異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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(お知らせ)
 明日(12/22)の投稿ですが、諸事情があり休載とさせて下さい。
 次回投稿は12/23(火)夜の予定となります。
 ご了承願います。


027.二回戦(その2)

 決闘の見学できる場所に着くと、ヴィルマとドーリットルが対峙する姿が見えた。

 俺達のいる場所からは結構遠いな。二人の表情はなんとか見えるが。

 その近くには当然ながら、見届け人を務めるゴスラー騎士団長が立っている。

 

 二人とも結構、厳しい表情をしているな。

 決闘だから当たり前かもしれないが。

 俺もあんな顔して、決闘に臨んでいたのだろうか。

 

 プロレスじゃないから、合図があるまでは乱闘に突入したりはしないと思うがヴィルマが血気にはやって、つっかけなければ良いのだが。

 自分が参加する決闘じゃないと、余計なことをまで心配してしまう。

 

 

 ヴィルマの装備は、タケダ家の標準装備だ。

 

ヴィルマ(虎人族 ♀ 17才 奴隷)

百獣王Lv52

装備

 激情のダマスカス鋼剣(攻撃力2倍、麻痺添加、HP吸収、MP吸収)

 頑強の竜革のジャケット(物理ダメージ削減、空3)

 耐火のダマスカス鋼額金(火耐性、水耐性、風耐性、土耐性)

 耐毒の竜革グローブ(毒耐性、石化耐性、睡眠耐性、麻痺耐性)

 竜革の靴(空4)

 身代わりのミサンガ

 

 もう少し、靴や胴装備にスキル融合しておけば良かったと思ってしまう。

 なんだか、いつも後悔してばかりの気がするな。

 

 

 武器はヴィルマがいつも迷宮で使っているダマスカス鋼製の両手剣だ。

 デュランダルを使うことを勧めたのだが、普段使いの剣を使いたいと言われて断られた。

 彼女の真っすぐな凛とした表情にドキッとしてしまった。

 そういえば原作のヒロインも似たようなことを言ってたかな。

 

 

 ドーリットルが革製の防具で貧相なのに対して、防具性能では圧倒している。

 硬直のエストックに対してもグローブに石化耐性のスキルが融合されている。

 

 ドーリットルのジョブが獣戦士Lv45に対して、ヴィルマは百獣王Lv52。

 レベル補正の観点でも有利なはずだ。

 

 だが、ヴィルマはニムラルのおっさんには勝てなかったという現実もある。

 おっさんは確か獣戦士Lv46だった。

 今なら勝てなかった理由がうっすらと分かっている。

 今日の決闘では状況が異なるのでヴィルマの有利は動かないと思っている。

 

 それでも油断はできないから、準備も万全にしてある。

 

 俺のセブンスジョブはサボー戦とほぼ同じだ。

 

百鬼夜行Lv65 勇者Lv65 英雄Lv65 遊び人Lv65 鬼武者Lv51 剣聖Lv60 沙門Lv63

 

 全ての能力を上げる勇者、英雄をセット。

 腕力、体力、敏捷を上げる百鬼夜行と腕力と敏捷が上がる鬼武者と剣聖をセット。

 

 遊び人には勇者の敏捷大上昇と博徒の状態異常耐性ダウンをセットした。

 今日は博徒のスキルをドーリットルに使うつもりだ。

 全体回復を使うので禰宜をセット。

 

 無詠唱だからできる援護だ。

 卑怯だなんだと言われても知ったことではない。

 負けたらヴィルマを失うのだから、それに比べれば卑怯者と言われても何とも思わない。

 気付かれないから言う者もいないだろうが。

 

 

 石化耐性のスキル融合装備があっても硬直のエストックは怖い。

 パーティライゼイションで柔化丸を使用した石化対策も念のため準備してある。

 

 でも、ちゃんと予行演習もしておかないとな。

 僧侶や神官系の治癒魔法でカバーしてきたから、パーティライゼイション使うのは久しぶりだ。

 迷宮組でも状態異常回復を最後に使ったのはかなり昔の話だ。

 

 

(パーティライゼイション)

 

 

 ヴィルマをターゲットにして口に含んだ柔化丸を使用。

 RPGで所有アイテムを他人に使う感じだ。

 石化してないから何の変化もないし、ボーナス魔法を使われた当人は全く気付いていない。

 でも、それで良い。ただの練習なのだから。

 練習しておけば咄嗟の時でも直ぐに行動できるだろう。

 

 

 他に何か準備があるだろうか・・・・・・思いつかないな。

 あっ、いよいよ始まるな。

 

 

 二人が中央に寄るのを待って、ゴスラー騎士団長が右腕を上に掲げて、下に振り下ろした。

 ヴィルマとドーリットルの決闘が始まった。

 

 意外にもドーリットルは少し距離を取るように後ろに下がった。

 

 いや、意外でもないか。彼女の鎧は革製だ。

 ヴィルマの両手剣の前では紙に等しいというと言い過ぎだが、脆すぎる。

 一発喰らうと、どのぐらいダメージが入るのか分からない。

 竜騎士のフレイヤの効果でどの程度が軽減できるのか。

 

 

 それでも、軽やかにステップを踏みながら、ヴィルマの間合いに入ろうと小刻みに移動する。

 ヴィルマの横薙ぎの剣が一閃・・・・・・バックステップで大きく下がった。

 牽制の一撃を入れただけだろうが、革製の鎧では恐怖だろう。

 

 博徒の状態異常耐性ダウンのスキルを使いたいが、射程外で使えない。

 チッ、こちらに近づいてこいよ。

 こんな事になるのなら、無理に近づいてでも先にスキルをかけておくべきだった。

 こういうのも場数の問題か。ホントに後悔ばかりだ。

 

 彼女が俺達から遠い距離で意図的に戦うようにしているのかは分からない。

 先日奪った自爆玉を警戒している可能性はあるだろうか。

 こちらは自爆玉を使う気は全くないのだが。

 

 ヴィルマが前進すると少し下がって・・・・・・急に左右にステップを踏んで、硬直のエストックの刺突を2回繰り出して左に通り抜けた。

 刺突の攻撃をヴィルマが冷静に躱して、両者が再び間合いを取った。

 

 硬直のエストックの効果を出したければ、彼女はヴィルマに攻撃するしかない。

 でも、それはカウンターを喰らうリスクと天秤にかけなければならないはず。

 ヴィルマの両手剣の方がリーチが長く、硬直のエストックの攻撃範囲まで間合いを詰めるのはかなり勇気が必要な行動だ。

 

 

 今更だが、彼女が髪を短くしたのは戦闘の邪魔になるからだと思った。

 あれだけ防御力の低い鎧を装備して、左右の豊かな髪を揺らしながら戦うのは無理があるよな。

 できるだけ攻撃を避けるためには短くせざるを得なかったのかもしれない。

 

 ヴィルマが最小限の動きで相手に追随するのに対して、彼女は大きく回避行動を取っている。

 大周りの動きをするだけでなく、ステップを踏みながらわずかに体を揺らして的を絞らせないようにもしている。

 こんな動きをしているようでは、結構スタミナもメンタルも削られるのではないか。

 そこまでして、決闘で戦い・・・・・・勝ちたいのか。

 

 

 ん?先程から時折、ドーリットルとヴィルマにおかしな間というか、引っ掛かりがあるように見えるな。

 

「アミル、ヴィルマが剣を構えた時に、

 何か微妙な引っ掛かりがあるように見えたのだけど理由が分かるか?」

「多分ですけど、詠唱共鳴でスキル発動を潰されたのではないかと。

 ヴィルマさんがビーストスラッシュをかけようとしたタイミングで、

 あの女がビーストアタックの詠唱をして中断させたように見えました」

 詠唱共鳴って魔法使いだけではないのか。

 

「詠唱共鳴って、違うスキルでも発生するのか?」

「百獣王と獣戦士は同じ系列のジョブですから発生します。

 魔法使いと百獣王のようなジョブのスキル同士では共鳴しないはずですけど」

 知らなかった。

 

 それなら、双子は迷宮にいる時は共鳴しないタイミングでスキルを使っているのか。

 それはそれで凄い連携だな。阿吽の呼吸なのだろうか。

 

 

 ヴィルマは淡々と攻撃を回避し、たまに剣で受け流している。

 一方のドーリットルはスタミナが切れてきたのか、動きが徐々に悪くなっているように見える。

 硬直のエストックを使っているのに状態異常に持ち込めないから、焦りが出ているのだろうか?

 普段より大きく回避行動を取らなければならないことや、ヴィルマの斬撃のプレッシャーに押されているのかもしれない。

 

 それでもドーリットルは善戦している方だと思う。

 有利に思える点が全くないのに、表面的には互角に戦っているように見えるから。

 

 大きく回避しているので、ヴィルマの斬撃は当たってないようだが決着は意外に早いかも。

 このままだと、ドーリットルのスタミナか集中力が切れた時点で終わりだと思う。

 

 ヴィルマは初めに迎え入れた時はポンコツ娘だと思っていたが、命のかかった対人戦を何度も経験しているのでここ一番のメンタルは強い。

 今は百獣王のジョブの力と俺の複数ジョブの効果、高品質な装備品で死角のない状態だ。

 ドーリットルは迷宮探索の経験はともかく、対人戦の経験は少ないのかもしれない。

 

 

 それでも、すごく不安を抱えながら見てしまう。

 ・・・・・・女を好きになって・・・・・・決闘の戦いに送り出して・・・・・・こんな恐怖を味わうのか。

 迷宮でモンスターと戦っている時とは全く異なる感情。

 アミルやイレーネ、オリビアにも、いつかこんな気持ちを抱く時が来るのだろうか。

 

 暫くは膠着状態だったが、戦況が変化し始めた。

 

 ついにヴィルマの一撃がドーリットルの鎧に当たったようだ。

 深刻なダメージではなく、当たりは浅そうだが。

 

 ドーリットルの紅潮した顔に汗が滝のように流れて、空中に散っているのが見える。

 もう降参したらどうなのだろうか。

 お前が降参してくれれば、この不安もなくなるのに。

 

 

 だが、最後の奴隷二人を取り上げられ、恥を漱ぐこともできず・・・・・・では終われないのか。

 

 

 ヴィルマが更に一段階ギアを上げたのか、鋭く踏み込んで斬撃を入れる回数を増やし始めた。

 防戦一方になるドーリットル。

 

 必死に回避しながらも、いくつかダメージを喰らっている。

 あっ・・・・・・麻痺したな。

 

 急速に動きが悪くなり、ドーリットルの後退する速度がガクッと落ちた。

 終わりだ・・・・・・負けを認めろ。

 

 

 剣を構えながらジリジリ下がる彼女・・・・・・左手で何かを取り出そうとしている・・・・・・生薬で回復を図るつもりか。

 

 ヴィルマの横一閃の剣が彼女の左のグローブを払った。

 回復させないつもりか・・・・・・容赦ないな。

 

 

 もう、詰みだろう。終わりにしろ。

 

 

(・・・・・・止めるか)

 

 

 遠目にヴィルマの口元が動いている。彼女に何か語りかけているのか。

 いや、ビーストスラッシュだ。

 ヴィルマの剣が彼女の喉元に突き刺さり・・・・・・彼女は地面に俯せに倒れた。

 

 

(索敵)

 

 

 赤い点が消えた・・・・・・青い点のヴィルマしか見えない・・・・・・彼女は死んだのか。

 

 

 ヴィルマはゴスラー騎士団長の方を見て、何かを話しかけているようだ。

 そして俺の方に振り向き・・・・・・笑顔の表情が見える。

 怪我はなさそうだな。

 決闘中にも、空撃ち覚悟で全体手当をちょこちょこかけていたから問題ないはずだ。

 

 

「この決闘、ヴィルマの勝利とする。ハルツ公騎士団のゴスラーが確かに見届けた。

 両者死力を尽くした正当な決闘であると証言する」

 ゴスラー騎士団長の声が観客の少ない練兵場に響き渡った。

 

 

 仲間もおらず、一人で立ち向かい、一人で力尽きたのだ。

 所有していた奴隷も失い、家の再興もならずに。

 無駄死にじゃないか・・・・・・と思ったところで、彼女が仕掛けてきたのだから同情はできない。

 ヴィルマに何事も無くて良かったとホッとしている。

 

 

 決闘に勝利したヴィルマが俺達の席の近くまで戻ってきた。

 

「勝ったぞ。主」

「ああ、やっぱりお前は俺の右腕だ」

 右腕の甲の部分を左手でポンポンと叩きながら、彼女を称えた。

 

「主、これ・・・・・・」

 彼女が掌の上に乗せて俺に渡してきたのは小さな粒のようなもの。

 

 

 これは最近見た・・・・・・鑑定すると自爆玉だった。

 最後に遠くから飲み込もうと見えたのは回復用の生薬ではなく、自爆玉だったのか。

 

 ヴィルマを巻き添えにして自死しようとした?・・・・・・そこまでするのか。

 

 彼女は身代わりのミサンガを装備していたから死ぬことはないが、致命傷の判定が出なければ怪我はしたのかもしれない。

 最後の最後まで・・・・・・執念というかなんというか。

 

 ヴィルマは塀を乗り越えて、俺の席まで近づいてきた。

 抱き寄せて、俺の膝の上に乗せて・・・・・・また、抱きしめた。

 無事に戻ってきた・・・・・・今はそれだけで十分だ。

 

 

 ドーリットルが決闘の場に向かう時に俺に吐いた呪いの言葉が甦る。

 

 『愛する者を失う絶望をお前も思い知れ・・・・・・』

 

 サボーのことを思って、俺に向けて言ったのだろうな。

 二人が相思相愛だったのか分からない。

 

 この世界はいせはれの原作と似て非なる世界だ。

 ハインツの一味やサボー達と遭った迷宮も違うし、原作の主人公、ヒロインも見ていない。

 サボーがドーリットルの首を刎ねるかもしれないと予想したのは勘違いの可能性もある。

 原作と同じはずという俺の思い込みに過ぎなかったのかもな。

 

 

 それにしても、ここまで無謀な決闘に臨む彼女の気持ちが理解できない。

 サボーを殺した俺が憎かったのか、家の再興は無理と考えたのか、それとも別の感情なのか。

 今となっては確かめようもない。

 

 

 俺の胸元でヴィルマが呟いた。

 

「あの女は強く勇敢な奴だった。だから手加減はできないし、主のために殺すしかなかった」

「そうか」

 ドーリットルも殺されて認められるなんて結果を望んではいなかっただろうな。

 

 

 ヴィルマの気持ちの強さが勝利に繋がったのかもしれない。

 俺みたいに生かして負けを認めさせるなんて甘っちょろい考えでなく、殺す気でいたのだ。

 

 

 それでも彼女の父親とは違い、ヴィルマの記憶には残っただろう。

 

 

「でも、名前はなんだったっけな・・・・・・」

「・・・・・・」

 明日には忘れているかもな。

 

 俺もこの先、ドーリットルという原作のあだ名しか思い出せないかもしれない。

 

 

 イレーネが抱き合った俺とヴィルマの姿をジッと見つめている。

 嫉妬している?・・・・・・じゃなくて、『次の決闘はあたし』と思ってるのじゃないだろうな?

 

 もう決闘騒動は懲り懲りだ。暫くは御免被りたい。

 

 

「家に帰るか?そろそろ昼ごはんの時間だし。疲れただろう?」

「主、ごはん食べたら、午後から迷宮に行こう」

 ごはんも決闘もヴィルマにとっては栄養分なのかもしれない。

 

 決闘が終わったら次は迷宮とか、どれだけ元気なのだよ。

 

 

 気付くと、ゴスラー騎士団長が俺達を生暖かい目で見ていた。

 

「決闘に負けた者の装備品はどうするのだ?

 今回は誰も身内の者がいないから、引き取る先がないのだが」

「彼女の使っていた剣一本だけ、いただきます」

 硬直のエストックだけもらおう。

 

 そういえばサボーの時は、身内の者がインテリジェンスカードを回収していったが、ドーリットルの方は誰も引き取る者がいないのだろう。

 無縁仏みたいな遺体やインテリジェンスカードはどう処理されるのか他人事ながら気になる。

 

 

「分かった。後で持っていかせよう」

「あの女の所にいた奴隷のいる部屋に戻りますので、そちらへお願いします」

 ドロテアやフレイヤと合流して、自宅にとっとと帰ろう。

 

 五人で二人のいる部屋に戻った。

 

・・・・・・

 

 部屋に入ると二人は満面の笑みだった。

 パーティ効果でドーリットルが決闘に敗れたのが分かったのだろう。

 

「勝ちましたね?」

「ああ、うちのヴィルマは強いからな」

 本当は不安いっぱいで見ていたのだけどな。

 

「ヴィルマさん、ありがとうございました。これで家族の無念が晴らせました」

「?」

 ヴィルマには伝わっていないが、彼女の家も無体を働かれたのだろうな。

 

 フレイヤも頷いているということは、似たり寄ったりなのかもしれない。

 

「うちは迷宮探索をしている者が多いのだけど、二人は迷宮は大丈夫か?」

「あまり上の階層には行ったことがないので不安ですけど頑張ります」

 ドロテアは不安そうに答えているが、一方でフレイヤは笑顔で頷いてる。

 

 楽観的な前衛職と慎重な後衛職なのだろうか。

 でも、魔法使いと竜騎士が一度に加入したのは心強いな。

 レベリングがかなり必要になるとはいえ。

 

 ドロテアは魔法使いLv18か。せっかくだからイロイロ試してみるか。

 

 

 魔法使い系のジョブは今までラファ一人だったので、これで少しは負担軽減になるだろうか。

 フレイヤはオリビアとは多分タイプが違うだろうけど、竜騎士にはつい期待してしまう。

 

 迷宮の話は後でレドリックとも相談するとして、その前に気になることを確認しよう。

 

 

「もし、知っていたら教えてほしいのだけど、

 あの女はバラダム家から別の家へ独立すると決めた時から

 我が家に決闘をする準備をしていたのだろうか?」

「正確には分かりませんが、独立すると決めた時には家の再興をすると

 意気込んでいたように見えました。

 それが2日前から急に目の色が変わったように、決闘の準備をし始めたように思えます。

 独立する時には迷宮探索で身を立てようとしていたので、

 そのための装備や奴隷を準備していたようでした」

 それが急に決闘を決断するだけの心境の変化があったのか。おかしな話だな。

 

「自爆玉を持っていたのは知っていたか?」

「何かアイテムを取引に使って、質の良い装備品を手に入れると言っていたような気もします」

 元々は決闘のためではなく、再興のために隠し持っていたのか。

 

 サボーの時の装備を見ているから余計感じるのだけど、二回目の決闘の装備は貧弱過ぎる。

 もっと準備して、仲間もちゃんと揃えてから臨むべきだろう・・・・・・タケダ家としては困るが。

 

 バラダム家から、タケダ家に横槍を入れろと指示を受けたにしては不自然だし。

 うーん、考えても分からないな。

 

 

 サボーとの決闘の際にも感じたが、対人戦だと迷宮でモンスターと戦う時と勝手が全然違う。

 

 距離がそれなりにあるフィールドでスキルの射程を意識してどう動くのか。

 いや、決闘のように一対一で戦う状況ばかりとは限らないな。

 個人で突出することなく集団で連携できるような訓練もいずれはやるべきだろう。

 

 実際、ドブローでは同時にかなりの人数の盗賊を俺は相手にしたからな。

 あの時はほぼ一人で立ち向かった訳だが、そんな特殊な状況は稀だろう。

 

 複数人で動き回る敵に対して、正確にスキルを使う訓練も必要かもしれない。

 ドーリットルの今日の動きを見ると、集団戦闘の際に入り乱れてる時には博徒のターゲットを正確に捉えられるのか不安になる。

 乱戦の中でもスキル発動が正確にできるように連携したり・・・・・・ああ、アミルから教えてもらった詠唱共鳴も考えなければ。

 相手のスキルを潰す連携を磨く訓練も必要になるのか。

 

 この検討は思っていたよりも大変かもしれない。

 またレドリックやヘルミーネと相談する事案だ。

 何かテンプレートとなるような訓練方法を彼らが知っていると嬉しいが、どうだろう。

 

 

 暫くすると、ターレ迷宮の入口にいる兄ちゃんが硬直のエストックを持ってきてくれた。

 

「これが決闘の相手が使っていた片手剣です」

「確かに・・・・・・」

 鑑定すると硬直のエストックとなっているので間違いない。

 

「あとは、このまま引き揚げていただいて大丈夫ですよ」

 自分自身は大して何もしていないのにドッと疲れたよ。

 

「そうか、世話になったな」

「本当にそうですよ。この後、僕は報告書を作らされるのですけど。

 本業の迷宮監視よりも、決闘とか別のことで忙しいので勘弁してほしいです」

 そんなこと、俺達に言われてもなぁ。

 

 タケダ家側が決闘を申し込んでいる訳ではないのだから。

 不満げな兄ちゃんをなだめすかして、もう一度礼を言って詰所を後にした。

 

 

 適当な木陰からワープゲートを繋いでヴィルマ達を先に自宅に戻した。

 ドロテアとフレイヤを俺のパーティに加え、ワープゲートに押し込んだ。

 

 エネドラに説明しないとな。また怒られるのだろうか。

 今回、俺は決闘に参加していないからセーフだろうか?




お読みいただき、ありがとうございました。
ドーリットル嬢の本名は原作でも明かされませんでしたので、本作でも本名をあえて設定せず執筆したのですが、表現に苦労しました。
家名を変えたのに、その名称も表現しないまま。
何か適当に考えても良かったのですが、ドーリットルの名前を使いたかったので。
ただ、ドロテアとフレイヤに対しては、ドーリットル呼ばわりはできないのですよねぇ。
『あの女』呼ばわりで、書いていてちょっと嫌な気分でした。

原作登場のサブキャラで拙作で私が活躍させたかった三人の一人が彼女だったりします。
もう一人はゴッゼル士爵様で、最後の一人も二章で登場予定です。

ドーリットル嬢の強さをもう少し表現したかったのですが、ヴィルマを強くし過ぎたのと、話の良いネタが思い浮かびませんでした。
トレードマークのドリル髪を切らせてしまったのはどうかとも思ったのですが・・・・・・決意の強さを表現したくて・・・・・・上手くできたのかどうか。
彼女は登場して数話で退場してしまいましたが、残りの二人は長く戦乱を生き延びてほしいなと思っております。

詠唱共鳴についてですが、本作では同一系列のジョブの詠唱においては共鳴するとしました。
魔法使いと魔道士、剣士と剣匠は共鳴し、剣士と戦士は共鳴しないなど。
無詠唱の場合は(詠唱が完了するまでは)基本的に共鳴しないのですが、(無詠唱で)魔法発動後のリキャスト(クールタイム)中に別の者が詠唱すると共鳴するかどうかは検討中です。
詠唱した場合のリキャスト中の状態では、(無詠唱でない限りは)詠唱共鳴する設定にとしようと思っているためですね。

詠唱共鳴ネタは、二章でもそのうち記載する予定です。
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