玄関に迷宮組が集合したところで、まずはターレ迷宮の入口に向かった。
明日からは真面目に攻略するが、今日まではいつものアリバイ作りだ。
「今朝、ボーデの城の方に行ってきたよ」
「そうですか、伝言したのにいつまでも顔を出されないとこちらも困りますので助かりました」
なしのつぶての状態だと、『お前は何を伝えたのだ!』と上司にでも怒られるのだろうか。
「14階層まで到達したのだけど・・・・・・」
「案内をお願いします!」
「ここの迷宮って俺達以外に見かけないけど・・・・・・」
「そうですね。私もここ10日ぐらいは貴方達しか見てないですね。
有名な盗賊が入ってたという噂が広まってしまったので、
しばらくは貴方達だけかもしれないですね」
俺達以外の奴等が来ることはあるのだろうか。
騎士団員を14階層に案内して、規定の料金を受領。
いつも通り、彼は早々に立ち去っていく。
他に誰も来ないのに、ずっとあの場所で立ち続けているのも大変だろうな。
まあ、見張りとはそうしたものなのだろうけど。
たまにモンスターが出てくることがあるのだろうか。
そんな光景、この世界に来てから見たことないのだが。
ヴィルマ達が焦れてきたので、ベイルの1階層の中間部屋にワープ。
「主、ここは?」
「ベイルの1階層だ」
ヴィルマの顔にはあからさまに残念そうな表情が浮かんだ。
「今更、1階層?」
「そうだ」
イレーネも不機嫌そうな顔。
「今日の魔物部屋の殲滅は俺抜きでやってもらう」
「主抜き!」
「あたしらだけで!」
「ユキムラ君いないの?」
「大丈夫なのでしょうか?」
四者四様の反応。
「そのために、まずは俺抜きの状態で、1階層のモンスターを一匹ずつみんなに倒してもらう」
「ふーん」
まずは、俺抜きでどこまで戦闘能力が落ちるのかを確認させてもらいたい。
「アミルの今のジョブは鍛冶師ではなく、冒険者だ。
俺ではなくアミルにパーティを組んでもらうからな」
「なるほど。分かりました」
アミルの顔は少し緊張しているのが見て取れる。
中間部屋から出て、魔物部屋の入口に向けて歩き出した。
魔物部屋の入口に辿り着くまでにニードルウッドと四人が一人ずつ戦った。
ニードルウッドと生まれて初めて戦うオリビアを含めてヴィルマ、イレーネ、アミルの四人とも一撃で倒した。
俺のパーティ効果がなくても、一階層ぐらいのモンスターなら一撃なのか。
四人のジョブの効果は、
ジョブ 百獣王
効果 敏捷大上昇 体力中上昇 器用中上昇
スキル クリティカル発生 ビーストスラッシュ
ジョブ 刺客
効果 知力中上昇 精神中上昇 敏捷小上昇
スキル 状態異常確率アップ 状態異常耐性アップ クリティカル発生
ジョブ 竜騎士
効果 体力中上昇 体力小上昇 体力微上昇
スキル 二刀流 クリティカル発生 ダメージ軽減
ジョブ 冒険者
効果 体力中上昇 精神小上昇 器用微上昇
腕力上昇系の効果はない。
素の攻撃力に加えて、クリティカル発生のスキルが多少有利になる程度だ。
ヴィルマの剣は、
激情のダマスカス鋼剣(攻撃力2倍、麻痺添加、HP吸収、空)
イレーネの剣は、
硬直のエストック(石化添加、攻撃力2倍、HP吸収、空)
オリビアの二本の槍は、
激情のダマスカス鋼槍(攻撃力2倍、詠唱中断、HP吸収、空)
激情のダマスカス鋼槍(攻撃力2倍、詠唱中断、HP吸収)
アミルの槍は、
強権のダマスカス鋼槍(詠唱中断、HP吸収、攻撃力2倍、空)
いずれも攻撃力2倍のスキルが付与されているので、そのアドバンテージはあるのだろう。
1階層とはいえ、この状況で魔物部屋に立ち向かうことになる。
魔物部屋の入口の傍まで来た。
今回、四人はこの入口から侵入してもらう予定。
入口はパッと見ても分からないので索敵で確認して、『ここに入口がある』と伝えている。
さて、後は事前の下見だ。
下見するのは未経験の二人だけ。
索敵で魔物部屋の中をマップで確認すると満員御礼の状態だ。
「ヴィルマとイレーネは前に入ったことあるから良いよな。
今回は未経験のアミルとオリビアに事前に見てもらう。
ヴィルマとイレーネの二人は悪いが、ここで待っていてくれるか」
「分かった、主」
イレーネも無言で頷いている。
前に自分達がやってもらったことを思い出したのか。
「じゃあ、アミルこっちに来てくれ」
彼女を招き寄せた。
アミルとオリビアの二人は俺のパーティに再度加入させてある。
「オリビアは、ここで大人しく待っていてくれよ。絶対に付いてきてはダメだからな」
「むぅ、なんだかよく分からないけど、分かったよ。ユキムラ君」
もはや、迷宮組といる際にはおおっぴらに『ユキムラ君』呼びしているし。
人前ではしないでと伝えていたはずなのだが。
「さて・・・・・・っと」
「えっ」
アミルをお姫様抱っこした。
小柄とはいえ、ダマスカス鋼のプレートメイルを装備したアミルを軽々と抱っこできる自分の腕力に驚きだ。
装備品だから、小柄の者が装備していようと大柄の者が装備していようと重さは同じなのだが、ダマスカス鋼のプレートメイルはゴツイな。
お姫様抱っこをするのには向いていない装備品だ。
「もう一度言っておくが、ここでちゃんと待っていろよ、オリビア」
「次は私が抱っこしてもらえるのよね?」
別に抱っこすることが目的ではないのだが。
「アミル、これから魔物部屋に一度入って出てくる。
魔物部屋がどんな所なのかを事前に確認するためで危険は別にない。
いきなり突入して戦うよりも一度自分の目で見ておいた方が良いからな。
少し驚くと思うが、暴れずにしっかりと見ておくんだ」
「は、はい。分かりました」
プレートメイル越しだが、彼女の体が少し緊張で強張った気がした。
「では、入るぞ」
「・・・・・・」
無言で彼女が頷いた。
索敵でモンスターの手薄い場所にワープゲートを繋いで、ゲートをくぐった。
部屋に入ると、一面、ニードルウッドの大群。
いつ見ても、40匹前後いるので圧巻の光景。全部Lv1なのだが。
「!・・・・・・」
アミルは声は発せずに、体に緊張が走るのが分かった。
徐々にこちらに向けてニードルウッドの大群が押し寄せてきたので、後ずさりしながらゲートに戻った。
「あれが・・・・・・魔物部屋なのですね。あんな大群を相手に戦うのですか」
「そうだ、怖くなったか。嫌なら止めても構わない」
俺の言葉にアミルは首を横に振った。
「大丈夫です。いつかは戦わなければならないと思っていたので」
「そうか、命のやり取りなのだ。虚勢を張らずに無理だと思ったら諦めるのは恥ではない」
再度、アミルは首を横に振った。
「大丈夫です」
彼女の目にも覚悟が見て取れた。
「次はオリビアだ」
「はーい。ユキムラ君お願いね~」
能天気に近づいてきた。
この巨体をお姫様抱っこするのか。
「いよっ・・・・・・っと」
「きゃ~」
オリビアからは緊張は1ミリも感じ取れない。
嬉しそうな笑顔を俺の顔に近づけてくる。
なんだか迷宮バカップルになった気分だ。
「魔物部屋に入るぞ。ちゃんと部屋の中を見ておくんだ」
「うん」
今度は少し緊張が感じられたか。
「入るぞ」
「・・・・・・」
無言で頷いたのを確認して、モンスターの手薄な場所から侵入した。
「!」
彼女の体にもさすがに緊張が走ったようだ。
「これが、魔物部屋・・・・・・」
少しはこれから置かれる状況が理解できたようだな。
ゆっくりと近づいてくるニードルウッド達を見ながら、後ずさりしてゲートをくぐって魔物部屋から退散した。
彼女を降ろして、再度確認。
「あれが魔物部屋だ。これから俺抜きで突入して戦うのだが大丈夫か?
怖くないか?今なら止めても構わないぞ」
「お姉ちゃんに任せてもらえれば問題ないよ~」
先程の緊張はなく、虚勢を張っているようにも見えない。
本当に自信があるのだろうか。
いざという時のために助けに入るつもりはある。
だが、パーティから外れてしまうと、全体攻撃魔法は使えない。
別パーティだと、俺の魔法攻撃のダメージを喰らってしまうから。
超速スキルで全滅させていくしかない。
禰宜の全体手当もパーティライゼイションも使えない。
だから念のため、沙門のジョブをセットしてある。手当をかけるしかない。
ニードルウッドLv1のダメージはほとんど通らないだろうし、状態異常対策もしてあるから万が一にも毒化することはないだろう。
それでも命の危険はある行為だ。
「もう一度確認するが、本当に俺抜きで魔物部屋に挑む覚悟はあるか?」
「主、心配するな。全部倒すから」
「自分達の力を見せる時」
「お姉ちゃんに任せて~」
「ご主人様、大丈夫です」
自分で提案しておいてなんだが懸念はある・・・・・・が四人がやるというのならやらせるか。
「分かった。じゃあ、四人で作戦を決めてくれ」
「わ、分かりました」
四人で決めると言っても、作戦を指示するのはアミルだ。
彼女の表情が強張っているのが分かる。
魔物部屋に突入する作戦を指示するのだから、今までの戦闘指示に比べると責任重大だ。
「いつも通り、中央をオリビアさん、右をヴィルマさん、左をイレーネさんでお願いします。
私は戦線が崩れそうな所を支援しますし、攻撃が通りそうな場所があれば
槍で攻撃を仕掛けます。
侵入したら、一番近い角の場所まで四人で固まって移動します。
モンスターに攻め込まれる箇所を限定するために、角で固まって戦線を維持します。
突入する順番は・・・・・・」
ここでアミルが言葉を飲み込んた。
「私から入るから心配しないで」
オリビアがアミルの言葉を受け取った。
リーチもあり、破壊力もある槍二刀流は初っ端の戦端を開くのには適任だ。
だからと言って、魔物部屋みたいな危険な場所に初めに飛び込めと指示するのはアミルでも躊躇われたのだろう。
それを察してなのか、空気を読まずになのかは分からないがオリビアが立候補した。
この娘は、この前まで村人ジョブだったのに勇敢な奴だな。
そして、必要以上の気負いも感じられない。
「二番手はあたしだ」
「三番・・・・・・本当は一番が良いのだけど」
「分かりました。皆さん、お願いします。頑張りましょう」
ヴィルマとイレーネが続き、アミルの作戦が決まった。
作戦と言っても、この四人には魔法攻撃もないし、治癒魔法もない。
ダメージを与えて、四人の武器に付与されているHP吸収のスキルで治癒も兼ねる。
薬を飲む暇もないはずだろうから。
アミルが俺の顔を見たので頷いた。
「突入のタイミングは任せるので、自分達だけでやってみてくれ」
「はい、分かりました」
アミルも覚悟を決めたようだ。
俺の方は四人の突入後に索敵のマップで確認して、戦線が崩れていないかチェックだ。
万が一の時には助けに入る。
「突入するよ」
オリビアは三人の方に向いて宣言した後、悠然と魔物部屋に入っていった。
索敵のマップで確認すると、侵入した直後から近くの赤い点を次々に消して、スペースを確保し始めた。
彼女の周りの半円の範囲の赤い点が消えていく。
三人も入口から侵入して、当初の予定通りの配置について戦線を維持している。
ワープゲートを入口の傍に繋げて、顔だけ出して、中の戦況を確認。
一番近くの角に向けて移動し始めた。滑り出しは上々のようだ。
オリビアは中央に陣取りながら、移動先のニードルウッドを優先的に倒している。
イレーネが角の方に向かい、ヴィルマが殿を務め、アミルが綻びのないようにフォローしている。
角に辿り着いた時には、残りのモンスターは20匹程度までになっていた。
これなら大丈夫か。
近づいてくるニードルウッドをオリビアの二本の槍とヴィルマ、イレーネの剣戟であっという間に煙に変え、敵の数が激減していく。
やがて、全てのモンスターを殲滅した。
自分で殲滅させる何十倍も緊張した。1階層だけど。
魔物部屋の中に入って、四人を労った。
「お疲れ。俺抜きで全滅させられたな」
「こいつら一撃で倒せるからな。主、全然問題なかったぞ」
「御館様は心配し過ぎ、このぐらい大したことない」
「お姉ちゃんに任せて大丈夫だったでしょ?もっと頼ってくれても良いから」
「き、緊張しました・・・・・・けど、なんとかなりましたね」
皆、いつもより饒舌になってるから、それなりに緊張していたのだろう。
「ああ、皆、凄いな。見直しぞ。
さあ、ドロップ品を拾うか。ゆっくりで構わないぞ」
何もしなかった俺は率先して、ブランチを拾い始めた。
特に全滅したパーティもいなかったようだし、モンスターカードも落ちてなかった。
ドロップ品は全て、アミルのアイテムボックスに収納。
「それで、これで終わりにするか?それとも2階層の魔物部屋に挑戦するか?」
「次もやりたい」
「やる」
「もちろん」
「みなさんがそう言うのなら」
我が家の娘達は好戦派が多いようだ。
2階層はグリーンキャタピラーの糸攻撃に注意が必要なのだが、オリビアの槍で上手く詠唱を中断しまくって事なきを得た。
3階層はコボルトが増えて逆に楽になってしまい、若干2名が不満気な様子。
4階層になり、ここで一撃で倒せなくなった。
だが、オリビアの槍二刀流が炸裂して、襲いくるミノ達を槍でしばき倒す。
ワープゲートから首だけ出して確認していたのだが、ダマスカス鋼の槍をドラムスティックのように上から下へ断続的に振り下ろしてミノを叩きのめしていた。
オリビア・・・・・・怖ろしい娘。
5階層以降も四人とも変なスイッチが入ったように、魔物部屋のモンスターを殲滅しまくる。
階層が上がるに連れて、40匹という集団が徐々に手強くなってきているのだが、それがなんだか楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
結局、11階層の魔物部屋まで殲滅して、今日の魔物部屋殲滅ツアーは終了にした。
12階層以降は更に一段階強くなるので止めておいたのだが、まだ先に進みたさそうでブレーキをかけるのが大変だった。
魔物部屋なのにアレだが、結構楽しめたみたいだ。
明日からの俺抜きの階層攻略に向けて、自信に繋がると良いのだが。
その後は、余った時間を使って俺だけでパワーレベリング用の魔物部屋殲滅作業。
クーラタルの34、29、27、24階層の魔物部屋を殲滅。
ラファとヘルミーネのレベル上げが主目的だ。
ラファの巫女をLv42、ヘルミーネの冒険者をLv29まで上げたところで終了とした。
・・・・・・
夕飯と風呂を終えて、参加者が集まったので会議を開催。
「明日の予定だが、迷宮攻略の部隊を再編成しての慣らしになる。
俺の部隊はターレの22階層、アミルの部隊はクーラタルの22階層の攻略を行う。
一日完全に部隊を任せるので頼むぞ、アミル」
「はい。頑張ります」
とはいえ、俺は部隊編成のスキルでアミル達の部隊をマップで確認しながら、ターレの迷宮を攻略するけどね。
まる一日アミルに任せるのは初めてだから、こっそりフォローだ。
「午後のターレ迷宮での攻略が終わったら、クーラタルの世話人の店に行って、
この屋敷の増築工事の相談をしようと思う。
エネドラも参加できるか?」
「はい。大丈夫です」
どんな提案をオネスタさんがしてくれるのか楽しみだ。
「ご主人様、護衛部隊のスキル融合防具ですが、
四属性の魔法耐性のダマスカス鋼の額金と状態異常四つの耐性を融合した竜革のグローブが
7セット用意できましたので、明日からの迷宮攻略に利用可能です」
「それは・・・・・・頑張ったな。再編成後の迷宮探索開始時に間に合うとは思っていなかった。
迷宮組に参加するラファとフラウスの二人分だけ間に合えば良いと思っていたのだが。
アミル、ありがとう。
これで護衛部隊の方も安心して迷宮探索に臨める」
彼女の方もやり遂げた感が見えて笑顔だ。
「この後は護衛部隊の武器の方も強化していきたいと思いますので、
融合するスキルと武器について明日以降、相談させてください」
「護衛部隊の戦い方も見ながら、どのスキルを融合した方が良いか考えてみたいと思う。
レドリックにも相談しながら決めていきたいと思う」
俺の言葉に二人も頷いた。
「明日から編成が変わって初めのうちはバタバタするかもしれないが、よろしく頼むぞ。
これで本日の会議は終了にする。
明日に備えて、ゆっくり休んでくれ」
お休みの挨拶をして、各自が自室に戻っていった。
俺も自室に戻って、今日のまとめ。
■情報▶
■人材育成/採用(ユキムラ)▶
■軍事(ユキムラ/レドリック)▼
①部隊編成(2/6)
ユキムラ隊▼
(ユキムラ(L)、ミラ、マヤ、モニカ、レドリック、レイモンド) ※メンバは適宜入替
アミル隊▼
(アミル(L)、ヴィルマ、イレーネ、オリビア、ラファ、フラウス)
②スキル装備品
⇒護衛組の武器について強化する融合スキルを検討する
■商業/取引(ユキムラ/エネドラ/カラダン)▶
■開発(エネドラ/カラダン)▶
■生産(チクルス/アミル)▶
■その他/クエスト▼
①カードハンターとの取引(ベイル)
⇒コボルトハンター経由で依頼中(次回9日後、訪問予定)
②ダマスカス鋼工房の対応(ドブロー)
⇒頑強のダマスカス鋼鎧を3日前に納品済。(次回、候補未定:需要はあるとのこと)
③ゴッゼル士爵への対応(ベイル)
(1)ゴッゼル士爵家支援対応
⇒士爵家へ支援策(装備、住居、生薬)の契約を締結。
⇒ドロップ品、モンスターカード等を逐次引取り中(記録簿管理)
(2)アイリス家支援対応
⇒三人の装備品を納品済。個別取引は随時実施中。
④剣術指南所の対応(ターヘラ)
(1)ケリー&マリーの奴隷契約対応
⇒ターヘラの商店との食料移送契約は締結済(10日後に延長契約)
(2)業務提携
⇒子供達の習熟作業完了。正式作業開始
⑤ベイル旧宅の商店開業準備
(1)カラダンの商人ギルド加入(ザビルの商人ギルドの予定)
(2)従業員育成
⇒ピコ、ビンス、リックは冒険者ジョブ取得済
⇒ピコは防具商人ジョブを取得済
⑥ハルツ公爵領迷宮探索依頼(ボーデ、ハルバー、ターレの迷宮のいずれか)
⇒ターレの迷宮探索中(14階層まで到達報告。21階層まで攻略済、次は22階層から)
⑦鏡工房の装飾品注文対応(ペルマスク)(対応中)
⇒7日前に瑪瑙のブレスレット2点を納品(70万2000ナール)
⇒琥珀のネックレスはブレスレットの反応を見て注文される予定
⑧ハインツ討伐対応
⇒ターレの迷宮12階層でハインツ一味10名を討伐
⇒ハルツ侯爵に討伐報告とインテリジェンスカード提出済
⇒決意の指輪のみ本日提出。公爵側で防具鑑定を行ってもらう(報奨は未定)
明日から部隊を再編成しての迷宮攻略。
アミル達迷宮組が俺抜きでどのようになるのか、期待半分、不安半分。
彼女達を頼りにしていると言葉では伝えているのだから、見守るしかないのだが。
でも、クーラタルの22階層の魔物部屋だけはこっそり殲滅しておこうかな。
彼女達迷宮組が俺抜きで迷宮攻略をすると決めたので、今日の午後は魔物部屋の殲滅訓練を行なった。
今日は11階層までだったが、それでも全くやってないよりはマシだと思っている。
23階層以降ではモンスターの強さがアップするので、魔物部屋の殲滅はまだ彼女達だけでは困難だと思っている。
だから、不用意に壁に触れずに魔物部屋に誤って入り込まないようにしてほしい。
それでも人間だからミスはあるので、今日の訓練を生かして少しでも耐えられるようになってもらえれば。
時間を稼いでくれれば、俺が駆けつけることも可能だと思いたい。
今日の訓練はどちらかというとそのためのものだ。
魔物部屋を経験していれば、不意の事故でも少しは上手く立ち回れるだろう。
フラウスとラファは経験していないのだが。
(コン、コン・・・・・・)
・・・・・・
額に汗が薄っすら浮いたヴィルマを抱きしめて、クールダウン。
終わった後の彼女は甘えんぼモード全開で、かなりお気に入りなのだ。
次の戦いに移る前に、前から少し気になっていたことを確認。
「ヴィルマって、帝国との小競り合いで捕虜・・・・・・戦争奴隷になったって聞いたけど、
隣国の家族とは連絡取らなくても大丈夫なのか?」
「うん。実家の方は兄者が上手くやってると思うから。
あたしのことは死んだと考えていると思う」
それで本当に連絡取らなくても良いのだろうか?
「兄貴とは仲が良くなかったのか?」
「別に仲が悪かった訳ではないけど、兄者とは戦いのときによく喧嘩してたから」
戦う前に喧嘩してたら、勝てる戦にも勝てないな。それで捕虜になったとか?
「あたしは強そうな奴を見つけると、そいつと戦いたいのだけど、
兄者は『女は大人しく控えていろ』って言うんだ。
戦いで勝つためには、強い奴をやっつけるのが手っ取り早いと思うのだけど」
「まあ、どちらが良いのかは微妙だな」
敵将の首を取れるのなら良いが、突出して包囲されても困るし。
「どこかの騎士団に属してたのか?」
「いや、我が家は戦士系の家系で戦士団・・・・・・戦士家だった。
でも全員が戦が得意という訳でもなくて、特に兄者は戦いよりは
だから、よく戦いになると喧嘩になった」
戦士家だから全員が脳筋という訳ではないのか。
「捕虜になったということは、帝国に強い奴がいたのか?」
「いや、戦った奴はそれほどでもなかったと思う。
凄く強い奴がいるって聞いてたけど、戦場で会うことはなかった」
へぇ。そんなに強い奴がいるのか、会って鑑定してみたいな。
「でも、捕虜になったのだろう?」
「同じ戦士家の仲間が捕まったので、降伏するしかなかった。
でも、その後に仲間を逃がすために暴れて・・・・・・最後に逃げ遅れて捕まった。
そういえば、最後にあたしを捕まえた奴は強そうな男だった」
なんかイレーネの話と似ているな。
「そいつ以外は皆、弱そうだったと?」
「そうだな。たくさん倒したけど、顔も覚えていない。弱かったから」
強くないと顔も覚えてもらえないのか。
「主は奴隷商館であたしを簡単に倒した。強い主はあたしの憧れだ」
「そ、そうか」
直球だな・・・・・・こんな素直に言われると胸がドキドキしてしまう。
「迷宮に行けないとつまらないか?」
「裏庭で訓練ができるから。この前入ったオリビアは強いし、イレーネも強い。
この家には主ほど強い奴はいないけど、あたしと同じぐらい強い奴はいる。
だから、退屈しない。
でも、迷宮に行くと強くなれるから迷宮にも行きたい」
考え方の根本が強さなのか。まあ、この娘はそれで良いのか。
「そんなに強くなりたいのは何故なんだ?」
「分からないけど、主に追いつきたいから?
主の横にいつもいたいと思ったら強くならなきゃならないから?」
これまた直球。もう、俺の方が赤面しそうだ。
さっきから、俺の気持ちを鷲掴みにしてくるな。
「主はなんで強くなりたいんだ?」
「俺か?俺は自由でいるためかな。
誰にも束縛されないようになりたいと思ったら、強くなるのが手っ取り早い」
彼女は俺の頭を抱えて、胸に押し付けてきた。
とても気分が良いけど、もう少し我慢。
「主は自由でいたいのか。あたしも自分の国の面倒事から自由になった。主のおかげだ」
「俺のおかげじゃなくて、お前が自分で行動したからだろう?」
まあ、でも俺が奴隷として購入したことも少しは貢献してるのかな。
「あたしは主の下でもっと強くなる。主の強さに付いていきたいと思う」
「そうか、俺に付いてくるか」
ヴィルマの強さと俺の強さはちょっと違う気もするが、共通点があれば別に良いか。
「明日から、俺と別れて迷宮に入ることになるけど、皆と一緒に必ず生きて帰ってこいよ。
無茶して死ぬなんて許さないからな」
「うん、分かった。主の見てない所では死なないよ」
いやいや、見てる所でも死んでもらっては困る。
「だから、主抜きでもあたし達が戦えるとわかったら、また一緒に迷宮に行こう」
「そうだな」
ヴィルマから迷宮デートのお誘いの予約が。
そういえば、今朝、ラファにも誘われたな。
なんかモテ期とは違うのだけど・・・・・・うちの娘達は好戦的ということか。
・・・・・・
お読みいただき、ありがとうございました。
ヴィルマの閑話を作ろうとしたのですが思いの外、苦労してしまい閑話作成はいったん断念しました。
その代わり、ピロートークの中で過去を語らせるという形式に変更して本話を作りました。
この後、ヴィルマの閑話を別に作るかは未定です。