラッハにエストック、ほむらのレイピアにワンドぐらいなら持てそうか?
魔法の威力はレベルの低いうちは期待できないから、まずは3階層ボス周回だな。
今日の感じだと、ボーナス防具無でもフラガラッハのHP吸収で問題なさそうだ。
ダメージもほぼ全く受けなかったし。
ボーナス防具を外してセブンスジョブにして、レベリングのジョブ数を増やすか。
鉄の鎧でも、全く問題なく装着できるだろう。
ただ、走ったり歩いたりしていた時間が多かったから、動き易い革の鎧の方が良いかも。
魔法使いのレベルが上がったら、メテオクラッシュも試してみたいな。
自信がついたら、1階層から盗賊存在チェックをしながら、魔物部屋の攻略をメテオクラッシュやストーム系の魔法を使ってやってみるのも良いかもしれない。
うん、ちょっとわくわくしてきた...が、調子に乗りすぎないようしないと。
ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)
探索者Lv33 英雄Lv33 鬼武者Lv33 騎士Lv31 魔法使いLv1 防具商人Lv1 賞金稼ぎLv1
装備 フラガラッハ ほむらのレイピア エストック アルフレイル 革の靴
17万3640ナール
ボーナスポイント(230)(初期値198+32(Lv上昇分))
・キャラクタ再設定(1)
・武器5(フラガラッハ)(31)
・防具5(アルフレイル)(31)(防御力2倍、魔法ダメージ削減、状態異常無効、レベル補正無視)
・鑑定(1)
・ジョブ設定(1)
・索敵(5)
・拠点構築(5)
・必要経験値十分の一(31)
・獲得経験値二十倍(63)
・結晶化促進十六倍(15)
・MP回復速度三倍(7)
・セブンスジョブ(63)
・詠唱省略(3)
・ワープ(1)
・メテオクラッシュ(1)
余剰ポイント(2)
今日も興奮し過ぎて、テンション高めな感じだが、明日に響くので、もう寝ることにしよう。
明日は風呂のために魔法使いのレベリングを頑張ろう。