自宅に戻り、食堂にいるエネドラ達にサボーとの決闘について説明。
ボロボロになった俺の姿を見て、エネドラから長々とお説教をもらった。
言い訳はいくらでも思い浮かぶが、口に出して良いものは一つもない。
俺に向かって説教してくれる者は多くない。
ありがたく拝聴して、決闘での戦闘含め反省して今後に生かそう。
戦いを避けてばかりはいられないのは今後も変わらないだろう。
でも、やり方は工夫できるはずだと思っている。
一しきり説教を終えたのか、彼女は大きく息を吐いた。
「旦那様がこれからも迷宮探索や盗賊討伐、決闘を行うことは理解しているつもりです。
ですが、旦那様はタケダ家の当主であり、
その肩に掛かっているものが大きいことを決して忘れないで下さい」
「はい。肝に銘じておきます」
あまりに真っ当な指摘に反論できません。
迷宮探索、盗賊との遭遇、決闘・・・・・・どれも大なり小なり命をかける状況だ。
それを意識しているから、所属している奴隷は全員、死後相続で相続先をエネドラにしている。
自分が死ぬかもしれないということは、いつも意識しているつもりだ。
だからと言って、エネドラの指摘を軽く受け流すつもりもない。
当主の俺がたくさんの者を引き受けたのも揺るがない事実。
自分の命を軽々に扱うことはしないつもりだが、皆の命も同様なのだ。
俺の命よりヴィルマの命の方が軽いから、彼女に決闘してこいとは俺にはどうしても言えない。
勝つ確率が高いと思ったから自分が受けたというだけ。
結果は想定外だった訳だが。
「お風呂で汚れを落としてきてください」
「ああ。分かった。ありがとう」
お母さんに怒られた子供のように風呂へと逃げることにした。
・・・・・・
風呂でお湯をかぶり、血の味がする口の中を漱ぎ、鼻の穴にこびりついた血も洗い流した。
サッパリしたところで、下着も着替えて昼食へ。
食事をしながら、バラダム家についての予想を伝えた。
「当主のサボーが死んで、かなりの装備品を接収した。
残りの5人はそこそこの実力の持ち主に見えたが、没落する可能性が高いと思う」
「かなり阿漕なことをやってきたと噂されてましたから、
実力者の当主が亡くなれば、その反動も強いでしょう」
各商家から糾弾されて、こちらに復讐してる余裕があるとは思えない。
原作よりは強そうな連中が残ったが、スキル融合装備など価値あるものを没収した。
他にも所有しているかもしれないが、武器屋や防具屋を巡って出回っているかを確認するか?
時間がもったいない気もするなぁ。
今日接収した装備品だって、聖槍を除けば大したものではなかったよな。
アルバは珍しかったけど、他のスキル融合装備はありふれたものだし、空きスロットが少なくて拡張性に乏しかった。
いずれは等価交換を使って、モンスターカードに交換してしまうだろう。
そのカードを使って、こちらでスキル融合装備を量産する方が合理的だ。
「午後は予定通り、琥珀や瑪瑙を納品しにペルマスクに行ってくる。
鏡を仕入れたらボーデで納品するつもりだ」
「今日は私やカラダンが同行できませんので、よろしくお願いします」
エネドラは増築工事対応、カラダンはザビルで奴隷商人の引継ぎだ。
前は一人で動き回ってたのだから、元に戻った感じだな。
・・・・・・
ボーデの琥珀商で琥珀の原石を仕入れようと思ったが、在庫が1個しかないそうで断念した。
ターヘラのマリアおばちゃんの店では、逆に必要以上に売りつけられそうになったが、瑪瑙の原石20個を仕入れるだけに留めた。
孤児院への食料配送もカラダンがザビルに行く前に3か月分のドロップ品を前納してある。
これで暫くは孤児院への食料供給はバッチリだ。
「鏡の枠が結構仕上がっているけど、持って帰るかい?」
「そうか。ちょっと背負子を取ってくるので、まってくれ」
鏡を収納する背負子でも入りそうだけど、石鹸箱を入れる背負子で良いか。
クーラタルの自宅にトンボ帰りして、背負子を背負っておばちゃんの店に。
「あんた、他に誰か運べる者を用意できないのかい?
商家の当主がやる仕事じゃないだろう?」
「まあ、そのうち誰か用意するよ」
全くおばちゃんの言う通りなのだが、そうそう便利に使える者がいないのだよ。
オリビアならパワー的にいける気がするけど、新しい背負子を用意しないとサイズが小さい。
それに商人を同行させないと対応できないからな。
長期契約にして、金のやりとりは別にすれば良いか。
そういったやり取りを解決する商人の人材が欲しい。
今、商人系のジョブを持つ者はザビルに多くいるから、そのうち異動させるか。
木枠を背負子に満載して、クーラタルの自宅に戻った。
本当に行ったり来たりなのだが、ワープが便利過ぎて、さほど苦労には感じないのだよな。
木枠の入った背負子を置いて、鏡用の背負子を背負ってペルマスクに移動。
今日は鏡の仕入れだから、ワッペンは使えず、普通に入市税をギルドで支払った。
ギルドを出て、いつもの案内人を見つけて案内を頼んだ。
最近は他の案内人が寄ってこない。
巨大な背負子を背負った奴は既に決まった案内人がいることが知れ渡っているから。
この背負子はやっぱり目立つのだよな。
・・・・・・
「今日は石鹸のセットを持ってきてないのですか?」
挨拶もそこそこに女店主が発したのがこの言葉。
「この前、20セット納品したばかりだが・・・・・・」
「あの石鹸はなかなか素晴らしくて、鏡とセットで売り出すと飛ぶように売れて・・・・・・」
ほうほう。
「定期購入の契約でもするか?」
「くっ・・・・・・次回までに考えておきます」
ふーん。
「次回って30日後だが、そんなに先で良いのか?」
「30日後!・・・・・・分かりました。今ここで定期購入の契約をしましょう。
それとは別に10日以内に20セット追加で購入しますので持ってきてください。
他にも高級品の石鹸のセットも10セット購入します。
定期購入の方は30日毎に30セット購入しますので、それで契約をしましょう」
なんか、だんだんヤバい薬の売人みたいになってきた。
取引のもっていき方もちょっと阿漕な感じになっているかも。
悪の枢軸モードが続いているようだ。
それにしても、そんなに売れるのか。
鏡を販売する先がそもそも貴族だったり、平民の富裕層だから売れるのだろうか。
「高級品の石鹸セットの方は定期購入しなくても良いのか?」
「くっ・・・・・・そちらの方はおいくらですか?」
乗ってきた乗ってきた。
「1セット2500ナールだな」
「そんなに高くはないのですね」
石鹸1個が500ナールだけど、それでも高くないって金持ちのセリフだな。
「高級品の方はもう少し売れ行きを見てから考えます。
必要なら、定期購入の契約に追加するようにします。それならよろしいでしょう?」
「まあ、そうだな」
貴族用の高級石鹸セットは、ペルマスクで売られている豪華な装飾のついた鏡と相性が良いかもしれない。
じゃんじゃん販売してもらい、Win-Winの関係にしたい。我が家のWinの字が大きい気もするが。
「確定ではないが、そのうちザビルあたりに石鹸を販売する店を構えようと思っている」
「ザビルですか?ペルマスクには店は出さないのですか?」
首を横に振った。
石鹸だけの店を出してもねぇ。
毎日たくさん売れる訳でもないだろうし。
店舗を構えたり、人材を用意することや防犯を考えるとコストパフォーマンスが高いと現時点では断言できない。
ザビルなら、奴隷商館と防具屋を経営するついでに石鹸の販売もできるから効率的だ。
「今のところはザビルで考えている。ザビルならペルマスクから近いからな」
「まあ、うちとしては定期的に届けてもらえれば・・・・・・
あっ、使ってしまった後の石鹸の補充ができる店ですか?」
そうそう、ちゃんと理解しているな。さすがは商人。
「石鹸のセットも販売するし、補充用の石鹸も販売すると思う。
まだ店舗すら用意していないがな」
「決まったら教えて下さいね」
「もちろんだ」
お得意様だから、ちゃんと教えるよ。
平民用の石鹸セットの定期購入契約を結んだ。
30日毎に30セットの購入で1回あたりの販売総額が3万9000ナール。
契約の開始は瑪瑙の原石の納品日に合わせた。
1年で50万ナール弱か。後はどれだけリピーターがついてくるかだな。
その後は鏡を20枚補充し、瑪瑙を20個納品した。
差額で8万ナールほどの収入。
せっかく定期購入契約にしてもらったのだから、次かその次あたりの納品は誰かに任せたい。
ザビルでのカラダン達の引き継ぎが終わるのを待たなければならないか。
「では、石鹸のセットを用意して近いうちにまた来るから」
「本当に早くお願いしますよ。待ってますから」
「善処しよう」
お得意様は大事にしないとな。
石鹸の売上は瑪瑙の原石と比べれば、まだまだ売上としては大したことはない。
長い目で見て、収益の柱になることを信じて営業活動をしないとな。
それに今のところはカシア様の次に大口のお客様だしね。
工房の店舗を後にしてギルドで手続きを終え、ザビルの冒険者ギルドに移動した。
せっかく近くまで来たので、カラダンの所にも顔を出しておきたい。
ワープしていると近い・遠いの感覚も麻痺しそうだが。
・・・・・・
ザビルの奴隷商館で用向きを伝えると、応接室に通されたがカラダンは直ぐにはやってこない。
アポなしで急に来たのだから仕方ない。
今は引継ぎ期間中なのだから、そちらが優先だ。
ドアがノックされ、入室してきたのはカラダンではなくミシェルだった。
「カラダンさんはもう少ししたらいらっしゃると思いますが、その間は私がお相手を」
「そうか。まずはかけてくれ」
彼女に座るように勧めたものの、きっと何か魂胆があるのだろうな。
「カラダンの引き継ぎは順調にできているのだろうか?」
「非常に勘が良くて、メモもたくさん取って、教えられたことをそつなくこなしています。
商売の基本的なことが分かっているようですから、
奴隷という商品の特殊性だけ学べば引継ぎに30日はかからないと思います」
それは良かった。
別に焦る必要はないが、早くタケダ家として独立して商売できるに越したことはない。
「それで・・・・・・」
(コン、コン・・・・・・)
彼女が何かを言いかけた時、ノックがそれを遮った。
仕方なく彼女はドアを開けに行き、カラダンがピコと護衛のモニカを連れて入室してきた。
この場に留まりたかったようだが、タケダ家だけで相談したいと告げて退室してもらった。
「急に押しかけてすまなかったな。
ペルマスクで納品があったのでちょっと寄らせてもらった。
引継ぎは順調そうだな」
「はい。分からないことも多いですが、丁寧に説明していただけるので何とかなってます。
たぶん忙しいのは明日ぐらいまでで、後は実際の取引で学ぶことになると思います。
明後日からは、空いている時間に店舗探しをやろうと思っています」
店舗の形態について伝えないと。
「奴隷商館と防具屋と他にも石鹸の販売・・・・・・
特にペルマスクへの輸送や補充用の石鹸を購入する店舗を考えてほしい。
具体的には防具屋は装備品を置くスペースがかなり広くする必要があるが、
石鹸を販売するスペースも少しだけ確保して、
石鹸などは奥の倉庫から直ぐに持ってこれるようにする感じかな」
「そうですね。
石鹸は商品のバリエーションは大してないので、販売のスペースはさほど必要ないでしょう。
お金のやり取りをするカウンターのそばに少しあれば良いと考えます。
倉庫が広い方が石鹸や防具の予備を置いておくのに便利かもしれません。
奴隷を多く住まわせるのに必要な部屋数も確保しなければなりませんので、
かなり大きな店舗を探さなければならないと思います」
カラダンは察しが良いな。
「店舗は予算によっては、賃借りではなく購入でも構わない。
購入して少し補修したり、増築して足りないものを補うのもアリだ。
いろいろ考えて、まとまったら相談してほしい」
「なるほど。わかりました」
資金は潤沢にあるので、なんとかなるだろう。
クーラタルの増築費用は全て払ったけど手元には500万ナール以上ある。
「防具屋の母娘の方はどうだ?」
「今は奴隷としての基本的な教育を受けています。
今までの平民の意識から急に切り替えるのは難しいですから、
ミシェルさんの方で徐々に教えている感じですね。
それでも私の引継ぎが終わるまでには、新しい防具屋で働いてもらえるようになると思います」
奴隷商館の引継ぎと防具屋開業に向けては一先ず順調と。あとは防具商人のジョブ取得か。
「マテウス達の方はどうだ?」
「迷宮に淡々と行き、淡々と店舗の護衛をしています。
ここの奴隷商館はクーラタルの自宅ほどは活気がありません。
目指しているものが違うからなのでしょうね」
新しい奴隷商館になってから切り替えるのだが、先にやっておくべきことがある。
「マテウス、ニケの二人には我が家で使っている標準装備を持ってきたので渡しておいて欲しい。
引継ぎが終わる前に怪我でもされたら困るからな。
新しい奴隷商館をタケダ家で運用するようになったら、
奴隷として売却する者とタケダ家側で雇う者を選別して
後者の方にはタケダ家の標準装備品を使わせるようにしたい」
「分かりました。二人に渡すようにします」
まずは中核となる二人の装備を充実させていく。
「それ以外の者達には硬革系の装備品と鋼鉄製の武器を貸与することにしたい」
「なるほど・・・・・・」
カラダンが目配せするとピコが立ち上がり、俺が取り出した装備品を受け取ってアイテムボックスに収納していく。
マテウス、ニケ以外の者達には鋼鉄系の武器、硬革のジャケット、硬革の帽子、硬革のグローブ、硬革の靴をそれぞれ5セットで運用してもらう。
迷宮に行くのは基本的にはマテウスかニケのどちらか一人らしいので、それ以外の5人分の装備だ。
「とにかく、引継ぎが終わるまでは迷宮での事故は困るからな」
「はい。マテウス達にも伝えておきます」
マテウスは性格的には無茶しないように見えるが、それでも事故のリスクは軽減したい。
「では俺はボーデで鏡の納品をしてくる。引継ぎ、頑張ってくれ」
「承知しました。旦那様」
カラダン達に別れを告げて、クーラタルの自宅に戻った。
・・・・・・
仕入れてきた鏡20枚のうち5枚を我が家に置いて、空いたスペースに石鹸15セットをなんとか詰め直した。
ボーデの冒険者ギルドにワープで移動して、城へと向かう。
騎士団の詰所で用件を伝えると少しざわめきが。
午前中の決闘の騒動のせいだろうか。
いつもよりも距離を置いて対応されているような。
騎士団員の案内で執務室へ。
室内に入ろうとしたところで、廊下を急いで歩いてきたカシア様に遭遇。
「今日は納品の日でしたね!」
「はい。よろしくお願いします」
カシア様に先に入っていただき、騎士団員の後に続いて入室した。
待ち構えていたのだろうか。
執務室にいたハルツ公とゴスラー騎士団長に挨拶。
挨拶が終わると待ってましたと言わんばかりにカシア様が納品物のチェックを始めた。
装飾の無い鏡が15枚と貴族用石鹸15セット。
「タケダ様の石鹸の素晴らしさと言ったら・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
我が家の石鹸に対する美辞麗句が並べ立てられるのだが、俺にはさっぱり理解できない。
今日は俺一人の納品でカラダンもエネドラもいないから、俺一人が聞かざるを得ないのだが・・・・・・なかなか厳しい。
何か次の商品に向けてのヒントでもあれば・・・・・・と懸命になって耳を傾けても、さっぱり頭の中に入ってこない。
「他の方たちの評判はどうでしょうか?」
「ええ、それはもう皆様、大絶賛で・・・・・・」
ああ、しまった・・・・・・美辞麗句のリピートが始まっただけで、新しい情報が全然得られない。
俺にはやはり女性向け商品の営業マンは向いていないようだ。
ハルツ公とゴスラー騎士団長からは距離を置かれて、こちらに近づこうともしない。
決闘の話でも彼らに振ってもらえれば、カシア様の話題をブチ切れるのだがそのタイミングを作ることすらできない。
おかしいな。午前中の決闘が終わった時点では決闘のことには触れてほしくなかったのに、今はその話題を振ってもらいたいと思うなんて。
黒歴史に塩を塗りこめられるのと、この尽きない石鹸の話題を延々と聞かされるのとどちらが楽なのだろうか。
その後もカシア様の石鹸の話題が尽きるのを忍の一字に徹して・・・・・・ようやく終わりが見えた。
「次回はまた30日後にお願いしますね。
それよりも早く欲しくなったら、どうすれば良いのかしら」
「商人のルークを経由して伝言をいただければ、お届けに参ります」
彼女は満面の笑みを浮かべて頷いた。
「では、これが代金となります」
「確かに」
ゴスラーが会話に入ってきたのは、ほぼ全ての話が終わってからだった。
苦労人の存在価値は苦労してこそではなかったのだろうか。
午前中の決闘で面倒をかけた俺が言うのもアレだが。
それでも売上代金は18万7500ナール。3割アップなしでも、それなりの金額だ。
空になった背負子を背負って、執務室から這う這うの体で逃げ出すのが精一杯だった。
詰所で騎士団員に礼を言い、ボーデの城を後にした。
なんか、原作主人公の扱いと今の俺の扱いは微妙に違う気がするな。
初めは気さくに話しかけていたハルツ公も今では、あまり寄りついてこない・・・・・・まあ、俺だけのせいではない気もするが。
原作主人公は城の中をフリーパスのように歩いていたようだったが、俺の方は腫れ物に触るように微妙な距離感を取られて動き回っている。
決闘でやり過ぎたか?
でも、命がかかってたのだから、全力で取り組むのは間違いではないはず。
全力を尽くしたはずだが、結果は予想外だったけど。
原作ではかなり盛り上がるイベントだったが、こちらも一区切りついたからヨシとするか。
適当な木陰から、自宅にワープで移動した。
・・・・・・
夕食と風呂を終えて、会議を開催。
「明日の予定だが、
決闘の横槍が入ってしまってできなかったターレの34階層の攻略を午前中から行う。
護衛部隊の方はクーラタルの24階層の攻略だな」
「23階層のグミスライムは状態異常に追い込んで退けましたので、
24階層以降も引き続き、攻略できると考えております」
レドリックの言葉に頷きながらも、
「カラダンとピコの護衛でモニカは暫く迷宮探索には参加できない。
レドリックも暫くはクーラタルの自宅に詰めているので、
護衛部隊の迷宮攻略に負担がかかると思うから無理しないようにな」
「はい、ユキムラ様」
暫くの間は、ヘルミーネが護衛部隊の迷宮攻略のとりまとめ役だ。
ザビルのカラダン達の引継ぎが終われば楽になると思いたい。
人材募集のために空き時間に奴隷商館巡りをしたいが、部屋の空きも少ない。
なかなか悩ましいな。
「旦那様、ターヘラの孤児院からの二組目の受入は無事完了しました。
午後からは石鹸の量産も始めたそうです。
ミモザからの報告では今のところ問題は発生していないとのことです」
「彼女も統括作業は初めてなので、カラダンも助言してやってくれ」
「承知しました。旦那様」
ベイルの方は石鹸の在庫がかなりあるし、暫くは何かあっても大丈夫だろう。
「それで、明後日のことなのだが、
午前中は迷宮攻略を休みにして俺は自宅で事務作業をしようと思っている」
「旦那様、事務作業ですか?何かお手伝いすることがあれば・・・・・・」
いや、エネドラに手伝ってもらうと困るのだ。
「ちょっと次の商品開発に向けて、部屋に籠って一人で作業をしたいと思っている。
せっかくの機会だから、エネドラは商人ギルドに行ってきたらどうだ?
増築の対応で何か問い合わせがあれば、俺が引き受けるから」
「なるほど。確かにそれは良いかもしれないですね。
ギルドに行って、情報収集して参ります」
是非、そうして下さい。
その間に俺は親方と秘密基地の相談を・・・・・・。
勘の良いエネドラに気取られる前に、会議は終わろう。
「では、これで会議は終了とする。皆、夜遅くまでご苦労だった。しっかり休んでくれ」
お休みの挨拶をして、解散とした。
自室に戻って、今日のまとめ。
■情報▶
■人材育成/採用(ユキムラ)▼
①人材育成 ※新規加入メンバ中心にパワーレベリング。迷宮での習熟訓練を行う
<軍事系>
ユキムラ(百鬼夜行Lv65/英雄Lv65/勇者Lv65/遊び人Lv65/魔道士Lv65/刺客Lv65/博徒Lv65)
アミル(鍛冶師Lv63/冒険者Lv40)、ヴィルマ(百獣王Lv49)、イレーネ(刺客Lv50)
※アミル:隻眼のジョブ取得条件は不明のまま。装備品のスキル融合数を増やす
オリビア(竜騎士Lv46)
レドリック(剣聖Lv32)、モニカ(剣聖Lv28)、レイモンド(冒険者Lv40)
ケリー(百獣王Lv18)、マリー(百獣王Lv18)、フラウス(斎王Lv29)
ラファ(魔道士Lv40/巫女Lv42)、ヘルミーネ(冒険者Lv32/騎士Lv43)
ミラ(鍛冶師Lv47/剣匠Lv31⇒剣聖)、マヤ(剣匠Lv59/剣聖Lv1) ※マヤの最終ジョブは要検討
<後方支援>★:育成保留中
エネドラ★(武器商人Lv47)、チクルス★(薬師Lv34)、ポーラ★(僧侶Lv46)
カラダン★(奴隷商人Lv15)、ミモザ★(薬草採取士Lv45⇒薬師)
ピコ★(冒険者Lv20/防具商人Lv7)、ビンス★(冒険者Lv8)、リック★(冒険者Lv8)
②採用
後方支援メンバ、護衛メンバ、迷宮探索メンバを拡充(逐次奴隷商館巡りをする)
⇒迷宮探索メンバ、護衛メンバの拡充を図る
⇒帝都の奴隷商館でオリビアの契約に成功。今後も竜人族、魔法使い入荷時に連絡を依頼
ザビルの奴隷商館で有望そうな者がいればタケダ家に組み込む
■軍事(ユキムラ/レドリック)▶
■商業/取引(ユキムラ/エネドラ/カラダン)▶
■開発(エネドラ/カラダン)▶
■生産(チクルス/アミル)▶
■その他/クエスト▶
・・・・・・
ベッドに寝転がりながら、午前中の決闘を振り返った。
原作に忠実に対応しようとして足を掬われた。
原作の対応が間違っていた訳ではなく、原作との違いに上手く対応できなかっただけだな。
サボーとの距離の違いがあったり、原作よりも今回はサボーが上手く立ち回ったのだ。
それに俺が対応できずにあたふたした。
辛くも勝てたけど、対人戦の経験の無さが露呈したのだろう。
サボーはLv99なので、俺以外の者だったら普通にレベル補正が効いて厳しい戦いになったはず。
デュランダルもアルフレイルもレベル補正無視が付与されていたおかげで俺は助かっただけだ。
他人からスキル攻撃を受けたのも初めてだった。
アクティブスキルの攻撃を受けることが、これほど危険なことだと身をもって知った訳だ。
今まで訓練や模擬戦などでは怪我を恐れてスキル攻撃は禁止していたが、これからは訓練の中に取り入れた方が良いかもしれない。
そうしないと対人戦で上手く対応できないリスクを抱える。
ヴィルマからビーストアタックを何回か受けていれば、サボーに一回目に受けた時に気付いたかもしれない。
今は彼女のスキル攻撃はビーストスラッシュで、それを受けるのはシンドイが木刀なら耐えられるだろう。
なんせ、今日は獣戦士Lv99のビーストアタックに耐えられたのだから。
他にも考えることがあるとすれば・・・・・・グループ戦をもう少し取り入れるか。
二対二や二対三など、同人数や数的不利な状態での訓練を加えるとか、対人戦のバリエーションを増やした方が良いかもしれない。
(コン、コン・・・・・・)
ドアを開けると・・・・・・ヴィルマか。
決闘後の態度がちょっとおかしかった気がするから確認しないと。
彼女をベッドに俯せにさせてマッサージを開始。
背中や腰を丁寧に揉みながらコミュニケーション。
「今日は俺の決闘後に何か、あの女の父親のことでも思い出したのか?」
「えっ、弱い奴だったのだろうから全然思い出せない」
き、きついな・・・・・・ドーリットルがキレるのも無理ないかも。
別に今はおかしな感じもしないから、俺の気のせいか?・・・・・・それなら。
・・・・・・
今日の黒歴史を忘れさせるために、彼女の記憶が無くなるまで入念にダウンさせた。
ついでに俺との決闘のことも忘れてくれ。
彼女の寝顔を見ながら、原作との答え合わせ。
原作ではサボーとの決闘の後に主人公とヒロインが彼女の過去を振り返りながら、幸せになるのが最高の復讐とか言ってたっけ。
彼女のせいで叔母の家が嫌がらせを受けたとか、それを主人公が慰めたりとかしていたよな。
決闘もだけど、その後の二人のお互いを思いやる気持ちの描写など印象的なシーンだった。
我が家の方はどうだろうか。
決闘の原因は・・・・・・ヴィルマがドーリットルの親父さんを敗走させてバラダム家が傾いたのか。
その後はサボーを当主に据えて、多分迷宮でも頑張ってレベルが上がったのだろうな。
原作よりもレベルが高い連中だったし、魔法使いに竜騎士までいた。
ベイルの士爵家やザビルの子爵家よりも、迷宮討伐に近い戦力だったのかもしれない。
それを俺がサボーを殺して、多数のスキル融合装備を取り上げ、魔法使いのジョブを取得する自爆玉まで奪い・・・・・・あの家は没落か。
あ、あれっ・・・・・・俺達の方が悪役の気がするのは気のせいだろうか?
俺達は悪の枢軸だから、別に良いのだけどさ。
いや、原作だと二人死んだけど、こっちは一人だけだ。
ドーリットルは生き延びたからな。
タケダ家には慈悲があるのだ。
彼女が幸せになれば最高の復讐になるはずだ・・・・・・えーと、誰への復讐?
死んだサボーはともかく、ヴィルマはもうドーリットルの事も忘れて寝ている気もするけど。
覚えているのは、俺と決闘したいということだけではないだろうか。