異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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043.げんこつ

 『侍女の嗜み』を十二分に味わった翌朝は大変なことに。

 カメリアオイルが飛び散った俺の寝室の片付けもあるが、俺達四人もなかなか酷い状態。

 

 ワープゲートを部屋の壁から浴室に直接繋いで全員で移動。

 皆が本格的に起き出す前に髪やら体に付いたオイルをなんとかしないと。

 

 前にチクルスとローションマットで遊んだ時も似たような状態になった記憶が・・・・・・。

 あの時俺達を叱っていた立場のエネドラが、この場でオイル塗れになってるのが何ともだが。

 

 肌の艶を良くするとか原作にあった記憶もあるが、気にせずドンドン洗い流した。

 左腕が復活したエネドラを改めてマジマジと見つめて、彼女を照れさせた・・・・・・可愛い。

 彼女の優美な肢体を眺めると、寝室に戻って『侍女の嗜み』の続きをお願いしたくなる。

 

 なるべく三人を見ないように視線を逸らして、とにかく体を綺麗に。

 自分だけ洗い終えてワープで逃げる訳にはいかないので、さっさとオイルを拭い去ると結局三人の体を入念に鑑賞することに・・・・・・眼福の至り。

 

 洗い終えた彼女達をそれぞれの部屋にワープで送り出した。当然最後が俺だ。

 

 自室に戻り、オイル塗れの部屋を見て呆然・・・・・・とりあえず現実逃避・・・・・・着替えよう。

 新しいシャツに袖を通し、腕を通す穴が四つあることを実感しながらチクルスに感謝。

 ズボンに脚を通して・・・・・・目に入ってくるオイル塗れのベッドの惨状に頭を抱える・・・・・・つわものどもが夢の跡?

 昨晩は桃源郷を訪れたような夢の世界にいる感じだった。実際の桃源郷など知らぬが。

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 

 えっ、いくらなんでも、この惨状は他人に見せられない。どうしよう。

 

 

(ガチャッ)

 

 

 返事を待たずに入ってきたのは昨晩の三人。掃除道具を持っている。

 

「あとは私共が片づけますので、旦那様は朝の訓練へ」

「いや、それだと申し訳ないので俺も手伝おうかと・・・・・・」

 さすにがこの状態をほったらかして丸投げはちょっと後ろめたい。

 

「そのようなことは殿方のなさることではありませぬ・・・・・・」

「・・・・・・」

 他の二人は俺と目を合わせないように掃除に取り掛かっている・・・・・・でもチラ見した顔は少し赤い・・・・・・なんだか申し訳ないのだが。

 

「では、悪いが任せた」

「はい。いってらっしゃいませ」

 伏せたエネドラの顔も薄く桜色に染まっているような。昨晩の肢体が脳裏に浮かんできた。

 

 これ以上はいけない。妙な気分になってきた。部屋を出よう。

 そそくさと逃げるように修練場へと向かった。

 

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 既に気合の入った模擬戦が繰り広げられている。

 特に今日はヴィルマとイレーネの入れ込みようが凄い。

 午前中に剣術指南所に行くことになっているからな。

 

 先にナナイとの用事を済ませた後、彼女達を呼びにくることになっている。

 

 レドリックに近づいて準備状況を確認。

 

「ヴィルマの仕上がりの方はどうだ?」

「そうですね。先程までケリーとマリー相手に戦ってましたけど、多分大丈夫だと思います」

 今日はヴィルマに活躍してもらう予定なので、頑張ってほしい。

 

 イレーネの方はどうなるか分からないが、ヴィルマだけ連れていく訳にはいかないので彼女にも戦ってもらう予定だ。

 新ジョブを得たが現時点ではニムラルのオッサンとはレベル差があるので不利だ。

 模擬戦だからダメージが通らなくても問題にならないが、互角に戦えるかは少し疑問。

 

 本当に重要なのはヴィルマが予想通りの結果を出した後の方だ。

 その後の主役はレドリックなのだが、それが上手くいくかどうかは交渉次第だな。

 正直、そちらの方は全然予想がつかない。

 あのオッサンは先の行動が読みにくいんだよなぁ。

 

・・・・・・

 

 訓練を終えて朝食の時間に。

 昨晩の狂宴を気取られないように俺はポーカーフェイスで食事をとっている。

 

 俺の心配などと関係なく、左腕が完治したエネドラに皆がお祝いの言葉を投げかけていく。

 ベイルの子供達が実家に皆戻っているので、ミモザやピコ達三人もクーラタルに来ている。

 

 ミモザは薬草採取士のジョブだから、左腕が完治した意味を正確に理解しているのだろう。

 お祝いと共にタケダ家の実力について称賛の言葉を口にしていた。

 

 皆から祝福の言葉を受けるエネドラを見て、チクルスも嬉しそうだ。

 次は彼女の番だ。

 そしてあまり間を置かずにフラウスの方もなんとかしたい。

 

 チクルスにエリクサーを渡すのはエネドラが良いか・・・・・・フラウスにはラファか・・・・・・入手する前に入手した後のことを考えるもアレだが。

 

 オークション、有力貴族との取引、迷宮討伐、クーラタルの63階層・・・・・・手段は複数あるはずだから実力をつけて目標を達成したい。

 

・・・・・・

 

 朝食を終えて、ターヘラの剣術指南所へ移動。

 メンバーは俺、ミモザ、カラダンの3人。

 ナナイへの用事が終わったら、レドリック、ヴィルマ、イレーネを後から連れていく予定だが時間が読めない。

 用件が異なるから二手に分かれるのは仕方ないのだが。

 

 もはや勝手知ったる・・・・・・で裏の食糧庫の壁から移動させてもらっている。

 

 二人を連れて食堂に向かった。

 食堂に入ると既にアルマーとナナイはテーブルに着いていた。

 周りには子供達が遠巻きに座って、思い思いにおしゃべりをしていたが待ち受けていた訪問者に全員の注目が集まった。

 

「ユキムラさん、これはいったい?」

「まあ、まあ、ちょっと待って」

 ナナイとアルマーは何も子供達から聞かされていないのだろう。

 

 理由は説明されずに食堂で待っていろと言われただけかな?察してもらいたいところだが。

 

 俺達三人がアルマー達のいるテーブルに着くと、周りにいた子供達が二人を囲むようにワラワラと近づいてきた。

 

「説明はミモザからしてもらってよいか?」

「はい、旦那様。

 ナナイさん、アルマーさん、突然押しかけてごめんなさいね。

 実はベイルに来ている子供達からお願いされて、今日持ってきたものがあるの」

 彼女が一人の女の子の方に視線を向けると、その子はおずおずと前に出てきた。

 

 狼人族の10才の女の子のようだ。銀色の髪を短く切り揃えていて、結構可愛い。

 皆の注目を浴びて少し緊張しているようにも見える。

 

「この子がね。ベイルでお仕事をしてもらっている時に私に相談してきたのよ。

 二人に婚約のお祝いの贈り物をしたいって言うのよね。

 どんな物を贈りたいのか訊いたら、分からないって言い出して

 周りの子供達もいろいろと考え始めてね。

 それで、うちでやってもらっているお仕事のお給金を使って贈り物することになったのよ」

「えっ、それはダメです。そのお金は子供達のために使わなければ」

 ナナイは焦ったようにアルマーとミモザと女の子を交互に視線を向けてオロオロし出した。

 

「でもね、ナナイさん・・・・・・。

 あなたは子供達に自分達でお金の使い方を考えなさいって言ったのでしょ。

 その考えた結論が貴方への贈り物だったのなら、それを止めることはできないのでは?」

「え・・・・・・でも、でも・・・・・・」

 ナナイは可哀想なぐらい取り乱している。いつものシッカリ者の彼女はここにはいない。

 

 元の世界でも就職一年目の給料で両親やお世話になった人に贈り物するのは定番だったよな。

 似たような考え方がこの世界にもあるのだろうか。

 

「この子達が真剣に考えて決めたのだから、受け取ってあげたら?

 別にこれからだってお給金はもらえるのだし。使い道はその時々で真剣に考えるでしょう?

 今はそれが、貴方への贈り物だったってだけよ」

「あっ、えっ・・・・・・は・・・・・・い」

 アルマー、お前もなんか言えよ。

 

 俺も気の利いた言葉が浮かばないので、とやかく言える立場ではないが。

 

 カラダンが進み出て、その女の子に小さな綺麗な箱を渡した。

 女の子はつかつかとナナイの前に進みでて、張りのある声で叫んだ。

 

「ナナイ姉ちゃん、婚約おめでとう!」

「「「「「おめでとう!」」」」

 周りの子供達の口々にお祝いの言葉を叫んだ。

 

 声が揃ってなくて、なんだか可笑しいけど胸が熱くなるな。

 

「これ・・・・・・あげるから・・・・・・つけて」

 

 女の子がカラダンから受け取った小箱をナナイに押し付けた。

 

「まあ、何かしら。開けてもよい?」

「うん」

 ナナイが箱を開けると、貝殻っぽいイアリングが二つでてきた。

 

 これはターヘラのマリアさんの店で、カラダンが子供達と選んだ瑪瑙のイアリングだ。

 薄い桃色の少し丸っこい貝殻の形をした瑪瑙の装飾品。

 どちらかというと可愛い感じのイアリングだ。

 ミモザからタケダ家の夜の会議で相談を受けてカラダンが相談に乗った結果、ターヘラで瑪瑙の装飾品を扱っているマリアさんの店で贈り物を探すことにした。

 ザビルの引継ぎ業務の合間に抜けてもらって、カラダンと子供達で選んだものらしい。

 もちろん予算は子供達の一か月分の給金から支払った。

 カラダンがマリアさんに価格交渉で値切ったのかまでは知らないが。

 

「まあ、綺麗ね。ありがとう・・・・・・ありがとう、みんな」

 彼女の目は真っ赤だが、子供達からの贈り物で誇らしげな表情に見える。

 

 彼女はアルマーの方に向き直り、

 

「どうかしら?」

「ナナイ、綺麗だよ・・・・・・」

 あ、こいつ、一番美味しいところを持っていきやがった。爆発しろっ!

 

 アルマーの言葉にナナイは俯いて真っ赤になった。

 相変わらず、この二人は・・・・・・。

 俺は俺で・・・・・・昨晩の三人の肢体を思い出して・・・・・・邪な考えが思い浮かんでいるけど。

 

 ひとしきり、子供達のお祝いの言葉が一巡したところで、ミモザが口を開いた。

 

「実は私達からも貴方達に贈り物があるのよ。受け取ってもらえるかしら?」

 彼女がカラダンに目配せすると、先程とは違う小箱を2つ持って進み出た。

 

「旦那様が考えて、我が家の鍛冶師の者に作ってもらったのだけど

 気に入ってもらえるかしら?」

「こちらになります」

 ミモザがナナイに渡し、アルマーにはカラダンが小箱を渡した。

 

 中に入ってるものは全く同じアクセサリーだけどな。

 

「これは、先程のイアリングと同じ貝殻のネックレスですね」

「本当だ。同じものだね」

 ナナイとアルマーは喜んでくれたようだ。

 

 子供達がマリアさんの店で選択したイアリングを確認して、似たような雰囲気のネックレスを二つペアで作ってもらった。

 と言っても防具生成でいくつも作って、空きスロットがあるものにスキル融合したのだが。

 

 

【挿絵表示】

 

 

身代わりのブロンズネックレス アクセサリー

スキル 身代わり

 

 銅製だけど、少し桃色っぽい色合いにアミルに調整してもらった。

 一応は銅が素材なので、さほど重くもないし一撃だけなら瀕死の攻撃も防げる。

 夫婦喧嘩になった時にナナイの一撃からアルマーを救うためのアクセサリーになるかも。

 

「着けてくれるかな?」

「あ・・・・・・うん」

 出たよ。バカップル並みの振る舞いだけど、周りの子供達も興味津々だから別にいいや。

 

 お互いがお互いのネックレスを相手にかけてやってる。

 こんな感じの付け方でも、鑑定するとちゃんとアクセサリーとして判定されたから、ちゃんと装備されているのだろう。

 

 なんか婚約する二人よりも、周りの子供達の方が目をキラキラさせながら興奮している。

 しきりに、二人の周りを動いて首にかけたネックレスを見ている。

 

 

「げんこつ・・・・・・」

「ん?」

 俺の傍にいた先程の銀髪の女の子が呟いた。

 

「げんこつ・・・・・・」

 えっ?あのイアリングって貝殻じゃなくて・・・・・・ゲンコツのイアリング?

 

「あれって、綺麗な貝殻のイアリングだよね?」

「げんこつ・・・・・・」

 女の子はフルフル首を横に振りながら、俺の言葉を否定しているようにも見える。

 

 まあ、二人が喜んでくれているのだから、アレは『貝殻』ということにしておこう。

 

・・・・・・

 

 お祝いの品の贈呈が終わって、子供達もぽつぽつと食堂を出ていった。

 

「今日はありがとうございました。子供達の願いを叶えてくれて・・・・・・」

「いや、あの子達が自分で稼いだお金で購入しただけだからさ」

 興奮冷めやらないナナイをアルマーが穏やかな顔で眺めている。爆発ぅ~。

 

「子供達のことで相談したいことがあるのだけど」

「フラムのことですね?」

 ミモザに俺が目配せすると、ナナイからも子供の名前が挙がった。

 

 薬草採取士の仕事をやってみたい子がいることを先日の会議の場で聞いている。

 

 その子はフラムという名前なのか。

 タケダ家で支援するのは構わないが、ナナイと相談してから決めようとミモザには伝えてある。

 

 俺の言葉を引き取って、ミモザが話し始めた。今日の旗振り役は彼女に任せてある。

 

「私がベイルで生薬を作っている様子を見て、フラムちゃんは興味を持ったみたいね。

 こちらにもケリーとマリーの稼いだ迷宮ドロップ品と交換で生薬が渡っていると思うけど、

 それを自分の手で作りたいと思ったようね」

「あの子が薬草採取士の仕事に興味を持つなんて想像しませんでした」

 外の世界に触れれば、今までと違ったものに興味が芽生えるものなのかもな。

 

「旦那様と相談したら、薬師ギルドに加入する料金をタケダ家で立て替えて払っておいて、

 フラムちゃんが生成した生薬の納品代金の一部を返済していくやり方もあるって。

 返済が終わったら生成した生薬をギルドに納める際の一定金額分を

 お金で渡すか生薬で渡すかしても構わないって旦那様が提案して下さいました。

 ただ、なんにしてもナナイさんに相談してから決めないとね。

 あの子達の保護者はナナイさんですから」

「フラムのためにそこまでの事を考えていただいて・・・・・・ありがとうございます」

 彼女の目はまた赤くなってきた。今日のナナイは感情が溢れんばかりだな。

 

「ベイルに来た時にフラムちゃんと何度かお話ししたけど、

 薬草採取士の仕事をやりたいという意志は固そうみたいね。

 あとはフラムちゃんとナナイさんが話をして結論が出たら、

 ベイルに今度フラムちゃんが来る時でも、私達がここに送り迎えに来る時にでも

 伝えてくれればよいわ」

「はい。フラムとも話をしてみます。多分、お願いすることになると思いますけど」

 タケダ家には生薬素材の在庫が溢れんばかりにあるから、薬草採取士の作業をしてくれる者はウェルカムだ。

 

 生薬生成はベイルに来ている空き時間を使ってもらっても構わない。

 迷宮に行って、ちょっとリーフを拾わせればジョブ取得は楽勝だしな。

 MP切れが怖いから、少しだけパワーレベリングしておけば大丈夫だろう。

 

 フラムって娘を拠点メンバーには登録できないから、拠点構築の特産品効果による増分は期待できないが、まあ誤差の範囲だろう。

 

「フラムって娘の話はそれぐらいで大丈夫だろうか?」

「はい、旦那様」

 あとはナナイに任せよう。

 

「この後はアルマーに少し話があるのだけど、彼を借りても良いか?」

「はい。じゃあ、私はフラムと話してきます」

 こちらの返事も確認せずに彼女は小走りで行ってしまった。

 

「アルマー、お前大丈夫か?ナナイの力強さに付いていけるか?」

「大丈夫ですよ。これでも僕は成長していますから」

 まあ確かに成長はしている。初めて会った時は奴隷商人Lv1だったし。

 

「あと、そのネックレスには身代わりのスキルが付いてるから。

 もちろんナナイの方のネックレスにもだけど。

 ネックレスが壊れるとしたら、ナナイの方ではなくお前の方だと思っているけど」

「不吉なことを言わないでください!」

 仕方がないのだよ。俺のゲーム脳(サイドエフェクト)がそう言ってるのだから。

 

「それで話は変わるけど、

 タケダ家ではザビルの街にカラダンを店主とした奴隷商館を開業することにした」

「やっぱりカラダンさんですか」

 アルマーの奴隷商館で奴隷商人に必要な売買の経験をさせてもらったからな。

 

「私の方が新米となりますので、よろしくお願いします」

「そんなカラダンさんから頭を下げられるなんて」

 アルマーもナナイと婚約したし、親父さんから白金貨3枚の遺産も受け継いだ訳だから貫禄というか風格を身に付けてほしい。

 

 将来はターヘラで一角の商人となっている可能性もあるかもな。

 ナナイ次第な気もするけど。彼女に愛想をつかされたら没落商人まっしぐらだぞ。

 

「そういえば知り合いの奴隷商人から噂を聞いたのですが」

「ん?」

 今度は取引の話か?

 

「近く開催されるクーラタルのオークションに竜人族の奴隷が出品されるそうです」

「まあ、そうだろうな」

 事前にもらった出品リストには竜人族の竜騎士の男性があったはず。

 

 だから目新しい情報ではない。

 ひょっとしたら、この前オリビアに袖にされていた竜騎士の男だったりして。

 

「それが竜人族なのですが、竜騎士ではないようなのです」

「竜騎士でないのなら、村人とか戦士ではないか?」

 原作でも竜騎士と村人ジョブの出品だったし、この前オリビアを得た時も彼女は村人ジョブだったからな。

 

 出品リストにあったのは竜騎士のジョブだと記載があったので、アルマーの入手した情報は飛び入りの出品なのかもしれない。

 

「ハッキリとした情報が伝わってこないのですが、

 どうも村人や戦士のジョブ等でもないらしいです」

「そうなのか。当日はクーラタルのオークションに行く予定なので確認してみるよ」

 まさかの竜将軍ジョブとか?さすがにそれはないか。

 

 もしくは新しいジョブで竜騎兵とか・・・・・・妄想が過ぎるか。

 

「それと魔法使いの者も複数名が出品されると言ってました。まあ資金があればですが。

 僕はさすがに今の状態で魔法使いの奴隷を仕入れる勇気はありません」

「慎重だな。良いことだと思うが」

 魔法使いか。確かに獲得できるのなら欲しい。

 

 出品リストには魔法使いの者は一名しかいなかったので、こちらも飛び入りでの出品なのかも。

 竜人族も魔法使いも我が家で欲しい人材なので、機会があれば獲得したい。

 だがチクルスとフラウスの治療もあるので、威霊仙を狙うための資金は残しておかなければならない。

 

「オークションの情報、ありがとう。参考にさせてもらうよ。

 ザビルの方で奴隷商館を開業するのは、数日後になると思う。

 前にも言っていたと思うが、アルマーの商館とお互いに必要な奴隷を融通し合えるのなら、

 上手くてやっていきたいと思っている」

「はい。よろしくお願いいたします」

 

「ザビルの商館を開業しましたら、

 アルマーさんへタケダ家で販売予定の奴隷の一覧などを送らせてもらいますので」

「それはありがたいです。うちの方もカラダンさんの方に送らせてもらいます」

 情報を交換し合って、お互いの商売に役立ててほしい。

 

 アルマーとは奴隷商館を営む家同士、今後も末永く良い付き合いをしていきたいものだ。

 

 

 おっ、ナナイが戻ってきた。

 あの一緒に連れている娘がフラムか。もう一人いるけど。

 

「ユキムラさん、この娘がフラムです。

 確認しましたけど本人も薬草採取士をやりたいってことで

 先程のお話のご支援をお願いしてもよいでしょうか?

 それで実は、この子はリクというのですけど、この子も薬草採取士をやりたいみたいで」

「やる気があるのなら、別の一人でも二人でも構わないぞ。なあ?」

 ミモザの方に視線を向けると彼女も頷いていた。

 

「リク君もやりたかったのね?フラムちゃんと一緒に頑張りましょうね」

「うん・・・・・・僕も頑張る・・・・・・」

 少し声の小さな男の子だけど、仲間がいるしミモザもフォローするから大丈夫だろう。

 

「じゃあ、今から迷宮にちょっと行ってジョブを取得しちゃうか」

「えっ、今からですか?」

 ナナイは驚いているが、アルマーとカラダンは普段通りだ。タケダ流が浸透しているかも。

 

「ああ、今からちょっと行ってくれば直ぐにジョブは取得できるから。

 でも迷宮に行くから、二人とも防具はちゃんと装備させてあげてくれ。

 この前、双子が稼いだドロップ品の交換で渡した防具があったよな?

 それを二人に装備させておいてくれるか?

 俺はちょっと準備してくるから」

「えっ、あっ、はい。本当に大丈夫ですか?迷宮に行くのですよね?」

「ああ、迷宮と言っても一階層だし、俺達がいるから危険は全くないので。

 じゃあ、ちょっと確認に行ってくるな」

 あとはカラダンとアルマーに任せて、食堂を出て裏庭へ回った。

 

 食糧庫の壁からベイルの1階層の中間部屋にワープで移動。

 ベイルの1階層はニードルウッドの出現階だ。

 魔物部屋までワープで移動して索敵で確認・・・・・・うん、満タンだな。大丈夫だ。

 このまま殲滅しても、拾いに戻るまでに迷宮に吸収されると拙いから今は我慢だ。

 あとは誰か護衛のために連れてきた方がいいな。

 

 そのまま、ターヘラの剣術指南所までワープで戻り、食堂に向かった。

 食堂に入ると、フラムとリクの二人は革の鎧と靴、グローブを装備している。

 武器はまあ必要ないな。

 それはともかく、ナナイまで防具を装備しているのだが。

 

「今から出発するけど、ナナイも付いてくるのか?」

「はい。ユキムラさんを信用していますけど、私はこの子達の保護者ですから」

 まあ、別に構わないけど。

 

 ナナイは軽く拳を突き上げて気合十分だ。

 そんなことをするから、ゲンコツのアクセサリーになるのではないだろうか。

 

「僕も行きますから!」

「アルマー、お前も来るのか?まあいいけど」

 なんだか大袈裟になってしまったな。

 

 みんなで食堂を出て裏の食糧庫に向かった。

 壁にゲートを開いて、クーラタルの自宅の修練場の木陰に繋げた。

 パーティーに入れたカラダンとミモザを先に自宅に戻す。

 今日は午後からのイベントに備えて、カラダンもミモザもクーラタル側で待機だ。

 

 その後はパーティに入れた後に、アルマー、フラム、リク、ナナイの順番で送り出す。

 最後に俺もゲートを潜り抜けた。




お読みいただき、ありがとうございます。
話がちょっと長くなってしまいそうなので、ここで区切らせていただきました。

次回投稿日は2026/1/20(火)の予定です。
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