異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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020.遊び人を目指して

 中間部屋には他のパーティは存在しなかった。

 

 まずは、コボルトのいる集団を探して、コボルト以外は先に始末と。

 1匹だけ残ったコボルトに対して、オーバーホエルミングをかけて後ろに回り込む。

 武器を持ってない両手で拳を握り、その先から毒針を出してボクサーの構えを取る。

 まず、右の拳を使って、10回連続でコボルトの頭を刺突した。

 

 傍から見ると、正拳突きを高速で10回やった感じ。シャドーボクシング的な。

 オーバーホエルミングが切れて、しばらくコボルトを様子見。毒化はしていないようだ。

 色とか、よく分からないけど、特に苦しそうな感じに見えないので失敗なのだろう。

 でも、目の前のコボルトは後頭部をさわりながら、俺を睨みつけてるように見える。

 

 まあ、俺だって、いきなり後頭部を10回殴られれば激怒するだろうから仕方ない。

 

 コボルトの攻撃をバックステップで躱す。なんか、コボルトの怒り具合が増した気もする。

 仕方ないので、もう一度、オーバーホエルミングして、後ろから左の拳で10回連続の刺突。

 

 そして、しばらく様子見。これは効いたか。

 今度はコボルトの動きが目に見えて悪くなったので、毒化したようだ。

 

「お前は...」

 と言いかけたタイミングで、コボルトが煙となった。

 

「...もう、死んでいる」

 ちょっとタイミングがずれた。セリフを聞いてくれる者が居なくなり寂しい気分だ。

 北斗神拳の使い手はこのタイミングまでマスターしているのだろうか。

 今の俺は腕が四本あり、オーバーホエルミングと合わせれば百裂拳でも出来るかもしれない。

 迷宮では危ないからやらないけどね。

 

 空手道場に居た頃にはサンドバッグを相手に奇声を上げながらやったことはある。

 そのあと、師範代だった、おっちゃんに後ろからぶん殴られたけど。良い思い出だ。

 あの頃のおっちゃんに感謝だ。空手の腕も鍛えられたし、異世界で役立っている。

 

 そして、この毒針はもう使えないのだろうな。

 毒針の先が、右の拳の毒針と左の拳の毒針で形状が変わってる。左側はいびつな形だ。

 10回も刺突すれば、そりゃ潰れるだろうという気がしなくもないが。

 

 右手の毒針はアイテムボックスに入ったが、左手のは入らなかったので消費済ってことかな。

 毒針が9本余ったが、パーティメンバが増えれば、そのうち使うだろう。

 でも、俺以外に正拳突きは出来ないだろうから、もっと数が必要かもしれない。

 使用済の毒針は迷宮の通路に投げ捨てた。そして、無事、暗殺者のジョブを得たようだ。

 

 だが、待望の遊び人は、まだ取得できていなかった。

 頑張って、博徒のジョブを取ろう。ワープで4階層の小部屋に移動した。

 

 ベイルの4階層はミノで、ここからモンスターの数が最大3匹になる。

 だが、今の俺なら、多分、問題なく対応出来るはず。

 英雄と鬼武者があれば、近接戦闘で後れをとることはないはずだ。

 ミノの突進は注意が必要だが、一番注意すべきはグリーンキャタピラーの糸によるスキル攻撃だ。

 身動きが取れなくなるのが一番のリスクだと思ってる。

 

 ミノのドロップは皮だったな。鍛冶素材なのでアミルに生かしてもらおう。

 

 小部屋を出て、索敵で探索エリアをどんどんクリアにしていく。

 

 4階層で最初の戦闘はミノとグリーンキャタピラーだ。いきなり面倒な組み合わせだな。

 魔法の射程に入ったら、ブリーズストームっと。

 ミノが突進してきたが、軽くサイドステップで躱し、グリーンキャタピラーに走り寄る。

 糸攻撃をされる前に、フラガラッハの一撃で倒す。

 ミノが再び、突進で戻ってきた。

 今度はサイドステップではなく、フラガラッハの横から切り付け、ミノは煙となって消えた。

 魔法の必要はなかったかな。まあ、練習の一環と思えば良いか。

 

 ミノの突進による攻撃も少し違和感があったな。

 抜き胴で倒した際にも、反動というかミノの重みをほとんど感じなかった。

 フラガラッハもデュランダルも鑑定上は両手剣だが、バカでかいロングソードじゃない。

 固定で腕力の重量制限が解除されているが、大きさからすると大した重量でもないはず。

 

 一方、ミノは重量級で、突進されたら軽く吹き飛ばされるくらいの質量の差はあるはず。

 フラガラッハがチート武器とはいえ、切断というか振りぬいた時の反発がないのは何故?

 サイズや重量は関係なく、HP、防御力、攻撃力、防御無視といったパラメータだけが有効?

 

 まあでも、武器はそうだとしても突進を正面から体で受ければ、さすがに吹っ飛ぶか。

 武器を振るう時には大胆に、防御をするときには細心にということだろうか。

 もう少し、いろいろ試しながら戦ってから考えるか。

 

 この後も、グリーンキャタピラーとミノを優先して、どんどん倒していく。

 1回の接敵でかかる戦闘時間は1分もかかってない。

 魔法に対する強化にボーナスポイントを振ってないし、ジョブ構成も近接寄りなので、魔法で一撃とはいかず、利用頻度は減っていった。

 

 他のパーティを避けながらも5分周期ぐらいで戦闘をこなしている。

 索敵スキルのおかげで効率良く殲滅と探索が進む。

 もっとも4階層は確認した限りでは他のパーティは2つくらいしかいなかった。

 1時間くらいすると、賞金稼ぎがLv34になった。剣匠や盗賊はまたLv30にも達していない。

 

ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)

探索者Lv34 英雄Lv34 鬼武者Lv34 商人Lv27 賞金稼ぎLv34 剣匠Lv16 盗賊Lv24

装備 フラガラッハ ほむらのレイピア エストック ワンド アルフレイル 硬革の靴 硬革の帽子

30万200ナール

 

 賞金稼ぎのレベルが上がったので、博徒の取得条件に挑戦しよう。

 フラガラッハからデュランダルに持ち替え、経験値系、結晶化促進を外した。

 MP回復をMaxにして、残りを敏捷に割り振った。

 

ボーナスポイント(231)(初期値198+33(Lv上昇分))

・キャラクタ再設定(1)

・武器6(デュランダル)(63)

・鑑定(1)

・ジョブ設定(1)

・索敵(5)

・拠点構築(5)

・MP回復速度二十倍(63)

・敏捷上昇(25)

・セブンスジョブ(63)

・詠唱省略(3)

・ワープ(1)

余剰ポイント(0)

 

 3階層の中間部屋にワープして、コボルトがいる集団を探し回る。

 3回目のワープで俺の前方に...コボルトが2匹いるのを発見。

 俺の後方にも、2匹いるな...こっちは、コボルトとグリーンキャタピラーだ。

 

 先に後方にいた2匹に近寄り、デュランダルで殲滅する。これでMPは回復と。

 

 そのあとは、ゆっくりとコボルト2匹のグループに近づいていく。

 射程に入ったら、すかさず「生死不問」をかける。

 確率が悪いのは当然知ってるので、一回で成功する訳もない。

 

 コボルトと接敵するまでに更に二回、「生死不問」をかけたが失敗。

 コボルトが襲いかかってくるが、バックステップで距離を取りながら攻撃をかわす。

 たまに、コボルトの腹を蹴って、足止めもしながら、ひたすら「生死不問」をかける。

 10回以上失敗したくらいでMP回復のため、片方のコボルトをデュランダルで葬った。

 

 その後も、根気よくコボルトの攻撃をかわしながら、「生死不問」をかけ続ける。

 そろそろ、20回を超えるかな...というところで、コボルトが煙となって消えた。

 ようやく、成功したようだ。やはり確率の低いスキルだな。レベル差が30以上あるのに。

 

 まだ、盗賊のレベルが低いから博徒は取れていないが、条件の一つは満たしたはずだ。

 後ろに下がり過ぎて、ニードルウッド1匹が近くまで寄ってきていた。

 デュランダルで倒してMP回復をさせてもらい、4階層の中間部屋にワープした。

 

 もう、お昼近いが、レベリングと探索を再開した。

 結局、さらに1時間くらいかけて、魔物部屋とボス部屋以外のすべてのエリアをクリアにした。

 盗賊がLv31になり、無事、博徒のジョブが増えて、遊び人のジョブも取得出来た。

 

 ボス部屋の待機部屋でしばし休憩。

 

 4階層では、ミノ、コボルト、グリーンキャタピラー、ニードルウッドが出現する。

 2時間くらい、探索して、一通りのモンスターの組み合わせと戦った。

 だが、こいつらの戦い方は、お粗末の一言。

 互いに連携する訳でもなく、探索者にとって嫌な戦法をとってもこない。

 

 例えばミノは突進してきて、ニードルウッドはゆっくり近づき、コボルトはやや早歩きで近づいてきたりする。

 順番に各個撃破してくれと言わんばかりだ。

 ミノが3匹の時もあったが、3匹並んで突進してきたら、面倒だったが、それもなかった。

 コボルト3匹は、比較的横一線で向かってきたが、適当に左右に移動すると、うまくすれば、縦一列で向かってきたりして、どん詰まりながら、向かってきたりする。

 

 非常に稚拙な戦い方だ。

 探索者を絶対殺すという殺意マシマシなところだけは認められるが、ただそれだけだ。

 上位階層...例えば12階層とかからモンスターが連携し始めるとかあるのだろうか。

 

 今のところはフラガラッハで一撃で倒しているので、ハッキリ言って単純作業だ。

 ただ、どこかで急に切り替わるかもしれないので、足を掬われないにしないとな。

 

 モンスター3匹との戦闘は危なげなさそうので、このまま7階層ぐらいまで様子見しよう。

 あとは、アミルを加えて以降の戦闘のやり方も工夫しないとな。

 アミルは探索の経験はあまりなさそうだから、適度に戦闘に慣らしていかないと。

 

 どこか、別の迷宮で1階層から攻略を始めて慣らすのが良いかもなぁ。

 クーラタルは混んでいるイメージがあるので避けるか。まあ、アミルと相談して決めるか。

 

 ボス部屋は空いてるタイミングを見計らって突入して難なく倒し、5階層に抜けた。

 4階層の魔物部屋を攻略してないし、遊び人もLv1のままだが、昼の時間もかなり過ぎたので、午前中の探索は終了にした。

 

ユキムラ タケダ(鬼人族 ♂ 17才 自由民)

探索者Lv34 英雄Lv34 鬼武者Lv34 商人Lv32 防具商人Lv31 剣匠Lv22 盗賊Lv31

装備 フラガラッハ ほむらのレイピア エストック ワンド アルフレイル 硬革の靴 硬革の帽子

30万200ナール

 

 5階層の小部屋から自宅の玄関にワープした。

 ベイルの旅亭の昼の弁当をパクつきながら、朝作ったハーブティーを飲む。

 迷宮からダイレクトに戻ってこれると、本当に便利で良いな。

 

 空き部屋で乾かしていた装備品は、全て水気がなくなっていたので、倉庫1に移した。

 さて、次はどうしようか。懸賞金の受領、遊び人のレベリング、アミルとの買物。

 風呂の水をウォーターウォールで補充しながら考え中。

 

 まあ、懸賞金かな。クーラタルに行って、お試しで懸賞金の換金をしてみるか。

 ギルド神殿を使えば、どこで討伐した盗賊でも処理できるのか確認しておきたい。

 ベイルとクーラタルが同じ領内であるかは、ちょっと自信がないが。お試しだ。

 出来れば、ベイルの騎士団にばかりインテリジェンスカードを持ち込むのは避けたい。

 なんか悪目立ちしている気がするからだ。

 

 最悪ダメだった時のことを考えて、一番安そうだった集団のカードで良いか。

 最後に倒した、首領っぽい奴だけレベルが高かった盗賊団にするか。

 

 玄関からクーラタルの冒険者ギルドにワープ。

 ギルドで騎士団の詰所の場所を教えてもらい、向かった先の守衛の騎士に用向きを伝えた。

 ベイルと違い、こっちは戦士ではなく、ちゃんとした騎士だな。

 

「3階層でいきなり襲われて、返り討ちにしたのだけど、多分、盗賊ではないかと思って」

「インテリジェンスカードのチェックをするので、左手を出すように」

 

 俺のインテリジェンスカードがチェックされ、言われるままにインテリジェンスカード6枚を手渡した。

 騎士が「しばし待て」と言い、奥に引っ込んでいった。ギルド神殿で確認してくるのだろう。

 今は探索者をファーストジョブにしているから何の問題もないはずだ。

 一連のやりとりも不自然な部分はなかったので、そのままギルド神殿で懸賞金が払われるはず。

 

 何かあるとしたら、盗賊の居場所とかのヒアリングがあるかどうかとか?

 大して、時間をかけずに先ほどの騎士が戻ってきた。

 右手に懸賞金が入ってると思われる袋を持っている。

 

「確かに盗賊団のようであった。これが懸賞金だ。協力、感謝する」

 労いの言葉と共に袋を手渡してきた。放り投げずに、手渡しだ。感謝という言葉と行動が一致している。

 騎士に礼を言うと、もう用はないとばかりに守衛に戻っていった。ヒアリングもなしか。

 日常茶飯事のことなのかな。

 

 これだと、しばらくしてからクーラタルの詰所で換金でも良いかもしれないな。

 詰所を去り、適当な木陰から玄関にワープした。

 玄関で小袋を開けると、丁度、金貨が18枚入っていた。思っていたよりも高額だった。

 

 なんか、この世界に来てから資金を得ているのは、9割が盗賊討伐の懸賞金で、残りの1割が迷宮で退治した盗賊の所持金か、魔物部屋で全滅したパーティの所持金のような気がする。

 賞金稼ぎというか、スカベンジャーというか。

 まあ、原作主人公も出だしの資金繰りは盗賊討伐の懸賞金頼りだったから、同じなのかね。

 

 まだ、手元に11枚あるんだよなぁ。

 昨日の5枚だけでも、ベイルの詰所で懸賞金の換金するか。

 2日前に行ったばかりだし、今日はやめておくか。

 今すぐ大金を必要としている訳でもないしな。

 クーラタルなら騎士も多そうだし、今日と同じ騎士にあたる確率は低いだろう。

 

 別に後ろ暗いことではないから、気にし過ぎかもしれないが。

 レベルの低い弱い間は、目立たずに行こう。

 

 アミルに会いに行く前に、細々とした事を済ませておくか。

 

 まずコボルトハンターに連絡を取るべく、聞いていた宿屋に行ったが、あいにく留守だった。

 宿の店主によると、泊っているのは確実のようなので、伝言をお願いした。

 引っ越して宿を引き払ったので、取引の際にはこちらから取りに行くとだけ伝えた。

 

 あとは、ビッカーのところにも引っ越しの連絡だ。

 ビッカーの商館に行くと、さして待たされることもなく、会うことが出来た。

 失礼な言い方かもしれないが、やはり商いの規模が小さいからなのだろうか。

 

 こちらの用向きは伝言先を宿から、新居に変更してもらうことで、その住所を伝えることだったのだが、ビッカーの方もちょうど俺に連絡を取ろうかと思っていたようだ。

 

 要点は2つだ

 ①ビー玉の今後の売買について

  ⇒月2個ではなく、月4個の売買にしてほしいとの事。

 ②鏡の売却先の商人の紹介

  ⇒クーラタルの商人への紹介状を渡すので、そこで直接交渉してほしいとのこと

 

 ビー玉は出来れば近日中に4個欲しいとのことだ。

 特に異論はないが、1年くらいしか販売できないことは釘をさしておいた。

 

 鏡に関してはクーラタルで実績のある商人への紹介だとビッカーの説明。

 紹介状の表面に「ルーク」という文字が見えた。ここでも、やっぱりルークなのか?

 原作では色魔の商人とのやりとりの後に出会うのではなかったか。

 俺は鬼人族だから色魔のジョブは取得できないので、関係ないけど。

 原作に引っ張られ過ぎるのも良くない。難しいところだ。

 

 次は1週間後ぐらいでビー玉4つ持って、訪れることを約束。お礼を告げて、商館を後にした。

 さて、アミルに会いに行くかな。

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