一度、投稿した内容に修正を結構加えて、差し替えました。
原作では、全体攻撃魔法は対人戦では使えないという設定ですが、
それを見落として世界観を作ってしまったので、その辻褄を合わせるための修正となります。
御指摘いただきました読者の方に改めて感謝、申し上げます。
加えて、既に読了の読者様には申し訳ありませんが、修正した本話を再度お読みいただきたく。
だだっ広い荒野に三人で立っている。
「えーと、ここはどこなのでしょうか?」
「ドブローの街から少し離れた荒地だな」
俺の言葉にドロテアが首をかしげた。
ドブローの盗賊討伐をした際に、高台を転々とワープで移動した時に見つけた場所だ。
今回の実験をするのにうってつけの場所だったりする。
街道から離れていて、死角になっている場所だから人目につくことはない。
盗賊達が隠れていた場所の先にある荒野だから。
「迷宮ではなくて、こんな誰もいない所に何をしに?」
「そうだな。これからちょっとした実験に付き合ってもらうためだ」
これからやってもらうことの意味を彼女にどう理解してもらうか・・・・・・無理だな。
ヘルミーネとラファに貴族同士の戦いの話をレクチャーしてもらった際に、勝敗の鍵を握るのは魔法攻撃のタイミングだと聞いた。
詠唱共鳴があるので、貴族同士の戦いでは相手の魔法を潰すために魔法使いを連れていくことが多いらしい。
そして、全体攻撃魔法が決まれば、それで一気に勝敗が傾くのだとも。
原作では単体攻撃魔法は人に有効だが、全体攻撃魔法は人には無効と記載があった。
この世界では、迷宮では対人戦で全体攻撃魔法は使えないが野外での戦争では使えるらしい。
それでも、魔法使いの属するパーティ以外は味方であっても攻撃に晒されるので、使い方には注意が必要だとも。
そもそも、自分のパーティ以外に敵・味方の識別ができないのだろう。
なんにしても戦争がハードモード過ぎるだろう。
敵も味方も巻き添えになるとか。
そんなSRPGもあった気がするな。味方に当てて経験値を稼ぐとか。ちょっと違うけど。
ただ、その話を聞く限りはメテオクラッシュやガンマ線バーストのボーナス魔法も使えるということだ。
こちらは味方を巻き添えにしたら本当に洒落にならない。
そして、戦争でも使えるということは野外でも普通に使えるということだ。
ドーリットルとの決闘に勝利した後、ドロテアとフレイヤの二人を自宅に連れていき、エネドラ達に紹介した。
二人と一緒に昼食を食べた後に直ぐにターレ迷宮に行くのではなく、魔法の実験をしたいと迷宮組に相談した。
実験をする場所はドブローの荒野で当然、モンスターがいてもLv1。
行き先を聞くとヴィルマとイレーネ、オリビアは興味を失い、修練場に行ってしまった。
実験よりも訓練を優先と。
アミルだけが俺に付いてきた。
そして、実験に必要なドロテアも連れてきた。
彼女がいないとそもそも実験が成り立たない。
だが、自宅の玄関からワープで誰もいない荒野に連れてきたので絶賛混乱中。
「ドロテアさん、ご主人様のやることに対してイチイチ考えたら負けです」
「考えることに勝敗があるのですか?」
なんか頓珍漢な会話だが、俺の扱いが酷くないだろうか?
そんなことよりも実験の準備をしないと。
まず冒険者のアミルと魔法使いのドロテアでパーティを組んでもらって、俺は別パーティ。
俺の方には通常部隊、小荷駄隊共に誰も加入していない状態。
そして俺のジョブは騎士Lv50を1stジョブにして、2ndジョブに神官Lv50をセット。
ジョブは2つのみにして、他のジョブはセットしない。
騎士Lv50に対する実験で、神官は治療を即行うためにセットした。
僧侶系のジョブをセットすると精神の上昇効果があり、魔法の被ダメが軽減されてしまい、実験の目的にそぐわない。
俺の装備は、
ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)
騎士Lv50 神官Lv50
装備
デュランダル 硬直のダマスカス鋼剣 激情のダマスカス鋼剣 ひもろぎのスタッフ
頑強の竜革のジャケット 耐火のダマスカス鋼額金
ダマスカス鋼のガントレット 竜革の靴 身代わりのミサンガ
武器は実験に関係なく、鎧の方はいつもボーナス装備ではなくタケダ家の標準装備だ。
頑強の竜革のジャケットと耐火のダマスカス鋼額金をヴィルマから借りてきた。
四属性の魔法耐性があるダマスカス鋼の額金がタケダ家の標準装備。
この魔法耐性防具を装備した状態で、まずは実験を行う。
騎士Lv50を測定基準にして、魔法攻撃に対する被ダメがどの程度あるかを自分の身で受けて測定してみようということだ。
もちろんHPの数値が鑑定でも見えないから、体感による『個人の感想です』というもの。
ドロテアは今は魔法使いLv18なので、これでまず魔法攻撃を受けて体感する。
万が一の時のために身代わりのミサンガも装備だ。
というか、もしミサンガが切れたら、魔法使いLv18の攻撃で騎士Lv50は致命傷を負うのだという実験結果が得られる。
身代わりのミサンガがあるから、切れても死なないよね?・・・・・・信じているから。
ミサンガが切れなくて、中途半端にダメージを受けるとかなり痛いのは先日のサボーとの決闘で経験している。
嫌な経験だな。
ただのミサンガではなく、身代わりのミサンガであることを何度も鑑定で確認してしまった。
やっぱり怖いから・・・・・・でも、ドロテアの魔法使いのレベルが低いうちに実験しておきたいので今やるしかない。
その後は彼女のレベルを上げてみて、各Lvでどの程度のダメージがあるのかを騎士Lv50を基準に確認してみようという試みだ。
まあ、人体実験とも言えるかもしれない。
体感だから他人の感想を聞いても意味がないと思ったので、被験者は俺自身。
被験者と被害者って語感が似ているな。
騎士Lv50を基準にしたのはなんとなく。
貴族基準では、騎士Lv50は聖騎士のジョブが取得できるので、まずまずの実力者という意味で選んでみただけ。
騎士には精神微上昇の効果があるので、少しは魔法の被ダメが軽減され、Lv50ならまあまあ減るのかもしれない。
今、俺の控えのジョブには村人Lv50とか農夫Lv50や盗賊Lv50もあるけど、これで実験するのもなんだかなぁ・・・・・・と思ってやめた。
準備が整ったから実験を始めるか。
「ドロテア、その場所から俺に向けてファイヤーストームを放ってくれ。
魔法攻撃の耐性実験をするだけだから」
「は・・・・・・はぁ?正気ですか?」
大口を上げて叫んでいる。
意外に彼女は表情豊かだな。
非常識なことを頼んでいるという自覚があるので、彼女のせいではないが。
「ドロテアさん、考えたら負けです」
「えっ、これって勝ち負けの問題なのですか?」
慎重なのは良いことだが、時には大胆な勇気を持って危険に身を投じなければならない。
投じているのは俺なのだが。
「俺は身代わりのミサンガを装備しているから、魔法の攻撃を受けても死ぬことはない。
それに今、ドロテアは所有者のない奴隷扱いになっているから、
俺が死んでも運命を共にすることはないから心配ないぞ」
「心配する観点が違うのでは?」
意外に理屈屋だな。常識に囚われ過ぎているのではないだろうか。
「大丈夫です。
今までご主人様は数々の非常識な行動を取ってきましたが、
それに比べれば、今命じられてることは大したことではありません。
少なくとも、ドロテアさんに求められていることは普通の人ができることです」
「えっ?ええぇ・・・・・・?」
ア、アミル・・・・・・。
俺が求めた非常識なことってなんだろうか。
墓穴を掘る気がするから確認するのはやめよう。考えたら負けだ。
「時間が惜しいから、早くファイヤーストームを撃ってくれ」
「ええぇ・・・・・・どうなっても知りませんよ」
俺の顔を見た後、一度下を向いて大きく息を吐いた。
顔を上げた時には覚悟を決めた表情になっている。
「・・・・・・、ファイヤーストーム」
彼女の詠唱完了と同時に体の表面から内側にかけて熱にあぶられるような痛みが襲った。
「グッ・・・・・・」
炎の範囲攻撃が止むまではジリジリと火刑にかけられたような熱さと痛みが続く。
火刑の経験など、さすがにないのだが。死ぬほど痛くはないが、まあまあ痛いぞ。
草がない荒野を選んでいるが、土が少し熱くなっている気がする。
モンスターに火魔法系の攻撃を受けたことがあるが、それに比べれば少し痛いぐらいか。
あの時はセブンスジョブで英雄も勇者もセットしていたから単純比較はできないが。
やがて炎が消えて体の熱も治まったが、痛みはさすがに残ったままだ。
身代わりのミサンガを見ると切れてはいない。
「もう一度、ファイヤーストームを撃ってくれ」
「ええぇ・・・・・・」
彼女が絶望したような表情で俺からアミルに視線を移した。
「大丈夫です。ご主人様はこの程度で倒れることはありません」
「そ、そんな・・・・・・」
魔法を放つことにトラウマにならないかな。
俺が死んだらトラウマになるかもしれないが、死なないからきっと大丈夫だ。
「では、本当に撃ちますよ」
「ああ、頼む」
若干涙目になっている気もするが、慣れだ慣れ。
その後、もう一度ファイヤーストームを撃ってもらった。
手当をかけずに合計3回のファイヤーストームを受けたが、ミサンガは切れることがなかった。
その分、俺の痛みはかなり蓄積したのだが。
さすがに魔法使いLv18のファイヤーストーム3発は痛かった。特に3回目。
HPの数値が分からないから、今、どの程度まで減ったのかは分からないけど。
だが、3発で致命傷にはならないことは判明した。
「では、次の実験に移る。ドロテアは次はこれを使ってくれ。ひもろぎのスタッフだ」
「えっ?・・・・・・冗談ですよね?」
先程のファイヤーストームはただのスタッフを使っての被ダメ実験だった。
初心者をやや脱した魔法使いの通常装備程度の魔法攻撃をイメージしたもの。
今度は知力2倍をスキル融合したひもろぎのスタッフで、良い武器を装備した魔法使いをイメージした実験だ。
原作の表現では、知力2倍だからといってダメージ2倍ではないと記載があった気がする。
受ける痛みに2倍とかあるのだろうか?2倍痛いのは嫌だな。
一応、手当を何度もかけて、HPは満タンに戻ったはず。
・・・・・・
涙目になりながら、彼女はひもろぎのスタッフで3回ファイヤーストームを俺に放った。
さすがに先程よりはかなり痛かったが身代わりのミサンガが切れることはなかった。
身代わりのミサンガが切れたことって今までないのだよなぁ。
原作でもミサンガが切れるのには、若干ランダム性があるとか言ってたっけ?
ただ、さすがに死ぬほどのダメージを受けたら切れるのは間違いないだろう。
少なくとも、ひもろぎのスタッフを装備した魔法使いLv18のファイヤーストーム3発では、タケダ家の標準装備をしている騎士Lv50なら致命傷にはならないと判明した。
次は・・・・・・魔法耐性装備の耐火のダマスカス鋼額金を外して実験するか。
MP切れにならないように強壮丸を何回か渡しているので気分の落ち込みはないはずだが、今の彼女には悲壮感が漂っている。
彼女はもう1セット耐えられるだろうか?・・・・・・まあ、やってもらうのだが。
・・・・・・
もう1セット実験して、かなり厳しい痛みだったが身代わりのミサンガは切れなかった。
結構、切れないものだな。
今回の実験から分かったのは、魔法攻撃も過信は禁物ということかも。
シモンと戦うのに魔法使いならみたいな話があったが、本当に勝負になるのだろうか。
身代わりのミサンガのバラつきを確認する意味も込めて、今回やった3セットを更に二周させてみようかと思ったのだが自重した。
ドロテアがイロイロと限界だったので、これで実験は終わり。
次は彼女の魔法使いをLv30とかLv40ぐらいにしてから、同じ実験をやってみるか。
他にもヴィルマに頼んでビーストスラッシュを受けてみる実験をするのはどうだろうか。
木刀から始めて鉄の剣、鋼鉄の剣、ダマスカス鋼の剣、激情のダマスカス鋼剣と段階を上げる?
百獣王のジョブにはクリティカル上昇があるから検証しにくいかなぁ。
「私の前の主人も非常識な人間でしたが、今のご主人様も大概な気がしました・・・・・・」
「ソウデスネ・・・・・・」
ドロテアとアミルが意気投合している。
彼女は
それにしても、俺ってドーリットルと同じぐらい非常識ってこと?
原作のドーリットルを知る俺としては、結構ショックな発言だぞ。
少し歩いた先にある木陰からワープゲートを自宅の玄関に繋いだ。
「あの・・・・・・私はなんのためにご主人様に魔法攻撃を・・・・・・」
「明日もまたやってもらうから」
「ええぇ・・・・・・?」
呆然とする彼女をゲートに押し込んだ。
続いてアミルが通るかと思ったら、立ち止まった。
「ご主人様、決闘のことを気にされてますか?」
「あ、ああぁ・・・・・・まあな」
さすがにアミルには気づかれたか。
「最近の迷宮探索などでは攻撃を受けることもなかったからな。
ちょっと痛みとか死に関する甘さが出てしまったと思っている」
「ご主人様はよくやっていらっしゃると思います。
完璧な人間など、この世にはいませんので気にし過ぎない方が良いですよ」
とはいえ、最近の決闘での俺の対応はグダグダな気がする。
アニメの主人公のようにはいかないだろうが、もう少し仲間も自分も信頼してどっしりと構えていたいと思った。
鑑定で確認しても彼我の戦力を正確に把握できない。
それを補うだけの修羅場の経験も俺にはない。
この前のサボーとの決闘が初めてと言っても良いだろう。
訓練や修羅場の経験はこれから蓄積していくけど、それまで自分や仲間達の死が待ってくれるとも限らない。
だから、できることをやってみようと思ったのだが・・・・・・焦りをアミルに見透かされたか。
魔法使いから魔法攻撃をまだ受けたことがないから、それを体感するためでもある。
迷宮では使えなくても野外で使えるのなら、やはり経験しておいた方が良いはずだ。
そして、戦争に巻き込まれた時の備えでもある。
「まあ、無理はしないからさ」
「はい。それだけではなく、私達をもっと頼って下さいね」
彼女の言葉に頷くしかない。
午前中にヴィルマに言われたことを、ここでもまた言われてしまった。
「もちろん、頼りにしているさ。さあ、ヴィルマ達が待ってるから帰ろうか」
「はい」
彼女がゲートをくぐるのに続き、俺も自宅へ戻ることにした。
・・・・・・
ドブローから戻って、迷宮組で改めてターレの迷宮に向かう。
ドロテアとフレイヤはエネドラに任せて、タケダ家の作法を教えてもらったり、風呂に入れる手配をしてもらった。
これで、クーラタルの我が家の一階にある最後の部屋が埋まった。
前はシェル達がいた頃に使っていた部屋だから結構広いので女性なら、あと一人くらいは同部屋でいけるかも。
増築工事が進めば余裕ができるので、それまでの辛抱だ。
・・・・・・
ターレ迷宮の入口を見ると、いつもの兄ちゃんが復活していた。
別に死んではいないのだが。
朝は魚の死んだような目になっていたが今は違うようだ。
「もう、書類仕事は終わったのか?」
「はい。それよりも、午前中に決闘して午後から迷宮ですか?
どれだけ戦うのが好きなのですか?」
ドン引きされているのだが俺のせいなのだろうか?
午前中に決闘したのは俺ではないのに。
そういえば、さっきはドロテアにドン引きされていた気もするな。
「ご主人様、気にしたら負けです」
「そうだな」
でもアミル、気にしなかったからといって勝者になる気もしないぞ。
「午前中に来た時は邪魔が入ったが、この前走破した階層の案内は・・・・・・」
「お願いします!」
兄ちゃんも本調子に戻ったようだ。
27階層へ案内して規定の金額を受領した後、俺達の方は35階層の小部屋に移動した。
「35階層の新規モンスターはハントアントだ。
オリビア以外は既に戦ったことがあるだろうが、デカい蟻で尻から噴射するスキル攻撃もある。
通常攻撃でも毒化するはずだから注意しよう。
ボスモンスターに関しての情報はないが、きっと更にデカいアリか何かだろう。
ボスの方も恐らく通常攻撃でも毒化するはずだ。
この階層はハントアント、ホワイトキャタピラー、グミスライム、シザーリザードの順に多い。
やっかいな組み合わせだが、今の俺達の実力なら問題ないと思っている。
いつも通り、状態異常に追い込む戦略でいこう。魔法もいつもと同じで雷魔法を使う。
アミルの方から何か補足があるか?」
「いえ。大丈夫です。慎重に対応しましょう」
アミルの言葉に全員が頷いた。
今のところは状態異常耐性を付与したスキル融合防具を渡してから、状態異常にかかったという報告は受けていない。
だからといって、本当に全てシャットアウトできるのかは疑問に思っている。
用心するに越したことはない。
ボスの方は実は羽アリでしたというオチもあるかもしれないが、見て判断するしかない。
飛ぶアリと陸上を移動するアリで襲い掛かられると恐怖だな。
向こうの世界でも飛んでくる黒い虫は嫌いだった。
特に夜中の台所では・・・・・・幸いまだ見たことないが、いせはれでは登場するらしいからな。
小部屋を出て歩き始める。
初戦の相手は、ハントアント三匹、グミスライム一匹。
「前がハントアント2、グミスライム1、後ろがハントアント1だ。3番だ」
「了解」
「了解」
「了解」
「了解」
前に全員で走りながら、
(サンダーストーム、サンダーストーム)
2発のサンダーストームで、運よく前のハントアント一匹とグミスライム一匹が麻痺。
麻痺しなかったハントアントと後にいたハントアントが列をなして進んできた。
(状態異常耐性ダウン)
イレーネに一番近い先頭のハントアントに博徒のスキルをかける。
彼女はハントアントの攻撃を上手く躱しながら刺突を淡々と入れ、石化するのを待つ戦術。
ヴィルマは2匹目のハントアントを横撃しながら、これまた麻痺するのを待つ。
こちらは麻痺しているハントアントに近づいて、デュランダルと硬直のエストックで滅多打ち。
石化する前に煙に変わった。
イレーネもヴィルマもそれぞれ状態異常に追い込んだのが見えたので、まだ麻痺して動けないグミスライムに止めを刺しに向かう。
雷魔法をかけるのももったいないので、そのままデュランダルと硬直のエストックで連打。
やがて煙に変わった。
振り向くと、イレーネとヴィルマのハントアントにオリビアが交互にダマスカス鋼の槍で激しく突いている。
やがて全てのモンスターが煙に変わった。
ドロップ品を拾って、次の獲物を求めて歩き出す。
次の相手は、ハントアントが五匹。非常に嫌な感じだ。
「前がハントアント3、後ろがハントアント2だ。3番だ」
「了解」
「了解」
「了解」
「了解」
走りながら、雷魔法二発を発射。
(サンダーストーム、サンダーストーム)
麻痺したのは後ろの一匹だけ。
両翼のヴィルマとイレーネが接敵。俺も少し遅れて中央のハントアントに接敵。
(状態異常耐性ダウン)
イレーネの対峙しているハントアントに博徒のスキルをかけた。
俺の前のハントアントに魔法陣が浮かんだので、デュランダルでキャンセル。
続いて、イレーネの前の奴にも魔法陣が浮かんだのが見えた。
「イレーネ、スイッチ」
イレーネとハントアントの間に強引に割り込んでデュランダルを突き入れた。
石化させる前にスイッチしちまったな。
中央の突出したハントアントをイレーネに任せて、俺は左翼側のハントアントをデュランダルと激情のダマスカス鋼剣で滅多打ち。
その右にいるイレーネのハントアントに横から硬直のエストックで刺突を繰り返す。
目の前のハントアントを煙に変えると、後ろにいたもう一匹が詰めてきたので、そのまま対応。
イレーネの相手は・・・・・・石化したか。
あっ、ヴィルマの前のハントアントに魔法陣が浮かんでいる・・・・・・が間に合わないな。
ハントアントの尻から何か液状のものが噴出されたが、彼女は余裕で回避。
「キャッ・・・・・・」
あの声はオリビアだ。ヴィルマが避けた噴射液を浴びたのか。
下の階層でもホワイトキャタピラーの糸にやられていたよな。運の無い・・・・・・。
目の前のハントアントをデュランダルと硬直のエストックで連打。
「もう~、最悪ぅ・・・・・・」
なんか、オリビアがギャルっぽい口調でブーたれている。年齢的には合ってるか。
毒化はしていないから、大丈夫だろう。
俺が目の前の奴を煙に変えて、次にイレーネが石にした奴も煙に変えた。
ヴィルマの前のハントアントは麻痺している。
最後尾にいて、まだ麻痺している奴に駆け寄り、デュランダルで連打して・・・・・・煙に変えた。
振り向くと、ヴィルマの前にいた奴も煙に変わっていた。これで終了か。
噴射液はホワイトキャタピラーの糸と違い、噴射元が煙に変わっても消えないようだ。
つまり、オリビアはドロドロの状態。
残念ながら彼女の鎧はプレートメイルなので、エロくはない。
アクアウォールを出して、水をすくって洗い流してやった。
「ありがとう~、ユキムラ君!」
機嫌がコロコロ変わるなぁ。可愛いから別に良いのだけど。
・・・・・・
その後も、片っ端から接敵するモンスター達をしばき倒したが、広いエリアを探索するので時間がかかる。
途中からアミルと俺で指揮を執るのを交互にやりながら探索を進めた。
魔物部屋も殲滅して、ボス部屋の前の待機部屋に到着する頃にはかなり遅い時間になっていた。
「ボス部屋の指揮はアミルに任せても良いか?」
「はい。お任せ下さい。
アリ型モンスターのボスが二匹出現するはずです。
いつも通り、中央にオリビアさん、右にヴィルマさん、左にイレーネさんでお願いします。
ご主人様は雷魔法をお願いします。
私はヴィルマさんのボスに向かう予定ですが、先に右側が麻痺したら左側に向かう予定です」
「了解」
「了解」
「了解」
「了解」
ボス二匹の方が的が絞り易いので作戦がシンプルに立案できる。
「じゃあ、始めるか」
四人がボス部屋の中央に走っていくのを見て、俺はゆっくりとボス部屋に入った。
入ると同時に駆け出して、ボスの出現位置に辿り着く前にスピードダウン。
二匹のボスが出現した。
(鑑定)
ソルジャーアントLv35が二匹か。
ハントアントのボスがソルジャー?ソルジャーも下っ端っぽいけど。
でも、ハントアントよりはデカいな。そして羽アリではないようだ。
(サンダーストーム、サンダーストーム)
さすがはボス。二匹とも麻痺にはならず。
(状態異常耐性ダウン)
イレーネのボスに博徒のスキルをかけた。
アミルがヴィルマ側のボスに向かったので、俺はイレーネ側のボスに向かうために左側を大きく迂回して取り付いた。
オリビアは槍二刀流でソルジャーアントを交互に激しく突き始めた。
巨大なアリでもオリビアの槍攻撃にかかると、激しく揺さぶられる。
それに呼応して、イレーネの刺突とヴィルマの斬撃が加速し始めた。
視界に入ってはいないが、アミルもダマスカス鋼の槍で重い突きを放っていることだろう。
俺の方はイレーネの機嫌を損ねない程度に、激情のダマスカス鋼の剣でツンツンとソルジャーアントを突いている。
でも、彼女の硬直のエストックが早々に目の前の奴を石に変えた。
あとは、右側のボスを五人で取り囲んでタコ殴りだ。
スキル攻撃を出す間もなく、右のボスは煙に変わった。
残りの石化したボスも全員で囲んで煙に変えた。
残ったドロップ品は・・・・・・『即死毒針』・・・・・・怖っ。
ハントアントが『猛毒針』で、ソルジャーアントが『即死毒針』?
ニートアントが『毒針』だったことを考えると、どんどん凶悪になっていくな。
『即死毒針』でコボルトをツンツンしたら、本当に即死するのだろうか。
試してみたいような、みたくないような。
考察は止めて、36階層に抜けた。もうかなり遅い時間になってしまった。
アリをあれだけ倒したけど、アリのモンスターカードはドロップせずか。
ドロテアの魔法使いのレベルも上がったので、午後の最初にやった魔法攻撃を受ける実験をやってみたいが、さすがに今日はもう無理か。
もうドブローのあの場所は真っ暗で今から向かうのは無理がある。
さすがに自宅の裏にある修練場でやる訳にもいかない。近所の人が見たら通報されてしまう。
まあ、彼女には嫌がられるかもしれないが、明日またやってもらうか。
「ご主人様、帰らないのですか?」
「あ、いや。帰ろうか」
遅い時間になり腹が減ったから帰ろう。
自宅の玄関にゲートを繋げて、皆で帰宅した。