異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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026.二回戦(その1)

 ザビルの防具屋再開に向けて支援をした翌日も真面目に朝練に参加。

 

 サボーとの決闘で痛い目を見てから、剣技を磨くことに注力している。

 この家にはタイプの違う戦い方をする者が揃っているので、練習相手に事欠かない。

 

 剣技に長けたレドリック、スピード重視のイレーネ、攻守にバランスの取れたヴィルマ、中距離攻撃に長けた移動要塞のオリビア、守りの堅いミラとマヤ、連携の上手い双子等々。

 

 今日は堅実な戦い方をする槍使いのヘルミーネやフラウスと連戦して勝利した。

 今はミラとケリーの模擬戦をレドリックと見学中。

 

「ケリーは段々、ヴィルマの戦い方に似てきてないか?」

「はい。訓練や食事等、迷宮以外では一緒に行動しているのが多いからでしょうか。

 訓練の時には二人で模擬戦をやっているのが非常に多いですね」

 ケリーは剣術指南所ではニムラルのおっさんから稽古をつけてもらっていたのだよな。

 

 今は百獣王の先輩であるヴィルマが師匠と。

 

 一方で同じ百獣王のマリーの師匠は刺客のジョブを持つイレーネ。

 こちらはスピード主体の戦い方が似てるから師弟関係なのかな。

 

「ミラの武器は今、迷宮で使っている片手剣とは違う武器なのではないか?」

「そうみたいです。いくつかのパターンを試すと言っていたので。

 今の木刀は迷宮では使っていない種類のものです」

 鍛冶師にして剣匠のミラは自分で武器生成しながら、武器の工夫に余念がない。

 

 『鍛冶師にして剣匠』って、なんだか格好良いな。

 『百鬼夜行にして遊び人』の俺はなんだか訳分からない存在だが。

 

 それはともかく、今ミラが使っている木刀は剣先が武器全体の半分ぐらいの長さだ。

 所謂、長巻って奴だろうか。

 先端の方にわずかに反りがある。

 

 全体を長くすることで中距離も近距離もカバーできる気がするし、かなり興味がある。

 

 それにしても、その二つの長巻型片手剣の持ち手の部分をくっつけて、両手武器にするようなギミックはできないだろうか。

 いわゆるガ●ダムに登場したゲ●ググのビー●ナギナタだ。

 あれは格好良い。クルクルと回して威嚇したりとか・・・・・・いせはれでは無理か。

 

 そもそも、二つの装備品を合体させるといった装備品は見たことも聞いたこともないし。

 

 普通に片手剣の長巻型武器をミラがブラッシュアップして実戦に投入してもらうのを待つか。

 槍っぽい片手剣は俺が両手武器の槍を二本持てるから、あまり興味が湧かないのだよなぁ。

 

 ケリーが動き回りながらフェイントを織り交ぜ、変幻自在の斬撃を加えるのを盾と長巻型木刀で全てミラが防御している。

 見ているだけでも面白い。なかなかの白熱した戦いで15才同士にはとても見えない。

 でも、レドリックに言わせるとまだまだ基礎練習が足りないとの指摘だ。

 

 元の世界の経験とこちらでのチート能力、複数ジョブと迷宮での経験で俺も少しは剣技に自信がついてきた。

 それでも、ケリーやミラに何を教えてやれば基礎が身に付くかと訊かれたら答えられない。

 レドリックは彼自身の剣技の高さもさることながら、教える技術があるのが素晴らしいと思う。

 教師役がしっかりしていれば、タケダ家の人員はもっと強く、更に厚みが増すことだろう。

 

 

 結局、ミラとケリーの模擬戦は引き分けに終わった。

 ケリーの攻撃を凌ぎ切ったところで時間切れにした。

 いつまで経っても終わらないからな。

 

・・・・・・

 

 朝食を終えて、ご機嫌のヴィルマとイレーネと共に皆でターレ迷宮へと向かう。

 

 ターレ迷宮の攻略はこの世界に来てから120日目までを目安に達成すると計画していたよな。

 今日が79日目だから、あと40日程度か。

 出現したばかりの若い迷宮で、今34階層まで走破したから残りは16、17階層ぐらいか。

 ボーデやハルバーの探索の進捗を知りたいけど、入口の兄ちゃんは知らないみたいだしなぁ。

 あちらの二つも迷宮のどちらかが討伐され、騎士団がこちらに移動する前に討伐したい。

 

 入口に着くと、その兄ちゃんの近くに人影が見える。

 おいおい、このパターンが最近多いぞ。

 

 

(索敵)

 

 

 えっ?

 

 グレーの点が1つ、赤い点が1つ、青い点が2つ見えるのだけど、なんだこれ?

 敵味方の識別色だから、あり得ないことではないのだろうが、この見え方は初めてだ。

 ゴッゼル士爵家の連中がこちらに遠征してきたのではないだろうな。

 

 グレーの色の兄ちゃんへ慎重に近づいていく。

 見えた中でも一際デカい体の女性・・・・・・この者はサボーと決闘した時にいた竜騎士の女性だ。

 それと見知らぬ女性二人・・・・・・じゃない、一人はドーリットルだ・・・・・・けど、その頭は?

 

 頭の両脇のデカいドリル2つが無くなっている・・・・・・というかショートヘアになっている。

 ここに彼女がいるのもおかしいけど、その髪型はどういうことだ?

 

 そして、騎士団員の兄ちゃんの顔を見ると魚の死んだような目をしている。

 公爵領の男性は、皆こんな目になっていくのだろうか。

 

 軽く手を振って、近づいていくのだが反応が薄い。

 ただ、ドーリットルはこちらに鋭い眼光を向けてくる。

 

 何も見えないフリして、迷宮の入口に入ろう・・・・・・。

 

「どこに行くのですか?」

「見ての通り、迷宮に・・・・・・」

 兄ちゃんが俺に絡んでくる。

 

 おかしいな。絡んでくるなと電波を送ったはずなのに。

 

「そこのお三方が貴方達に用があるらしいです。というか決闘の申し出です」

「はあぁ?」

 この前、決着つけたよね。

 

 アミル達と共に、四人から少し離れて密談。

 

「決闘って一度勝敗が決まったら、再度の申し入れってできるものなのか知っているか?」

「家同士の場合は報復の連鎖を防ぐために、

 勝敗が決まってからの再戦はできなかったと思います。

 ひょっとしたら、一定期間経てばできるのかもしれませんが」

 原作でも引き分けだったから次戦に移行したけど、俺とサボーの決闘は完全決着だったよな。

 

 アミルが言ってる一定期間って、まさか2、3日ぐらいなのだろうか?

 考えても分からないから、騎士団の所に行ってルールの確認をするしかないか。

 ここで決闘にいきなりなっても困るし、それだと決闘ではなく私闘だよな。

 

 

 兄ちゃんの所に戻って、今後の相談。

 

「ボーデの城に行けば良いのか?」

「そうですね。私も仕方ないので同行します」

 やっぱり、『仕方ない』って言ってるし。気持ちは分からなくもないが。

 

 それにしても、残りの一人の見知らぬ女性はジョブが魔法使いだ。

 この前、サボーと決闘した際にいた魔法使いは男性だったから別人という訳か。

 

 三人しかいなくて、獣戦士と竜騎士と魔法使いってどういう組み合わせだ?

 剣匠や冒険者の奴はどこに行った?

 ここからの移動はどうするつもりなのだろうか。

 

「えーと、移動は・・・・・・こっちのパーティに入るか?」

「はい。私を加えて下さい。

 あと、あの三人の方はターレの冒険者ギルドに行ってから移動すると思います」

 バラダム家の者が冒険者ギルドにいるってことなのか。

 

 なんで別行動しているのだろうか。

 それとも、冒険者に頼んで移動するのだろうか。

 よく分からないが、相手の都合だから気にしても仕方ないか。

 

 兄ちゃんがドーリットル達に声をかけて、俺達は移動することにした。

 ボーデの冒険者ギルドを出て、城に向かいながら兄ちゃんから事情聴取。

 

「決闘って、勝敗が決まったら再戦を申し込めないのではないか?

 あいつらは何故、再戦してきたのか知っているか?」

「えーと、私の口からは申し上げられません。騎士団長から説明を受けて下さい」

 また、ゴスラー騎士団長の出番なのか・・・・・・気の毒な。

 

 城に着いたので、騎士団の詰所にそのまま入った。

 今回は俺だけでなく全員で室内に入らせてもらえた。

 難しい顔をしたゴスラー騎士団長がいるが、気軽に声をかけられる雰囲気ではない。

 

 目は魚の死んだような感じではないが、生き生きしているという訳でもない。

 あえて言えば、面倒臭いという感じか?

 俺も同感だが。

 

・・・・・・

 

 結構、時間が経ってからドーリットル達三人が詰所に入ってきた。

 入ってきたのは先程の三人で他の者は増えていない。

 どういうことだ。この三人で順番に戦うつもりなのか?

 索敵で見たドーリットル以外の二人が青色なのはどういうことなのだ?

 冒険者や探索者不在で決闘するつもりなのか・・・・・・本当に訳わからんな。

 

 

 関係者が全員揃ったからなのか、ゴスラー騎士団長が口を開いた。

 

「事前にこの者の決闘の申し出を受け、彼女が自由民であることは確認されている。

 決闘を行う相手や理由、条件を述べよ」

 

「私は自分の誇りを守るために、この奴隷女に決闘を申し込みます。

 条件はこの者との決闘を主である者が許可し、代理を立てないこと。

 その条件を守るのなら、私の後ろに控えている二人を

 この女の主人に差し出します」

「はあぁ?」

 ドーリットルは何を言ってるんだ?

 

 俺ではなくヴィルマとの決闘だと。

 確かにサボーとの決闘が始まる前に彼女が申し入れていたのはヴィルマだ。

 竜騎士と魔法使いをもらえるからといって、ヴィルマの決闘など許可できない。

 

「その者は決闘を受けるのか?」

「異議があります。

 私は先日、この者の家・・・・・・バラダム家の当主と決闘を行い、勝利しました。

 決闘に負けた方は勝利した家の者に再戦などできないのではないでしょうか?」

 ゴスラー騎士団長の言葉に反論するしかない。

 

「決闘を申し出た者はバラダム家の家名を持つ者ではない。

 故に決闘の申し出を行うことはルールに抵触しない」

「えっ?」

 何を言ってるんだ。

 

 鑑定すると・・・・・・ドーリットルの家名が見たことのない名称になっている。

 バラダム家から離脱してきたのか・・・・・・この決闘をするために。

 

 なんとか、他に回避する手段は・・・・・・。

 

「異議があります。

 決闘を行う者が差し出すと申し出ている二人は恐らく奴隷だと思いますが、

 彼女が死んだら、その二人も後を追うことになるのではないでしょうか?

 決闘に勝利しても二人を引き取ることができないのなら、

 条件を成立させられず無効な申し出だと考えます」

「その奴隷二人の所有者はいません。なので、私が死んでも二人は道連れになりません。

 疑うのでしたら、インテリジェンスカードを提示させれば分かることです」

 所有者なしの状態にしているのか。

 

 それって酷くないか。なにかあったらどうするつもりなのだ。

 

 ただ、それであの二人が青色になった理由も推察できるな。

 ドーリットルに敵対しているのではないか。

 

 彼女に敵対していても所有されていたら俺から見れば赤色だろうが、所有されてなければ青色になるのかも。

 敵(赤)の敵(赤)は味方(青)ということで。

 

 ゴスラー騎士団長は竜騎士と魔法使いの女性二人のインテリジェンスカードを確認した。

 

「この者達の所有者はいない」

「分かってくれましたか?」

 ゴスラー騎士団長の言葉を受け、ドーリットルは俺に敵意の籠った視線を向けてくる。

 

 

「主、この女との決闘をあたしにやらせてほしい」

「いや、それはダメだろう」

 やれば、9割以上の確率でヴィルマが勝つだろう。でも1割は危険だということだ。

 

 

「主はこの前の決闘で負傷していた。今度の決闘だって絶対安全だと言い切れない。

 だったら、あたしにやらせてほしい。

 主を守るのはあたしの役目だ」

「・・・・・・ダメだ。俺がやった方が確実にあの女を仕留められるだろう」

 俺は守られる立場ではなく、守る立場にいたいのだよ。

 

 

「あたしが戦わずに主に戦わせたら、自分はなにものでもなくなってしまう。

 主はあたしのことを主の右腕だと言ったじゃないか。

 だったら、あたしに戦わせてほしい!」

「・・・・・・ダメだ。お前が危険を冒す必要がない」

 俺を見上げる彼女の目は涙目だ。

 

 

 不意に彼女は俺の頭を抱えて、唇で俺の口を塞いだ。

 

(・・・・・・!)

 

 人前で・・・・・・ってか、ゴスラー騎士団長達の目の前でなんちゅうことを。

 それに、これで俺が許可出すとでも思っているのか。

 

「ダメだ・・・・・・分かってくれ」

 彼女は子供のように嫌々と首を横に振っている。

 

 

「戦わせてやれば?その女にこいつが負けるとは思えない」

「私もご主人様が戦うのは反対です」

「ユキムラ君を守るのがあたしらの役目だよ。その娘の願いを叶えてあげなよ」

 お前ら、ヴィルマを煽るなよ。

 

 

「その女が負けると思うのなら、主である貴方が相手でも構いませんよ」

「!」

 この野郎、言いたい放題言いやがって。

 

 

 ヴィルマ達をずっと守ってやれば良いという考えは違うということも理解している。

 分かっているのだが・・・・・・。

 

 

「あたしを信じてほしい・・・・・・あたしだって、この前の決闘で主を信じて見ていたのだから」

「・・・・・・分かった。決闘を受けることを認める」

 ズルいぞ。そんな言葉を出されたら、認めざるを得ないだろう。

 

 俺がヴィルマを信じてない訳ではない。危険な目に遭わせたくないだけなのだが。

 決めたのだから彼女の勝利のために全力で準備をしよう。

 

 

「だが決闘の決断を行う前に、俺に差し出すと言ってきた二人に確認したいことがある。

 俺達に危害を加えないかどうか確認したいので、俺とその二人だけにして話をさせてほしい」

「?・・・・・・心配性ね。別によろしいですわよ」

 始める前に疑問を解決してから臨みたい。

 

・・・・・・

 

 俺と竜騎士、魔法使いの女性を残して、他の者は全員退出した。

 

 

(鑑定)

 

 

ドロテア(人間族 女 24才 奴隷)

魔法使いLv18

装備 スタッフ 革の鎧 皮の靴

 

 

フレイヤ(竜人族 ♀ 17才 奴隷)

竜騎士Lv12

装備 鉄の剣 鉄の剣 革の鎧 皮の靴

 

 

 この二人は索敵で確認した色は青色。家名は特にない。

 だが、どういう経緯でドーリットルに差し出されることになったのかは不明だ。

 装備品は全く以って貧相だな。俺がこの前の決闘で取り上げた余波だろうか。

 

 ドロテアは落ち着いた感じの仕事できます感を漂わせている女性だが、若干疲れた雰囲気を漂わせている。

 こんな決闘騒動に巻き込まれたのだから仕方ないか。

 同情するし、共感もする。

 

 一方でフレイヤの方は元気もありそうだし、目も生き生きとしている。

 17才で竜騎士Lv12なのは、バラダム家で鍛えられた成果なのだろうか。

 今回、バラダム家の連中は皆レベルが高いのだよな。

 

 それと比べると、この二人は少しレベルが低いように思うが、二軍だったのだろうか。

 

 

「悪いが君達のことを教えてほしい。

 君達は今はバラダム家の奴隷ではないのだな?」

「タケダ様、私の名前はドロテアと言います。ジョブは魔法使いです。

 この娘の名前はフレイヤでジョブは竜騎士です。

 私達は元々はバラダム家のあの女の所有奴隷でしたが、

 昨日あの女に連れられて、バラダム家とは別の家の奴隷ということになりました。

 そして奴隷商人の所に行き、今は誰の所有奴隷でもない扱いにされました」

 フレイヤという竜騎士の女性も頷いている。

 

 そして、彼女の話はドーリットルの言ってたことを裏付けているのか。

 

「彼女がバラダム家を抜けたのは、我が家に決闘を申し込むためなのか?」

「はい。その通りです」

 それ以外にはないよな。

 

「バラダム家がよくそれを許可したな?」

「あの女が個人的な財産を全て差し出して、

 別の家名を継ぐことを無理やり納得させたのだと聞きました。

 バラダム家が没落することは間違いないので、別の家に分離させて生き延びようとしたのかと。

 新しく当主になった者が、バラダム家を二つに分けることを了承したらしいです。

 ただ、分けるにしても半分にしたのでは目立ちますので、小さな家に分けたと言ってました。

 この話はバラダム家に残った者から聞いたので、多分間違いないことだと思います。

 私とこの娘は元々、あの女の所有奴隷でしたので持ち出しやすかったのかもしれません」

 なるほど。髪の毛を切ったのは、あのデカいドリルだと目立つからだろうか?

 

 新当主はドーリットルの味方をしたのかもしれないな。真相は別かもしれないが。

 

「では、彼女の味方は君達二人だけなのか?探索者や冒険者の仲間はいないのか?」

「私達はあの女のことを憎んでいるので味方でもなんでもありません。

 それでも決闘であの女が勝てば、彼女の所有奴隷に逆戻りです。

 ですから、タケダ様達には是非、あの女を決闘で打ち破ってほしいのです。

 今の家には探索者や冒険者のジョブの者はいません。あの女と私達の三人だけです。

 ですが、さきほど探索者ギルドで探索者を雇って、パーティに入れてもらいました。

 金で雇っただけの探索者はLv9の男で、今も探索者ギルドにいると思います」

 なるほど。パーティさえ組めれば、いったんはそれでパーティ効果を共有できるからか。

 

 竜騎士はともかく、魔法使いの効果は微妙だが。

 それにしても家を分けたのなら、大人しくしていれば良いのに。

 

「別の家での再起を図らずに決闘を申し込んだのは彼女の独断か?」

「恐らくは。バラダム家の新当主は多分知らないと思います」

 そこまで俺を・・・・・・ヴィルマを憎んでいたということか。

 

 家の力を取り戻してから復讐する方が合理的だろう。

 冷静な判断力を失っているのか。それとも別の意図があるのか。

 

 

「分かった。それでは最後の質問だ。

 うちのヴィルマが決闘に勝ったら、タケダ家に来るつもりはあるか?

 別の家に奴隷として売られたいのなら、それも選ばせてやる」

「貴方様に忠誠を誓います」

 ドロテアとフレイヤの二人は膝をついて頭を下げた。

 

「君達の意思は理解した。話はこれで終わりだ」

 

 ドアを開けて近くにいた騎士団員に声をかけ、退室した人達を呼び戻してもらった。

 

・・・・・・

 

 やがて、全員が部屋に戻り、ゴスラー騎士団長が言葉を発した。

 

「では、改めて決闘に際しての確認を行う。

 この者の決闘の申し出を受け、彼女が自由民であることは既に確認されている。

 決闘を行う相手や理由、条件を述べよ」

 

「私は自分の誇りを守るために、この女に決闘を申し込みます。

 条件はこの者との決闘を主である者が許可し、代理を立てないこと。

 その条件を守るのなら、私の後ろに控えている二人を

 この女の主人に差し出します」

 ドロテアとフレイヤの顔は厳しい表情だ。自分達をモノ扱いされて気分の良い訳がない。

 

「其方は決闘を受けるのか?」

「受けます」

 ヴィルマが毅然とした態度で返事をした。

 

「代理人を立てるか?」

「立てません」

 俺が言うのではなく、ヴィルマが言うのか。

 

「それでは申し出に従い、自力救済の原則に則って決闘を行うことが決定された」

 ゴスラー騎士団長が高らかと宣言した。

 

 自由民は片方だけなのだけど、救済しているのはドーリットル側だけなのかな。

 ヴィルマの主人である俺も救済されているのだろうか?

 救いを全然感じられないのだが。

 

 

「では、この後直ぐに決闘を行うので、決闘を行う者は付いて参れ」

 あれっ、書類を用意して署名しないの?

 

 面倒くさいから逃げたな、ゴスラー騎士団長。気持ちは分かるが。

 

 彼に従ってヴィルマが続き、俺の目の前をドーリットルが通り過ぎた。

 

(・・・・・・)

 

 小声で彼女が俺に呪いの言葉を吐いた。

 

 彼女の目は鋭く俺を睨みつけ、それでいて口元には笑みを浮かべている。

 勝った気でいるのだろうか。

 

 

 近くで鑑定した限りでは、彼女の防具は革の鎧、鋼鉄の額金、革のグローブ、革の靴。

 身代わりのミサンガは付けていない。

 

 武器は石化添加のスキルを持つ硬直のエストックだ。

 彼女の自信の源はコレなのか。

 

 それにしても、防具はサボーとこの前決闘をした時と比べると貧相の一言だ。

 装備品を取り上げた俺が言うのもアレだが。

 

 ドロテアとフレイヤの二人はここに残るようだ。

 彼女達は今は身内ではなく、モノ扱いなのだろうか。切ないな。

 俺達も騎士団員に連れられて、見学席の方に向かった。

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