異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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013.ザビルへの出店に向けて(その1)

 その後の3日間はターレ迷宮の攻略は順調だった。

 24階層をクリアした後、翌日は午前、午後とで25、26階層を1日で攻略。

 その翌日も27、28階層を1日で攻略した。

 結局、ドライブドラゴンの出現頻度が少なくなったせいで、次の階層に行こうとせっつかれたのが理由だったりする。

 じっくりと攻略しながら育成しようかと思っていたのだが、武器の強化で予想以上に殲滅速度が上がったため上位階層のモンスターで腕試しをしてみたくなった。

 

 俺のセブンスジョブで強さに下駄を履いた状態になっているのだから、今の護衛隊の強さに過信は禁物だと思っている。

 迷宮組の方に俺が戻った後で護衛部隊にラファやフラウスを戻して、今のアミル達のように俺抜きで再度23階層から33階層の攻略をしても良いかもしれない。

 

 一方でアミル達の部隊は地道に1日1階層ずつ攻略している。

 

 このままターレ迷宮をドンドンと攻略しよう・・・・・・と思っていると迷宮以外の仕事が。

 

 ザビルの対応でカラダンから同行の要請があったので、ターレ迷宮攻略は一日休みにした。

 午後はクーラタルの拠点増築の件もあり、俺が対応せざるを得ないので仕方ない。

 ペルマスクの鏡の工房からも注文の依頼があるようで、伝言が届けられた。

 今日一日は商人モードでの対応になりそうだ。

 

 そして、ハルツ公に石鹸セットを納品した経験が生きたのか、今の俺は背負子に石鹸セットを格納している。

 今日の背負子は鏡収納用ではなく、石鹸セット収納用に新調したものだ。

 俺がいくら偉くなっても、この富山の薬売りか巨大な外食デリバリーのような背負子からは逃れられないらしい。

 腕力が桁違いなのだから仕方ないよな。

 俺以外にこれを背負える者はいないし。

 いや、オリビアなら可能かもしれないが、イマイチ任せる気になれない。

 ザビルに拠点ができるまでは、この業務からは解放されないのだろうか。

 ペルマスク以外でも納品するから、結局は逃れられないか。

 まあ、それは別に良い。プレイングマネジャーだから。

 

 

 まずはザビル対応から。

 ザビルに向かうのはカラダンの他には、俺、エネドラ、ピコの三人。

 冒険者ギルドにワープで飛んで、カラダンの案内で当該の防具屋に。

 

「まずは、武器屋の母娘に会えば良いか?」

「はい。商人のジョブを持つ母親と話をしていただいてから、方針を決めた方が良いと考えます」

 それだけ、カラダンが注目している人材ということなのだろうか。

 

「借金の原因となっている契約があり、それを達成するのが困難とのことです。

 詳細については責任者である旦那様とでないと話せないと言われました」

「そうなのか。それだけ面倒な話ということか」

 面倒事と言えば、その筆頭は貴族案件だが・・・・・・。

 

 防具屋に着いて、カラダンがドアをノックした。

 武器屋や防具屋は通常はドアを開けっ放しにして客が入店できるようにしているのだが、今日は営業していないということか。

 

 ドアから顔を出したのは、幼い面影を残した少女。

 これは母娘の娘の方か。

 すぐに母親の方も出てきて、我々を中に招き入れてくれたが、二人とも表情が暗い。

 父親が最近亡くなっているのだから、明るくなれる訳もないか。

 そして、残された家族は借金で厳しい状況。

 更に息子は奴隷商館にいるとなれば、明るくなれる要素は一つもない。

 

 応接室に通され、娘の方がお茶を持ってきてくれた。

 母親は書類のようなものを手に取り、我々四人の前に座った。

 

 

(鑑定)

 

 

サライ(猫人族 ♀ 37才)

商人Lv25

 

ティナ(猫人族 ♀ 14才)

村人Lv2

 

 

 ただの商人か。亡くなった旦那さんが防具商人だったということか。

 防具商人のジョブの者がいないと、店の営業が成り立たないよな。

 売ることはできても、買い取りする際に防具鑑定ができない。

 鑑定できないということは仕入れが全くできないということにもなる。

 店が営業してないのは、俺達との交渉のためというよりは営業自体が困難なのかもしれない。

 

 娘の方は退室して、母親と我々だけでの交渉となった。

 

「ユキムラ タケダだ。クーラタルの方で迷宮探索者をしながら、商会も営んでいる。

 クーラタル以外の街への出店を考えていて、

 ザビルの街をこのカラダンが調査していた際にこの店の話を聞きつけてきてな。

 店をたたむのであれば、我が家が譲り受けることも視野に入れているが、

 新規での出店の選択肢もあると思っている」

「新規・・・・・・」

 俺のストレートな情報提示に、母親の表情が絶望の色に変わった。

 

 別にこの店を譲り受けなくても、放っておけば潰れるのなら、その後に出店しても良い訳だ。

 こちらも慈善事業ではないので、タケダ家に利もないのに防具屋を買い取りはしない。

 

「だが、そちらに何か交渉材料があるのなら、それを確認するのは吝かではない。

 それで、どうなのだ?」

「提供できるものは、この店に置いてある防具と資金、それと私達母娘しかありません・・・・・・」

 それでは全く交渉にならないな。

 

「この店は借りているのか?」

「はい。季節の終わりまでは賃借料を支払ってあります」

 とはいえ、この狭い店をタケダ家が継続して借りるという選択肢はない。

 

 

「立ち入ったことを訊くようだが、

 亡くなった旦那さんの商売に関して何か補償を受けられる契約などはなかったのか?

 例えば、護衛していた者達から違約金をもらえるとか」

「護衛も含めて全滅したそうなので、違約金はもらえませんでした」

 なかなか厳しい話だな。

 

「借金はいくらなのだ?」

「100万ナールです」

 白金貨1枚か。

 

 100万ナールなら店にある防具を売り払えば、それなりの金額にならないのか。

 当然、店は立ち行かなくなるだろうけど。

 そうなると税金も払えなくなるから奴隷落ち路線は確定するのだろうか。

 奴隷落ちしたら一家離散になるから、14才の娘のことを考えれば避けたい選択肢かも。

 

「店にある防具を全て売り払って・・・・・・

 息子が奴隷商館にいますが、そのお金が手に入れば借金は返せるかもしれません。

 ただ、主人がそもそもドブローにダマスカス鋼の防具を買い付けにいったのは、

 ザビルの騎士団に防具を納品する取引があったからなので、

 その納品ができなければ違約金を支払わなければなりません。

 違約金が払えなければ、借金は返せても奴隷落ちすることには変わりありません」

「騎士団への納品契約があるのか」

 これは既に詰んでいるということか。

 

「その納品契約の期日が近いのか?」

 サライという女性は、目を少し赤くしながら書類を俺に見せてくれた。

 

 

■ザビル騎士団との取引概要

(期日)契約日から60日以内

(納品物)

 ダマスカス鋼のプレートメイル2、ダマスカス鋼の鎧3、ダマスカス鋼の盾15

 ダマスカス鋼のデミグリーヴ4、ダマスカス鋼のガントレット4、ダマスカス鋼の額金15

(支払金額)50万ナール ※納品時に支払

(違約金)期日までに納品できない場合、30万ナールを騎士団に支払うこと

 

 

 鎧の数と盾や額金の数が不一致だ。

 全員がダマスカス鋼の防具を使いこなせる訳ではないからか。

 額金や盾だけなら使える連中が多いから納品数が多いのだろうか。

 それにしても騎士団か。貴族に近いと言えば近い。厄介な相手だ。

 

 

「この期日というのは・・・・・・」

「11日後です」

 全然、時間がない。

 

 元手がなければ、納品対象の装備品を仕入れることもできない。

 仕入れるにしても、防具鑑定できないのでは話にならない。

 そして仮に納品ができて50万ナール入手しても、借金が100万ナールあるのか。

 

 これは潰れるのを待ってから出店か・・・・・・。

 

「もう一度、納品対象の防具を仕入れるのは・・・・・・」

「手元に資金がありません。

 借金して手に入れた資金は、ドブローでの仕入れのために主人が持っていったので。

 そこで盗賊に襲われて、

 仕入れた防具や残った資金がどうなったのかすら分からない状況です。

 襲われて生き残った者が誰もいない状況ですから。

 今、店にある防具が全部売れたとしても時間が足りませんし、借金含めた金額には届きません」

 簡単に考えられるような手段は全て封じられているのか。

 

 

「この取引後に継続して取引を行う予定はあったのか?」

「詳しい事は分かりませんが、主人はそのつもりだったようです。

 今回の取引で儲けて、信用も得て商売を拡大したいと言ってましたから」

 利点があるとすると初回取引が成功して信用が得られるということか。

 

 ただ、ドブローの騎士団についての情報がないから、継続して取引することが利点となるのか判断できない。

 

「あの・・・・・・タケダ様の商家で従業員として雇っていただくことはできるのでしょうか?」

「我が家の従業員はほとんどが奴隷だぞ。

 今の発言は我が家の奴隷になる意志があるという意味か?」

 彼女は黙ってしまった。

 

「娘と息子が一緒なら奴隷になる覚悟はできています」

 と言われても、こちらにメリットがなければ奴隷にする意味がないのだよな。

 

 それに息子は既に奴隷商館にいるのだから一緒になることは困難なのではないか。

 

「息子さんは既に奴隷商館に売られたのではないか?

 一緒に暮らすのは難しいのではないか」

「売却金額が決まるまでは、奴隷契約は保留にしてもらっています。

 息子はとにかく高値で売れるように相手に交渉してもらうと言ってました。

 奴隷商人の方は知人でもあるので、少し無理を言ってお願いしています」

 そんなことが可能なのかな。

 

 この世界の契約はちょっと緩いと思うから、奴隷商人が認めれば結構なんでもできてしまうのかもしれない。

 だからと言って、高く売れるかどうかは別問題だろうけど。

 

 商人の母親はともかく、娘は未成年だし。

 息子はカラダンの話では戦闘もこなせる神官だと言ってたから、多少は期待が持てそうだが。

 ただ、猫人族の神官ってどうなのだろうか。

 原作ヒロインは前衛もこなす暗殺者に育っていたから、ないことはないのか。

 

 

「ザビルの騎士団というのは、どのような方達なのだ?

 ザビルの迷宮は久しく管理されてなかったと聞いているが」

「最近、ザビルにいらっしゃった貴族の方は迷宮への対応を積極的に進めようとしていると

 主人が言ってました。

 その関係もあって、ダマスカス鋼の防具の取引を持ち掛けたのです。

 これからも長く付き合えると思って。それがこんなことになるなんて・・・・・・」

 ベイルと似たような感じなのかな。

 

 迷宮討伐に積極的な貴族とそうでない貴族が騎士団内に両方いるとか。

 実際にその貴族と会ってみないことには分からないが。

 それでも装備品を購入するぐらいだから、迷宮の管理はこれからはマシになるのかもしれない。

 

 ダマスカス鋼の装備が納品されないと出鼻をくじかれる形になるのか。

 

 引き出したい情報はある程度集まったか。

 あとは選択肢に沿って、足りない情報をもう少し確認しよう。

 

 まず、この母娘を救わないと決めたら、この店が潰れるのを待ってから出店するだけだから考えることはほとんどない。

 11日後には騎士団との納品期日を迎え、そこでこの店は破産するのでそれを見越して出店すれば良い。

 店舗を決めておいて、防具は我が家に売るほどあるので、人材をどうするのかという点ぐらいか。

 店はカラダンが事実上取り仕切るとしても防具商人のジョブを持つ者が必要となる。

 その時にこの母娘を購入するという選択肢があるかどうか?

 

 未成年は売買対象外だから無理か。

 母親だけ購入するというのは、嫌がりそうだろうし。

 母親の仕事へのモチベーションも怪しくなりそうだから、人材獲得は別に考えるか防具屋を諦めるという選択肢もあるか。

 

 

 次にこの防具屋を救う場合に得られるもの、失うものはなんだろうか。

 

 得られるものは商人と神官ジョブを持った人材、在庫の防具、残った資金、騎士団への納品実績と将来の取引の可能性ぐらいか。

 馴染みの客がリピートするかどうかというのもあるが、そもそもザビルに一軒しかない防具屋らしいから、その辺りは気にしても仕方ない。

 

 出ていくものは、納品物の調達コストと100万ナールの借金の肩代わりと娘の養育費用か。

 あとは、残った資金がいくらなのかと在庫の防具がどの程度か確認するか。

 

 

「正直に言わせてもらうと今までの話を聞いて、

 この店を我が家に組み入れて救うのかは決めかねている状況だ。

 納品物や借金の大きさは分かったが、

 この店の残り資金や在庫の防具も見てないからな」

「手元の資金は23万ナールほどです。在庫は今からご覧になって下さい」

 23万か、決して多いとは言えない。

 

 仕入れのために旦那が持っていったのか、それ以外で使ったか分からないが理由を問い質しても23万しかないのなら、それはそれで仕方ない。

 

「では、店の防具を見せてもらう。ピコは一緒に来てくれ。

 エネドラとカラダンはここで更に確認したいことを質問をしておいてくれ」

「承知しました。旦那様」

 とりあえず、ピコに防具鑑定の詠唱でもさせているうちに俺は鑑定をしまくろう。

 

 その間の対応をエネドラとカラダンに任せる。

 

 店の防具が並ぶ場所に行こうとすると娘が顔を引っ込めて奥に行ってしまった。

 彼女もこの店の行く末が気になるのだろう。

 

・・・・・・

 

 ひたすら鑑定をしまくったが・・・・・・空きスロットの多い防具はほとんどないな。

 まず、ダマスカス鋼や竜革の防具が少ない。

 鉄や鋼鉄の防具がほとんどだ。

 

 これが全部売れたとしても、5、60万ナールぐらいか?

 手元資金23万ナールと合わせて7、80万ナール。

 借金と相殺してマイナス2、30万ナールってところか。

 

 ダマスカス鋼の防具を調達するのはタケダ家の力からすれば容易なことだ。

 調達コスト+赤字30万ナール分の補填・・・・・・と人材獲得と騎士団への納品実績等の比較か。

 正直微妙だ・・・・・・現時点では騎士団の情報が少ないので、人材だけが明確な利点か。

 

・・・・・・

 

「在庫の防具は見させてもらった。

 だが、まだ判断はつかない。

 他の街の出店計画とも比較して、数日以内には判断して結果を知らせるつもりだ。

 それまでは、できる限り在庫の防具を売って手元の資金を増やしたらどうだろうか?」

「そうですか・・・・・・」

 彼女の表情は冴えないが、こちらも我が家に利のない取引はできない。

 

 

 他の街への出店計画など事実上ないから方便に過ぎない。

 あとで、エネドラ達とも相談して方針を決めよう。

 俺がいない間に彼女に質問していた内容も確認したい。

 

 彼女に礼を告げて四人で店を後にした。

 

 

「奴隷商館の方は昼過ぎに約束しているのだったよな?」

「はい。その通りです」

 カラダンの事前調査が良かったので、ここで時間はあまり食わなかったな。

 

「じゃあ、時間に余裕があるので、ペルマスクに行くか」

「はい。それがよろしいかと」

 エネドラは淡々と返事をしたが、ピコの顔は少し緩んでいる。

 

 ピコはペルマスクに行ったことがないから嬉しいのだろう。

 さきほどの店の雰囲気は重苦しかったし、未知の場所への期待が膨らんでるのだろうか。

 

 適当な木陰からペルマスクの冒険者ギルドにワープした。

 

・・・・・・

 

 手続きを終えて、ギルドから出ると案内人がわらわらと寄ってくる・・・・・・が、いつもの案内人を見つけて手を振ると彼以外は離れていった。

 この男は先日の訪問時に青色になったから、索敵で見つけやすくなった。

 

「伝言をもらったから来たのだけど・・・・・・」

「前回いらしてからかなり時間が経ったので、奥様もかなり焦れているみたいでした」

 そう言われても、次の取引が先なのだから仕方ないだろう。

 

 御用聞きをマメにしなければならなかったのか。

 でも俺の体も一つしかないからなぁ。

 やっぱりザビルに拠点を作り、人材を配置しないとダメなのだろうな。

 

・・・・・・

 

 いつも通り、応接室に通され待つこと数分。

 ピコも今日は隅っこに大人しく座って商談の見学だ。

 

 やがて女店主が入室してきて挨拶を交わす。

 今日も親方はいない。鏡の話ではないからな。

 

 

「瑪瑙のブレスレットは贈った方にかなり好評でしたから、

 今度は琥珀のネックレスを注文したいと思います」

「なるほど、今日は石鹸のセットも持ってきているので

 一緒に売り込んでもらうことも可能だと思う」

 俺の言葉に彼女の表情が鋭くなった。

 

 商売人だなぁ。カシア様とは好対照だ。

 

 今日持ってきたのはカシア様に納品した貴族用石鹸セットではなく、平民用石鹸セットだ。

 と言っても、富裕層向けのセットなので、貴族用ほどではないけど高級品だ。

 お値段は、1セット1000ナール。

 貴族用の4割ほどの値段だ。

 そして、貴族用の石鹸セット1つも試供品として持参した。

 こちらは代金をもらう予定はない。

 

「全部いただきましょう」

 商売人でもカシア様でも台詞が同じなので、笑ってしまいそうになる。

 

 3割アップが効いて、20セットで2万6000ナール。

 

 そして、前から気になっていたことを確認してみた。

 

「ペルマスクというのは、鏡の購入ではなく、食料品の輸送などでも入市税を支払うのか?

 正直、税金がかかると割高になってしまう商品もあるのではないか」

「市から認められた業者なら、持ち込みであれば無税になりますね。

 あとはペルマスクに住んでいる商人も当然無税です」

 やっぱり抜け道があるのだな。

 

 商品単価が安くてかさばるものを入市税払って輸入しようと思ったら、割高になるだろうから何かあるのだと思っていた。

 まあ、琥珀のネックレスのような高額商品を売るときなら気にならないのだが、石鹸セットを持って何度もザビルから往復して運ぶとなると、税金は無視できない金額だと思っていた。

 

「石鹸をこれからも定期的に納品してくれるのなら、これをお渡ししますよ。

 ただし、鏡を持ち出そうとした場合には使えないので、

 出る時に入市税を後から支払うことになりますから注意して下さい」

「なるほど」

 鏡のような意匠の入ったワッペンがテーブルの上に置かれた。

 

「石鹸や琥珀、瑪瑙はこれからも納品するので、これは使わせてもらおう」

「先程の注意事項をお忘れなく」

 まあ、高額商品の時は税金を払うのは構わない。

 

 

「それで琥珀のネックレスは、いくつ必要なのだろうか?」

「そうですね。最高級品を1つとそれより少し劣るものを2つ。

 1つは私が使う予定です」

 ここは額面通りに受け取ってはいけない場面か。

 

 最高級品1つと高級品1つとそれより少しだけ劣る高級品を1つと解釈すれば良いのか。

 原作のネゴシエーターヒロインの解釈に従うなら。

 

「承知した。納品期日の希望はあるだろうか」

「今日から5日以内で」

 今日明日は、迷宮探索を休みにするだろうから、明日中に納品してしまおう。

 

 明日はドブロー関連で途中納品やら、ダマスカス鋼工房に行きたいので少なくとも半日は迷宮探索は休みにする。

 

「5日と言わず、なるべく早く納品するように努力しよう」

「お願いしますよ。瑪瑙のブレスレットの時はギリギリでしたから」

 まあ、あの時はちょっとイロイロと立て込んでいて忘れそうになったのだった。

 

 女店主と案内人に礼を言って、工房の店舗を後にした。

 

・・・・・・

 

 ペルマスクを出て、ザビルの街へ移動した。

 ザビルの街の雰囲気を確認する意味もあって、昼食はザビルで外食する予定にしていた。

 

 カラダンの見つけてきた店に四人で入り、昼食を注文。

 ぶっちゃけ、クーラタルの自宅の食事の方が数段美味しい。

 

 だが、外食をすること自体ほとんどなかったピコには好評だったようだ。

 主目的は防具屋の対応をどうするのかの打ち合わせなのだが。

 

 

「正直なところ、先程の防具屋の対応はまだ決めかねている。

 あの防具屋を救済して、

 騎士団への納品や返済金額の不足分をタケダ家で補うことは可能だと思っているが、

 我が家としての利点がどこまであるのか。

 エネドラやカラダンはあの商人の母親と話をしてみてどう思った?」

「商人としては経験はまあまあという感じでしょうか。

 大きな取引はやったことなさそうですけど、一通りの基本的なことはできそうです。

 ただ、基本的には家族経営でやっていたので

 多数の人を雇って管理するという点は難しいかもしれません」

「取引については、旦那様のような奇抜な考え方が出てくる感じではなさそうですね。

 常識に則った、通常の取引を任せる分には問題ない気がします」

 カラダン、『奇抜』って何よ?俺って非常識?・・・・・・否定しづらいけど。

 

 

「となると、判断は保留するか。

 正直、あの店が潰れてから出店する手もあるかと思っている。

 それに奴隷商館の出店の方が優先度が高いので、

 防具屋は可能なら併設して出店という感じで無理なら諦めても良いと思っている。

 ただ、このザビルの街に防具屋が存在しなくなると街としては困る気もするがな」

「そうですね。午後の奴隷商館での交渉が終わってから考えても良い気もしますね」

 

「奴隷商館の方はどうなのだ?」

「それが、店主の方よりも番頭をしている者との交渉が多くて困っています。

 どうも店主の方は店を続ける気力を無くしているみたいで。

 その理由を番頭の人もあまり語ってくれないのですよね。

 詳細はユキムラ様の方にお話しするという感じで」

 なんか防具屋と同じで複雑な事情があるのだろうか。

 

「そうか。会って話をするしかないのなら、そこで判断するしかないな」

「防具屋のように時間が経てば破産するということではないのでしょうけど、

 奴隷商館の方もこのままの状態でどこまでやっていけるのかは疑問に感じました」

 カラダンがそう言うからには、後継者不足が深刻なのかな。

 

 店主の健康問題かもしれないが。

 

 昼食を終えて店を出て、奴隷商館に向かうことにした。

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