今朝もヴィルマとイレーネの襲撃を受けた。
エネドラはとっくに俺の部屋から去った後なので事なきを得たのだが、遭遇したらどうするつもりなのだろうか?
彼女のお仕置きは怖いぞ。経験したことないから想像だが。
着替えを急かされ、修練場へ。
今日もエルフ娘二人は元気に訓練をしている。
ミラとシェル、マヤとメリルの模擬戦だが、ミラとマヤは防御寄りなので見た目は互角だ。
だが、実際にはシェルとメリルの攻撃は二人に全く通じていない。
ほぼ全てを防御されている。
それでも息を切らしながら攻め続けるエルフ娘達はとても良い笑顔で木刀を振り回す。
ミラとマヤも楽しそうに防御をしている。なんだこれ?
ミラはドワーフ族なのだが、アミルの言っていたゾク繋がりは気にしてないのだろうか?
俺の方はというと例によってヴィルマとイレーネに代わる代わる挑まれ、結構痛い目に遭わされている。
午後はドライブドラゴンとの戦闘なので、俺で予行演習しているのではないだろうか?
・・・・・・
朝食を終えて、ミラとレイモンドをパーティに加えて、ドブローの冒険者ギルドにワープ。
ギルドを出て、鍛冶師ギルドに向かった。
ミラはドブローは二回目だが、鍛冶師ギルドに行くのは初めてだ。
「ご主人様・・・・・・き、緊張していますけど、私で大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ。ミラの今の実力なら問題ない」
ミラのジョブは探索者Lv10に戻してある。
今のジョブを戦士にしてあっても、待機ジョブに鍛冶師のジョブがあれば転職できそうだが・・・・・・試すこともないだろう。
「ミラなら大丈夫だ。隻眼にヘッドロックをすることに比べればなんてことないから」
「へっどろ?・・・・・・って何ですか?何故、隻眼の話が出てくるのでしょうか?」
おっと・・・・・・覚えていなかったのだったな。
「まあ、とにかく自信を持って受ければ大丈夫だから」
「は、はぁ・・・・・・」
与太話をしている間に目的地に到着。
普通の家にしか見えない鍛冶師ギルドのドアをノックした。
出てきたドワーフの男に用件を伝えると、事務室らしき場所に通された。
「今日はこの娘に鍛冶師の試験を受けさせたくて来たのだが・・・・・・」
「あー、はいはい。ワーレン会長から伺ってますよ」
あの男、会長だったのか。ギルド長ではなく会長?そっちの方が偉そうだが。
「受験料は5000ナールだったな。これで頼む」
「はい。確かに5000ナールいただきました。では、試験を受ける方はこちらにどうぞ」
事務員はカウンターの奥の部屋へ歩きながら手招きしている。
「ミラ、心配ないから、あの人の後に付いていけ」
「あ、はい。では行ってきます」
体の大きさの割には小心者のミラがトボトボと付いていく。
酒でも飲ました方が臆することなく受験できただろうか。
でも酒に弱いミラでは無理か。
試験官にヘッドロックをして不合格になっても困るし。
「じゃあレイモンド、後は頼むな」
「はい。お任せ下さい。終わったら冒険者ギルドから自宅に戻るだけなので大丈夫です」
15才のピコ達と比べると19才のレイモンドの方が頼りがいがある気がする。
鑑定で年齢が見えてるから錯覚しているだけかもしれないが。
ギルドを出ようとすると呼び止められた。
「おい。鍛冶師の試験を受けさせているのに、なんで帰ろうとするんだよ?」
「ん?まあ、試験にずっと付き合っても仕方ないから帰ろうかなと」
帰ろうとしたら、ワーレン会長に絡まれた。
朝から酔ってる訳じゃないよな?こいつは酒に強かった気もするが。
「試験なんて直ぐに終わるんだから、ちょっと待ってろよ。それより頼みがあるんだけどよ」
「頼み?」
ドブローで頼まれる事って碌なことじゃないんだよなぁ。
「聞いたところによると、お前さんはスキル融合武器を扱っているのだってな?
その件で相談があるんだけどよぉ」
「立ち話もなんだから、どこかで座って話さないか?」
なんか他人に聞かれたくないような話の気がするぞ。
・・・・・・
「で、スキル融合武器がなんだって?」
「ドブローはクーラタルと比べるとモンスターカードのやり取りが難しくてよう」
それは、ダマスカス鋼工房の店主からも聞いたな。
「迷宮があって、比較的腕のよい奴が集まるので、カードはそこそこドロップするのだけど
都合の良い数が集められなくてなぁ。
だから、スキル融合武器を上手く調達できる奴は引く手あまたなはずだけど、
そういう奴はみんなクーラタルの街や帝都に行っちまってさぁ。
そこで、お前さんに相談という訳だ」
「いや、話が全然分からないのだけど」
結局何をどう取引したいのだ?
「この前、焼肉パーティに来た奴らに聞いたら、お前がドブローの迷宮探索者の奴等のために
スキル融合装備を調達したって話を聞いてな。
だったら、他の奴等にも同じことができないかって考えた訳だ」
「それで?」
ダマスカス鋼工房の店主と同じように対価次第だよな。
「素材と半端な数のカードであっても全体の数を集めて頼めば、
こちらの要望に近いスキル融合装備を調達してくれないかって話だ」
「言ってることは分からなくもないが、具体的な条件次第だな。
知っているとは思うが融合はほとんど失敗するのだから、
素材もカードも数をある程度集めないと希望通りのものが手に入らない。
こちらも数を揃えて融合してるから、必要なスキル融合装備をなんとか調達できている訳で
具体的に素材の量やカードの種類と枚数を教えてもらわないと何とも言えないな」
俺の言葉に会長は近くの職員を呼び止めて何やら指示を出した。
「素材については、ドブローでは心配不要だ。
ダマスカス鋼でも竜革でも鋼鉄でもいくらでも手に入る」
「そうか、そいつは凄いな」
俺がどれだけ苦労して素材集めに奔走しているかと思うと、少し腹が立つな。
やがて、職員が紙の束を持ってきて会長に手渡した。
「カードの種類と数はこんな感じだ」
「んー、どれどれ・・・・・・」
リストを見ると、種類は多岐に渡り、枚数は3枚から5枚ぐらいに見事に分散している。
人気のカードから外れカードまであるな。
「知っていると思うがカードには種類によってオークションの落札価格に幅があるから、
ここに記載のあるカードは価値の高いカードから低いカードまで様々のようだな」
「ああ、分かってるよ。それぐらいはな。
だが、例えばそこに記載のあるカードを適当に10枚選んでお前に渡せば、
ある程度は希望のスキル融合武器を調達してもらえるのではないか?
もちろん1回10枚の取引だけでやってくれというのではなく、
例えば10日で2、3回程度で20枚から30枚渡すという感じでならどうだ?
それを一年間続けてもらえることを前提に、必要な素材・・・・・・生成する10倍だっけ?
それと今言ったようなカードを渡すということならどうだ?」
流石に会長だけあって、融合の実情も分かった上で取引を持ち掛けてくるな。
というか、俺がルークに持ち掛けている等価交換とほぼ同じ仕組みだな。
ドブローではカードが潤沢に用意できるような場がないからイロイロ考えた結果、このような取引を考えたのだろうけど。
「そうだな。
契約の詳細内容を詰めたいところだが、大枠の話としては受けられそうな内容の話だな」
「そうだろう、そうだろう」
なんか、この前の報告の時と、台詞が逆転した気がするな。
こちらにとってもカードが効率的に集められそうだし、この話に乗ればダマスカス鋼の素材が調達できそうだよな。
なんせ、こっちは1/10の成功確率ではなく、100%なのだから。
9割の素材やカードは、こちらの手に渡る訳だし。
「これは・・・・・・あとはギルドの事務方と話を詰めれば良いのか?」
「ああ、そうしてくれると助かる。おっ、試験が終わったみたいだな。
あの顔だと結果を確認するまでも無さそうだが」
会長の言葉に振り返ると満面の笑みのミラが立っていた。
「ご主人様、鍛冶師になれました」
「ミラ、おめでとう。凄いじゃないか。よくやったぞ」
アミルの時もそうだったが、この瞬間は何度立ち会っても良いな。
こちらまで幸せな気分にしてもらえる。
嬉しそうなミラをレイモンドに引き渡して、俺は話の続き。
「では、装備品の作業委託契約の件も進められそうだな」
「まあ、そうだがな。
スキル融合武器の契約の話も進めようってのに、作業委託契約もこなすのか?
なかなか鍛冶師使いの荒い奴だな」
「うちの鍛冶師は優秀だし、すぐにミラも優秀な鍛冶師の仲間入りするはずだから問題ないさ」
ミラは既に鍛冶師Lv31だからな。
もう少しレベリングし、下位の素材の装備品生成をすれば、ダマスカス鋼の素材も扱えるようになるだろう。
その後は、事務方の方とまず装備品生成の作業委託契約の件を確定させた。
こちらの方は定型作業での納品なので調整事項も特にない。
決まった数を決まった期間までに納品すればよく、提供される素材数も固定だ。
もちろん報酬は金ではなく、素材だ。
竜革の装備品は引き受け手が少ないので、直ぐに作業を回してもらえた。
ドブローの高レベル鍛冶師はダマスカス鋼ジャンキーなのだろうか?
■納品規定(作業委託契約)
(期日)30日以内
(納品数)竜革のジャケット60、竜革のグローブ60、竜革の靴60
(報酬)上記の装備品生成に必要な素材の1/3(納品時に引き渡し)
1日2セットずつ生成すれば良いのか。
今までのアミルのペースなら余裕だし、他の作業は少し控えてもらおう。
ミラのレベリングも少し優先させるか。
Lv40台に乗せれば、多分問題ないはずだ。
スキル融合装備についての契約は、もう少し詰めたい内容があるのと、具体的な装備の要望をある程度の期間(例:100日)で提示してもらうことにして別日で再調整することにした。
作業委託契約はその場で署名し、レイモンドのアイテムボックスに素材を収納してもらった。
会長と事務方に礼を言って、三人でギルドを後にした。
レイモンドはミラと自宅へ戻り、俺は帝都の冒険者ギルドにワープで移動。
・・・・・・
応接室に通されて、数秒で店主がやってきた。数秒・・・・・・?
店主と一緒に先日の竜人族の娘も入室してきた。
この娘を落札したと思しき主の姿はいない・・・・・・まあ、このタイミングでは来店してないか。
「それで、話があると聞いて駆け付けたのだが?」
「貴方様より、この娘とスキル融合装備の交換の申し出があったと、
この娘を落札したお客様よりお話がありました。
本日、手紙にありました装備品二点をこちらにお持ちいただくことは可能でしょうか?」
こちらの提案は既に店主にも話が通っていると。
「持ってきて、どうするというのだろうか?」
「もちろん、交換を実施していただくことになります」
ん?交換は確定なの?条件闘争をされたりとか、交換についての疑問、質問タイムもせずに?
店主は胡散臭いにこやかな表情と共に何か焦った感情も読み取れる気がするのだが・・・・・・。
この表情には見覚えが・・・・・・ちょび髭が生えて少し変わった気もするが、この顔はヴィルマと模擬戦を終えた後の俺に彼女を売りつけようとしていた時に酷似しているような・・・・・・悪巧みの顔か?
この娘、ここ一両日中の間に何をしでかした?
索敵で見ると・・・・・・この娘、青いじゃないか・・・・・・なんで?
この奴隷商館の商品特性はおかしくない?
「ここでもし、やっぱり交換の話は無かったことにしてくれと俺が言い出した場合は・・・・・・」
「そ、それは人としてどうかと思う振る舞いのように思われますが・・・・・・」
人として?・・・・・・どの口でそんなことを?・・・・・・確かに鬼人族ですが、それが何か?・・・・・・とは言わないけど。
なんだろう。嫌な予感がするのだが。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺と店主の無言のやりとりの傍ら、この竜人族の娘は胸を反らして俺達を見下ろしている。
いや、物理的な身長が俺達二人よりも彼女の方が高いというだけなのかもしれないが。
まあ、こちらが損する話ではないはずだ・・・・・・損しないよね?
「分かった。それで装備品二点を持ってくれば良いのだな?」
「はい。可及的速やかに」
そんな言葉、この世界に来てから初めて聞いたぞ。別に良いけど。
「分かった。では持ってくるので少し時間をもらえるだろうか」
「お願いします。お願いします」
重要なことだから、二度言ったのだろうか?
商館を出てクーラタルの自宅にワープで戻った。
・・・・・・
ともかく、エネドラと話さなければ。
急いで食堂に向かうとチクルスと二人でテーブルに座って俺を迎えてくれた。
「エネドラ、急で申し訳ないが竜人族の娘を我が家に迎え入れることになりそうだ。
名前は・・・・・・たしか、オリビアだったか。
部屋は二階の空き部屋を使ってくれ。
二階の空き部屋には家具類は全て入っていたはずだから掃除の手配を頼む。
後は・・・・・・」
「旦那様、後の事は委細全てお任せ下さい」
うっ、なんだか一人増えるのは見通されていたのだろうか。
全く動じず、準備万端で待ち受けていたようにも思えるのだが・・・・・・。
「こちらが交換条件となるスキル装備品を持って、商館に行くので戻ってきたら・・・・・・」
「この家のルールを教えたり、お風呂に入れたり等、全て対応いたしますのでご安心下さい」
そうですか・・・・・・まあ、俺が下手に口出しするより上手くやってくれるだろう。
「分かった。任せる。俺はアミルの所に行ってスキル融合をしてもらってくる」
「はい。では、こちらも準備に取り掛かります」
二人が立ち上がって、厨房にいるミモザやポーラと相談を始めた。
俺もアミルのいる作業部屋に行かなければ。
・・・・・・
「・・・・・・という訳で、迷宮組の人員が追加になりそうだ。
昨晩の会議で話をしていたようにスキル融合を頼めないだろうか?」
「はい、大丈夫です。頑強のダマスカス鋼大楯と激情のダマスカス鋼剣ですね」
そう、その2つだ。空きスロット付装備もカードの在庫も問題ないはず。
アミルは倉庫から装備品と必要なカードを取り出し、アッサリと2つとも融合を成功させた。
「はい。これで大丈夫ですよね?」
「ああ、いつも急で申し訳ないな。助かった」
「このぐらい何でもありません」
さて、スキル装備品を入手したから帝都の奴隷商館に行くか。
アミルにもう一度礼をを言って作業部屋を後にし、エネドラを連れて玄関から帝都にワープ。
・・・・・・
「では、これが相手が望む装備品のはずだ。鑑定のために武器商人と防具商人の所に・・・・・・」
「既にこちらで手配して呼んでおります」
えっ?なんでそんなに手回しが良いのだ・・・・・・一刻も早く契約を締結させたいのか?
アイテムボックスから2つの装備品を取り出し、テーブルの上に置いた。
ダマスカス鋼の大楯は巨大なので、それだけでテーブルを覆いつくす形になった。
その上にちょこんとダマスカス鋼の剣を置いた。
武器商人、防具商人が呼ばれ、それぞれ鑑定の詠唱を始めた。
そして、こちらの提案通りの装備品であることが確認された。
「このまま、そちらに納めて良いのだろうか?交換を受諾してくれた方に挨拶などは・・・・・・?」
「問題ございません!全てこちらで対応いたしますので」
俺に会わせたくない身分の方なのだろうか?
こちらとしては別に構わないのだが。
「では、奴隷契約の手続きに入らさせていただきます・・・・・・」
粛々と口上及びインテリジェンスカード操作の手続きが終わり、死後相続で相続先がエネドラに設定された。
「これで全ての手続きは完了しました。本日は誠にありがとうございました」
「いや、こちらこそ助かった。
また竜人族や魔法使いの者をこちらで扱うようになったら紹介してもらいたい」
その2種類の奴隷は何人いても我が家としては問題ない。
契約するために莫大な資金が必要なのだが。
店主に礼を言って、店を後にした。
適当な木陰から自宅にワープゲートを繋げた。
「エネドラはこのまま自宅に戻って受入の準備を続けてもらえるか?
俺はオリビアと一緒にジョブ取得をしてくるから」
「くれぐれも自重してくださいませ」
「ああ、もちろんだ」
ベイルの低階層だから心配しないでよ。
エネドラはクーラタルの自宅に戻っていった。
パーティ編成でオリビアを加入させた。
「すまないが、これから迷宮に行く。
初めての迷宮だから少し怖いかもしれないが、俺が居るから大丈夫だ。
まずはゲートをくぐってくれ」
ベイルの迷宮3階層にゲートを繋げて、オリビアの手を引いて中間部屋に移動。
俺達以外の迷宮探索者はいないようだ。
「まずは、これを身に着けてくれ」
アイテムボックスから取り出した硬革の防具一式を渡した。
特に文句を言う訳でもなく、淡々と彼女は装備品を身に着けた。
オリビア(竜人族 ♀ 18才 奴隷)
村人Lv3
装備 硬革のジャケット 硬革の帽子 硬革のグローブ 硬革の靴
武器は必要になった時に渡すか。
振り返ると・・・・・・彼女は自分の髪の毛を毟り取るように引っ張っている・・・・・・何を?
(バサッ)
彼女が長い金髪を引っ張り下すと、その下から緑の髪の毛が現れた。
緑色の髪だったのか、それはそれで珍しいような・・・・・・初めて見たかも。
「この色が不気味?」
「いや、綺麗な色の髪の毛だと思うけど・・・・・・」
俺の言葉に彼女が下を向いた。
身長は俺の方が低いので、顔が見えなくなるというのはかなり顎を引いてることになるな・・・・・・そんな事より、この状態は?
顔を上げると彼女はツカツカと近づいてきて、俺の顔をガッチリと掴んだ。
「お、おい、何を・・・・・・!」
次の言葉は続けられず、彼女に口の中を蹂躙された。
「はあ、はあぁ・・・・・・続きはまた後でね」
ギラギラした目で俺を見下ろしている。
迷宮の中間部屋でやることではないだろう。いったいどうしたのだ?
えーと、何をしようとしていたのだっけ?そうだ、魔物部屋だ。
魔物部屋の近くの通路で、モンスターから遠い場所に二人でワープを使って移動。
「直ぐに戻ってくるから、ここを動かずに待っていてくれ」
彼女が頷いたのを確認してワープで魔物部屋に入り、サンダーストームを2発撃ち込んだ。
そのままデュランダルで撫で斬りを続けて、部屋の中にいたモンスターを全滅させた。
ゲートを元の通路に繋げて、オリビアを手招き。
「こっちは、もう安全だから来てくれ」
「・・・・・・」
返事はないものの、こちらの指示通りに魔物部屋の中に入ってくれた。
大量に転がっているドロップ品を二人で回収。
彼女の村人のジョブはLv3からLv5になった。
これで、下準備は完了かな。
「次はモンスターをオリビアに倒してもらう。
この剣は上質な剣で、この階層のモンスターぐらいなら一撃で倒せる業物だ。
だから何の心配もせず、これをぶん回せばよいから」
「分かった・・・・・・」
俺からデュランダルを受け取り、しげしげと剣を上に掲げて見上げている。
身長も高いし腕も長いので、デュランダルの剣先が天井に届きそうだ。
索敵でモンスター2匹のグループを探した・・・・・・2グループ発見。その間にワープで移動。
後ろは・・・・・・ニードルウッドとコボルト・・・・・・前は・・・・・・コボルト二匹。前にしよう。
「こちらに行くぞ。相手はコボルトというモンスター二匹だ。
その剣で二匹とも倒してくれ」
「コボルトなら村でも倒していたから問題ないと思う」
それなら安心だな。Lv1とLv3の違いはあるが誤差だろう。
二人で前に歩いていき、やがてコボルト達もこちらに気付いたようだ。
「では、頼むぞ。危ないようなら助けるから」
「フッ・・・・・・必要ない」
油断するなよ。
コボルトがいつも通り、何の考えもなく突っ込んできた。
さて、村人ジョブを持つ竜人族のお手並みは・・・・・・。
(ブンッ・・・・・・!)
豪快な剣風と共にコボルトが壁に叩きつけられて煙と消えた。
(ブンッ・・・・・・!)
もう一匹は今度は逆方向の壁に叩きつけられて煙となった。
彼女の待機ジョブを確認すると竜騎士Lv1があったので目的は達成された。
達成されたのだが・・・・・・今のはちょっと・・・・・・?
オリビアはデュランダルを左右にぶん回して、コボルトを壁に叩きつけたのだが、文字通り叩きつけていた。
デュランダルの刃がある所謂エッジの部分で斬るのではなく、樋のある平べったい面をコボルトの胴体にブチ当てて打撃でダメージを与えていた。
というか、あの面で当てても芯で当てた訳ではないから、デュランダルの攻撃力としては減殺・・・・・・というかゼロなのでは?
素手で殴ってるのと変わらないのではないだろうか?
こんなデュランダルの使い方してる奴、初めて見たぞ。デュランダルが泣いている?
コボルトは煙になったから目的は果たしたとは言え・・・・・・というか、この娘は戦闘音痴?
竜騎士だけでなく、戦士と剣士のジョブも待機ジョブにあった。
戦士と剣士は村での戦闘で条件を満たしたのだろうけど。
今の攻撃は素手扱いではないようだから、僧侶のジョブは取れていなかった。
素手ではないのだろうが、ひょっとして装備品ではない木の棒で殴ったのと同じだったりして。
「どうかしたの?」
「いや、見事に二匹とも仕留めたなぁ・・・・・・って」
俺の言葉に彼女は機嫌が良くなった。チョロイな。
「じゃあ、一度、家に戻るぞ」
若干、釈然としないが、いつまでもここに居ても仕方ない。
壁にゲートを開いて自宅の壁に繋ぎ、オリビアの手を引いて自宅に戻った。
「ここが俺の家だ。この家では・・・・・・」
土足厳禁ルールを教えて上履きの皮の靴に履き替えてもらい、貸していた装備品は回収した。
オリビアを連れて食堂に。だが、エネドラの姿がない。
「ミモザ、エネドラはどこに?」
「あ、二階に居ると思います。新しい方の部屋を整えているのだと思います」
ミモザに礼を言って、二人で二階に。
階段を上がりきって、廊下の左に行った先がオリビアの部屋のようだ。
ドアが開いていて、部屋の中に人の気配がある。
「エネドラ、俺の迷宮の用事は終わった・・・・・・」
「では、オリビアさんはこちらに・・・・・・後はお任せ下さい、旦那様」
全てを説明しなくても引き受けてくれるエネドラには感謝しかない。
「じゃあ、俺はもう一度迷宮に行ってくる」
「はい。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
今度はパワーレベリングだ。少しでも竜騎士のレベルを上げておきたい。
階下に降りて、玄関からワープでクーラタルの29階層の中間部屋に移動。
パーティの通常部隊には俺の他はオリビアだけ、小荷駄隊の方にはミラ、マヤ、レイモンド、ピコを加えてある。
29階層、27階層、23階層の魔物部屋を巡って殲滅。
オリビアは竜騎士Lv21まで上がった。二人パーティだとレベル上げが効率良いな。
少し早いが、午前のレベリングを切り上げて自宅に戻ることにした。
・・・・・・
二階に上がって自室に戻ろうとドアを開けると・・・・・・部屋の中にはオリビアがいる。
「どうした?何か心配事か?」
「心配なことは何もないよ」
それでは何故俺の部屋に?
俺が中に進むと彼女も近づいてきた。
(グシャ、ワシャ、ワシャ・・・・・・)
「ぐっ・・・・・・何を・・・・・・?」
俺は今、目の前の娘に頭を撫でられている・・・・・・というか撫でるというより、頭を押さえ付けられているような。
「フフッ・・・・・・ユキムラ君・・・・・・お姉ちゃん、です」
ユキムラ君・・・・・・だと?
それに竜人族娘は『お姉ちゃん、です』を言う方ではなく、言われる方だったのでは?
頭を物凄い力で押さえつけてくる。
「ちょっと待て、『ユキムラ君』はないだろう?」
「エネドラさんからは、呼び名は好きにしてよいって言われたよ」
いくら好きにしても良いと言っても、衆人環視の中、『ユキムラ君』呼びは勘弁してくれ。
そんなの羞恥プレイだろうが。
「あと、何故、『お姉ちゃん』なのだ?」
「ユキムラ君の方が年下だからに決まってるじゃない」
そりゃ、この世界の年齢では一つ年下だけど・・・・・・元の世界では・・・・・・うぉっ頭が!
オリビアの怪力に俺の頭がドンドン下げられていく・・・・・・。
年下、年下・・・・・・!
「なあ、帝都の奴隷商館に一緒にいた竜騎士の男の事だけど・・・・・・」
「ん?ジジィのことか?」
あの竜騎士の男の年齢は21才だったはず。それでジジイ?
「20才、19才の男は・・・・・・」
「ジジイ!」
レイモンドは19才にしてジジイ扱いか。
「18才は?」
「・・・・・・」
18才をジジイ呼ばわりしたら、18才のオリビアはBBAになってしまうな。
「グォッ・・・・・・」
「ユキムラ君、何か失礼なこと考えているのかな?」
今、俺は宙づりにされて、ベアハッグ状態でオリビアに抱きしめ・・・・・・というか鯖折りの技を掛けられている。
四本の腕をまとめて決められていて、振りほどく事ができない・・・・・・怪力過ぎるだろう!
せ、背骨が・・・・・・ミシッミシッと音を出している気がする。
最近、ヘッドロックとか鯖折りとか、元の世界のプロレスやら格闘技の技をよく目にする気がする・・・・・・のだが、そんな事を考えている余裕はない。
(パッ、パーティ編成!)
パーティ編成を無詠唱で唱えて、パーティを解散した。
セブンスジョブの効果が無くなったので、なんとかオリビアを振り解くことに成功。
「おい。頼むから、『ユキムラ君』呼びを皆の前でやるのは止めてくれ」
「照れ屋なのね?じゃあ、二人だけの時はそう呼ぶよ。それは止められないから」
止められないのは何故?
俺には弟属性など1ミクロンも存在しないのだが。
「そろそろ昼食の時間だから、自分の部屋に戻ってくれ。着替えたいから」
「照れ屋なんだね。いいよ、また後でね」
またって何?またって?
オリビアは俺に笑顔を振りまきながら退室していった。
「なんなのだ、アレは?」
契約前から青いって、怖いな。
というか、今の調子でオリビアが俺と接すると、イレーネとの間に武力衝突が発生しそうだ。
迷宮組の中に火薬庫を抱えることになったのかもしれない。
あの奴隷商人も落札した主人も、持て余しそうになったから手放したではないだろうか?