朝起きると、ベッドの中でヴィルマから朝練のお誘い。
もうちょっと艶っぽいお誘いの方が良いのだが。
「分かった。先に行って待っててくれ」
「主も急いで!」
そそくさと部屋を出ていく彼女を横目にパーティを解散。移動を悟られないように。
急いで着替えて玄関に。
そして、修練場には行かずにゲートを開いて、クーラタルの22階層の中間部屋に。
マップで魔物部屋の状態を確認。さすがに多いな。
魔物部屋近くの通路にワープで移動。
今日はアミル達が22階層の攻略を行うので、先に魔物部屋を殲滅しておく。
魔法でチマチマ削っておいて、後半は超速スキルで撫で斬りにしながら魔法も連発。
サクッと全て倒して、急いでドロップ品を拾う。
急いでる時に限って、モンスターカードがドロップ。
貝のモンスターカードか。考察は後回しにして、急いで戻ろう。
朝一で潰しておけば一日ぐらいで増える数なら、迷い込んでも彼女達で殲滅できるだろう。
魔物部屋から自宅の玄関にワープ。
急いで修練場に向かった。
「主、遅い!」
「悪い、悪い。着替えに手間取ってしまって」
適当な嘘を言いながら、訓練に合流。
遅刻したからではないが、今日もミッチリ模擬戦の行列に対応した。
・・・・・・
朝食を終えて、再編成後の部隊が玄関に。
アミル達は迷宮組にラファとフラウスを加えている。
「アミル、皆のことを頼むぞ。焦らずに安全重視でな」
「はい。分かりました。ご主人様もお気を付けて」
アミルはそれほど緊張しているようには見えない。
今日はアミルがリーダであり、冒険者のジョブもセットしてある。
彼女達の部隊は玄関の絨毯から冒険者ギルドに移動していった。
「じゃあ、俺達も行くか」
俺の部隊には、ヘルミーネ、ケリー、ミラ、モニカ、レドリックが加わっている。
人選の方はレドリックに一任して、俺の方からは特に希望は出していない。
ケリーとマリーを分けているのは、何か意図があるのだろうか。
ターレの冒険者ギルドに繋いで、迷宮の入口へと向かった。
五人ともターレは初めてなので、エルフ領の少し寒い街をキョロキョロしながら歩く。
俺の方はクーラタルのアミル達が気になるので、部隊編成のマップを開いて確認。
22階層を歩き始めたばかりなのだろうか。
まだ戦っている様子もないし、青い点の数にも当然変化はない。
やがて迷宮の入口に到着して、いつもの騎士団員の兄ちゃんに挨拶。
「今日は六人なのですね。珍しい」
「そうだな。こんな時もある。それで、15階層に到達したのだけど・・・・・・」
「もちろん、案内をお願いします!」
珍しいも何も六人で来たのは初めてではなかったか?
15階層に騎士団員の兄ちゃんを案内して、規定の料金を受領。
今日は俺も兄ちゃんと一緒に入口へと一度戻った。
六人で来て一人レドリックを入口で外したので、ピックアップするためだ。
レドリックを再度加入させ、兄ちゃんに会釈をして15階層に戻った。
「じゃあ、22階層に移動するぞ」
ゲートを開いて、22階層の小部屋に移動した。
「指示はレドリックの方で出してくれ。ラファの魔法は普段はどうしているのだ?」
「ラファは自分の判断で魔法を放ってます。ご主人様もそれでお願いします」
「分かった。俺の魔法は詠唱が早いので最後の魔法の名前だけ聞き逃さないようにしてくれ」
ボーナスポイント設定は詠唱省略だけど、魔法の名称だけは口頭で叫ぼう。
前衛はケリー、ミラ、モニカの三人で、後ろにレドリックとヘルミーネと俺の三人。
槍持ちはヘルミーネだけだ。
モニカとレドリックは適当に入れ替わるらしい。
<前衛>
ケリー(狼人族 ♀ 15才)
獣戦士Lv32
装備
激情のダマスカス鋼剣(攻撃力2倍、MP吸収、空2) 竜革のジャケット(空3)
竜革の靴(空) 耐火のダマスカス鋼額金(火耐性、水耐性、風耐性、土耐性)
耐毒の竜革グローブ(毒耐性、石化耐性、睡眠耐性、麻痺耐性)
身代わりのミサンガ
ミラ(ドワーフ族 ♀ 15才 奴隷)
鍛冶師Lv42
装備
激情のレイピア(攻撃力2倍) 鋼鉄の盾 竜革のジャケット(空3) 竜革の靴(空2)
耐火のダマスカス鋼額金(火耐性、水耐性、風耐性、土耐性)
耐毒の竜革グローブ(毒耐性、石化耐性、睡眠耐性、麻痺耐性)
身代わりのミサンガ
モニカ(人間族 女 20才 奴隷)
剣匠Lv43
装備
エストック(空) 鋼鉄の盾 竜革のジャケット(空3) 竜革の靴(空3)
耐火のダマスカス鋼額金(火耐性、水耐性、風耐性、土耐性)
耐毒の竜革グローブ(毒耐性、石化耐性、睡眠耐性、麻痺耐性)
身代わりのミサンガ
<後衛>
レドリック(人間族 男 25才 奴隷)
剣匠Lv48
装備
エストック 鋼鉄の盾 竜革の鎧 竜革の靴(空3)
耐火のダマスカス鋼額金(火耐性、水耐性、風耐性、土耐性)
耐毒の竜革グローブ(毒耐性、石化耐性、睡眠耐性、麻痺耐性)
身代わりのミサンガ
ヘルミーネ(狼人族 ♀ 26才 奴隷)
冒険者Lv29
装備
強権のダマスカス鋼槍(詠唱中断、HP吸収、攻撃力2倍) 竜革のジャケット(空3)
竜革の靴(空3) 耐火のダマスカス鋼額金(火耐性、水耐性、風耐性、土耐性)
耐毒の竜革グローブ(毒耐性、石化耐性、睡眠耐性、麻痺耐性)
身代わりのミサンガ
五人には四属性の魔法耐性防具と状態異常耐性防具が標準で配備されている。
アミルが頑張って、この日までに用意してくれたもので各人に今朝配布した。
一方で、ケリーとヘルミーネ、ミラの三人にはスキル融合された武器を配備しているが、レドリックとモニカは通常の武器だ。
この二人は剣聖のジョブ取得が近いので、上位のジョブに上がったら武器を見直す予定だ。
俺の方は、いつもの遊び人や刺客、博徒を外して、沙門、禰宜、聖騎士をセットした。
追加した3つのジョブは育成用と治療魔法によるサポートのため。
百鬼夜行Lv65 勇者Lv65 英雄Lv65 魔道士Lv65 沙門Lv49 禰宜Lv49 聖騎士Lv49
索敵でターレの迷宮のマップを開き、左側には部隊編成のスキルでアミルの部隊のマップも開いて並べながら歩く。
「まず、この階層のメインのモンスターはサラセニアだ。
サラセニア、ビッチバタフライ、グラスビー、ピッグホッグ、フライトラップの順に
出現数が多いはずだ。
俺は戦闘の際には雷魔法を使うが、剣を使った戦闘には参加しない予定だ。
雷魔法はたまにモンスターを麻痺状態にすることがある。
麻痺になったら攻め時だが、麻痺は自然に解除されることがあるので油断しないようにな。
治療は俺が適宜魔法をかけるが、必要な時には手を上げてくれ」
俺の言葉に皆が頷いた。
クーラタルでも22階層までは攻略しているから、この階層のモンスターも全て戦ったことがあるものばかりだ。
「では、出発します」
「レドリック、俺がいるからって丁寧な言葉でしゃべる必要はないぞ。
いつも通りの口調で良いから」
彼は首肯して、歩き始めた。
と言っても、先頭は前衛陣のケリー、ミラ、モニカの三人だ。
索敵で前方に3つの赤い点が見えてきた。
初戦はサラセニアが2匹とグラスビー1匹か。
飛行するグラスビーが一番初めに接敵してきた。
空中をブンブンと飛び回って鬱陶しい奴だ。
槍持ちのヘルミーネが前に進み出た。ミラとモニカが両翼に動き、ケリーが下がった。
身長がある三人で後ろに通さないということだろうか。
ヘルミーネが槍を鋭く突き出して、グラスビーを叩き落とした。
一発で当てたな。なかなかの腕前。
そのままグラスビーを槍で押さえつけ、横からミラとモニカが剣でひたすら打ちのめした。
サラセニアが魔法の射程に入った。
「サンダーストーム」
雷魔法を一射だけ。
地面に転がされたグラスビーが麻痺したようだ。サラセニアの動きは止まらない。
ヘルミーネもグラスビーへの攻撃に入り、ケリーも加わった。
ケリーはビーストアタックも使って・・・・・・グラスビーは煙に変わった。
やはり迷宮組と比べると攻撃力は落ちるか。
それでも息の合った攻撃で特に問題は感じられない。
サラセニアが二匹、近づいてきた。
中央にミラが立ち、ケリーが右側、モニカが左側に付いた。
特に声を掛け合う訳でもなく、阿吽の呼吸のようだ。
ミラがやや突出した位置についている。
タンク役をこなすつもりか。
ミラは左手に鋼鉄の盾を持ち、右手に激情のレイピアを持っている。
レイピアで右側のサラセニアを牽制しながら、左側からの攻撃を盾で防いでいる。
サラセニアの枝の攻撃を盾でシャットアウトして隙を見せない。
迷宮組でもイレーネが盾を持っているが、彼女は盾で受けるということをほとんどしない。
避けきれなかった攻撃を受け流す時に使う程度だ。
護衛部隊と迷宮組では戦闘スタイルが違うのだな。
それにしても、ミラがマヤと共に護衛部隊に入ったのはつい最近だ。
ジョブのレベルも低かったのに、この短期間でここまで成長しているのか。
サラセニアの消化液をかけてくる攻撃にも特に慌てることなく、落ち着いて躱している。
消化液はさすがにそのまま受けるのではなく躱すが、下がらずに前に出る。
立ち位置はほとんど変えず、攻撃に押されて下がり過ぎることもない。
安定したタンクが前線を支えているので、ケリーもモニカも一方的に攻撃を加えている。
「サンダーストーム」
雷魔法をもう一発放つ。
ケリーの前のサラセニアが麻痺した。
彼女はサラセニアの間をすり抜けて、麻痺したサラセニアの後ろから一方的に攻撃を開始した。
ヘルミーネも同じくすり抜けて、後方の遠間から麻痺したサラセニアに攻撃。
レドリックも加わった。一気に潰す気か。
ヘルミーネは淡々と重い突きを繰り出す。
ケリーとレドリックはスキル攻撃で破壊力のある攻撃を積み重ねる。
サラセニアは麻痺が解けることなく、煙と変わった。
あとはミラが攻撃を引き受けているサラセニアだけだが、五人に取り囲まれてしまったので間もなく煙となった。
護衛部隊の攻撃中も気になってしまい、チラチラと迷宮組の方のマップを確認。
時間は少しかかっているようだが、あちらも順調に歩を進めているようでホッとする。
「終わったようだな」
「はい。雷魔法というのは便利ですね。敵が無力化されるので、戦いが一気に楽になります」
そうなのだよな。だから魔法の相性とかを考えず、ついつい雷魔法に頼ってしまう。
「ラファももう少し育成したら魔道士のジョブを得て、雷魔法を使えるようになるかもしれない」
「そうなのですか。まだ若いのに将来が楽しみですね」
ラファは確かに有望株だ。14才で魔道士とか笑ってしまう。
攻撃魔法も使えて、治癒魔法を使う巫女のジョブも高レベル。おまけに中距離だけど直接戦闘もできる。
まさにオールラウンダーだ。
ドロップ品を拾って次のモンスターへと歩き出す。
「体が軽い!」
「何か剣を振るう腕にも力がみなぎっているような・・・・・・」
ケリーとモニカの感想は俺のセブンスジョブの効果だろう。
特に勇者と英雄による底上げが著しいはず。
百鬼夜行も腕力の補正があるしな。
護衛組にそれだけ効果が上乗せされるということは、俺の抜けた迷宮組は戦力がダウンしているということだろう。
今までもヴィルマやイレーネは護衛組に加わって迷宮探索していたことがあるとはいえ、今はどのように感じているのだろうか。
左上に浮かぶアミル達の部隊のマップを見ながら考えてしまう。
前衛のモニカと入れ替わってレドリックが前に出た。
新しく加わった俺のために一通り腕前を披露してくれるのだろうか。
次の相手はサラセニア三匹にビッチバタフライ一匹。
移動速度が速いビッチバタフライが近づいてくる。
先程と同じくヘルミーネが前に出てビッチバタフライを空中から叩き落として袋叩き。
「サンダーストーム」
煙に変わる頃にサラセニア三匹が近づいてきた。
運悪くどれも麻痺しなかったようだ。
先程はミラが二匹を受け持っていたが、今度はどうするのか。
ミラは同様に前に少し出て、相手するのは二匹・・・・・・中央と右側。
左側はレドリックが受け持つようだ。
ミラに引き付けられたサラセニアにケリーが猛然と襲い掛かる。
とにかく連続で剣を叩きつけ、たまにビーストアタックを使う。
レドリックはサラセニアの攻撃を躱しながら、カウンターでエストックの刺突を入れ、隙をついてスラッシュも繰り出す。
ミラをタンクに据えて前線を維持しながら、先に片づける箇所を作って数的優位に持ち込んで殲滅させていくのか。
迷宮組のオリビアを中央に据えて戦うやり方に似てるな。
あれの下位互換という感じだろうか。
「サンダーストーム」
そうなると、この護衛部隊の強化すべきスキル融合はどう考えるか。
やはり、ケリー、モニカ、レドリックの剣に麻痺等の状態異常を付与するのが良いだろうか。
剣聖になると片手剣でも両手剣でも二刀流になるので、二本の剣に状態異常を付与するか。
状態異常の効果を与える確率が二刀流だと二倍になるから、イレーネの刺客ほどではないかもしれないが効果的な強化に繋がる気がする。
ミラはどうか。
タンクっぽい動きをするから、盾をダマスカス鋼製にしても良いかもしれない。
剣はこの前入手した激情のレイピアを使っているが、エストックにしてこちらも状態異常を付与する武器が良いか。
前衛陣は全て、ダマスカス鋼製にして、攻撃力2倍、HP吸収、麻痺添加を付与するか。
空きスロットが4つなら、MP吸収を付与してアクティブスキルを連発可能にするのも良いな。
そうなると、迷宮組のヴィルマやイレーネと同じ装備だよな。
違いがあるとしたら、剣聖が二刀流なので、状態異常の確率が少し増えるかもしれないこと。
そして、武器の重さを考慮して二刀流で両腕に持つ剣を片手剣にするか、両手剣にするのかという点か。
二刀流の武器なら、麻痺じゃなくて石化添加にする方がおもしろいか。
イレーネは俺の博徒に期待して石化添加を付与したが、手数を増やせるのなら博徒なしでも十分通用する気がする。
二刀流で手数を増やせるのだから、石化も有効かもしれない。
剣聖のジョブを得てレベルをある程度上げたら、エストックとダマスカス鋼の剣のどの組み合わせまでいけるか確認しよう。
片手剣、両手剣にいろいろスキル融合したものを用意して使ってみるのも良いだろう。
ヘルミーネやレイモンドのような冒険者で槍持ちの装備は今まで通りで問題ないか。
基本はアミルと同じ武器で、防具のみ種族特性で重たい防具にするか軽い竜革の防具にするのかといった違いか。
残り一匹になったので、魔法を放つのは止めた。
今回は雷魔法で麻痺にならなかったな。
外れる時は外れを引くと。
やがて、全てのモンスターが煙に変わった。
ドロップ品を拾って、また前に進む。
その間にも、アミル達の部隊のマップを確認しながら歩いていく。
あちらも、いつもよりは時間がかかっているのだろうが探索を無事に進めているようだ。
22階層はクーラタルで攻略済なのだから、俺が加わったぐらいでは特に問題が起きることもない。
俺のセブンスジョブの効果で攻撃力が増加している方が大きいのだろう。
魔法使いや治癒職の交代では、さほど連携の良し悪しは関係ないというのもある。
その後も順調に進み、中間部屋で少し休憩した後も探索を続行。
この階層は特に全てのエリアをクリアにする事は考えてない。
とはいえ、ボス部屋到達が最優先という程でもなく、午前中いっぱいキッチリ使って攻略すれば良いという感じだ。
歩きながら、ミラとも武器について意見交換。
ミラもジョブは鍛冶師だから、アミルと話をしていた時のことを思い出す。
「ミラは武器は剣がやっぱり相性が良いのか?」
「今は剣を使っているのですけど、実は槍にも興味があって・・・・・・。
オリビアさんが槍を振り回している姿を見て、槍を使ってみたいなと思っていて」
へぇ。オリビアか。
あいつの槍捌きは確かに凄いから、憧れるのは分からなくもないな。
前衛の中央で槍持ちか。確かにリトルオリビアって感じだ。槍二刀流ではないけど。
ミラはドワーフにしては、全然、リトルではないけど。
俺の考えを見透かされたのか、彼女がジト目で見ているように感じるのは気のせいだろうか。
「アミルやオリビア、レドリックとも相談して、訓練で試してみたらどうだ?
槍を使ってみて上手くいくようなら、剣に拘る必要もないだろう」
「はい。みなさんと相談してみます」
鍛冶師のジョブだから、剣に拘る必要はないからな。
魔物部屋も発見した。
皆と歩きながら壁をペタペタ触って、入口も発見。索敵で内部を確認。
俺の方で殲滅するか・・・・・・でも、その前に。
「なあ、魔物部屋の見学だけしてみるか?」
昨日、アミルとオリビアにやったことを、この五人にも経験させるか。
ちょっと、レドリックをお姫様抱っこするのがアレだが。
「見学ですか。危険じゃないですか?」
「いや、昨日もアミルとオリビアに見学してもらったけど、特に危険はないぞ」
五人の頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでるような感じだ。
「まあ、考えるより体験した方が早いから。ちょっとケリー、こっちに来てくれるか?」
「主、何?」
こいつはチヴィルマだ。何の疑いもなく、俺の前に進み出てきた。
「いよ・・・・・・っと」
「あっ」
ケリーをお姫様抱っこした。
「ご主人様、いったい何を?」
「ああ、この状態で魔物部屋の中に一度入って出てくるだけだ。当然、戦闘はしないぞ。
ただの見学だけだから。皆はここで待っていてくれ」
「はあ・・・・・・分かりました」
多分、分かってないけど、それは見てみるまでは無理だから仕方ない。
「中に入ると、驚くような光景を見ることになるけど、ビックリして暴れるなよ」
「?・・・・・・分かった。主」
あまり分かってなさそうだから、少しガッチリと体を固定。
腕が四本あるから逃げられることはないだろう。
万が一逃げられでもしたら、オーバーホエルミングを使っておっかけっこか?
もしくはそのまま殲滅?
ちょっと間抜けだから、それは避けたいな。
索敵でモンスターの手薄い場所にワープゲートを繋いで、ゲートをくぐった。
「あっ・・・・・・」
「暴れるなよ。見るだけだから。
これが魔物部屋というものだ。これだけモンスターがいるから危険ということだ」
ケリーに言い聞かせながら、ゆっくりと後退りしてゲートから戻った。
「ケリー、分かったか。あれが魔物部屋だ。誤って入ると危険だと理解できただろう?」
「いつか倒したい・・・・・・」
いやいや危険だから・・・・・・でも倒したいと思うこと自体は間違ってないのか。
直ぐに突っ込んでいくような無謀なことをしなければ。
その後も、残りの四人を同じように抱っこして見学。
レドリックの時だけ、微妙な雰囲気になったが仕方あるまい。
「じゃあ、俺がちょっと倒してくるから」
「えっ?」
魔物部屋に出入りしながら、魔法で削って後半から超速スキルで殲滅した。
誰も入ってない迷宮なので全滅した者もいなかったし、モンスターカードのドロップもなし。
「もう、魔物部屋の中にはモンスターはいないから、ドロップ品を拾うのを手伝ってくれ」
「・・・・・・?」
六人で安全になった魔物部屋に入ってドロップ品拾い。人数が多いと捗る。
ケリーとミラはそもそも探索の経験が少ないので、魔物部屋の危険性が分かっていない。
見せるのは見せたが、モンスターが多いということを理解したぐらいか。
まずはそれで十分なのだが。
一方でヘルミーネ、レドリック、モニカはそこそこの探索経験がある。
魔物部屋に飲み込まれて帰らなかった者達がかなりいることも理解している。
入ってみるまで本当の危険は分からないのだが・・・・・・そうなったら命がけの死闘だ。
「危険な場所なはずなのに、あっという間にユキムラ様は全滅させてしまうのですね」
「まあ、そうだな」
ヘルミーネの問いかけに曖昧に頷くしかない。
魔物部屋のことを理解している三人は俺がアッサリ倒したことに呆然としていた。
ドロップ品を回収し終えたので、探索を再開。
ボス部屋もアッサリ見つかり、待機部屋で作戦会議。
「ボスはミラとモニカとケリー、お供は俺が受け持つ。
ヘルミーネは後ろからボスとお供の両方に牽制を。
空中を浮遊するお供が出たら、ヘルミーネが叩き落としてくれ。
ご主人様は雷魔法をお願いします」
全員が頷いた。
『了解』に慣れている俺としては微妙な感じだが、護衛隊の流儀に従っている。
扉に全員入って、皆で駆けだして・・・・・・配置についた。
ヘルミーネだけ、お供の出現位置の外側を回っている。
ボスのネペンテスとビッチバタフライが現れた。
「サンダーストーム」
魔法を放つが一発目で麻痺はなし。
飛行タイプのビッチバタフライをヘルミーネが引っ掛けて地面に叩き落とした。
下に叩き付けられて、鱗粉が舞っている。
吸い込むと状態異常になりそうだが、うちの連中は状態異常耐性防具だから問題ない。
ヘルミーネはそのままビッチバタフライを地面に釘付けにして、レドリックは剣で連打しながら時折スラッシュを使っている。
ネペンテスの前に立ったミラは落ち着いて、攻撃を捌いている。大したものだ。
横からモニカとケリーが激しい攻撃を加える。
スラッシュとビーストアタックを短いスパンで繰り出している。
「サンダーストーム」
ここでボスが麻痺になった。
ミラも盾を使うのを止めて、激情のレイピアを使いながら攻撃をし始めた。
お供のビッチバタフライが先に煙に。少し遅れてボスが煙に変わった。
「ご主人様がいると、麻痺になるモンスターが出てきますし、
何より攻撃力が上がるので戦闘が早く終わりますね。
ボス戦だとそれがハッキリと分かります」
「ボス戦は広い場所でやるから、
二匹しかいなければこちらの手数が増える分だけ有利になるからな」
午前中の探索でレドリックの剣匠はLv49になった。
彼は午後も探索に参加するから、午後にはLv50だな。
そうすると剣聖の条件を満たすかもしれない。
他の連中もジリジリとレベルが上がっている。
33階層に到達する頃には、それぞれが上位のジョブを取得しているかもしれないな。
23階層に抜けて、午前中の探索は終了とした。
アミル達の方は、もう少しで中間部屋に到達しそうな所まで来ている。
中間部屋に辿り着いた時点で戻ってくるだろう。
クーラタルだから地図もあり、渡してある。
アミル達の方は一日かけて、じっくりと攻略する予定だ。
午前中の護衛部隊の動きを見る限りは問題なさそうだ。
俺のセブンスジョブの影響を考慮に入れる必要があるが、基本的な動きに綻びはない。
このまま、上位の階層を攻略していっても構わないだろう。
ワープゲートを開いて玄関に繋げ、皆で帰宅した。