異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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005.ハルツ公との取引

 今日の朝練の相手はラファ。

 なにやら、彼女は不満げな様子だ。

 

「私とフラウスはユキムラ様と迷宮探索ができないらしいではないですか。

 ユキムラ様の強さを迷宮で確認したかったのに・・・・・・」

「いや、そんなことを言っても、

 護衛組と一緒に迷宮探索する時はサポートに徹するので全力で戦ったりはしないぞ。

 あくまで経験を共有する速度を上げるためなので」

 そう言ったものの、ラファはあまり納得できていないようだ。

 

 俺に突き出してくる槍もいつもよりは雑に感じるし、心の乱れを表しているようだ。

 

「それでも、迷宮で一緒に戦えれば強さの一端に触れることはできるでしょう。

 私もご一緒したかったのに・・・・・・」

「俺の強さに触れられる?」

 うーん、どうだろうな。

 

 経験上言わせてもらえるのなら、俺の強さが分かった時は死ぬときだと思うのだが。

 それすらも感じさせずに奇襲で瞬殺しているから、俺の強さが分かってる奴などいただろうか。

 俺自身だって分からないのに。

 

「いつか一緒に迷宮に行きましょう!」

「ああ、そうだな。機会があれば」

 なんかデートの誘いのようで・・・・・・そうでもないな、全くときめかないし。

 

 そもそも14才のラファにときめくことはないのだが。

 

 隙だらけのラファにいくつか軽く打撃を与えて、更に涙目にさせてしまって模擬戦終了。

 彼女は普段は冷静に見えるのだが、時々メンタルの弱さを露呈するな。

 それでも14才であることを考えると、迷宮探索者としては十分な逸材なのだが。

 

 ラファもケリー&マリーも14、5才としては十分過ぎる才能だ。

 と言っても、俺もこの世界では17才の若造に過ぎないのだが。

 

 

 その次の相手はフラウス。

 槍使いとの連戦だ。

 

 フラウスは特に何も文句を言うでもなく、淡々と突きを入れようと鋭い槍捌きを見せている。

 最近、オリビアの相手をさせられていたので、槍をいなしたり、躱したりするのに慣れてきた。

 模擬戦で初めて槍を突き付けられた時は、少しビビっていたが最近はあまり感じない。

 

 我が家は中衛以降で槍使いが多いから、かなり慣れてきたのだろう。

 ラファ、フラウス、ヘルミーネ、レイモンド、オリビア、アミルが我が家では槍を使う。

 

 彼女の攻撃はオリビアと違って、躱して懐に入ればかなり勝率が高まる。

 重要なのはいかに上手く躱すかと、懐に飛び込む勇気だ。

 少しでも躊躇すると、距離を取られて相手にアドバンテージを与えてしまう。

 

 剣でカウンターの練習をしていると、相手との攻めのタイミングの読み合いと飛び込む度胸が養われる。

 ヴィルマやイレーネとは剣での模擬戦だが、技量の高い二人との訓練はなんだかんだ言って、戦闘全般に役立っている。

 

 フラウスはラファと違い、心の揺れは少ない。槍の扱いも熟練しているように見える。

 ある意味、剣技におけるレドリックに通じるものがあるな。

 

 綺麗な槍捌きで淡々と突き出し、俺の戦闘の起点を愚直に潰そうとしてくる。

 攻撃を受けているこちらも、なんだか楽しくなってくる。

 彼女の突きをこちらも冷静に躱しまくる。

 リズムや角度を変え、時に振り切るような動きも加えて、こちらを追い詰めようとしてくる。

 

 それでも、ヴィルマ達を相手に訓練してきた俺にはやり易い相手だ。

 二、三回ほど懐に入って、打撃を与えたところで、彼女が負けを認めた。

 

「やはり、ユキムラ様はお強い。まだまだ私は修練が足りません。

 今後も訓練の相手をお願いいたします」

「ああ、またやろう」

 ラファもフラウスも真面目だな。

 

 根っこの部分で同じな気がする。

 ラファ、ヘルミーネ、フラウスは性格、振る舞いがとても似ている。

 似た者同士、気があうのかもしれない。食事などもいつも一緒のテーブルで食べているし。

 

 そして、次はヘルミーネか。

 待ち構えていたよな。まあ、負ける訳にはいかない相手だ。

 

・・・・・・

 

 訓練と食事を終えて、貴族と会うための身なりを整えて階下に降りた。

 エネドラを連れ、ベイルでカラダンをピックアップしてボーデの冒険者ギルドに移動。

 ギルドを出て城まで三人で歩く。

 

「今日はカシア様からの伝言ということですが、旦那様はどのような用件だと思いますか?」

「そうだな。

 恐らくは石鹸のことではないかと思うが、

 鏡の取引やシェル達のことで何かトラブルが発生した可能性もあるかもしれない。

 石鹸のことであれば、発売時期の確認、事前に販売が可能なのかといった問い合わせだろうか。

 今日は補充用の石鹸をいくつか持ってきてるよな?」

 エネドラは頷いた。

 

「はい。予備を1セット持ってきています。

 クーラタルの拠点でも量産がそれなりにできているのですが、

 どの程度まで数を増やすかですね。

 現時点では、30日で300個ぐらいまでなら生産可能な状態です」

「そうだな。平民用の方はベイルで子供達を使って量産しているが、

 クーラタル側の方も人を増やすかだな。

 空き部屋がもうシェル達を泊めていた少し広めの大部屋しかない。

 石鹸を作成する場所も手狭になってきているだろう?

 やっぱり早々に増築するしかないか」

 あのデカい邸宅の部屋がこんなに早く埋まるとは思ってなかった。

 

 だが、あの時点でこれ以上の大きさの家を借りることは不可能だったのだから仕方ないよな。

 

「旦那様、ザビルの方の調査もそろそろ始めます。

 レドリックさんに相談して1日に一人までなら護衛を派遣してもらえることになりそうです。

 ベイルの子供達はピコ達三人のうち二人いれば作業は回せるので、

 誰か一人を冒険者として帯同させて三人でザビルを回りたいと思います」

「そうか。

 ザビルはベイルと比べて街の発展度合いや治安含めて未知数なので十分気を付けてくれよ」

 いつもは自重をするように言われる側だが、今日は言う側だ。

 

 やがて城の門が見えてきたので会話は終わりにして、詰所の騎士団員に用件を伝えてワッペンを提示した。

 待たされるかと思いきや、直ぐに騎士団員の後についていつもの執務室に。

 入室の許可が出たので、挨拶しながら入るとハルツ公、ゴスラー騎士団長、カシア様の三人が待ち構えていた。

 

 ハルツ公に声をかけられたので、まずはハインツ対応の後処理からだ。

 

「これがハインツの一味を討伐した際に回収した指輪となります」

「確認させていただきます」

 ゴスラー騎士団長が手に取って確認した後にハルツ公に渡した。

 

 今回、決意の指輪の方はアイテムボックスに入れており、ボーナスポイントへの戻しの方は行なっていない。

 なので、新品ではなく少しくすんだ色や傷のある状態のままだ。

 

「これは確かに我が家から結納で贈ったものに間違いないように見えるが・・・・・・

 五代前の先祖が固定のときにいただいた決意の指輪に酷似している。

 もし、これが伝世品なら是非余が買い取りたいのだがどうだろうか?」

「買い取りですか・・・・・・」

 正直、お金よりも今欲しいのは土地、家、人材なのだが。

 

 なんか、いせはれっぽくなくなってきたな。

 そうだ、空きスロットがあるオリハルコンの装備品でもオッケーだ。

 

「まだ、その指輪が公爵様の想定される品かどうかは分からないのでは?

 防具鑑定をしてから考えられてもよろしいのではないでしょうか」

「むっ、そうか。確かにそうかもしれぬな」

 急いで決めないで、こちらに更なる貸しを作らせる機会を与えて下さい。

 

 その方が、より報酬が大きくなるだろうから。

 

「では、防具鑑定のために指輪は余の方で預からせてもらおう」

「はい。問題ありません」

 まあ、結果は明らかだが相手の確認が取れないと話が進まない。

 

「タケダ殿をセルマー伯の所へ連れていきたいと思うが、カシアはどう思う」

「はい。もちろんセルマー伯からも感謝の言葉があってしかるべきでしょう」

 あれ、実はこの話のために呼び出されたという訳じゃないだろうな。

 

「そうだな。タケダ殿もそれでよいだろうか。

 なに、少しの時間頭を下げておけば終わる話だ。堅苦しく考えることはない。

 決して悪いようにはいたさぬ。迷惑をかけることはない。

 行くのはタケダ殿一人でよいぞ」

「分かりました」

 そう言って原作では、セルマー伯との子供の喧嘩に原作主人公が巻き込まれていたような。

 

 一人だけと言ってるのは先日来た時にシェル達を連れてきて、カッサンドラおばば様の件に巻き込んだことを警戒しているのだろうか。

 貴族の御前だし、一人と指定されているから行くのは俺だけで十分だ。

 

「タケダ様はセルマー伯領で暴れていた悪名高きハインツの一味を倒されたのです。

 セルマー伯にも謝意を表明する機会を与えていただければと思います」

「承知しました」

 原作で謝意を表明している表現なんてあったっけ?記憶にないのだが。

 

「セルマー伯との連絡はわたくしが取りましょう。

 タケダ様、三日後の朝、再度ボーデへいらしていただいてもよろしいでしょうか。

 それまでに日取りを決めておきます」

「それでは、三日後に参ります」

 ここは原作と同じ三日後なのだな。

 

 こちらに選択権がある訳じゃないから別に良いけど。

 そして、三日後には日取りの連絡ではなく、直接行くことを覚悟しておかないとな。

 

 これで話は終わりか。あっけない話だったな。後に引く話ではあるが。

 

「用件というのは、指輪の件だけでしょうか・・・・・・」

「タケダ様達には、まだお話があります。この後、よろしいでしょうか?」

 ですよねぇ・・・・・・これで終わりな訳がないか。

 

 

 場所も変えずに、執務室でカシア様が用件を切り出してきた。

 ハルツ公もゴスラー騎士団長も、こちらに目を向けようともせず執務に励んでおられる。

 これは何かきな臭い感じが・・・・・・。

 

「先日、タケダ様から頂いた石鹸は非常に素晴らしいものでした。

 これまで私が使っていた石鹸というのは・・・・・・

   :

   :

 (中略)

   :

   :

 ・・・・・・ということで、タケダ家で売り出されるのはいつ頃になるのでしょうか?」

「えーと・・・・・・」

 何か、タケダ家の石鹸についての並々ならぬ意気込みというか、今の石鹸に対する不満を延々と語られたのだが、全く頭に入ってこなかった。

 

 エネドラに助け舟を求める目で見ると、彼女は一歩進み出た。

 

「発言をお許しいただけますでしょうか?」

「許します!」

 ここからは俺の出番はない気がする。

 

「タケダ家では石鹸の生産をお客様の注文量に合わせて行うやり方を取っております。

 カシア様は定期的に一定数量の購入をご希望されますか?」

「希望します!」

 そ、即答?・・・・・・ハルツ公が唖然とした顔でこちらを見ているのが、カシア様の背後に見えた。

 

 それにしても、エネドラはいきなりストレートに要求を引き出したな。

 今回はそれが正解な気もするが。

 

「いかほどの量をお望みでしょうか?

 タケダ家では先日お渡しした箱に5つの石鹸を入れたものを1セットとして販売しております。

 購入する場合には、その箱に入ったセット単位でお求めいただくことになります」

「そうですね。できる限りたくさん欲しいのですが・・・・・・」

 ハルツ公が『イヤイヤ・・・・・・』と首を横に振っているが、カシア様の視界には入ってない。

 

 そういえば、原作でもおばば様に対する評価について、カシア様の見えない所でハルツ公は首を横に振っていたような記述があったような。

 夫婦間でのコミュニケーションに問題があるのではないだろうか。

 他人事だから、どうでも良いことだが。

 取引さえ成立すれば、それで問題ないし。

 

 反論があるのなら、こちらに来て直接カシア様と話をした方が良いと思うのだが。

 無論、俺がハルツ公の伝書鳩となってカシア様に伝言する気などない。

 そもそも、エネドラは1箱いくらなのか販売価格を伝えていないぞ。

 それなのにできる限り多く購入するなんて言い切って大丈夫なのだろうか?

 

 ちなみに石鹸1つ500ナールで箱に5個入れて1セットで2500ナールで売り出す予定だ。

 箱代はもらわないことにしている。100ナール程度の原価だし。

 石鹸の材料費はほとんどかかってないからコストの大半は箱代だ。

 鏡の販売価格が1つ1万ナールだから、石鹸なら4セットと同額。

 石鹸1つ500ナールはバカ高いが、そこはそれ貴族価格だ。

 

「鏡を30日で15枚購入いただいていますが、

 石鹸の方も30日で15セットの購入でいかがでしょうか?

 鏡と一緒に石鹸を贈られると喜ぶ方も多いのではないでしょうか?」

「まあ、それはとても素晴らしい考え方ですね」

 もう、本当に俺の出番はないな。

 

 鏡の販売価格は1万ナールで原価は2450ナールなので、ざっと7500ナールの利益だ。

 石鹸1セットで2500ナールだが、原価は100ナール程度なので2400ナールの利益だ。

 鏡と石鹸のセットで約1万ナールの利益になり、石鹸の方はこれからも継続購入が期待できる。

 人件費は考慮されていないが、我が家の場合は奴隷だからなぁ。

 30日に15枚の鏡と15セットの石鹸が売れるのなら月に15万ナールの儲けで、その後の石鹸の購入も期待できる。

 

 まあ、なんとかの皮算用だがハルツ公が首を縦に振るのだろうか?

 

「石鹸は1箱2500ナールで売り出す予定ですが、

 次の鏡の納品時に同数の石鹸のセットを販売するということでよろしいのでしょうか?」

「そうですね。問題ないでしょう」

 一瞬、背後を振り返ったカシア様にハルツ公は首を縦に振っていた。

 

 これは、もう男性陣の出る幕はなく、首をただ縦に振る人形のように振舞うしかないのでは?

 

「そうなると、次に石鹸が手に入るのはかなり先になりますね・・・・・・」

 憂いを帯びた表情になるカシア様。

 

「では、三日後にセルマー伯様とお会いする日を確認する際に、

 今までの鏡の枚数分だけお届けするのはどうでしょうか?

 20枚鏡をお納めしましたので、20セット購入いただくということでいかがでしょうか?」

「そうですね。それが良いかもしれません」

 次の購入セット数よりも多く販売しているのだけど良いのだろうか。

 

 今日エネドラから聞いた石鹸の在庫量からすれば2日後の納品は問題ないか。

 30日で300個、つまり60セットの生産が可能なら、しばらくは大丈夫か。

 

 20セット販売しても売上は5万ナールぐらいでしかない。

 初期の一過性の利益よりも、今後も石鹸を購入し続けてもらう顧客を獲得することの方が重要だから問題ない。

 それに今後に向けては新商品の開発の件もある。

 直接の取引は初めのうちはできないかもしれないが、優良顧客は確保しておきたい。

 

「では、三日後に私がこちらに参った際にお届けいたしましょう」

「はい。よろしくお願いします」

 とは言ったものの、石鹸の箱20セットはなかなか運ぶのが大変かも。

 

 運び方はちょっと考えなければ。

 予備の石鹸を今日持ってきてるが、中途半端に渡すのは止めて次回にまとめて渡そう。

 3日後だから、直ぐだしな。

 

 石鹸の販売については、エネドラとカシア様の方で少しだけ細かい詰めの話がなされた。

 ハルツ公のエンブレムを刻印した石鹸の箱を用意するか等々。

 石鹸の取引についての件はそれで一区切りとなった。

 

 

「タケダ家で保護して、カッサンドラ様にお預けすることになった三人については、

 その後、いかがでしたでしょうか?」

「三人は無事カッサンドラおばば様の下に送られました。

 我が家が後ろ盾になって、

 三人を送り届けたことをエルフ領内で広めましたので、暫くは問題ないでしょう。

 彼女達の頑張り次第では貴族に返り咲くことも可能かもしれません」

 暫くは・・・・・・か。その後は三人の頑張り次第なのだな。

 

 伯爵家だか男爵家だかの横槍が回避できるのなら良いが。

 

 あとは三人の人生だから各々頑張ってくれとしか言いようがない。

 おばば様の所でどのような事が行われるのか知らないが。

 くれぐれもカッサンドラおばば様を我が家に連れてくることはないようにな。

 エネドラがこっそりと渡した石鹸は何かの役に立つかもしれない。

 ひょっとしたら金貨を1枚下着に縫い付けておくよりは良いことがあるかも?

 

 カシア様と死んだ目のようになったハルツ公及びゴスラー騎士団長にお暇の挨拶をして執務室を後にした。

 何かゴスラー騎士団長よりもハルツ公の方が苦労人色が濃い気がするのは気のせいだろうか。

 

 ベイルまでカラダンを送り、エネドラと二人で帰宅した。

 

・・・・・・

 

 迷宮探索の準備をしてターレの20階層にワープで移動。

 

 20階層の新規出現がグラスビー、21階層がビッチバタフライだったが、飛行系のモンスターなので超速スキルを使い隙間を見つけながらすり抜けて走破した。

 22階層まで抜けられたので、明日の護衛部隊との連携確認には間に合った。

 汗だくになったが自宅にワープで移動し、そのまま風呂場に直行。

 目標は達成できたので、お湯を浴びながらホッと一息つけた。

 この後、昼食後はヴィルマ達迷宮組と魔物部屋の攻略だ。

 

 今回の殲滅ツアーはヴィルマやイレーネのお眼鏡にかなうだろうか。

 危ないとこっちがヒヤヒヤするし、簡単過ぎると不平を言われるのでバランスが難しい。

 

・・・・・・

 

 昼食の時間となり、エネドラと午前中のボーデの取引の振り返り。

 

「今回の取引はかなり上手くいったのではないか?

 次回の取引の際に定期購入の取引を書面にすれば安定的な収入が見込めるよな」

「そうですね。

 前から旦那様と議論していた

 鏡と石鹸のセット販売の件をカシア様に認めていただけたのが大きかったですね」

 貴族を前に敢然と交渉したエネドラに感謝だ。

 

 俺の方はカシア様の気迫に押されてタジタジだったし。

 後は、ハルツ公の巻き返しに注意が必要だがカシア様を攻略済だから、こちらのペースで取引が進められるかもしれない。

 

「鏡の方は定期販売に拘ってはいないが石鹸の販売促進のために

 鏡の値段を1万ナールから8000ナールに下げて、

 石鹸1セットと合わせて1万ナールで販売する販売方法もあるかな。

 期間限定で1年間として、その1年で石鹸を広く普及させてしまうという手だ」

「なるほど、確かに目的が石鹸の普及なら、良い方法かもしれませんね」

 貴族女性なら一度でも我が家の石鹸を使えば他の石鹸を使う気にならなくなるかもしれない。

 

 それだけ、拠点構築スキルの効果で品質が上がった石鹸は中毒性があると思う。

 なんか、ヤバい薬の売人のような考え方だが。

 

「後は一度販売したお客様からどれだけ追加の注文があるかだよな。

 あの箱の効果がどれほどあるのかという点もあるけど」

「はい。私の予想ではかなり期待できる気もします。

 なので、貴族用石鹸の量産は少しペースを上げようかと思っています」

 気合が入ってるな。

 

 今日の取引は彼女の感覚でも、それだけ上手くいったということか。

 

「無理のない範囲でな。家の増築と人員の増加も考えていこう」

「はい。楽しみです」

 楽しいのが一番だ。

 

 くれぐれも自重を・・・・・・とは言わないけど。ブーメランで返ってくるから。

 取引の結果は成功も失敗もあるだろうけど、過程も含めて楽しんでほしい。

 

 午後の探索に向けて、自室に戻って準備することにした。

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