異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

176 / 265
025.マッチポンプ?

 今日は迷宮組の迷宮探索は休みだ。

 午前中は二階の部屋に籠って書類仕事、午後はザビルに行って防具屋を再開するための調整に奔走しなければならないから。

 そのせいか、ヴィルマとイレーネがご機嫌斜め。

 朝練の模擬戦が苛烈を極めているのですが・・・・・・。

 

 とはいえ、この二人との模擬戦は真剣勝負で面白い。

 攻守にバランスが良く駆け引きも上手いヴィルマとスピードに磨きがかかってきたイレーネ。

 剣技に磨きをかけたい自分にとってはベストの練習相手だ。

 

 最近は百獣王のジョブを得た双子との対戦も勝ったり負けたりだ。

 前は二対一でも余裕が勝てたが最近の戦績では五分五分の状況。

 というか、我が家に百獣王が三人もいるのが、そもそもどうなのかと。

 剣聖も二人いるし。

 

 ジョブの面子だけ見れば勇者ファミリーという感じだが、当主の俺が百鬼夜行というオチだ。

 

 

 サボー戦での気付きもいつか試したいが、時間が取れない。

 レドリックとヴィルマを剣術指南所のおっさんの所に派遣して検証したいのだが、やりたいことが他にあるから今は保留している。

 

 せめて、模擬戦に工夫を加えるか。

 レドリックの所に向かう。

 

「相談がある。模擬戦の中に特殊な訓練の項目を加えたいのだが、意見を聞かせてほしい」

「特殊というと?」

 レドリックは元々は隣国の戦士団の統括をしてたのだよな。

 

「スキル攻撃や、それに対する防御の訓練をしたい。

 木製の武器でスキル攻撃をしてみるのはどうだろうかと思ってな。

 怪我の防止のために、防御側は正規の防具を装備したり、

 パーティをちゃんと組むなどして安全面に考慮しておく必要があると思っている」

「ああ、そういえば私が所属していた戦士団でもやってましたね」

 やっぱり実戦向けの訓練ではやってるのか。

 

「それから、一対一だけでなく二対二、二対三、三対二など人数に変化をつけて

 対人戦での集団戦闘の訓練をしてみたらどうかと思うのだが」

「戦争を意識した訓練であれば、そうした複数人数での訓練は普通にやりますね」

 それもやってるのか。

 

「ただ、まずは基礎的な修練が先決で、

 一対一での模擬戦である程度の技術と経験を積んでからの方が効果が高いと思います」

「そうだな。基礎は重要だ。

 土台がちゃんとできてないのにスキル攻撃ばかりに目をやっても仕方ないからな」

 新しい事を考えたから、それにいきなり飛びつくというも短絡的か。

 

「ミラもマヤもまだまだ基礎の練習をやるべきです。

 それを迷宮でのモンスターとの実戦で磨きをかけた方が良いと思います。

 双子やラファなどにも同じことが言えます。

 一方でベテラン勢の方はある程度は基礎ができていますので、

 スキルに関する訓練は良い刺激になるかもしれません。

 それとヘルミーネなら、恐らく私と同じような訓練をしているはずです。

 彼女とも相談して、ここでの訓練方法を考えてみます。

 たたき台ができたら、ご主人様に相談したいと思います」

「ああ、お願いできるか」

 レドリックやヘルミーネなら経験に基づいた良い訓練方法を提案してもらえるかもな。

 

 二人は隣国とはいえ、それぞれ戦士団、騎士団に所属していたのだから。

 

 全てのことを自分で考えるのは無理があるので適材適所で任せたい。

 

 人材に厚みができてきたので、今なら可能なはずだ。

 

・・・・・・

 

「・・・・・・で、この部屋に排水溝を取り付ければ良いのか?」

「ああ、そうだ」

 

 エネドラが商人ギルドに出向いたのを確認し、増築工事の現場に行って難色を示す親方を無理やり引っ張ってきた。

 今は寝室の隣にある俺の書斎で親方と対峙している。

 

「ここって、書斎かなにかじゃないのか?なんだって、こんな部屋に排水溝がいるんだよ?」

「・・・・・・」

 説明は難しい。ある崇高な目的のためだ。

 

「そんな、細かい話は別にどうでも良いじゃないか。とにかく作ってくれれば良いから」

「細かいって、お前なぁ・・・・・・目的を確認しないと良いものが作れないだろう?」

 とは言われてもなぁ。

 

「まあ、そう言うなって。ここに設計図がある」

「なっ、なんでこんなに緻密な図面があるんだよ?

 この前の小部屋の排水溝を作る時にはなかったじゃないか?」

 それは気合の差だ。そんなことは口にできないが。

 

「細かい話は別にどうでも良いじゃないか。とにかく、この通りに作ってくれれば良いから」

「細かいって・・・・・・」

 もはや、俺の台詞もRPGのNPCのような台詞になりつつある。

 

「元々の建物の部屋にも排水溝を作ってほしいという話だったよな?

 全ての部屋にこれと同じものを作れば良いのか?」

「いやいや、違う。この図面はこの部屋のための特別なものだ。

 よく見ろ。ここに寸法が書いてあるだろう」

 俺は図面に長さなどが記載された部分を指し示した。

 

「はあ?この排水溝って、なんでこんなにデカいんだよ。

 書斎にこの大きさの排水溝をつけるのっておかしくないか?

 それにこのカバーみたいなのはなんだ?排水溝にカバーっておかしいだろう?」

「細かい話は別にどうでも良いじゃないか。とにかく、この通りに作ってくれれば良いから」

 作ってくれると言うまで、NPCに徹しよう。

 

「お前なぁ・・・・・・」

「これを作ってくれたら、契約とは別に迷宮ドロップ品の岩100個を進呈しよう」

 親方の顔がギョッとなった。

 

「お前そこまでして・・・・・・」

「ここは黙って、ウンと言ってくれ」

 男には絶対に負けられない戦いというのがあるのだよ。

 

「岩100個に板50枚もつけてくれ!」

「・・・・・・いいだろう」

 くっ、足元を見やがって。目的が達成できるのなら別にいいや。

 

「他の部屋に排水溝を作る時期と同じタイミングで作成するぞ。

 この排水溝で分からないことがあったら、エネドラさんに質問すれば良いのか?」

「い、いやダメだ。この特別な排水溝の件で疑問がある時は俺に直接質問してくれ」

 秘密基地は秘密裡に作ってこそ価値があるのだ。

 

 それにしても、俺に対しては『お前』呼ばわりなのに、エネドラには『さん』付けって。

 力関係を正確に把握されているのかもしれない。

 

 それはともかく、親方はニヤニヤしている。

 

「岩100個に板100枚を進呈しよう・・・・・・」

「分かった。お前に相談するから」

 口止め料まで払う羽目に。

 

 仕方ない。崇高な目的のためには適切な対価だ。

 

「約束だぞ。それで、岩と板はどうやって受け渡せば良いのだ?」

「ああ、現場にアイテムボックス持ちの奴がいるから」

 

 図面を親方に渡して、工事現場まで行き、岩100個と板100枚を渡した。

 この時のために、こっそりと魔物部屋を殲滅して入手したドロップ品(へそくり)だ。

 

「じゃあ、いつになるか分からないが、一期工事が終わるまでには作っておくから」

「頼んだぞ。くれぐれも内密にな」

 また、我が家の内密が増えてしまった。

 

 それよりも排水溝だけではなく、アミルに作ってもらうものがあるのだよな。

 そちらの方はどうやって頼もうかな。

 さりげなく自然な感じで・・・・・・何か説明の方法を考えなければ。

 

・・・・・・

 

 二階の自室に戻って、次の商品開発に向けた検討。

 秘密基地の相談だけでなく、ちゃんとエネドラに宣言した作業もやるつもりだ。

 

 真実をちゃんと混ぜておかないと、勘の良い彼女を誤魔化すことなどできないから。

 既に思考が犯罪者のそれになりつつある気もするが。

 

 いやいや、次の商品開発はタケダ家に必要なことなのだから何も(やま)しいことはない。

 

 次の商品の候補はシャンプーと保湿クリームだな。

 元の世界から持ってきたサバイバル教本に確か作り方が書いてあったはず。

 

 えーと、石鹸の作り方が流用できるけど・・・・・・グリセリンを作れって?

 で、クエン酸もあった方がグリセリンと混ぜてリンス効果が出るって本当か?

 クエン酸は酸っぱい果物か酢で代用できるかな。酢って、この世界にあるのだっけ?

 け、結構、面倒そうだな。

 

 大枠の作り方を決めたら、エネドラに相談して研究してもらうか。

 俺がやっても拠点構築の効果が質よりも量の方になるからなぁ。

 こういった女性向けの商品に対するセンスの問題な気もするけど。

 

 それで・・・・・・保湿クリームの方の作り方は・・・・・・こちらの方が簡単かも。

 

 鏡と石鹸、それにシャンプーと保湿クリームは相乗効果が高いと思っている。

 貴族の女性と富裕層の女性に普及させて、我が家の収入のベースロードにしたい。

 

 そのためには、まずは石鹸の次の商品を一つぐらい開発したいところだ。

 

・・・・・・

 

 商品開発の検討は結局時間切れ。

 昼食の時間になり一階に降りるとエネドラは既に帰宅していて、食卓に着いている。

 

「午前中は特に増築工事の問い合わせはなかったな」

「そうですか。それは良かったです」

 秘密基地の排水溝への疑問はあったが、あれは増築工事の問い合わせではない。

 

「ギルドの方ではバラダム家の当主が亡くなった噂が既に流れていて、

 強請り取られた装備品を取り返そうとする商人達の話も出てましたね」

「そうか。やっぱり反動は大きいだろうな」

 その装備品の一部が我が家の倉庫に眠っていたりするのだが。

 

 

「午後からはザビルに行って、防具屋の再開に向けて話をしてこようかと思っている。

 カラダンに何か伝言があれば引き受けるがどうだ?」

「いえ、急ぎの内容は特にありません。夜には会議で会えますから」

 夜に定例会議を設けたのは正解だったかな。

 

 この世界では離れていてもフィールドウォークで直ぐに移動できる。

 元の世界の飛行機や新幹線よりも便利だったりする。冒険者のジョブの者さえいればだが。

 我が家には拠点間移動のスキルもあるので一瞬だし。

 

・・・・・・

 

 昼食を終えて、ワープで移動してザビルの奴隷商館に。

 今日は領主の館に行く必要はないはず・・・・・・と思いたい。

 

 商館に着いて、カラダンとサライを呼び出してもらった。

 さして時間も経たずに二人がやってきた。ミシェルも一緒だが呼んでいないのだが。

 ティナもいるがサライの娘なのだから許す。

 

「防具屋の再開に向けて相談したい。

 カラダン、サライに防具商人の件は説明したか?」

「はい。インテリジェンスカードを見せましたので納得してもらえました。

 防具屋の仕事をやってもらうことは元々説明していたので問題ありません」

 サライは苦笑気味だが、本人が前向きならヨシとしよう。

 

 防具屋の店員をやるのか、店長をやるのかをちゃんと事前に説明してたのかは怪しいけどな。

 

「まず、必要なものを確認していきたい。

 当面の資金は当然我が家が必要な分だけ提供する。タケダ家が経営する防具屋だからな。

 そして商品である防具もこちらで当然用意する。

 皮、革、硬革、竜革、鉄、鋼鉄、ダマスカス鋼の防具をそれぞれ適当な量を用意しておく。

 ここにリストを作ってきたので、後で構わないから確認してくれ」

「はい。分かりました」

 サライに用意してきたリストを手渡した。

 

「前にやっていた店と比べると恐らくだが、竜革とダマスカス鋼の防具が多いはずだ。

 売りたい防具については後で相談したいが、先に俺の案を説明させてくれ。

 まずは、竜革のグローブ、竜革の靴、ダマスカス鋼の額金は多めに置いて、

 販売してみようかと考えている」

「それは何故でしょうか?」

 うちの倉庫に大量にあるから・・・・・・というのは冗談だが、半分は本当だ。

 

「まず、それらの装備品は鍛冶素材が少なくても防具生成できるので、

 販売価格が鎧と比べれば圧倒的に安い。

 ザビルでは竜革やダマスカス鋼の防具があまり置いてなかったので、

 グレードの高い装備を買いたいと思った時に気軽に手を出せる価格帯になる」

「なるほど」

 まずはリサーチするぐらいの感覚でも良いと思うのだよな。

 

「竜革の鎧、ジャケット、ダマスカス鋼の鎧も陳列するが、それほど数が必要ではないだろう。

 もし客が購入したくて、陳列されているものに不満を感じることが多いようなら、

 そこで初めて数を増やすぐらいで良いのではないか?

 前に店を訪れた時にも感じたのだが、陳列する場所もそれほど広くはないようだから、

 あまり多くの鎧を置くこともできないだろう。

 今まで通り、鎧は硬革や鉄、鋼鉄製をメインに陳列した方が良いのではないだろうか?」

「そうかもしれません」

 今度はわざわざドブローまで仕入れに行く必要もないしな。

 

「新しい店では陳列する場所が広くなるように店舗を考えたいと思う。

 カラダン、店舗の候補を探す時にはその観点でも検討してもらえるだろうか?」

「承知しました。旦那様」

 石鹸の販売スペースの話もしたし、店舗についてはそれぐらいかな。

 

「新しい店舗には、竜革やダマスカス鋼の装備品をもっと置けるようにしよう。

 後はカラダンの方で提案があったよな?」

「はい。旦那様から依頼された石鹸の件ですね。

 それと商談が可能な場所を作って、

 スキル融合装備の販売やモンスターカードの取引もできるようにしたいと思っています」

 カラダンの言葉にミシェルが体を乗り出してきた。

 

「石鹸を販売するのですか?」

「ああ、新しい店舗の方でな」

 石鹸はアイテムボックスに収納できないから、持ち運びに不便だ。

 

 石鹸を販売するなら、倉庫が十分に広い新店舗になってからだろう。

 

 モンスターカードも探索者相手に買取や防具と交換することをカラダンから提案された。

 拠点構築の倉庫を使えば、カードの特定までできるので詐欺に遭うのを防止できる。

 スキル融合防具は客寄せ用かな。ベイルの武器屋にも置いてあったし。

 いずれにしても十分な広さの店舗と護衛がしっかり付くことが条件だ。

 

「あの・・・・・・私も新しい店舗の商売に参加できないでしょうか?」

「ん?」

 ミシェルは何かやりたいことでもあるのだろうか。

 

「奴隷の教育もあるし、忙しくてそれどころではないのでは?」

「新しく奴隷が増えるまでは、教育はそれほど忙しくはありません。

 今はサライさんとティナちゃんくらいですから」

 ふーん。

 

「まあ、何か商売のアイディアがあるのなら、カラダンと相談してみたらどうだ?

 ザビルの責任者はカラダンだからな」

「はい、相談してみます。カラダンさん、よろしくお願いします」

 カラダンは苦笑している。

 

 従来からの従業員とのコミュニケーションを深める一環で頑張ってもらおう。

 

 

「そして、買い取りには呪文の詠唱が必要だ。

 ここに防具鑑定の詠唱呪文をメモしてきたので、練習しておいてくれ」

「はい。ありがとうございます」

 防具商人にジョブ変更して詠唱した時に記録したメモも渡した。

 

 亡くなった旦那さんがやっていただろうから、覚えているかもしれないけど。

 

「今回再開する店は君にとってはなじみ深い店だろうが、そこで寝泊まりする訳ではない。

 だから、朝行って防具を並べて、夕方戻る時に防具を回収して帰ることになる。

 大変だと思うが、防犯対策のためだ。そこは理解してほしい」

「はい、大丈夫です」

 通いなので、店舗兼住宅に比べると面倒だけど仕方ない。騎士団員に夜警までは頼めないし。

 

「人の配置はどうする?

 店舗はサライとティナの二人だけで良いか?

 必要ならアイテムボックスが使えるピコを一時的に入れるか?護衛を増やすか?」

「店を再開して1、2日ぐらいは私も同行しようかと思っています。

 ピコとモニカさんも連れていくので、少し大人数になりますが」

「最初のうちは想定外のことも起きるだろうから、それは仕方ないだろう。

 奴隷商館の引継と並行になるので、無理のない範囲でやってくれ。

 こんなところかな・・・・・・」

 

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 ドアがノックされたので、ミシェルが向かった。

 入室してきたのは、マルクとコルト・・・・・・それと見知らぬ男。

 神経質そうな壮年の男性だ。新しい奴隷か?

 

 その男を見るなり、サライが床に手をついて、土下座の状態。

 

「この度は誠に申し訳ありませんでした」

「・・・・・・」

 この世界にも土下座ってあるのか。

 

 そして、この男は防具屋の亡くなった旦那さんに100万ナール貸していた男か。

 

 

「顔を上げて下さい。商売で成功・失敗は世の常です。

 あなた方もそうですが、私も失敗から学べば良いのですから」

「はい。ありがとうございます」

 予想外に常識的な言葉。バラダム家のドーリットルにも聞かせてやりたい台詞。

 

「えーと、それで何か用事でも?」

「はい。少しタケダ様に相談に乗っていただきたくて・・・・・・」

 面倒事が起きる気配だなぁ。

 

 

「ご存じかと思いますが、子爵様から私どもの所に防具屋さんの借金のことで話がありまして」

「詳しくはこちらも把握してないのですけど・・・・・・」

 子爵様が話をつけると言ってたことぐらいしか知らない。

 

「私が防具屋の借金のことはなんとも思ってないと言っても、信じてもらえないのですが・・・・・・」

「なるほど」

 ないことの証明は困難だからな。

 

「それなら、その懸念と異なることをすれば良いのではないですか?」

「えーと、それはどういう意味でしょうか」

 なんだっけ背理法という奴だっけ。

 

「そうですね。このサライはこれから防具屋を再開しようとしています。

 あなたは、それを支援する立場を一貫して取り続けるのです。

 あの元防具屋の店舗を借りる権利は今あなたが持っているのでしたっけ?」

「はい、その通りです。

 季節の終わりまで、亡くなられたご主人が借りていましたので、

 借金返済の代わりに私がその権利をもらいました。

 実際には今その家では何もしていませんし、売れ残った防具もそのまま置いてありますが」

 なるほどね。

 

「それなら、その店舗を無償で貸し出すなどとおっしゃったらどうでしょうか?

 もし、あなたがサライ達に悪意を持つ者だとしたら、普通はそんなことしませんよね?

 今言ったように防具屋を再開するのに、支援したり賛同したりする立場を取り続ければ、

 それが子爵様の疑いを晴らすことに繋がるのではないでしょうか?

 そして、その立場を取り続けていることを

 マルクやコルトが第三者の立場で子爵様の配下の方に説明すれば、

 より納得していただけるのではないでしょうか?」

「な、なるほど・・・・・・それは確かに。

 店舗を無償を貸すだけでなく、売れ残った防具を再開する店に寄贈するのも良いかも」

 えっ?それはいくらなんでもやり過ぎでは?

 

 店舗を使う期間なんて短いから賃借料も大した金額ではないだろうけど、防具は違うだろう?

 

「そうですね。そうしましょう。タケダ様がおっしゃっていたことをそのまま実践しましょう。

 あの店は自由に使っていただいて構いません。鍵も後でお渡ししましょう。

 防具は置いてあるものを全部お渡しするので、好きに売ってしまってください。

 では、マルクさんとコルトさんは私が防具屋をそのように支援していると

 子爵様の配下の方にご説明していただけますでしょうか?」

「はい。確かに承りました」

 いやいや、それは拙いのでは?

 

 防具の一部でも売り払えれば、借金の一部を取り返せるかもしれないのに。

 それをタケダ家の防具屋で売り払って儲けるというのは、さすがに良心の呵責が・・・・・・。

 

 

「いや、ちょっと待って下さい。そんなに簡単に決めてしまっても良いのですか?」

「問題ありません。子爵様の疑いを晴らせればよいのです。

 そもそも、お金を貸して全額戻ってこなかったにもかかわらず

 子爵様の信用を失うなど、これ以上の損失は御免被りたいのです。

 いや、タケダ様に相談して良かった。

 今後とも、よろしくお願いします」

 お辞儀をされたので、お辞儀で返すのは元日本人の性。

 

 元々は俺が防具屋再開の課題を子爵様に説明したのが発端だったのだよな。

 これってマッチポンプ?自作自演?

 いや、俺はそんな意図は全くなかったのだけど。

 

「では、これで私は失礼いたします。後ほど鍵を届けさせますので」

 三人は笑顔で退室していったのだが、これでホントに良かったのだろうか。

 

 

「防具屋を再開する条件が全て、整ってしまいましたね」

「ソウダナ・・・・・・」

 カラダンの言葉に頷くしかないのだが。

 

 このまま防具屋を再開するしかないのだろうか。

 なんだか納得いかないのだが。

 

・・・・・・

 

 その後は防具屋を再開するための段取りを更に詰めることに。

 さすがに今日の明日で営業の再開は無理なので、騎士団員の護衛がつく最短の日を明日にでも確認してもらってからということにした。

 『直ぐにでも派遣するぞ』と言い出さないよね?

 

 というか騎士団の護衛って、もはや不要な気もするけど。

 今になって不要ですとは言えないので、そのまま使わせてもらうが。

 実際、護衛としては便利だし宣伝にもなるだろう。

 

 タケダ家側で用意することにした防具はクーラタルの倉庫から俺が引っ張り出して、ピコのアイテムボックスに入れて管理してもらうことにしよう。

 冒険者のジョブはやっぱり便利だ。

 ザビルでピコは商人として登録したから、おおっぴらにアイテムボックスを使えないけど。

 

・・・・・・

 

 クーラタルの自宅と往復して防具を運び、ザビルの防具店再開の条件はなんとか整えた。

 

「もし、問題があるようならピコを通じて、クーラタルのエネドラに伝言してもらえるか?

 緊急の対応が必要なら、俺がザビルに向かうので」

「承知しました。旦那様。

 私も明日から手が空くので、防具屋の手伝いができると思いますから大丈夫だと思います。

 急ぎでなければ夜の会議の時にでも相談しますから」

 申し訳ない、カラダン。引継対応をしていたはずだったのにな。

 

 

 五人に見送られて商館を後にし、ワープで自宅に戻った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。