異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

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048.ザビル開業の準備

 エネドラに帰宅を告げ、ザビルの状況とトカラの様子を尋ねた。

 

「ザビルの方へは家具類を送りましたので、後はカラダンの方で指示しているはずです。

 今日中に準備が整うでしょう。

 多少は不足するものがあるかもしれませんが、後はザビルの街で調達できると思います」

「そうか、後で俺もザビルに行ってカラダンと話をしてみる」

 ザビルの開業準備の状況を自分の目でも確認してみたい。

 

「ザビルの方は新しいメンバーが加わるので、

 しばらくはクーラタルの方から人を出して支援した方が良いと思う。

 トカラに限った話ではないが、タケダ家のルールや設備の使い方、情報の秘匿など

 覚えてもらう事も多いので、教えるメンバーが必要になるだろう」

「そうですね。護衛メンバーを1、2名とチクルスを派遣した方が良いかもしれません」

 確かにエネドラの言う通りかもしれない。

 

 ポーラとエネドラはクーラタルから動かしにくいので、チクルスしかいないかも。

 日帰りでカラダンのヘルプをしてもらうか。

 ベイルの方はミモザ、ビンス、リックの三人で回しているから、こちらも人を動かしにくい。

 

 既存店舗の有力メンバーであるミシェルやナナ達は、当面はザビルの立ち上げに注力だ。

 ザビルの方で後方支援に向いた奴隷が見つかれば、クーラタルやベイル側に回したいが直ぐには難しいかもしれない。

 多少時間はかかるだろうが、じっくりとメンバー集めをしていこう。

 クーラタルの増築が終わるまでは空き部屋がないが、幸いザビルの方は部屋がたくさん空いてるので拠点間移動のスキルで通ってもらう手もある。

 ザビル支援をするチクルスの逆パターンだな。

 

 拠点の方に家具類も運び入れたから、マテウス達が新拠点に移るまではカラダンだけでなく護衛部隊の一部も常駐させるべきだろう。

 急に食事を作るのは難しいからクーラタルで食べてもらうとしても、新拠点に人を置いておかないと防犯上拙い。

 明日には既存の奴隷商館が店仕舞いするので、そのタイミングでマテウス達は新居に引っ越しをしてもらう。

 彼らがザビルの拠点に入居すれば防犯面は改善するだろう。

 

「トカラの部屋ですがベッドやイス、机や小物類も運び入れました。

 なので今日から問題なく使えますが、同室のレイモンドの紹介が必要ですね。

 彼には少しだけタケダ家のルールを教えました。

 頭の良さそうな子で理解力はあると思いますが、

 いかんせんタケダ家の秘密が常識外なので逆に苦しんでいるかもしれません」

「まあ、こればっかりは慣れてもらうしかないな」

 へたに理解力がある方が苦しむというのがなんともなぁ。

 

 全てに『だいじょうぶだと思います』と言われても困るけど。

 

「今はレドリックが風呂の入り方を教えています」

「そうだな。まずはその辺りから慣れてもらうか」

 風呂も初めは戸惑うだろうからな。

 

 そういえば、久しぶりの男性メンバーか。ピコ達以来だな。

 

「レイモンドはザビルに行ってるのか?今、ここに残っているのは?」

「私とポーラ、レドリック、トカラ、アミルさんとミラですね。

 他の者はザビルの手伝いに向かわせました」

 本当に最低限のメンバーと護衛を残して向かったのだな。

 

「では、俺もザビルに行ってくる」

「はい。いってらっしゃいませ」

 エネドラと別れて玄関に向かった。

 

 玄関から拠点間移動のスキルでザビルの玄関に移動。

 

 索敵で確認すると皆が忙しそうにしているのか、青い点がワラワラと動いている。

 どれがカラダンかは分からないから、誰か呼び止めて確認するか。

 おっ、マヤがいた。

 

「マヤ、ちょっと訊きたいのだけど、カラダンはどこにいるか分かるか?」

「あ、ご主人様。カラダンさんは二階にいると思います」

「分かった。ありがとう」

 部屋割も分からないから、行ってみるしかないな。

 

 二階に上がり、空いているドアを片っ端から確認して・・・・・・いた。

 

「カラダン、状況はどうだ?」

「旦那様、お疲れ様です。

 エネドラ様から多くの人員を派遣してもらえましたから、間もなく片付くと思います」

 彼女の見立て通りか。

 

「それで、今日からカラダンはここで寝泊まりするつもりか?」

「はい、その予定です。食事や風呂は今日だけはクーラタルで済ませると思いますけど」

 まあ、その方が効率良いよな。

 

 

「部屋に家具類も運び入れたことだし、

 今晩はクーラタルから2、3名、護衛でこちらに寄越した方が良いのではないか?」

「明日はマテウス達が引っ越してきますけど、

 今晩は誰か派遣してもらおうかと旦那様と相談したかったところです」

 ザビルに慣れているメンバーに誰かを加えるか。

 

「ザビルに派遣しているピコとモニカの二人にケリーとマリーを加えるのはどうだろうか?

 ピコに念のためパーティーを組んでもらって、四人を加える感じで。

 護衛で戦えるのは実際はモニカと双子だけになるが」

「なるほど。ちょっと四人にも伝えてみて、不都合がないか確認してみます」

 双子は多分問題ないだろう。

 

「じゃあ俺の方でも四人を借りる件、レドリックに確認してくるよ。

 それと明日からチクルスを通いでザビルの支援に入れる予定だ。

 さきほど相談して、エネドラから了解をもらっている。

 しばらくの間は護衛メンバーも2名ぐらいはこちらに派遣した方が良いかもしれない。

 レドリックとも相談して、派遣スケジュールを決めた方が良いな」

「なるほど。確かに暫くは人手不足なので、とても助かります。

 チクルスさんも今こちらに来ているので、話をしておきます。

 護衛メンバーの件は今晩の会議でも相談してみようかと思います」

 カラダンと別れて、クーラタルへ戻った。

 

 レドリックを探すと既に風呂のレクチャーは終わったようで、食堂でトカラと何やら話をしているようだ。

 

 二人の会話に割り込み、今晩から護衛部隊を派遣することの是非を確認。

 

「ザビルの方で家具類などを運び入れたので、

 防犯のため今晩クーラタルから護衛メンバーを派遣したいと思っている。

 カラダンに帯同しているピコとモニカに加えて双子を派遣したいと思うがどう思う?」

「ザビル側で寝泊まりできる準備ができているのなら問題ないと思います」

 準備は大丈夫だ。

 

「しばらくはクーラタルから2名前後の護衛部隊メンバーをザビルに派遣しようと思っている。

 クーラタルからチクルスは日帰りで通うことになっているが、

 護衛メンバーの方はザビルで寝泊まりしてもらうのが良いと思っているが、どうだろう?」

「既にエネドラ様からも話は伺っておりますが、問題ないと思います。

 この後、私もザビルへ移動してカラダンと一緒に相談しましょうか?」

 確かにその方が手っ取り早いな。

 

「では、この後一緒に移動しようか。トカラの方は・・・・・・」

「先程、軽食を与えましたので、自室に戻って休ませましょう。

 少し疲れているようにも見えます」

 オークションにかけられたりとか、さすがに今日は疲れただろうな。

 

「では、トカラは食事時まで休んでいて構わないぞ」

「はい。ありがとうございます」

 

 彼は立ち上がり、自室に戻るため食堂を出ていった。

 背が高いので立ち上がると、それだけで目立つ。見た目は本当に魔法使いには見えないな。

 

・・・・・・

 

 レドリックと共にザビルに移動して二階に上がり、カラダンの部屋へ向かった。

 

「カラダン、レドリックと話して護衛メンバー派遣の了解を得たぞ。

 モニカ、ピコ、ケリーとマリーは今晩はこちらに泊ってもらう。

 泊るのはとりあえず、本館の方で良いだろう。

 奴隷館と防具屋の方は誰もいないが一日だけだし、

 拠点構築スキルの侵入検知を設定しておけばなんとかなるだろう」

「さきほど四人にも確認を取って問題なさそうでしたが、改めて伝えておきます」

 ザビルは拠点規模が6だから、拠点構築の侵入検知のスキルが利用できる。

 

 明日からはマテウス達が合流するから部屋割りや警備の分担なども決めなければならないな。

 そのうち二度目の面談も行いたい。

 今後はザビルも一大拠点になるから、コミュニケーションを密にしなければならないな。

 

「まずはザビル側の状況を確認しようか。

 ザビルの既存奴隷商館から引き受ける奴隷はどの程度になりそうだ?

 元々引き受ける予定だった9名と追加した探索者と村人ジョブの2名だったと思うが、

 他にも増えそうなのだよな?」

「はい。その11名に追加で4名加わります。

 売れ残ったのは探索者1名、戦士1名、僧侶1名、村人1名です。

 仕入れ価格の半額で買い取りを打診されています。

 その場合の支払金額は合計で12万ナールとなります。

 なお引継期間中に新たに仕入れた奴隷は売れてしまいました」

 元の仕入れ値が4人合わせて24万ナールか・・・・・・安いな。

 

 命の値段が安いってことなのだろうな。

 

「12万ナール程度なら問題ないな。

 この拠点に資金として既に200万ナール入れたので、運転資金として使ってくれ」

「分かりました。では明日そこから12万ナールを支払っておきます」

 これで、ザビル側の全体人数は把握できたか。

 

「ザビルには本館、防具屋、奴隷用の館がある。

 防具屋はサライとティナに使わせて、夜の護衛も兼ねてヒューゴも加える。

 家族単位の方が色々と都合が良いだろう。

 奴隷館の方は追加の2名と4名を住まわせて、

 監督役としてマテウスとニケを配置するのはどうだろうか?

 6名の中からリーダー役が選出できるかマテウスとニケに相談しても良いが」

「村人ジョブのマチルダとレベッカをどうするかですね。

 信用が置けないようなら奴隷館の方に住まわせた方が良いのかもしれません」

 確かにな。

 

「あの母娘の扱いは面談後にまた考えるしかないな。

 本館の方に住むのはカラダンとピコ、ミシェル、ナナを基本としよう。

 今後、タケダ家に加える奴隷メンバーが増えたら本館住まいだ。

 今晩はモニカと双子を付けるが、しばらくは護衛メンバーを2名ほど常駐させるか」

「ご主人様、護衛部隊は本日トカラが増えて13名になりました。

 私とヘルミーネ、レイモンド、鍛冶師のミラ、新人のトカラは派遣できません。

 また、護衛部隊の迷宮探索を考えるとラファ、ドロテア、フラウスもダメでしょう。

 ドロテア抜きでフレイヤを派遣するのも困難です。

 派遣できるメンバーはおのずと限られてきます。

 実際にはモニカ、ケリー、マリー、マヤの四人でローテーションになると思います」

 迷宮探索を考えると探索者、魔法使い、治療役は外せないから、比較的代替の利く前衛職になってくるな。

 

「護衛部隊の方は11名体制で、本日加入したトカラは暫くは訓練をさせたり、

 低階層での戦闘訓練の経験を積ませる必要がありますね」

「しばらくはやむを得ないだろう。

 俺の方でもトカラになるべく経験が共有できるように留意しよう」

 11名のうち3名が魔法使いというのも凄い話だな。

 

「カラダン、村人ジョブの者は掃除や雑用、食事の準備をさせればよいだろう。

 あとは戦闘奴隷の方も無理して迷宮探索に派遣する必要はないと思う。

 マテウスやニケは迷宮では頼りになると思うが、

 探索の要である探索者が販売奴隷と兼用というのはどうにも心もとない。

 暫くは体がなまらない程度に訓練させるだけにさせてみたらどうだろうか?」

「そうですね。マテウスとニケにも相談して、そのようにしたいと思います」

 別に危険を冒してまで迷宮探索に行かせる必要はないだろう。

 

 今、ザビルは護衛と迷宮探索を行える戦闘奴隷が合計7名。

 リーダー役のマテウスとニケ、回復役のヒューゴはタケダ家メンバー。

 その他に売却候補なのが、探索者2名、戦士1名、僧侶1名の計4名。

 前者3名と後者4名の実力差が激しくて、迷宮探索に出したくない。

 探索させるとしても低階層限定になるだろう。

 

 もう少し奴隷の数を増やして、層を厚くしてから迷宮探索に向かわせるのが現実的だ。

 売却候補の中からタケダ家メンバーを採用しても良いかもしれないが、そもそも販売奴隷が枯渇した状態というのも商館としては良くない。

 なかなか悩ましいところだ。

 

 クーラタルから派遣する護衛メンバーは護衛任務に充てたい。

 マテウスやニケ相手に訓練するのは良いが、大切な護衛メンバーを中途半端なパーティーの状態で迷宮に送りたくない。

 

「護衛部隊はモニカとケリーの組、マリーとマヤの組の二つを交互に派遣します。

 全員前衛職ですが性格的にはバランスが取れていると思います」

「確かにそうだな。双子セットだとちょっと前のめり過ぎるよな」

 皆それなりに血の気が多いけど、レドリック推薦の組分けの方がバランスは良さそうだ。

 

「3日で入れ替えさせましょう。あまり長いとダレが出てくるかもしれませんので」

「その辺りは実際にやってみて、カラダンの方でも確認しながら意見をしてほしい」

「承知しました。旦那様」

 護衛部隊の派遣はこんなところで大丈夫かな。

 

「設備の設置は終わったのか?」

「はい。本館と防具屋には照明と冷暖房設備、温水・給水設備も設置しました。

 食糧庫は本館の厨房の倉庫に設置しています。

 6つある倉庫のうち1つは防具屋に設置しました。

 本館には生薬用の倉庫、食材アイテム用の倉庫を1つずつ設置して、

 残りは一つの倉庫に収納して一定数になったら、

 クーラタルに移送したいと思いますがよろしいでしょうか?」

 食材と生薬はザビルで消費するが、それ以外はクーラタルへ送るのが合理的だ。

 

 ドロップアイテム云々の話はザビルの運営が順調にいって、迷宮探索にパーティーを派遣できるようになってからだ。

 装備品の生成や一般アイテムの取り引きはクーラタルなので、そちらへ輸送する必要がある。

 倉庫に備蓄した食材を使って調理した料理を食べられるのはタケダ家所属の奴隷のみ。

 販売用の奴隷達の方は一般的な食材を調理して食べる。

 

 販売用奴隷はいずれは売られていくので、あまり贅沢に慣れてしまうとその後が大変になる。

 食料や寝具については差を付けざるを得ない。

 ベッドと毛布はちゃんと準備するが、あまり豪華なものにはしていない。

 

 

「それで構わない。薬草採取士のあてはあるのか?」

「マチルダとレベッカにジョブ取得させようかと考えます。

 村人ジョブのまま遊ばせておく訳にもいきませんので」

「そうだな。面談の際にそれも確認してみよう。

 二人がやりたがらないようなら、別の村人ジョブの者を薬草採取士にする手もあるしな」

 本人達に何がやりたいのかを確認してからでも問題ない。

 

 他には何かあったかな。

 拠点構築のスキルでザビルの拠点情報を確認。

 

【拠点名】ザビルの屋敷<支城>(3/4)▼

【所属/リーダー】タケダ家/カラダン

【名 声】6/1000

【メンバー】26名(ユキムラ、アミル、エネドラ、チクルス、ヴィルマ、イレーネ、オリビア、・・・・・・)

【規 模】6/10(邸宅)   【防衛力】5/100

【維持費】-/年

【資 金】200万ナール   【食 料】0日分

【ギルド神殿】0/6     【魔結晶】緑(18376/99999)

【ギルド】なし

【特 産】石鹸(品質中上昇)

【倉庫1】▶

【倉庫2】▶

【倉庫3】▶

【倉庫4】▶

【倉庫5】▶

【倉庫6】▶

 

 魔結晶はストックにあった緑結晶と迷宮で取得したものをいくつか合体させて登録した。

 あとは、拠点メンバーの方でまめに補充してもらえばよい。

 登録メンバーならMP補充が簡単にできるから。

 

 魔結晶の魔力がないと、照明や給湯・給水、拠点間の人や物資の輸送ができなくなってしまうから注意が必要だ。

 

「カラダン、俺の方でも確認するつもりだが、

 拠点の魔結晶に登録されている魔力に注意してくれよ。

 枯渇すると設備の利用ができなくなってしまう」

「はい。クーラタルにいた時も注意してましたが、今まで以上に気をつけるようにします。

 ザビルのメンバーが登録されましたら、拠点の利用方法も伝えます。

 各人に無理のない範囲でMPの補充をするようにします」

 カラダン一人で全てをやるのは無理だから、皆で協力してくれ。

 

「あとはカラダンの補佐を誰ができるかだな。現時点ではミシェルが有力候補だが」

「はい。その辺りは運用しながら考えます。

 問題があるようなら、夜の会議でまた相談させて下さい」

「ああ、課題があるなら皆で解決していこう」

 拠点の運営はかなりの重責だから、一人で抱え込まないのが重要だ。

 

 

 資金は200万ナール入れて、食料はまだ調理が始まってないから何も無し。

 ザビルの新メンバーをタケダ家に登録したら、一気に35名か。

 マチルダ母娘はグレーゾーンだが。

 

 

 ザビルで3つ目の拠点。あと1つしか拠点を設置できない。

 次の拠点のイメージがまだ全くないけど。

 

 クーラタルの拠点は人材育成、装備品生成・スキル融合、生薬生成、貴族用石鹸の量産、各種取引などタケダ家の本拠地として機能を果たしている。

 抱えている人材は質・量ともに一番だ。迷宮に2パーティーを派遣している。

 

 ベイルは平民用石鹸の量産と生薬生成。

 孤児院の子供達の受入施設のような感じになっているが、タケダ家としては小規模な拠点だ。

 

 ザビルは防具屋と奴隷商館を経営して、人材登用機能を持った拠点にしていく。

 開業すらしてないので、これから軌道に乗せていかなければならない。

 

(ザビル拠点見取り図)

 

【挿絵表示】

 

 

 ザビルでの人材登用が上手く回りだせば、3つの拠点が更に発展していくと思いたい。

 

 しばらくはザビルの立ち上げにクーラタル側の人材を使いながら、迷宮組と護衛部隊で2パーティーが迷宮探索を行なっていく。

 戦力が増えれば、3つ目、4つ目のパーティーを派遣できるようにしていきたい。

 最低限の護衛戦力を各拠点に維持すること忘れずにだ。

 

 まだまだ、これからだな。

 

 直近の計画のすり合わせが概ね終わったので、レドリックとクーラタルへ戻ることにした。

 

・・・・・・

 

 ザビルでの作業が終わり、居残り組を残してクーラタルへ派遣した者達は引き揚げてきた。

 

 食事の開始前にトカラを皆に紹介。

 モニカとピコはザビルに残っているし、ベイル組はいないので全員の前という訳ではない。

 双子の食事が終われば、モニカとピコは入れ替わりで夕食を取るようだ。

 

 ザビル拠点の立ち上がりが上手くいくまでは、変則的な対応で臨むしかないな。

 

「今日から我が家に加わった魔法使いのトカラだ。

 魔法使いなので、ラファやドロテアと話す機会が多くなるかもしれないが、よろしくな」

「トカラと申します。

 魔法使いと言っても、迷宮探索の経験は浅いです。

 皆さんの足を引っ張らないように頑張りますので、よろしくお願いします」

 多分、我が家で一番背が高い若者だと思うが、高所にある頭を深々と下げた。

 

 皆の表情はルーキーに対して、興味津々といったところだろうか。

 背が高いとやたらと目立つんだよな。

 俺も前の世界では子供の時に経験があるから気持ちは分かる。

 

 トカラは顔を上げたが、その表情は・・・・・・少し赤いな。照れているのだろうか。

 

 視線を前に向けると、オリビアはいつも通りの表情だが隣にいたフレイヤは少し焦っている?

 どうかしたのか。

 

 急に俺の視線を遮るように・・・・・・トカラ?

 木が倒れるように急に彼が倒れそうになり、慌てて支えた。

 フレイヤが近づいてきた。

 

「トカラ、どうした?気分が悪いのか?」

「えーと、なんかクラクラして」

 あらら、まさかタケダ家の非常識ぶりにストレスで熱が出たか。

 

「この子、ボレー食べてないのでは?」

「えっ?」

 目の前にはフレイヤがいて、竜人族の栄養事情の指摘。

 

 今日来たばかりだから、それまでにボレーを食べていたかまでは確認してなかったな。

 ちょっと盲点だった。

 

「俺が倉庫に行って、ボレーを取ってくるから、誰かトカラを部屋まで運んでくれるか?」

「はい」

 フレイヤがトカラをひょいっと横抱きに持ち上げた。

 

 お姫様抱っこならぬ、王子様抱っこ?

 Lv40台後半の竜騎士だから力もある。

 あわあわしているトカラをスルーして、レイモンドの先導でフレイヤが部屋に向かった。

 

 俺も倉庫に急がないと。

 確かボレーは山ほどあったはずだから、当面は問題ないだろう。

 

・・・・・・

 

 倉庫からボレーを数個取ってきて、ベッドから体を起こさせて本人に齧らせた。

 同室のレイモンドは水差しでコップに水を入れて、トカラに渡している。

 体格差がアレだが、年上のお兄さんをやってるな。これなら大丈夫か。

 

「レイモンド、後は任せて大丈夫か?と言っても、もう寝るだけだろうけど」

「はい。大丈夫です」

 レドリックと一緒に部屋を後にした。

 

 部屋を出ると、エネドラとチクルス、オリビアとフレイヤが廊下の壁を背に立っていた。

 

「フレイヤはよく気付いたな?」

「前の家にいたときに、あたしも同じようになったことがあったから・・・・・・」

 前の家というとバラダム家か。

 

 竜人族の体調管理というかボレーを与えるタイミングって別種族だと理解しにくいのかな。

 我が家では無くなる前に倉庫から持っていけと伝えてあるけど。

 トカラを俺に売った奴隷商人はちゃんと管理できてなかったのか、たまたまなのか。

 

「これからも、トカラのことを気にかけてやってくれよ。

 一つ年上だし、フレイヤの方が我が家では先輩なのだから」

「はい。分かりました」

 なんかオリビアがニヤニヤしているけど、なんなのだろうか。

 

 トカラにとってはイロイロあって目まぐるしい一日だったな。

 

 だが、タケダ家には将来期待の持てる戦力が加わったのかもしれない。




お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/1/30(金)の予定です。
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