異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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047.オークション(その2)

 会場に入り、ルークの近くの席に行ってどっかりと座った。

 魔法使いの者を得たので、少しだけ嬉しい。

 俺を除けば、ラファ、ドロテアに続く三人目の魔法使いだ。

 

 あとは威霊仙が出品されて、落札できれば言うことないのだが。

 

「魔法使いの者を手に入れましたね。それにしても竜人族で魔法使いとは」

「まあ、迷宮で魔法を唱えるのに人間族も竜人族も関係なかろう」

 ルークも意外に保守的なのかな。

 

 それとも何か俺の方に見落としていることがあるのだろうか。

 別に見落としがあったとしても、大概はなんとかなると思っているが。

 我が家で唯一無二の魔法使いという訳でもないし。

 

 彼は魔法使いを商品としてしか見てないのかもしれない。

 変わった者よりも一般的な方が高く売れると考えてるだけかな。

 こちらは迷宮で戦力になるか、対人戦で優れた能力なのかという点で評価してるだけだ。

 

「そろそろタケダ様の石鹸の出品になります」

「そうか」

 さて、どんな反応が見られるか楽しみだ。

 

 全く誰も乗ってこなかったら困るな。ちょっとドキドキしてしまう。

 

「次の出品は、貴族の方と取り引きされている石鹸だそうです。

 最低落札価格は2500ナールからです。それではどうぞ」

 

 説明が雑ぅ~。でもそんなものか。過剰な演出も難しいよな。

 カシア様にお披露目した時のように、実際に利用したシェル達の肌の艶でも見せられれば変わってくるのだろうか。

 この場にいるのは男性が多いから、モデルの肌を見せるのは無理だよな。

 

 

 あれっ、入札者なし?マジっすか。

 

 

 

「2500」

 

 おっ、入札してくれてる人がいる。女性の声だ。

 

「2600!」

 

 こちらも女性の声だな。一人目の者と比べると声が高いというか気合が感じられる。

 

「2700」

「2800!」

「2900」

「3000!」

 

 :

 :

 :

 

「4700」

「4800!」

「4900」

「・・・・・・5000!」

 

 なんか特定の女性二人でデッドヒートになっている。

 しかも、席が隣り合った二人での入札合戦だ。

 二人とも初めのうちはコートのフードをかぶっていたが、今ははだけてしまってエルフ族の風貌が丸見えになってしまっている。

 遠目にだが、二人の間に火花が散っているような気がするのは気のせいだろうか。

 

(索敵)

 

 あ、違った。使うスキルを間違えた・・・・・・ん?あれっ、ちょっと拙いな。

 どうしよう・・・・・・先にオークションの女性の方から。

 

(鑑定)

 

 家名がノルトブラウン?この名前だとハルツ公に所縁の女性になるのか?

 

 

「他にありませんか・・・・・・ないようですね。

 では、5000ナールでの落札とさせていただきます。

 出品者と落札者は奥の部屋へ移動してください」

 

 落札に失敗した方の女性はがっくりと肩を落としている。

 

「タケダ様、行きましょう」

 

 おっと、出品者とは俺のことか。

 それにしても、標準価格の倍額で落札されるとは思わなかった。

 オークションって凄いな。

 

 5000ナールの1割と手数料の500ナールで合計1000ナールをルークに払うのか。

 それでも全然儲けの多い落札金額だ。

 儲けるよりも、それだけの価値を認めてくれたということの方が嬉しい。

 元々の原価が人件費以外は大したことがないので、標準価格でも既にぼろ儲けだし。

 

 ヌートを残して、俺とルークは奥の部屋に移動。

 落札に成功した女性だけでなく、失敗した女性も入室してきた。

 

 

「あっ、これはどうも」

 

 ルークが入室してきた女性の一人に深々と頭を下げた。

 知り合いなのだろうか?

 名前からして公爵関連の女性だから、御用達商人とは顔なじみなのか。

 女性の雰囲気も明らかに貴族で気品も美貌も持ち合わせた人達だと感じる。

 

「本日は手前どもの商品をお選びいただき、ありがとうございます。

 こちらの品は貴族の奥方様もお選びいただいて・・・・・・」

「この石鹸はカシア様から下賜いただいたことがあり、存じ上げております」

 あれっ・・・・・・カシア様に所縁のある方々なのか。

 

 家名がノルトブラウンだったから当然か。

 カシア様は知り合いの貴族女性にアチコチ石鹸をばら撒いてくれているのか。

 この方達のようにリピーターがどんどん増えてくれるとありがたい。

 

「タケダ様、こちらはゴスラー騎士団長の奥方様です」

「そうでしたか。これは大変失礼いたしました」

 彼女達に向かって、深々と頭を下げた。

 

 こんな所に騎士団長の奥さんが来るとか想定外だ。

 だが、良いプロモーションというか宣伝になったかもしれない。

 原作だとゴスラー騎士団長の奥さんに会うのは城に招かれた食事会の時だったかな。

 原作よりも早いタイミングで会うことになってしまった。

 

「ルーク、手数料の方は正規の金額で1000ナールをちゃんと支払うが、

 公爵領の方々から通常価格より高額な代金は受け取れない」

「落札した方に値段を下げて引き渡すのは問題ありません。

 こちらのことは気になさらず」

 そうだよな。

 

 先程だって、トカラの落札金額に3割引が効いていたし。

 あれはスキルの効果だから違うのかもしれないが。

 

「さすがに公爵様所縁の方へは通常価格でのお取引とさせて下さい。

 落札金額は5000ナールでしたが、2500ナールで結構でございます」

「まあ、それは嬉しいわ」

 ゴスラーの奥方は目を輝かせているが、隣の女性の悔しそうな顔は変わらず。

 

「あの、そちらの方へも急ぎ同じ石鹸セットを取り寄せることができますが、

 2500ナールで購入されますでしょうか?」

「購入します!」

 なんか、行動パターンというか回答パターンがカシア様に似ているのは気のせいだろうか。

 

 貴族の石鹸を普及させることが当面の目標だから、高値で売りつけるのは控えたい。

 本当なら宣伝してもらったのだから、無料にしてあげたいぐらいだ。

 でも定価でちゃんと購入できることを伝えたいから、値引きも値上げもしない。

 お二方はカシア様から下賜されたとおっしゃっていたから、定価は知らないのだろうけど。

 

 ゴスラーの奥さんに石鹸セットを渡して銀貨25枚を受け取り、そのうちの10枚をルークに渡した。

 三人は会場に戻り、俺は会場を出てフィールドウォーク用の絨毯のある場所に向かう。

 

 ギルドの壁から自宅にワープで移動し、ポーラの許可を得て貴族用石鹸セットを1つゲット。

 彼女はエネドラと石鹸の量産作業に従事しているから、石鹸の在庫も把握している。

 ポーラに我が家に男性メンバーが一人増えたことを伝え、トンボ帰りで商人ギルドへ移動。

 

 会場に入る前に心の準備をしなければならない。

 さきほどオークション会場で鑑定ではなく索敵のスキルを発動してしまった際に、会場に赤い点が2つあるのに気付いた。

 さすがにそのまま放置はできないので、確認しておかなければならない。

 タケダ家の敵対勢力なら、早めに状況把握する必要があるだろう。

 

 座っていた席からは後姿しか見えなかった。

 フードを被っていたので、外見などもよく分からない。

 回り込んで顔を確認したいが、こちらが警戒していることを気取られそうで悩ましいな。

 

 まずは元の席に戻ろう。

 紙切れを職員に見せて会場に入り、ルーク達の席へゆっくりと戻りながら会場を見渡した。

 石鹸を落札したゴスラー騎士団長の奥さんと友人は元々座っていた席にいらっしゃる。

 

 そして赤い点の二人もそのまま座っているようだな。

 

 とりあえず、赤い点を確認。

 

 

(鑑定)

 

 

レーガン・ノルベルト・アンシュルト(エルフ族 ♂ 37才 子爵)

聖騎士Lv25

装備 オリハルコンの剣 竜革の鎧 防毒の竜革靴 身代わりのミサンガ

 

ハウザー シュトライト(狼人族 ♂ 43才 自由民)

探索者Lv67

装備 エストック 竜革の鎧 加速のブーツ 身代わりのミサンガ

 

 エルフ族と狼人族のペアか。

 一人は貴族で、一人が自由民。探索者のレベルが高いな。

 聖騎士Lv25というのも知っている聖騎士の中ではレベルがかなり高い部類に思える。

 

 スキル融合装備品も身に着けているし、身代わりのミサンガも装備済と。

 それなりの猛者ということだろうか。

 

 赤い点の理由に何が考えられるだろうか?

 

 エルフ族の男はシェル達を助けた時の敵対勢力の可能性はあり得るか。

 彼女達への陰謀の首謀者は伯爵だと聞いた記憶があるが、情報が少なすぎて判断できない。

 エルフの子爵か。後でルークに確認してみるか。

 

 自由民の赤い点というと一番に思いつくのはバラダム家だが、家名に覚えはない。

 ドーリットルが継いだ家名とも異なるし、これまた情報不足だ。

 

 赤い点の意味もタケダ家に対する明確な敵意を持つ場合とそうでない場合がある。

 その辺にいる盗賊だって赤い点だからな。

 一方でバラダム家の者達みたいなのだと困るんだよな。

 今は記憶と記録に留めておく程度にするしかないか。

 

「タケダ様が不在の間、頂いた一覧に記された生薬や生薬素材の出品はございませんでした」

「そうか、残念だが仕方ないな。教えてくれてありがとう」

 もうすぐ午前の部が終わる。

 

 飛び入り出品は午前の部だけという話だから、午前中に出品がなければ今日はもう可能性はないということだな。

 うーむ、厳しいな。

 つい数日前に威霊仙を入手したのだから贅沢な話かもしれないが。

 

 午前の出品が終わってしまった。

 今回のオークションで追加のエリクサーを入手する望みは絶たれた。

 気持ちを切り替えて、次の手段で全力を尽くそう。

 

 気にしていた赤い点の二人は会場を後にしたが、そのまま追いかける訳にはいかない。

 持ってきた石鹸セットを渡さなければならないから。

 

 ゴスラー騎士団長の奥方のいる席の近くまで歩み寄った。

 もう一人の女性が満面の笑みを浮かべている。

 

 リュックから石鹸セットを1つ取り出して、銀貨25枚と引き替えにお渡しした。

 

「助かったわ。これからという時に切れてしまったので困っていたのよ。

 まさか、このような場所で入手できるとは思ってなかったから」

「いえ、こちらこそ今後とも御贔屓にしていただければ」

 ちゃんと需要はあるようだな。

 

 今後もリピーターを確保できるような店舗をザビル以外にも設けた方が良いのだろうか。

 このギルドに事務所を構えるか、それとも公爵領繋がりでルークを利用するかだな。

 公爵領だけのことを考えるのなら、後者の方が手っ取り早いのだが。

 

 だが、平民用石鹸を売り出すという次のステップに進みたいから、もう少し作戦を練ろう。

 

 お二人は用事があるようで、石鹸を渡すと足早に去っていった。

 

 気になってることをルークに確認するか。

 

「ルークの知っている貴族で子爵位の方はどなたがいるのだろうか?」

「ゴスラー騎士団長ですね。それ以外の方は記憶にございません。

 もっとも面識があっても爵位を知らないということはあり得ますけど」

 ゴスラー騎士団長が子爵であることは鑑定で確認してるから俺も知っている。

 

 というか子爵だと紹介されたことはないから、公式にはルークから今聞いたのが初めてということになるのか。

 

 ルークだって爵位込みで紹介されなければ、鑑定スキルがある訳ではないから分からないか。

 

「どなたか気になる方がいらっしゃいましたか?」

「会場で見かけたような気がしただけだ。悪いな、おかしなことを訊いて」

 赤い点の貴族の情報をみだりに言葉に出すのは拙いか。

 

 俺が押し黙ってしまったので、彼はそれ以上追及してこない。

 

「タケダ様はこの後はどうされますか?」

「さきほど魔法使いの奴隷を落札したので、一度自宅に連れて帰るつもりだ。

 午後のオークションは顔を出すとは思うが、長居はしないかもしれない」

 トカラを連れて帰って、エネドラ達に説明しておかないとな。

 

「左様でございますか。

 石鹸の取り引きのお話をさせていただきたかったのですが、また後日お願いします。

 先日の頑強の鋼鉄大楯のお返事の際にでも、また相談させて下さい」

「そうだな。よろしく頼む」

 等価交換の取り引きもあったので、その時にしよう。

 

 ルークと別れて、トカラのいる部屋へと急いだ。

 ドアは開けっ放しなので、そのまま入って奴隷商人と挨拶を交わした。

 

「待たせて悪かったな。では代金を支払おう」

「はい。ありがとうございます」

 34万9300ナールだったな。

 

 金貨を35枚取り出して、銀貨7枚の釣りをもらった。

 魔法使いの市場価格を考えると破格の値段だ。

 

 奴隷商人が定型の注意事項を述べ、インテリジェンスカードの操作をして俺のカードにトカラの所有情報が刻まれた。

 1stジョブは冒険者をセットしているから、二人に見られても問題はない。

 この後、カラダンの時間が空いている時にエネドラとトカラと三人で訪ねて、エネドラへの死後相続の手続きをしてもらう予定だ。

 

 書類も渡され、事前に説明されていた附帯契約の記載も確認した。

 定期的に奴隷商人協会から監査が入るので、魔法使いジョブであることをチェックされるということらしい。

 ちょっと面倒臭いな。

 この前マリアさんの店で会った理事の人が来ることはないだろうな。

 特別会いたい人という訳でもないし。

 

 

「では、これを履いてくれ。それとこれも身にまとってくれ」

「はい。ありがとうございます」

 革の靴と大き目のコートを渡した。近くで見るとやっぱりデカいな。

 

 彼が靴を履き、コートを着ている間に奴隷商人に声をかけた。

 

「今日は世話になったな。

 また竜人族でも魔法使いでも取り引きの予定があれば是非教えてほしい。

 連絡先はここになるので、伝言をもらえれば取り引きに向かうつもりだ」

「なるほど。既に次をお考えですか。

 もしまた入手できましたら、ご連絡差し上げます」

 名刺はないから連絡先のメモを渡しただけだが、なるべく多くの伝手を確保しておきたい。

 

 退室してトカラに俺のパーティーに入ってもらい、移動用の壁に二人で向かう。

 壁の絨毯から自宅にゲートを繋いで二人で移動した。

 

「ここが我が家となる。君にもここに住んでもらうことになるので、後で皆に紹介しよう」

「はい。大きな家でびっくりしました」

 そういえば、何を生業にしているとか説明しなかったな。

 

「すまないが、我が家は外用の靴と家の中の靴が別になっていてな。

 ここで、ここにある靴と履き替えてほしい」

「は、はい。分かりました」

 我が家のルールで一番初めに戸惑うのがコレだろう。

 

 二人で食堂に向かうとエネドラは在宅だった。

 いてもらえると、とっても助かる。

 

「エネドラ。今日から我が家に加わるトカラだ。

 竜人族だが魔法使いジョブなので、ドロテアやラファと話す機会が多くなるかもしれない。

 あとで、レドリックとヘルミーネには伝えておくつもりだが、よろしくな」

「はい。ポーラから事前に聞いております。

 私の名前はエネドラよ。トカラ、よろしくね」

「よろしくお願いします」

 頭を下げたが、それでもエネドラの身長ぐらいはある。本当に身長差が凄いな。

 

 服を揃えるのがちょっと面倒かもしれない。

 それとオリビアよりも身長が高い気もする。

 

「部屋はレイモンドとの同室になるだろう。彼は今一人部屋だから。家具類は・・・・・・」

「委細、お任せ下さい。

 旦那様は昼食が終わりましたら、商人ギルドに戻っていただいても構いませんので」

 さすがエネドラ。

 

 うちは『さすごしゅ』ではなく『さすエネ』なのだ。

 

「では、よろしく頼む。

 トカラはこのエネドラの言うことをよく聞いて、我が家にまずは慣れることを考えてくれ。

 そのうち皆に紹介するから。

 我が家には魔法使いの先輩が二人いるし、竜人族の者も2名いるから心配しなくても良い」

「はい。分かりました。エネドラ様、よろしくお願いします」

 この子、礼儀正しいな。育ちの良さを感じさせる。

 

・・・・・・

 

 午後のオークションは既に始まってるが、出品予定の商品もオークションの順番も知ってるので昼食を抜いてまで確認したいものはない。

 ゆっくりと昼食をいただきながら、ザビルの状況を確認した。

 

「調理器具についてはオネスタさんの店でドロップ品と交換して

 既にあらかた揃えてザビルに送りました。

 家具類は午後にこちらに届きますので、それから移送します。

 風呂の浴槽はベイルに発注しておりますが、先にクーラタルで使っている浴槽を1つ送りました。

 クーラタルには3つ浴槽がありますので、一つぐらい減ってもなんとかなりますので。

 ベイルには2つ特注で依頼しています。

 届いたものはクーラタルで1つ使い、ザビルに1つ送る予定です」

「そうか、確かにそうだな。浴槽のことまで頭が回ってなかった」

 ベイルの世話人の店まで手を回していたとか恐れ入る。さすエネ。

 

 ザビルで実際使うとなったら、新しくタケダ家に加入する者には風呂だけでなく、イロイロと教えなければならないだろう。

 やはりクーラタル側から人をある程度派遣せざるを得ないな。

 

・・・・・・

 

 昼食を終えて、商人ギルドのオークション会場に戻ることに。

 紙切れを見せて、オークション会場に入った。

 

 ハルツ公領のご婦人達はいないし、赤い点の二人もいないようだ。

 先程の場所にルーク達もいないな。

 

 午前中と比べればガクッと人が減ったようにみえる。

 午後の部は出品リストにあった順に淡々とオークションにかけられるから、欲しいものの順番になった時だけ来るのかもしれない。

 

 オークションの中で気になるものだけチェックだ。

 

 硬直のエストックは32万ナールで落札された。

 三人が競合して、最後の武器商人Lv12の男が落札した。

 残りの二人も商人と武器商人だったが、三つ巴になったせいで値段がそれなりに上がったのかもしれない。

 

 竜騎士Lv1の男は聖騎士の貴族が落札していった。

 貴族が競りにきてると分かって、他の者は及び腰だったな。

 鑑定で見ても爵位がなかったし、索敵ではグレー色だったので先程の赤色の奴とは別人だ。

 

 というか、このタイミングで先程の赤色の二人が再び会場に入ってきた。

 この次の次の出品は魔法使いジョブの男だったが、それが目的だろうか?

 彼は索敵で確認した際には赤色で、バラダム家の魔法使いだった者だ。

 予想通りなら、嫌な組み合わせだな。

 

 やがて魔法使いのオークションの順番となった。

 嫌な予想が当たってしまった。赤色だった狼人族の探索者の男が入札している。

 意外だな、エルフの聖騎士が入札するのかと思ったのだが。

 目立つのを嫌ったのだろうか。

 

 さすがに魔法使いということもあって、入札する者は多い。

 最低落札価格は30万ナールから始まったが、あっという間に70万ナールまで達した。

 それでも、まだ数人が諦めずに競っている。

 探索者Lv67の男は押し黙っているが、競争相手が減るのを待っているようだ。

 

 最後に二人の一人が脱落しそうになったタイミングで探索者の男が参加し始めた。

 

「115万!」

 今まで1万ナール刻みだったが、探索者の男は5万ナール一気に上げてきた。

 

「116万」

「120万!」

 こちらは5万ナール刻みで上げていくつもりか。

 

 もう一人の男は商人のジョブで誰かに落札を依頼されたのだろうか。

 淡々と1万ナール高い金額を言い続けている。

 

「121万」

「125万!」

 

 :

 

「146万」

「150万!」

 

「150万ナールで他にありませんか・・・・・・ないようですね。

 では、150万ナールでの落札とさせていただきます。

 出品者と落札者は奥の部屋へ移動してください」

 

 結局、赤色の片割れの探索者が落札したか。

 白金貨の準備がどうこう言っていたオッサンは登場しなかったな。

 出品者が雇った宣伝マンだったのかもしれない。

 

 エルフ族の聖騎士の男も探索者と連れだって、奥の部屋に向かっている。

 あの二人の下に魔法使いジョブの者が行くのか。ちょっと嫌な感じだな。

 あの魔法使い一人だけなら実力的には大したことないが、他のパーティーメンバー次第では強敵になりえるかもしれない。

 

 二人が消えた後もオークションは進んでいく。

 

 やがて赤色の二人が戻って席についた。

 魔法使いの男は後で引き取りにいくのか。

 この後の出品で落札したいモノがあるのかもしれないな。

 もう少し様子を見てみるか。

 

 その後も二人に気取られないように、オークションを眺めながら様子を窺う。

 出品予定からすると、もう俺の欲しいものはないのだが。

 

 聖騎士の男は防毒の硬革鎧を21万ナールで落札したようだ。

 なかなかの金額だが、予算もかなり持っているのだな。

 さきほどの魔法使いと合わせて171万ナールだ。

 魔法使いの落札金額は150万ナールだが、鑑定で確認したらLv30を超えていたから案外妥当な金額なのかもしれない。

 

 奥の部屋に行った二人は今度は戻ってこなかった。

 そのまま魔法使いの男のいる部屋に行ったのかもしれない。

 索敵で赤いというだけで、落札した奴隷や武器におかしな点がある訳ではない。

 迷宮の探索なり、討伐なりを考えると普通の振る舞いだ。

 

 これ以上は時間の無駄か。

 落札結果はどうせ、明日以降の掲示板に貼りだされるから金額などは後からでも分かる。

 

 肝心の威霊仙は手に入らなかったが、今回は諦めるしかない。

 オークションはまた次の季節で挑戦しよう。

 

 席を立って退室し、移動用のギルドの壁の方に向かう。

 壁にかけられた絨毯にゲートを繋いで自宅へ戻った。




お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/1/28(水)の予定です。

蛇足になりますが、本話で索敵で赤い点2つと識別された者を鑑定した際、家名と名前の間に点の有無の違いがありますが、誤記ではなく意図的なものです。
今までも書き分けてきたつもりなのですが、こうして並べると違和感を覚える方もいらっしゃると考え、後書きで記載しました。
意図を後述の話で記載するかは現時点では未定です(拾えない伏線になるかも?)。
気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、今はスルーしていただけると幸いです。
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