異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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110.孤立

 オリビアの寝顔を見ながら・・・・・・昨晩の記憶を呼び起こす。

 女に溺れるというのは、本当にあるのだな。

 昨晩は確かに溺れそうになった・・・・・・というか山脈の上だから・・・・・・溺れるというよりは遭難と言うべきなのだろうか。

 

 自分よりも身長のある娘とベッドを共にしたことはなかったので得難い経験だったが、これからもこれが続くのか。

 ちょっと元気をもらえた気がするな。

 この娘が俺のことを本当にどう思ってるのかは謎だが。

 特定の属性好きな気もするのだが、どうなのだろう。

 

 邪過ぎる気持ちが伝わったのか起きて目が合ってしまう・・・・・・あ、布団の中に逃げた。

 意外とヴィルマと共通した性格なのだろうか、このデカい体だと掛け布団を被ってもイロイロと隠れない気もするが。

 あとは俺の部屋の備品は持ち帰らないでいただきたいと願うだけだ。

 

「昨夜の私のことは忘れて・・・・・・」

 表情も見せずに小声で何かをおっしゃっている。

 

 あの山脈のことを忘れることなどできるはずがない。

 偉い人の言葉を思い出す・・・・・・『そこに山があるから』と・・・・・・登らざるを得ないよな。

 

「人前で手を繋ごうとしなければ、忘れてあげても良いかなぁ・・・・・・」

「うっ・・・・・・」

 

 明確な返事はないが、とりあえず追い打ちをかけておこう。

 布団に俺も潜りこんで・・・・・・暫しの戯れ。

 物理攻撃に強い竜人族にはメンタル攻撃をかけるのが常道だ。

 

 涙目で真っ赤になって自室に戻っていくオリビアを堪能しながら、急いで着替えをする。

 今日はシェルとメリルが去る日なので、朝の訓練に参加しておかなければ。

 

・・・・・・

 

 修練場に行くと、ヴィルマとイレーネが模擬戦中。

 正直、この二人は別格なので見ていて楽しい。

 なんというか、プロの格闘技戦の観戦をしている気分になれる。

 たまに自分がその場に参戦しているのに違和感を覚えるが、臨場感ある戦いを間近で見ていると思えば悪くない。

 痛い目に遭うことがあるのがなんともだが。

 

 シェルとメリルは、ミラとマヤの二人と相変わらず模擬戦をやっている。

 時々、ペアが入れ替わっているが楽しそうに戦っている。

 それも今日までか・・・・・・。

 

 エネドラの話では、二人は貴族に戻ることを諦めてはいないようだ。

 直接的に『貴族』という言葉は使わないものの、この家にいつまでもいる気はないとのこと。

 今は奴隷身分だが、ヘルミーネが言っていた貴族へ戻る道のどれかを選ぶのだろうか。

 願わくは今日迎えにくる者がまともな奴であってほしい。

 戻ったは良いが、ドブローで監禁されていた時と同じような境遇になるのであれば、何のために我が家に連れてきたのかという話だし。

 

 ・・・・・・

 

 朝食を終えて、食堂でシェルとメリルを前に事前の相談。

 周りにはエネドラ、チクルス、カラダン、レドリックがいる。

 

「まずは俺が先に帝都の冒険者ギルドに行って、

 その迎えにくる者を見てこようと思っている。

 目印を右手に持っているはずだから直ぐに分かるだろう。

 そして、その迎えの者の周りにおかしな奴がいないかも確認してくるつもりだ」

「今日、迎えにくる者は古くからの忠臣だから、疑う必要はないと思うのですが・・・・・・」

 それは楽観的過ぎるよな。

 

「その者が敵方に後を付けられて、二人に危害が及ぶ可能性だってあるだろう。

 油断は禁物だと思うぞ」

「なるほど、そうかもしれません」

 この前、監禁されたのだから少し危機感を・・・・・・こんな子供に望むのは酷なのだろうか。

 

「そして、これは提案なのだが、

 迎えの者と会うギリギリまで、二人は俺の所有奴隷になる気はないか?

 今、二人は誰にも所有されていない奴隷身分だということは分かってるよな。

 その状態というのは奴隷身分の中でも最も危険な状態だ。

 危険な状態のまま外を歩くと、万が一再び拉致された場合に非常に面倒なことになる。

 俺の所有奴隷なら二人に危害を加えようとすれば正式に俺が守れる立場になるし、

 強引に何かを仕掛けようとすれば決闘ではねのけることもできるはずだ」

「そこまでしていただく訳には・・・・・・」

 シェルの言葉には首を横に振る。エネドラもシェル達を優しい目で見つめている。

 

「迎えの者に安全に引き渡すために最善を尽くす。これは我が家の決定事項だ」

「・・・・・・分かりました。お言葉に甘えさせていただきます。メリルも大丈夫よね?」

 妹が頷いたので二人の合意は得られた。

 

「では、カラダン頼む」

「はい、お任せください」

 

 カラダンが昨晩、ピコを相手に練習した奴隷のインテリジェンスカード操作を行なった。

 これで二人は無事に俺の所有奴隷だ。

 

 この提案が断られると、冒険者ギルドでの対応が面倒な事になったのでホッとした。

 

「安全が確認できて迎えの者に合流するギリギリのタイミングで

 俺の所有から外れてもらう予定だ。

 まずは俺が帝都の冒険者ギルドに行ってくるので、二人はここで待っていてほしい」

「はい。よろしくお願いいたします」

 まだ、俺の事を完全に信用していないだろうから不安な気持ちはあるだろう。

 

 目的のためとはいえ、所有奴隷にするのは少し心が痛む。

 

「では、行ってくる」

「旦那様、くれぐれも自重をお願いします」

 エネドラの言葉に頷き、玄関に向かった。

 

 ゲートを壁に開いて、帝都の図書館の傍の木陰にワープで移動。

 冒険者ギルドまで歩いて向かった。

 

 入口から入ると、この時間でも冒険者ギルド内は多数の者が行き来している。

 さすが帝都というべきだろうか。

 

 そして、お目当ての迎えの者は・・・・・・あの者か。

 目印を右手に持った女性がテーブルに座っている。

 時折、周りを見渡したり、入口や壁のフィールドウォーク用絨毯の方向に目を向けている。

 

 少し離れた席のテーブルに着いて、不自然に目を合わせないように・・・・・・。

 

(鑑定)

 

 

ヴェロニカ・シーベルグ(エルフ族 ♀ 27歳)

騎士Lv13

装備 エストック 鉄の鎧 硬革のグローブ 硬革の靴

 

 

 これが迎えの騎士か。特に爵位持ちではない普通の騎士なのだろうか。

 

 

(索敵)

 

 

 この女騎士はグレーの色だ。つまり我が家にとっては敵でも味方でもないと。

 

 そして、この女騎士から離れたテーブルに赤い点が・・・・・・4つか。

 

 やはり、あの二人を俺の所有奴隷にしておいて正解だったな。

 あの二人に危害をもたらすという事は主人である俺に害をなすのと同じだと考えて、無理やり理由をつけて所有奴隷になってもらった。

 

 これだけの数の赤い色の者が冒険者ギルド内に存在するとなると、この場で二人の引き渡しは無理だな。

 

 

(鑑定)

 

 

エリヒ クレッフェル(エルフ族 ♂ 31歳)

騎士Lv21

装備 鋼鉄の剣 鉄の鎧 竜革のグローブ 竜革の靴

 

ライザー(エルフ族 ♂ 25歳)

戦士Lv27

装備 鉄の剣 硬革の鎧 硬革の靴

 

 

 エルフの騎士と戦士か。戦士はこの騎士の従士か何かだろうか。

 

 

 その二人と少し離れた所にいる二人は、

 

 

(鑑定)

 

 

コンラート クレッフェル(エルフ族 ♂ 26歳)

騎士Lv21

装備 レイピア 鉄の鎧 竜革のグローブ 竜革の靴

 

エドガー(人間族 ♂ 29歳)

剣士Lv23

装備 シミター 硬革の鎧 硬革の靴

 

 

 エルフと人間族のペア?騎士同士は同じ家の者か。

 ジョブのレベルは大したことないが、シェルとメリルの二人にとっては十分脅威となり得るな。

 

 念のため、この場所全体を索敵にかけて他に赤色の者がいないか確認しておくか。

 掲示板を見たり、カウンターに行くフリをして・・・・・・他に赤色はいない・・・・・・4つだけか。

 この迎えの女騎士は二人を意図的に裏切ってはいないのだろうが、後を付けられてここに連れてきてしまったのか。

 それとも、味方のフリして騙されて連れてきたのか?

 情報が不足していて判断がつかない。

 

 一度、クーラタルの自宅に戻って作戦を練り直すか。

 建物の外に伏兵が潜んでいる可能性もあるかもしれないよな。

 ギルドの外に出て、建物の周りも索敵で一通りチェックしてから帰るか。

 

・・・・・・

 

 一回りしてみたが、赤い点は見当たらない。

 建物の中にいれば分からないが、それはもうどうしようもないから諦めよう。

 

 適当な木陰から、自宅にワープ。

 食堂で待つ二人の所に向かった。

 

・・・・・・

 

「シェル、メリル、聞いてくれ。

 迎えの者・・・・・・騎士っぽい恰好した女性が目印を右手に持っていたのを確認した」

「そうですか、迎えに来てくれたのですね。これで帰れる」

 説明の仕方を失敗した。糠喜びさせてしまった。

 

「だが、その女性の周りに不審な者を見かけた。

 騎士っぽいエルフの男性と従者と思われる者が二人一組で二組いた。

 『クレッフェル』という家名に心当たりがあるか?」

「『クレッフェル』!どこで貴方はその名前を?」

 鑑定で確認しましたという訳にはいかない。これは用意していた出まかせで説明。

 

「俺の商家も小なりとはいえ、帝都に独自の情報網を持っている。

 貴族に詳しい者を予めギルドに配置して、知っている者がいないか確認させておいたのだ。

 その情報屋の話では、『クレッフェル』という家名を持つ者が二人ほどギルドの中にいて、

 従士のような者をそれぞれ一人ずつ連れていた。

 『クレッフェル』という家はお前たちの味方にあたる者達なのか?」

「・・・・・・」

 即答できないということは味方ではないと。

 

「目印を持っていた者が寝返ったということは?」

「ヴェロニカに限って、そのようなことはありえません!」

 あの女騎士は味方と考えても良いのだろうか?

 

 さて、どうするか。

 このままギルドに二人を連れていかずに放置しても、いずれはヴェロニカという騎士にも『クレッフェル』の家の者達にもここを突きとめられてしまう可能性はあるだろうな。

 女騎士の方はこちらの手紙を持っているのだから、差出人を探せばそれほど苦労せずに我が家に辿り着くだろう。

 

 手紙がない『クレッフェル』の方は盗賊討伐の詳細をドブローに探りを入れれば、時間は少しかかるだろうが我が家に来るかもしれない。

 女騎士を二人の味方だと信じて、ここに連れてくるか。

 赤ではないので、少なくとも表立って敵ではないはずだ。

 

 

「シェル、その迎えの者に手紙を書いてもらえるか?」

「手紙?悠長に手紙を書いている場合では・・・・・・」

 いやいや手紙の運び人は俺だから。

 

「手紙は俺が直接、その者に渡す。

 シェルが書いた直筆の手紙なら、その者には真意が伝わるだろう?

 その手紙で俺のことを信用してもらって、その者を俺がここに連れてくる。

 まず、その者とお前たち二人が会わないことには今後のことが考えられないのではないか?」

「ヴェロニカに会って何が起きているのか確認したいです。

 今回の件に『クレッフェル』の者達がどう関与しているのか、我が家はどうなったのか・・・・・・。

 これを・・・・・・」

 彼女はテーブルの上に小さな指輪を置いた。

 

「この指輪は?」

「これがあれば、ヴェロニカが手紙を私が書いたと信じるかもしれません。

 この指輪を手紙の中に同封しましょう」

 なるほど、直筆だけでは弱いか。真似て書くこともできるかもしれないか。

 

「旦那様、貴族の者達の前に姿を晒すのは危険では?」

「マントを着て、フードを深めに被って口元も覆っておくから大丈夫だ」

 女騎士には目元ぐらいは見えるだろうが、それは仕方ないだろう。

 

 赤い点の奴等には見えないように上手くやろう。

 

・・・・・・

 

 シェルが急いで手紙を書きあげ、エネドラのチェック後に俺の手に渡された。

 封筒が膨らんでいるから、中にシェルの指輪も入っているのだろう。

 

「じゃあ、行ってくるから」

「旦那様、お気を付けください」

 

 エネドラ達に見送られて、帝都の冒険者ギルドの外の木陰にワープした。

 まずは、外周をもう一度チェックだ。

 

 さすがに、大して時間が経過していないから変化はない。赤い点はなかった。

 

 ギルドの入口から、顔を隠しながらゆっくりと入った。

 体のデカさと顔を隠した姿に、少し異様な雰囲気に映っていることだろう。

 だが、気にしてはいられない。

 

(索敵)

 

 今一度、女騎士や赤い点の位置も確認。

 五人とも俺がギルドから出た時の位置から動いていないようだ。

 女騎士が背を向けた方向に二組の赤い点がある。

 

 ゆっくりと彼女のいるテーブルまで近づく。

 

「ここの席に座っても良いか?」

「・・・・・・」

 彼女は不審げな顔で俺も見つめるも、無言のまま頷いた。

 

「そのまま、声も出さず表情も変えないで聞いてくれ。

 そちらの事情は全く知らないが、シェルとメリルの二人は無事で我が家で保護している」

「!」

 少し顔の表情が強張った・・・・・・表情を変えるなと言ってるのに彼女には無理なのか。

 

「君は『クレッフェル』という家の者に付けられていて、

 このギルドに二人、『クレッフェル』の家の者が紛れ込んでいる」

「・・・・・・」

 怒りの表情が見える。彼女と『クレッフェル』の家の者は敵対関係なのだろうか。

 

「いきなり、こんなことを言われても信じがたいだろうが事実だ。

 シェル達から手紙を預かってきているので、まずはこれを読んでくれ。

 大切な物が入ってるから落とすなよ」

 手紙を彼女の方に差し出した。

 

 封書から取り出した手紙と指輪を見て、彼女の顔が驚愕に染まった。

 

「シェル様、メリル様、生きてらしたのですね・・・・・・」

 彼女の中ではシェル達は死んだことになっていたのか。

 

 状況は完全には分からないが、彼女が手紙を読み終わるのを静かに待った。

 その手紙には俺が信用の置ける者だから、俺と一緒に匿ってもらっている場所に来るようにと記載されている。

 

「まだ完全に信じられませんが、あなたを信用することにします。

 それで、私はどうすれば良いのだろうか?」

「まずは、俺のパーティに入ってくれ」

 小声でパーティ編成の詠唱をして、彼女に入ってもらった。

 

「先程も言ったが、このギルド内に敵が紛れ込んでいるので、

 そいつらを振り切らなければならない。

 俺が合図したら、一緒に走ってほしい。できるか?」

「走るだけなら問題ないが、走って逃げきれるのか?」

「ああ、大丈夫だ。走る距離は大したことない」

 

「そろそろ移動したいと思う。シェル達が心配して待っているからな。

 席を離れる準備を気取られないようにやってくれ」

「分かった。ちょっと待ってくれ」

 彼女はゆっくりと背中を向けてる相手に見えないように手紙や目印をしまった。

 

「では、ゆくぞ。俺の後に付いてきてくれ」

 

「ああ」

 

 俺は彼女を連れて、急がない程度に出口の方に向かった。

 

「もうすぐ左に向かって走るから、心の準備をしてくれ」

「分かった」

 

 俺はフィールドウォークの出発側の絨毯を横目にワープを無詠唱で唱えた。

 相手の虚をつくために、ここに来る時はギルドの入口から入ったのだし、索敵のマップ確認で我々より遥かに後方から尾行しているのも確認済だ。

 

「俺に続いて走れ!」

「!」

 開いたゲートに向かって、彼女の腕を掴みながら走って飛び込んだ。

 

 ゲートの先は我が家の玄関だ。

 俺は走り込んでくる彼女をガッチリ受け止めた。玄関先で走るものではないよな。

 

「ここは?」

「シェル達を保護している我が家だ。ちょっと待ってくれ・・・・・・まずは、この家では・・・・・・」

 こんな時でも我が家の土足厳禁ルールは絶対だ。

 

 彼女に皮の靴を履き替えてもらって・・・・・・いるうちに、シェル達がやってきた。

 

「ヴェロニカ!」

「シェルお嬢様、メリルお嬢様・・・・・・よく御無事で・・・・・・」

 泣きながら抱き合って喜ぶ三人。エネドラとチクルスも傍で見守ってる。

 

「落ち着いたら食堂に来てくれ。今後の話が必要だろう?」

「・・・・・・」

 今はそっとしておこう。

 

 エネドラ達と先に食堂に行くことにした。

 

 やがて、三人が食堂に現れて俺達の席の前に座った。

 

「シェル様、メリル様を救っていただき、ありがとうございます。

 私はお二人に仕えるヴェロニカと申します。

 以後、よろしくお願いいたします」

「タケダ家の当主ユキムラだ。こちらは配下のエネドラとチクルス。

 こちらこそ、よろしく頼む。

 俺達はそちらの事情をほとんど知らないのだが、

 ドブローの街の近くで盗賊討伐をした際に二人を救出した流れで今は保護している。

 安全だと分かれば今日二人を引き渡す予定だったが、

 ギルドで確認した限りはそう見えなかったので直接来てもらったという訳だ」

「そうだったのですか。

 確かにギルドでゲートに飛び込もうとした時に

 我々を追ってきている者達が目に入りました。

 あなたの指摘通り、私は後を付けられていたようですね」

 ゲートに飛び込んでしまったら、どこに行ったのかは分からないので暫くは安全だろう。

 

 それほど猶予があるかどうかは分からないが。

 

「二人が無事帰れるのか判断材料が欲しい。

 今の状況下で元の家に戻るというのは安全なのか、危険なのか?」

「一言でいえば危険としか言いようがありません。

 主家の中にお二人を預けられるような頼れる身内が誰もいない状況です。

 私も完全に把握できている訳ではありませんが、敵だらけと言っても過言ではないかと。

 お二人は死んだことになっています。まさか奴隷に落とされたとは思っていませんでした。

 死体も残さずに死んだと言われて信じられずに問い合わせたのですが、

 家系から外れたことが確認できたので、亡くなったのだと諦めていました。

 まさか奴隷身分にされているとは・・・・・・」

 ヘルミーネの話では、よくある陰謀と聞いてたが自分達に降りかかるとは思ってなかったのか。

 

「暫くは三人で我が家に逗留してもらって構わない。

 だが貴族に戻るのであれば、ここに長居する訳にもいかないだろう?

 今後どうするべきなのか、三人でよく相談してみてくれ。

 部屋や食事などはこちらで用意するので心配いらない」

「そうですか・・・・・・ではお言葉に甘えさせていただきます。お二方とも相談いたします」

 俺の言葉にエネドラも頷いてくれているので、一人増えたが準備を整えてくれるだろう。

 

 元々、二人が泊まっていた部屋は大部屋だったから一人増えても大丈夫だと思う。

 ベッドもまだ予備が一つくらいはあったはず。

 何よりも二人と同部屋の方が三人とも安心できるだろう。

 

 二人は・・・・・・今となっては三人か・・・・・・クーラタルの拠点にメンバ登録していないから給水設備や照明が使えないが、桶や水差しに水を入れたり、ランタンを用意しているからそれほど不便ではないはず。

 風呂は使ってもらうが大きなタライからお湯を汲みだして使ってもらうようにしているし、二人が使う時は貸し切り状態にしていたから三人になっても問題ないだろう。

 間仕切りや浴槽を複数用意していたのが、こんな形で生きるとはな。

 それでも風呂を見たら、ヴェロニカは驚くだろうが。

 リラックスした方がきっと良い考えも浮かぶはず?

 

「それと二人には既に伝えているのだが、

 裏庭を歩き回るぐらいは構わないが敷地の外には出ないでほしい。

 ここを簡単に突き止められるとは思ってないが万が一ということがあるから」

「分かりました」

 赤色の者は拠点構築スキルの侵入検知機能で直ぐに見つかるだろう。

 

 外に出ない限りは、ある程度の安全は確保できるはず。

 ずっとは難しいだろうから、今後の対策は考えなければならないだろうけど。

 

 それにはまず三人で状況確認をして、今後どうしたいのかを考えてもらう必要がある。

 

 俺の方でも案はいくつか持っている。

 この状況を打開はできないが、膠着状態にする案がなくもない。

 二人が受けいれられるかどうかは分からないが、まずは自分達で考えてもらってからだ。

 

「エネドラ、部屋の準備の差配をお願いできるか?

 それまで、三人には食堂で話し合いをしてもらおう。何か飲み物でも持ってきてあげてくれ」

「はい、お任せください。部屋の準備の方は既に手配済です」

 優秀な家宰と忠実な部下がいる我が家に感謝だ。

 

 今から迷宮に行くには昼食の時間が近いので中途半端だな。

 食事に呼ばれるまで休憩するか。

 

 午後の予定を考えながら、自室に戻った。

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