異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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(お詫び)
『028.実験』の話の内容を投稿後に結構、修正いたしました。
 原作では、全体攻撃魔法は対人戦では使えないという設定ですが、
 それを見落として世界観を作ってしまったので、その辻褄を合わせるための修正となります。
 御指摘いただきました読者の方に改めて感謝を申し上げます。
 加えて、既に読了の読者様には申し訳ありませんが、修正した前話を再度お読みいただきたく。
 今後とも拙作にお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。


029.創意工夫

 ドロテアとフレイヤを我が家に迎えた翌日、朝練には二人の姿があった。

 

 竜騎士のフレイヤはともかく、魔法使いのドロテアも参加するのか。

 レドリックにドロテアの様子を確認。

 

「本人とも話をしましたが、主に防御と回避のために訓練に参加するように伝えました。

 近接戦闘で敵に接近された時に味方が来るまで

 時間稼ぎができる程度の実力はあった方が良いと思っています」

「盗賊に襲撃されることもあるから、確かにそうだな」

 防御技術は確かにあって困るものではない。

 

 ドロテアは我が家では初めての純粋な魔法使いだ。

 ラファや俺は近接戦闘もこなすから純粋な魔法使いとは言い難い。

 

 今は訓練のため両手武器の木の杖を持って、ヘルミーネに防御の指導を受けている。

 女性同士だし、ラファを護衛する元騎士でもあるから、ドロテアが相談する相手としてはベストなのかもしれない。

 とはいえ近接戦闘は慣れてないらしく、苦戦しているのが見てとれる。

 ヘルミーネが丁寧に教えているので、なんとかついていこうとしているようだ。

 

 フレイヤの方は両手剣である木の剣を二本持って、ミラやマヤと模擬戦をしている。

 見るからに楽しそうだ。

 フレイヤはどちらかというと攻撃主体でミラとマヤは防御主体だから、なかなか決着つかないのだが、それはそれで三人は楽しいようだ。

 竜騎士って頑丈で防御の要というのがいせはれの俺のイメージだけど、我が家の竜騎士娘達はちょっと違うようだ。

 

 それはともかく、ドロテアもフレイヤも早く我が家に馴染んでくれると良いな。

 だが、午前中は昨日同様に俺の魔法耐性訓練に付き合ってもらわなければならない。

 昨日はパワーレベリングしてレベルをそこそこ上げたので、今日は2回目の魔法耐性実験だ。

 こちらの方も慣れてほしいのだが、どうだろうか。

 

・・・・・・

 

「昨日やったばかりなのに、今日もまた同じことをやるのですか?」

「そうだ。日々確認することが重要なのだ」

 ドロテアの顔には呆れとも諦めとも言える表情が見える。

 

 訓練と朝食を終えて、昨日同様にドブローの荒野にアミルとドロテアの三人で来た。

 今のドロテアは魔法使いLv30。

 昨日、ターレ迷宮の35階層を攻略した際に小荷駄隊に入れてパワーレベリングした成果だ。

 

「では頼むぞ」

「はい。もうやれば良いのですよね。分かりましたよ」

 半ば捨て鉢となった彼女にアミルが苦笑している。

 

 :

 :

 :

 

「なんか、昨日よりも魔法の威力が増している気がするのですけど・・・・・・」

「そうだな。そうでなければ実験の価値がないだろう?」

 昨日以上にドロテアの顔には困惑の表情。

 

 やはり、レベルが上がると魔法の威力が上がるというのは術者の方でも分かるのだな。

 長い時間を経て少しずつしかレベルが上がらないと魔法攻撃力の増加は分かりにくいが、1日でレベルが大きく上がればハッキリと分かると。

 

 そして、それは魔法攻撃を受ける俺の方にも言える。

 昨日よりもハッキリと痛みが増しているのが分かった。

 そして、今回も身代わりのミサンガは切れなかった。

 魔法使いLv30がひもろぎのスタッフを使っても致命傷にまではならないと。

 

 では、切れるまで頑張って魔法を撃ってもらうかと言うと、受ける側の方がもたない。

 ゲームのようでゲームではない世界だ。

 残りHPが1になってから起死回生の逆転とか無理だよ。

 だって、ミサンガが切れてない今の時点でもすっげぇ痛いのだから。

 この後、ゴリゴリと魔法でHP削って限界に挑戦すると、途中で失神するのではないかと思う。

 

 現実の世界・・・・・・この世界ではHPを大きく削られた時点で死ななくても事実上は戦力外になるということではないだろうか。

 仮に今の倍の痛みがあった場合、スキルを発動するためにブラヒム語で正確に詠唱できるのか厳しい気もする。

 その意味では状態異常に追い込むだけでなく、斬撃などで回復職や魔法職のHPを削るというのも有効な戦術なのかもしれない。

 

「ご主人様、どうかなされましたか?まだ痛みが酷いのですか?」

「あ、いや大丈夫だ。手当をかけているから、もう回復している」

 アミルだけでなく、ドロテアにも心配そうな表情で見つめられてしまった。

 

 

 それはさておき・・・・・・

 

「また、近いうちに実験すると思うので頼むぞ」

「もうどうにでもなれです」

 そういえば、原作のエルフヒロインもそんな台詞を吐いていたな。

 

 魔法使いのジョブに就く者のテンプレ台詞なのだろうか。

 

・・・・・・

 

 ドブローの荒野から三人で戻り、今度はドブローの鍛冶師ギルドに俺一人で来た。

 スキル融合装備品の納品を行うのが目的。

 俺の前にいるのは、いつもの事務方の彼だ。

 

「これが初回契約分の残りのスキル融合武器だ。

 残りは頑強のダマスカス鋼プレートメイルが2つだったはずだから、確認してみてくれ」

「はい。では防具商人に鑑定させますので結果をお待ちください。

 確認が取れ次第、報酬のカードをお渡ししますね。

 カードはトロール5枚、亀5枚、芋虫2枚で既に別枠で確保しています」

 鑑定に回してもらわないと報酬が受け取れないのは仕方ない。

 

「そしで、こちらが2回目の契約分のスキル融合武器だ。

 頑強の竜革ジャケットと頑強のダマスカス鋼盾が2つずつあるので確認してみてくれ」

「本当に早く納品してくれたのですね。

 しかも、初回分と合わせて6つとも頑強のスキル融合ばかりですね。

 かなり大変だったのではないですか?」

 彼の指摘にニッコリと頷く。きっと胡散臭い顔をしているに違いない。

 

「早期の納品に努力すると言っただろう。約束は守る方だ」

「なるほど、なるほど。では次の納品もお願いしてしまいましょうかね」

 ちょっとちょっと、いくらなんでもペースが早過ぎないか。

 

「90日で3回だったはずだが、もう3回目を使い切ってしまって大丈夫なのか?」

「初めのうちはお試し期間だから90日にしましたけど、もう90日の意味ってないですよね?

 契約全体の期間の制約は削除して、

 注文の依頼日翌日から数えて30日以内の納品だけにしましょうよ。

 そちらの方がお互いのためになると思います。

 それに今は大量に注文できますけど、そのうち減ると思うのですよね。

 そうなってしまうと90日に3回という縛りよりは、

 注文してから30日の方が自由度が増すと思います」

 まあ、確かに彼の言う通りなのだよな。

 

「分かった。じゃあ、契約期間に関する記載を変更しよう。それ以外は同じで良いのだよな?」

「契約解除の条件も変更ですかね。

 そちらが契約解除の意思表示をしたら、30日後に契約を解除できるとしましょう。

 こちらは注文をしなければ事実上、契約を解除したのと同じようなものですから。

 では、私はこれから修正した契約書を作りますね。

 それから、これが3回目の納品分の要望リストとカードの在庫一覧です。

 確認していただいて、どの装備品をスキル融合するのか教えて下さい」

 見るとモンスターカードの在庫がアホみたいに増えている。今は特需なのだな。

 

「分かったけど、このスキル融合の要望リストにあるのって武器ばかりじゃないか?

 防具はないのだな。こんな武器ばかり欲しがっていて、ドブローは大丈夫なのか?」

「ドブローの迷宮探索者達は荒っぽいのが多いですからね。

 大丈夫じゃなくても自己責任ですから、仕方ないですよ」

 まあ、こちらは注文がもらえればそれで良いのだけど。

 

「分かった。では適当に候補を選んでおくから」

「はい、お願いします。では私は契約書を作ってきますので・・・・・・」

 武器ばっかりだけど、全部ダマスカス鋼製だな。

 

 どんだけダマスカス鋼が好きなのだよと言いたい。

 

(ドン、ドン・・・・・・)

 

 スキル融合武器の候補を決めていると、ワーレン会長が入室してきた。

 この部屋まで来るのは珍しいな。ノックの音からすると急いでいるのだろうか。

 

 入ってくるなり、俺の前のテーブルの正面のイスにドッカリと座った。

 

「おい。ちょっとお前、酷いじゃないか?」

「えっ、何が?」

 いきなり酷い呼ばわりされるのなんて・・・・・・珍しくもないか。

 

「何がって、これだよ、これ・・・・・・」

「これが何か?」

 会長はテーブルの上に白い布の塊のようなものを置いた。

 

 これはマスクだな。ペルマスクの鏡工房に渡した試供品か、そこで作った量産品かも。

 

「こんな良い物を知ってるんだったら、なんでうちに教えてくれないんだよ!

 ドブローの近くに鉱山があるのは知ってるだろう?」

「と言われても、ドブローに鉱山があるなんて知ったのも最近だしなあ」

 いきなり、『マスクって知ってますか~?』なんて訊けないし、俺にどうしろと。

 

「ペルマスクに行った奴が、鏡の工房で働いている奴に聞いたら、

 外国の鉱山で使って効果があったから、ペルマスクに紹介してくれた奴がいるって。

 で、その紹介してくれた奴の風体を確認して名前を聞いたら、お前だって言うじゃないか。

 そんなに良い物を知ってるんだったら、早くうちに教えてくれよ」

「まあ、ドブローの鉱山が困ってるって今聞いたのだから、そんな無茶言われても」

 俺は悪くないぞ。

 

「じゃあ、何か他に良い物を知ってるんだろう?それを教えてくれよ!」

「はぁ?良い物ってなんだよ?」

 無茶振りにも程があるだろう。

 

「じゃあ、こっちが困ってることを言えば、その解決方法を教えてくれるのか?」

「えっ?」

 いや、それは更に無茶というものだろう。俺はドラ●もんじゃないのだから。

 

「今、ドブローで困っているのはだなぁ・・・・・・」

「おいおい・・・・・・」

 お前はの●太君かよ!

 

・・・・・・

 

「・・・・・・という訳で、先日あった落盤事故みたいに

 脆くなった坑道の壁や天井が崩れて鉱山労働者にも結構、被害が出ているんだ。

 だから、それをお前になんとかしてもらいたい」

「いや、なんとかしてもらいたいって言われてもなぁ・・・・・・」

 まあ、全然策がない訳でもないのだが。

 

「俺は鉱山の技術者じゃないから、見て何か思い浮かぶことがあれば

 ・・・・・・レベルで良いのなら考えてみるけど」

「お、そうか解決してくれるか。それはありがたい」

 いやいや、解決できるなんて言ってないから。

 

「解決できると確約はできない。見て何かアイディアがあれば・・・・・・ぐらいだ。

 それ良ければ引き受けよう。

 それから、ちゃんと報酬をくれないとアイディアを思いついても教えないぞ」

「くっ・・・・・・がめつい奴だな」

 仕事には報酬がつくものだろうが。ただ働きさせるつもりかよ?

 

「じゃあ、鉱山に案内させる冒険者を用意してくるから、そこで待ってろ」

「えっ、今から行くの?」

 質問に答えることなく、会長は去っていった。

 

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 

 先程の事務方の男がのほほんとした顔で戻ってきた。

 お宅の会長さんはどうなっているのですか?・・・・・・と小一時間ほど問い詰めたい。

 

 

「こちらが契約書ですので、確認をお願いします」

「分かった。確認しよう。

 あと、これが3回目の注文のスキル融合武器と受領するカード、報酬のカードだ」

 お互いの書類を交換し、確認開始。

 

 と言ってもこちらは前回の契約書に修正を少し加えただけだから、直ぐに確認完了。

 

「こちらは特に問題ない。この契約でこれからもやっていこう」

「はい。ありがとうございます。

 3回目の契約、候補の武器とそちらに引き渡すカードは別に良いのですが、

 報酬のカードにまた竜のカードが入ってますけど」

 もらえるのなら竜のカードはウェルカムだ。

 

「また、早期納品を頑張るので・・・・・・」

「ああ・・・・・・では、お願いしますよ。待っていますから」

 もらえるうちにドンドンもらおう。

 

「では、鍛冶素材とモンスターカードを用意しますので・・・・・・」

 

(ドン、ドン・・・・・・)

 

 彼が話し終える前に、会長が冒険者を連れて入ってきた。

 

「冒険者を用意したので、こいつに付いていってくれ」

「今から?」

「今からだ!行ってきてくれ」

 こちらにも予定というものがあるのですが。

 

「悪いけど、こいつを借りるぞ」

「ええ・・・・・・まあ、素材の準備もありますし。どうぞ、どうぞ」

 俺って今売られたの?本人の意思確認は不要?

 

 仕方がないので、不承不承とした冒険者の後に付いていく。

 この人も多分、会長に無茶振りされたのではないだろうか。

 非常に機嫌が悪そうだ。だが、俺が悪い訳ではない。

 

 彼のパーティに入れてもらい、廊下をズンズンと歩いていく。

 突き当りのギルドの壁にかかっている絨毯に向かって、彼はフィールドウォークを詠唱。

 早く終わらせたいのだろうな。気持ちは分かる。

 

 ゲートを通り抜けると、小屋らしき部屋の内部に出た。

 この近くに鉱山があるのだろうか。

 

 彼が何やら、小屋の中にいた担当者に書類のようなものを渡している。

 

「じゃあ、この人に案内してもらってください。

 帰りはこの絨毯からギルドに戻れますから、大丈夫ですよね?」

「ああ、大丈夫だ。ありがとう」

 引き留める理由もないので、彼には帰ってもらった。

 

「それで、会長からあなたを鉱山の坑道の中へ案内しろって指示が書かれていたのですが、

 ただ、連れていくだけで良いのですか?」

「多分・・・・・・」

 小屋にいた担当者らしき男に質問されたが、特に何を見たいという訳ではないから漫然と案内してもらうしかない。

 

・・・・・・

 

 彼の指示で、鉱山労働者の主任っぽいガタイの良い兄ちゃんに坑道に連れていかれた。

 兄ちゃんも俺も特にヘルメットや口を覆うマスクのようなものを付けていない。

 

 この鉱山の安全管理もこんなものなのだろうか。

 この世界の行ったことのない場所や見たことのないものを見ると、ついつい元の世界のものと比べてしまう。

 

 懐中電灯やライトなどある訳もなく、坑道の少し広い場所に篝火のようなものが焚かれている。

 これって、爆発しないのかと不安にかられてしまうが、兄ちゃんはドンドン進んでいく。

 少し埃っぽい気もするが、空気は湿っているので息苦しさはそれほどでもない。

 でも、マスクがあると安心だったな。借りてくれば良かっただろうか。

 

「結構、坑道の穴ってデカいんだな?」

「まあ、入口の近くは。少しずつ狭くなっていくけど」

 自分のイメージしていた坑道とは違った。

 

 小柄なドワーフが行ったり来たりする程度の狭い穴なのかと勝手にイメージしていた。

 実際には鉱山労働者はドワーフだけではないらしい。

 というか、ドワーフは少数派とのことだ。

 

 『ドワーフ=鉱山労働者』はラノベ脳の勝手な思い込みだったようだ。

 犯罪奴隷も普通にいて、一番危険な奥の掘削を担当しているそうだ。

 

「この坑道の地面って、意外に平坦というか平らなのだな。

 もっとデコボコしているものなのかと思っていた」

「鉱石を運ぶのに荷車を使っているので、デコボコしてたら走りにくくなるっすからね」

 なるほど。

 

 別にトロッコのようなレールの上を走る貨車のようなものはなく、全て人力なのか。

 荷車を引っ張るのなら、確かにある程度は平らで坑道の道幅も広い必要があるよな。

 

 

 そして、天井や壁にはところどころに板が覆うように打ち付けられている。

 確かにアレが崩れればイロイロとアウトな気がする。

 

「この辺りは崩れることはないので、心配ないっすよ」

「そうなのか」

 崩れることはないって、その自信はどこから来るのだろうか。

 

「ここから先は危険なので、案内できないっす」

「・・・・・・」

 立ち止まった先にも、まだ坑道は続いていて、薄っすらと人影も見えた。

 

 ここに来るまでも結構ドキドキしながら歩いてきたし、何かあったらオーバーホエルミングでダッシュで逃げるぞと思っていた。

 それ以上に危険な場所が先にあるということか。

 

 あそこで働いているのが犯罪奴隷なのだろうか。

 確かに、あそこの見えている坑道は、ここよりは狭そうだ。

 とはいえ、背を丸めないと歩けないほどではないな。

 

「坑道ってどこでも、このぐらいの広さの穴だったり、平らな地面だったりするのか」

「まあ、似たり寄ったりっすねぇ。

 硬い岩盤があると少しはくねったり、凹凸が激しかったりしますけど」

 だいたいイメージが掴めたかな。

 

 一応、使えそうなアイディアはある。

 だが試作品を作る必要があるだろうな。

 あとはどこまで本気でワーレン会長が取り組むかだな。

 

 

「分かった。ありがとう。案内はこれで十分だ」

「じゃあ、戻るっす」

 坑道を出口に向かってテクテクと二人で戻ることになった。

 

 途中、疲れた顔の鉱山労働者の男とすれ違う。

 ボロボロの汚れた粗末な服を着ていて、本当に疲れ果てている感じだ。

 労働環境はかなり過酷なのだろう。

 

 すれ違っても、こちらに目もくれない。余裕がないのかもしれない。

 

 兄ちゃんに礼を言って、フィールドウォークで出てきた小屋の中に戻った。

 

「案内は終わった。確認したかったものは見れたので鍛冶師ギルドに戻るつもりだ」

「あ~はい、はい。何をしていたのか知りませんが、お疲れさまでした」

 俺が何をしにきたのかまでは説明がなかったようだな。

 

 壁の絨毯から鍛冶師ギルドの壁にゲートを繋いで戻ることにした。

 鍛冶師ギルドに戻って、事務方のいた部屋まで廊下をひたすら歩く。

 一人でこんな廊下を歩いているのは変な気分だな。

 鍛冶師ギルドの職員になったみたいだ。

 

 索敵のマップを表示しながら歩いているので、迷うことなく目的の部屋まで辿り着いた。

 入ったことがある部屋は限られるので、迷わなくて便利だ。

 索敵のスキルはやはり素晴らしい。

 

 部屋に戻ると、事務方の彼とワーレン会長がまだいた。

 

「おう、戻ったかい。なんか思いついたか?」

「まあ、一応は・・・・・・」

 座る間もなく、会長が話しかけてきた。

 

「で、どうなんだ?いけそうか?」

「分からないです。試作品を作って今度持ってきます。話はそれからですね。

 ところで報酬は考えてくれています?」

 ワーレン会長は途端に下を向いてしまった・・・・・・だが、ここで追撃の手を緩めてはいけない。

 

「まあ、何ももらえないのなら、きっと良いアイディアは出てこないでしょう」

「くっ・・・・・・がめつい奴だな」

 会長がNPCキャラに変わってしまった。濃ゆいキャラなのに。

 

「あと、もし俺が考えているアイディアがモノになりそうなら、

 鍛冶師のジョブの人に結構、働いてもらう必要がありますけど調達できますか?」

「はあ?鍛冶師が必要なのか?

 そりゃ、ここは鍛冶師ギルドだから声を掛ければなんとかなるだろうけどよ」

 こちらの目論見通りにいけばだけどね。

 

「という訳で、次に来る時に試作品を持ってきますので、それまでに報酬を考えておいて下さい。

 こちらの希望はダマスカス鋼ですので、よろしくお願いしますよ」

「ダマスカス鋼をいくつ必要なんだよ?」

「それは会長が俺のアイディアや試作品にどれだけの価値をつけるかによるでしょう。

 マスクの価値よりはあるかもしれませんよ」

「くっ・・・・・・がめつい奴だな」

 このループはどうやったら抜けられるのだろうか。試作品を持ってきたら終わるのか?

 

 

 ワーレン会長のループは放っておいて、事務方の彼に連れられて別室に移動。

 

「防具屋に来てもらって鑑定しましたから、納品物の検査も終わりました。

 特に問題なかったので、初回注文の報酬と三回目の注文のカードを渡しますね。

 あとは、三回目の注文用の鍛冶素材も渡しますので受け取ったら、書類に署名をお願います」

「了解した」

 坑道の見学をしている間に確認と準備をしてくれたようだ。有難い。

 

 モンスターカードをアイテムボックスに収納。

 後は担当者が取り出してテーブルに置いたダマスカス鋼、板、革をひたすら自分のアイテムボックスに収納する単純作業。

 

 この作業を淡々とやりながら、先程の坑道を見学した際に思いついたアイディアの整理を行う。

 

・・・・・・

 

 ようやく鍛冶素材の収納作業が完了し、署名をして書類を返却した。

 

「では、納品物ができたら、また来るので。

 その時に試作品が仕上がっていたら一緒に持ってくるから」

「頼みますよ。お早めに・・・・・・」

「そっちよりも、こっちが優先だからな!」

 女性ならウェルカムだが、いい年したオッサン達に俺の取り合いされても困るのだが。

 

 二人に礼を言って、ギルドを後にした。

 

 あとはアミルに相談だな。

 こういうのって、ミラも興味あるのだろうか。

 二人でワイワイ相談しながら・・・・・・は拙いか。アレの相談もあるしな。

 まあ、ボチボチいこうか。

 

 それに今日受けたスキル融合武器の納品の件もある。

 また鍛冶師の作業を増やしてしまってたな。

 本当に二馬力にしておいて良かった。

 

 適当な木陰から自宅にワープで戻った。




お読みいただき、ありがとうございました。
前書きでも記載た件ですが、本作では全体攻撃魔法を人にも有効(迷宮内では無効)としました。
原作では無効という割と基本的なことを見落として、本話よりもかなり先のプロット(戦乱パート)で全体攻撃魔法を使うシーンを設計してしまっている関係で、なかったことにはできなくなったという事情もありました。

原作ではゴスラー騎士団長はシモンを魔法を使えば討伐可能だという記載があったと思いますが、ボール系魔法で仕留めることができるってことなのですね。
回避されると魔法職はクールタイムの関係で結構厳しいと思うのですけど、頼れる前衛がいて魔法を当てられる技術があるって事なのか・・・・・・もしくはゴスラー騎士団長ならできる技術があるとか。

詠唱共鳴があるから、多数の魔法使いでボール系魔法を放つということもできないから、普段から魔法で当てる技術を磨いてるってことなのかなぁ。
元々、野外で魔法を使う予定だったので、今のような近接中心の訓練だけでなく、魔法を使う訓練も描写する予定でしたが、もう少し気合を入れて執筆しなければならないかと思い直しました。

引き続き、拙作にお付き合いいただければと思います。
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