異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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045.労い

 ターヘラで時間をかけ過ぎたので、急いで昼食を取ることに。

 と言っても、瑪瑙の装飾品をマリアさんが我が家に持ってくるまでは今しばらく時間があるが。

 俺が食卓に着かないと食事を取らない者が我が家には若干名いるので、遅刻するとプレッシャーがかかることになる。

 多分、俺に規則正しく食事をさせるための圧力ではないかと。

 

 ミモザにフラムとリクのギルド入会金の返済が不要になることを伝えた。

 

「旦那様はなんだかんだと、あの孤児院の子達の面倒をみていますね」

「うーん、どうだろう。ケリーとマリーの実家だからというのもあるのかもな」

 あとはナナイが頑張ってるからというのもある。

 

「そんな訳で、あの子達が将来どのようなジョブに就きたいのかも

 ミモザの方でそれとなく聞き出してもらえるか?

 誤解がないように言っておくけど、将来の職業やジョブを今無理に決める必要はないからね。

 焦らずにじっくりと考えてもらえれば良いので。

 まだ幼い子もいるだろう?

 もう少し成長してからでも、ジョブ取得の支援はちゃんとするつもりだから」

「ええ、分かりました。周りに決めた子がいるからと焦って決めさせないように注意します」

 子供達と接する機会の多い彼女に任せるのが一番良い。

 

 彼女はナナイからも信頼されているようだし、子供達と上手く付き合っている。

 ベイルの責任者にしたのは正解だったな。

 ビンスとリックの二人もよくやってくれてるとは思うけど正直言えば、もう少し年齢を重ねた大人をもう一人くらいベイルには加えたい。

 ミモザの補佐や場合によっては代理をこなせるようにね。

 

・・・・・・

 

 昼食を終えて暫くすると、マリアさんが来たようだ。

 カラダンがエスコートして食堂まで連れてきた。マリアさんの他にも女性が一人いる。

 

 さすがに装飾品を広げるとなるとそれなりのスペースが必要だから、食堂以外の場所の選択肢はなかった。

 選ぶ側の女性陣の人数も多いし、ポーラやモニカなどにはレドリックやレイモンドも付き添っていて人数が多くなりがち。

 まだ昼間だから、窓を開けておけば天井の照明設備を使わなくても室内は十分明るい。

 さすがに部外者には拠点構築の照明設備を使っているのを見せる訳にはいかない。

 

 

 俺はなるべく気配を消して、壁際にヒッソリと佇むようにしている。

 テーブルをくっつけて確保した陳列場所にマリアさんと店員らしき女性商人が商品を次々と並べ始めた。

 カラダンも手伝っているようだ。元はマリアさんの店の従業員だったので手慣れた感じだ。

 

 今回はカラダンに依頼して、マリアさんには一人あたり5万~7万ナールくらいの予算で瑪瑙の装飾品を持ってきてもらうようにお願いしている。

 ザビルの既存商館から移籍する者を除けば、我が家に在籍している女性は18名。

 女性比率は7割を超えている。

 

 ザビルの方のメンバーはタケダ家に馴染んで、その人となりを確認してから同様の扱いにしようと思っている。

 マテウスもニケを娶るのなら、それに相応しいアクセサリーを贈らせたいが未だ時期尚早だ。

 まずはザビルの責任者であるカラダンに確認してもらってから。

 

 一通り並べ終えると、ポツポツと商品を見にいく者が現れ、マリアさんが満面の笑みで迎え入れている。

 先日、アルマーの遺産の件で店に行った時は、奴隷商人協会理事のブランカさんと激しい鞘当てをしていたのを見ているので、とても同一人物とは思えない。

 あの時は魔女の集会(サバト)に行った気分だったし。

 

 先陣を切って装飾品を見ているのはラファ、ヘルミーネ、モニカ、ポーラだ。

 お相手の男性二人も一緒だ。レイモンドはともかくレドリックはサマになっている。

 モニカもポーラも楽しそうな雰囲気だ。

 

 ラファとヘルミーネは商品を指差しながら、何やら会話をしている。

 アクセサリーに造詣が深いのだろうか。

 フラウスも近くにいるのだが、商品を見ているのではなく、ラファの護衛をしているように見えるのだが。

 彼女には護衛ではなく、自分の好きなアクセサリーをちゃんと選んでほしい。

 

 

 一方、アミルやエネドラ達は遠巻きに見ている感じだ。

 全員が群がるように行かないのは慎ましいとも言えるが、あまりに尻込みするようなら後押しせねばならないだろう。

 

 ヴィルマやイレーネ達は販売会の間は修練場へ行くのを禁止にしているので食堂にいるが、手持無沙汰な感じだ。

 ここにいる意味を理解しているのか心配になる。

 こいつらこそ、本気で後押しをしなければならないかもしれない。

 

 モニカ&レイモンド、ポーラ&レドリックは何やら微笑ましい雰囲気でマリアさんと話しながら装飾品を選んでいるようだ。

 ラファとヘルミーネはテーブルから離れておしゃべりしている。

 フラウスは会話に加わる気配がないな。

 

 あ、マリアさんに睨まれた。次の客を連れてこいという合図な気がする。

 仕方ない。最も腰の重そうなヴィルマとイレーネの所に行こう。

 気配を消しつつも、二人の方にゆっくりと近づいた。

 

「あ、主いたのか?次の迷宮はいつだっけ?」

「スキルをもっと試したい。これから行くか?」

 お前らなぁ。

 

 ここにいる目的を完全に忘れているか、そもそも理解する気があったのかも疑わしいぞ。

 

「あそこのテーブルに行って、アクセサリーを選んできたらどうだ」

「装備品?」

 違うっての!

 

「お前達が一番気に入ったのを選んでいいから」

「あたしらが選ぶの?」

 自分で気に入ったのを選ぶんだよ。

 

 右側からラファとヘルミーネが近づいてきた。後ろにフラウスもいる。

 既に選び終わったのだろうか。

 何やら笑みを浮かべている。気に入ったものが見つかったのかもしれない。

 

「ユキムラ様、一番初めに私に選んでくれませんか?」

「えっ?どういう意味?」

 

(ガバッ)

 

 えっ?

 

 なんか背中に抱き着いてきたのは・・・・・・イレーネ?

 

「御館様、あっち・・・・・・」

「あっちって?」

 彼女の指差した方向にはマリアさんが商品を並べたテーブルがある。

 

「あたしに一番に選んで!」

「・・・・・・」

 こいつ、『一番』という言葉に反応しただけじゃないか?

 

(ガブ、ガブ、ガブ・・・・・・)

 

 首が痛い、痛いっての!分かったよ。行くからさ。

 やむを得ずにマリアさんが商品を並べたテーブルに近づいた。

 だが、イレーネが俺の背中に抱き着いたままの状態。

 

「あんた、何やってるんだい?」

「何って、お客様を連れてきたのかな?」

 何をやっているのか、実は自分でもよく分からない。

 

「この背中の娘に似合いそうなのをいくつか見せてもらえないか?」

「任せておきな」

 きっと高い奴を複数出してくるのだろうな。

 

 ババ抜きしようとしたら、相手の手札が全部ジョーカーという奴だ。

 

「黒髪で色白だから、そうだねぇ・・・・・・こんなところかね」

「どれどれ・・・・・・」

 青系とシルバーっぽい色のペンダント、少しきつめのレッドか。

 

 瑪瑙って色のバリエーションが結構あるから面白いんだよな。

 ペルマスクの鏡工房の親方もそんなことを言っていた気がする。

 

 シルバーも捨てがたいが、青系の方がイレーネには似合いそうだな。

 

「これなんてどうだ?」

「御館様が一番に選んだ。それがいい」

 色や形の好みではなく、順番が重要ですか?

 

「じゃあ、それをこの娘にもらえるか?」

「はいよ。ちょっと待ってな」

 小奇麗な小箱に青いペンダントを入れてイレーネに手渡してきた。

 

 背負われた状態で、手渡しというのも奇妙な構図なのだが。

 

「あんた、大丈夫かい?」

「ああ。普段から鍛えてるから、この娘を背負うことぐらい全く問題ない」

 彼女は筋肉質だから見た目よりは重たいけど、俺の腕力なら余裕だ。

 

「そうじゃなくて、そっちの・・・・・・」

「ん?」

 マリアさんが指差した先にはアミルを先頭に長蛇の列が。何これ?

 

「ご主人様、次は私のアクセサリーを選んでもらえますか?」

「・・・・・・」

 マジっすか。

 

 アミルの後ろにはミラ、ヴィルマ、ケリー、マリー・・・・・・何人並んでいるんだ?

 エネドラとチクルスもいるし。

 ラファとヘルミーネ、フラウスもいるじゃないか。

 

 ミラや双子、フラウスは俺に選んでほしいのではなく、誰かの付き合いで並んでいるだけでは?

 列に並んでいないのは、背負ってるイレーネと相手のいるモニカとポーラ、我関せずのミモザだけか。

 

 この列の娘達全員分、俺が選ぶの?

 そもそも自分に縁のない贈り物などは、ネットで他者の評価を参考にしたポチ買いしたことしか俺にはないのだけど。

 

 でも、頼まれたら選ぶしかないよなぁ。

 

「この娘に似合いそうなのをいくつか見せてもらえないか?」

「クックックッ・・・・・・任せておきな」

 もう、ジョーカーしか引ける気がしない。

 

 マリアさんの笑いがマジで魔女っぽくなってきた。

 

 アミルには少し薄めのピンク色の四つ葉のクローバーのようなトップのネックレスを選択。

 多分こちらの世界に四つ葉のクローバーなどはないから、瑪瑙の形がたまたまそうなっただけだろうけど。

 

「アミル、とっても似合ってると思うぞ」

「そうですか。えへへ・・・・・・ちょっと照れ臭いです」

 めっちゃ可愛い。お持ち帰りしたいくらいだ。

 

 ミラも珍しそうに覗き込んでいるが、装飾品に向ける目が鍛冶師のそれな気がする。

 アミルとミラはナナイ達に贈ったペンダントを作ってもらったので、今後何かアクセサリーを考える時に凝ったものが考え出されるかもしれない。

 

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 その後は、長蛇の列をなしていた装飾品選びを頑張った。

 機械的にならず、どの娘達にも一番似合いそうなものを真剣に選ぶ。

 

 マリアさんの提示する最大5つの選択肢の中から、ベストなものを理由も考えながら選んだ。

 直感で良いアクセサリーを選択できるようなセンスは俺にはないからな。

 

 それでも、俺なんかが選んだものを皆喜んでくれたのが嬉しかった。

 彼女達への労いの贈り物なのに、なんだか俺の方が労われているような気分になった。

 フラウスも初めは興味無さそうに見えたが、俺が選んで彼女が身に着けたものをラファが褒めたりすると嬉しそうにはにかんでいて可愛らしかった。

 

 

 主人が購入したものは奴隷に渡しても主人の所有物・・・・・・そんなことはどうでもよく、個々人で持っていて好きな時に使ってよいと言い渡している。

 傷つけたり、失くしたりしても一度渡したものだから、責任を感じる必要はないと伝えてある。

 アクセサリーを贈って、変に重圧をかけるようだと本末転倒だし。

 

 

 さっそく小箱から出して身に着けている娘達もいて、食堂の風景が急に華やかになった気がして不思議というか幻想的な感じだった。

 やっぱり、みんなこういう時は生き生きしている気がする。

 迷宮で戦ったり、生薬生成や家事しているだけが人生ではないもんな。

 もう少し余裕を持った生活をさせたいのだけど、みんな黙々と働くし、迷宮で戦うし、与えられた役割に全力を尽くそうとするんだよなぁ。

 

 元の世界でぬるま湯に浸かっていたから、そう感じるのだろうか。

 

 女性陣が三々五々、自室に戻っていった。

 そのあと、イレーネ達は修練場に行きそうな雰囲気だったけど。

 

 それはともかく、俺の最後の役目を果たさなければ。

 

「さて、代金を支払わないとな」

「そうだね。

 一つ7万ナールを全部で18個だから126万ナールになるけど、

 特別に88万2000ナールでいいよ」

 やっぱり全部7万ナール(ジョーカー)を薦めていたのか。

 

 3割引のスキルがなければ100万ナールを楽に超えていた。

 金貨を88枚も払うのは、今までの中で最高の出費かもしれないな。

 家を購入した時もそこまではいかなかったし。

 

 金貨88枚と銀貨20枚を出して、ほくほく顔のマリアさんに代金を渡した。

 事前に金貨は10枚毎に分けて取り置いておいたから、さほど時間はかからずに払えた。

 

 これだけ支払っても、まだタケダ家には400万ナール以上の資金がある。

 明日のオークションで威霊仙や魔法使い、竜人族の奴隷を購入することは可能だろう。

 威霊仙が出品されるかどうかは怪しいが、可能性があるのなら準備しない訳にはいかない。

 

 販売会が終了して、一度、マリアさんは店に戻って出直してくるそうだ。

 さすがに大量の商品を抱えているので、戻って置いてくるしかない。

 カラダンとレイモンドが付き添って、マリアさんと女性商人をターヘラの店まで送っていった。

 

・・・・・・

 

 マリアさんが戻ってきたので、応接室の方へ通させてもらった。

 これから少しずつ暗くなってくるので、食堂の照明設備を見せるのは拙い。

 応接室ならランタンを使って、明るくすることができる。

 

 少し早めの夕食会だが、俺、カラダン、エネドラ、マリアさんの四人でテーブルを囲むことに。

 給仕というほどではないが、料理や酒を運んだりするのはミモザとチクルスに任せている。

 

「本日は我が家で販売会を開いていただき、ありがとうございました」

「気持ち悪い喋りだね。こっちは儲かるのだから、いつでも歓迎だね。

 売れるのなら、また明日来たって構わないんだよ」

 食堂ではお客様だったが、今はもてなす側だから口調は丁寧モードに変更だ。

 

 さすがにそう何回も開催することはできないよ。

 

 先程の行列対応を思い出して、げんなりする。

 いや皆喜んでくれたみたいだから、頑張って開催した甲斐はあるのだけど。

 

「瑪瑙の原石や装飾品はペルマスクでも売れ行きが良いので。

 また機会があれば仕入れたいと思ってます」

「そうかい。まあ、遠隔地では高値で売れるからね。

 鏡だって、この辺りではかなり高く売れるじゃないか。

 もっとも誰かさんは安値で売って、別の物をその分高く売ろうとしているみたいだけど」

 石鹸のために鏡を安値販売しようとしているのは、既にバレている。

 

「平民用の鏡もそのうち、もっと売り出そうと思ってますよ」

「そうかい。木枠の方はいくらでも量産できるからね。いつでも声をかけておくれ」

 ザビルの方は石鹸の販売をメインにするつもりだ。

 

 さすがにペルマスクと近いザビルの街で平民用の鏡を販売するのは営業妨害になりかねないので、遠慮しようかと思っている。

 平民用の鏡を販売するのはクーラタルにするか、それとも帝都に場所を構えるのか。

 まだ決めかねているが、そもそも平民富裕層の石鹸の認知度を高める必要がある。

 そのためには貴族用石鹸の存在価値も宣伝したいところだ。

 ハルツ公爵領では徐々に広がってると思うのだが。

 

「マリアさんの店では、装飾品の販売は順調なのですか?」

「誰かさんみたいな大口な購入は珍しいけどね。まあ、ボチボチだよ」

 なかなか手の内は晒さないか。

 

「迷宮のドロップ品で今取り引きしているものより価値があるものを入手したら、

 買い取りするつもりはありますか?」

「へぇー、今取り引きしているのは蝙蝠の羽と爪、蝶の羽と触角だけど、

 それよりも高い階層のドロップ品が入手できそうなのかい?」

 マリアさんの言葉に頷いた。

 

「迷宮の探索も順調なので、それなりには入手できると思いますよ」

「そうだろうね。

 確かに今日アクセサリーを選んでいた娘達は皆、手練れっぽい感じだったしね」

 うちのメンバーは皆、頼もしいから。

 

 もっと鍛錬して成長すれば40~50階層ぐらいは普通に探索できそうだと思っている。

 

「まあ、入手したら持っておいで。取り引きの話はそれからだね」

「では入手したら相談しますよ」

 ターレは遠くない未来に討伐してしまうから、大量に入手することはないかもしれない。

 

 クーラタルの40~50階層ぐらいを護衛部隊が普通に探索し始めたら相談するかな。

 

 迷宮食材を使った我が家の料理に舌鼓を打ち、帝都で仕入れたそこそこの酒を振舞ったが、彼女の口はそれほど滑らかにならない。

 酒に強いのか、商売の話になるとガードが固いのか、それとも両方か。

 我が家のメンバーも酒は控えている。

 

 普段の食事でも我が家では酒は出させないようにしている。

 特にミラの場合、酒の事故(ヘッドロック)が起きると怖いから。

 

「マリアさんの店では従業員は足りているのですか?」

「なんだい急に。働き者を紹介してくれるのなら、こき使ってやるよ」

 そんなこと言われると紹介するのを躊躇うな。

 

「ターヘラの剣術指南所の子供達を我が家の店で受け入れて働いてもらってるのは

 アルマーやナナイから聞いてますよね?

 そこで商人やら薬草採取士やら、できることをやらせてみようと考えてます。

 商人を目指す子がいて、マリアさんの店で働き口があるのなら、どうかと思って」

「また、物好きなことやってるねぇ。さっきも言ったけど、働き者ならこき使ってやるよ。

 給金はそんなに期待されても困るけどね」

 まあ、拒否されなかっただけマシか。

 

 先のことはお互い確約はできないが、実際に商人を目指す子が現れたら候補の一つかな。

 我が家で働くのは奴隷契約が必須になるから、あまり勧められない。

 双子は例外中の例外だろう。

 

「分かりました。まだ何も決まっていませんけど、そのうち相談するかもしれないです」

「ああ。期待しないでおくよ」

 

 食事も終わり、話も一段落した。最後のイベントだな。

 カラダンに目配せすると、彼は静かに頷いた。

 

「マリア様、私がタケダ家の奴隷になった時のことを覚えていますか?」

「あんた、何をいきなり言い出すんだい」

 彼にしては珍しく回りくどい言い方だな。

 

 それにしても、『マリア様』は聖母のような響きだが、このおばちゃんは魔女寄りのイメージだから、とっても違和感がある。

 何も言葉には発してないのに、おばちゃんに何故か睨まれた。解せぬ。

 

「私がタケダ様に身請けされた際に、その代金の一部をマリア様に渡そうとした時、

 あなたはこうおっしゃられました。

 私のようなひょっこから金を受け取る程、落ちぶれてはいないと。

 そして、こうもおっしゃられました。

 そういうのは、もっと儲けられるようになって、

 マリア様の店を超えるような店を切り盛りできるようになってからやりなさいと」

「どうだったかね。そんなことを言ったかもしれないね。だからどうしたって言うのだい?」

 カラダンが俺の方に視線を向けた。

 

「今度、ザビルの方に店舗を出すことになりました。その責任者をカラダンに任せるつもりです。

 ちなみに敷地面積だけで言えば、ターヘラの貴方の店よりも大きいかもしれません」

「へえぇ。短い期間がよくそこまで。ちょっと驚いたよ」

 彼にしては珍しく照れたような表情だ。とっても面白い。

 

「これはささやかですが、私からの感謝の気持ちです」

「・・・・・・」

 琥珀のネックレスが入った小箱をマリアさんの前に置いた。

 

 無造作に小箱を開けて、中身のネックレスを取り出した。

 そして角度をイロイロと変えながら確認している。

 なんかアクセサリーの鑑定しているみたいだな。

 

「良い品だね。ちゃんと装飾品の勉強はしているようで感心なことだ。

 でも、次からはもっと大きな商売のネタを持っておいで」

「今はこれが精一杯です」

 おばちゃん、一言多いな。それと、ルパ●三世を思い出したぞ。

 

「さて、年寄りには今日は忙しくて堪えたから、これでお暇するよ。

 食事と酒は美味しかったよ。ありがとうね。

 次はもっと美味しい儲け話を期待しているよ」

「・・・・・・」

 やっぱり、おばば様を彷彿させる台詞だなぁ。

 

 ミモザがレイモンド(タクシー)を呼びにいったようだ。

 

 俺とカラダン、エネドラでマリアさんを玄関までゆっくりとエスコート。

 途中、少しだけ雑談。

 

「ちょっと顔が赤くなってないですか?」

「煩いね、ただ酒を飲みすぎただけだよ」

 おばちゃんのツンデレなんて、誰得だよと思うけど。

 

 レイモンドが来て、マリアさんとカラダンをパーティーに加え、ターヘラへと送っていった。

 

・・・・・・

 

 風呂を終えたが、今日は会議は中止にしてある。

 

 昨晩の会議で二日分の予定をまとめて確認してあるし、今日の午後からはちょっとした休暇扱いにしてあるので。

 食事の用意や片づけなどもあるから、完全な休暇とまではいかないのだが。

 せっかく瑪瑙のアクセサリーなどを贈ったこともあり、ゆっくりしてもらいたかったという俺の我儘でもある。

 

 ベッドに寝そべって、明日のことを思い描く。

 明日は商人ギルドで季節毎のオークションがあるので、朝から張り付く予定だ。

 目玉の戦闘奴隷と飛び込み出品での高級生薬アイテムを狙いたいが、上手くいくだろうか。

 運任せのところもあるので、少し緊張するな。

 

 

(コン、コン・・・・・・)

 

 

 ドアを開けるとチクルスの姿が・・・・・・しかもLv3!・・・・・・薄着で首には瑪瑙のペンダントが。

 俺が選んだペンダントを身に着けてくれていると思うと感慨深い。

 それにしても昨晩に引き続きだぞ。大丈夫か?

 

 お姫様抱っこして、ベッドへエスコート。

 

・・・・・・

 

 一糸まとわぬ状態で瑪瑙のペンダントだけ着けてるとか・・・・・・もうなんだかイロイロと限界で・・・・・・限界まで挑んでしまった。

 早く傷一つない体にしてあげて、その素肌にアクセサリーを着けてほしいと思ってしまう。

 

 :

 :

 :

 

 落ち着いてきたところで、少し冷静になって昨日のことを確認。

 

 

「昨晩はありがとう。よくエネドラにエリクサーを飲んでもらえたな。

 説得するのが大変だったのじゃないか?」

「はい。初めはあたしに飲みなさいの一点張りだったのですが、

 アミルさんがユキムラ様が泣きながら迷宮で戦っているぐらい

 お母さまに飲んでもらいたいと思っているからと説明してもらって」

 ぐっ。まあ、それで飲んでもらえたのなら黒歴史も使いようということだ。

 

「それでも、なかなか納得してもらえませんでした。

 だから、お母さまのためではなく、ユキムラ様のために飲んでほしいと説得しました」

「そうか。自分のためでは俺のためか。

 確かにエネドラにはその方が説得力があるかもしれないな」

 さすが娘だけあって母親の性格や考え方を理解している。

 

「エリクサーで体を回復して、

 『侍女の嗜み』をすればユキムラ様が大喜びするはずだと説明して納得してもらいました」

「・・・・・・」

 そっちかい!確かに大喜びしたから、何も言えねえ。

 

「それでお母さまがエリクサーを飲んで回復して・・・・・・嬉しかった・・・・・・ですけど。

 その後に『二人も一緒に行くのよ!』って言われてしまって」

「・・・・・・」

 何も言えねえ。

 

 

 次はチクルスとフラウスの治療に向けて頑張ろう。

 その後にちょっとだけご褒美があると・・・・・・なおヨシ!

 

 

・・・・・・




お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/1/24(土)の予定です。
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