異世界迷宮と戦乱と   作:HMI

205 / 265
049.神はいない世界なのか?

 オークションの翌日もいつも通りに朝練に参加。

 昨晩は寝込んでいたトカラも参加している。

 表情を見る限りは元気そうに見えるが、大丈夫なのだろうか。

 

 我が家は魔法使いであっても、最低限の護身のために近接戦闘を学ぶことになっている。

 ドロテアもタケダ家に来た当初は手ほどきを受けており、今も朝練に参加している。

 彼女の場合はフレイヤの付き添いという目的もあるかもしれないが。

 

 トカラは今、レドリック、ラファ、フレイヤ、レイモンドに囲まれて話をしている。

 遠目に見ると、同じ竜人族のフレイヤよりも少し背が高く見えるな。

 オリビアと比べたら、どちらが高いだろうか。

 

 自分もタケダ家では背が高い方だから、つい気にしてしまう。

 オリビアが来てから一位の座を奪われたのだが、奪還は無理だろうな。

 17才だけど、身長に関しては成長が止まってる気がするし。

 

 そのオリビアはヴィルマとイレーネに対して二対一の変則マッチの模擬戦をやっている。

 さすがに二対一だとオリビアも苦戦しているが、明らかに不利な状況で苦戦程度で済んでいるところが凄いところだ。

 木製の槍を二本持って、二人を近づけないように目まぐるしく槍二刀流でいなしている。

 ヴィルマもイレーネもオリビアの後ろに回り込んでの挟み撃ちといったことまではせず、純粋に攻防を楽しんでいるようだ。

 

 レドリックのトカラに対するレクチャーが終わったようで、彼はフレイヤが見守る中、木刀を懸命に振っている。

 竜人族の膂力のおかげか、木刀を振りまわす速度はかなりのものだ。

 あの剣の振りなら十分前衛が務まりそうな気もするが、魔法使いなのだよなぁ。

 ちょっと惜しい気もするが、やりたいことをやらせるのが良いだろうし、何やら約束もあると言っていたから魔法使いで成長させていこう。

 

 レドリックに近づき、トカラの様子を確認。

 

「護身レベルとはいえ、剣を使うことに抵抗を見せてなかったか?」

「いえ、それが全然。むしろ興味を持っている感じでした。

 剣をあまり握ったことはなさそうでしたが、

 腕力も上背もあるので盗賊程度なら近づいてはこないかもしれませんね」

 確かにハッタリは利くかもしれない。

 

「さすがに直ぐには迷宮には行かせないよな?」

「そうですね。2、3日は様子見をしたいと思います。

 昨晩、急に倒れたというのもありますから。

 ボレーを齧って落ち着いたようなことを言ってましたから、大丈夫だとは思いますけど」

 環境が急に変わったというのもあるし、焦って迷宮に行かせることもないだろう。

 

「トカラに優先的に経験を共有するので、徐々に慣らしていこう」

「そうですね。

 魔法使いが三人になったのでトカラが迷宮に行くようになったら、

 ラファには暫くは回復役をやってもらうことにしました。

 彼女も槍の腕が鈍らないようにしたかったみたいなので、都合が良かったかもしれません」

 武闘派魔法使いめぇ~。

 

・・・・・・

 

 訓練と朝食を終えて、ターレ迷宮へ。

 入口の兄ちゃんと軽口を交わしながら、迷宮案内をした後に45階層の探索を再開。

 

 ターレ迷宮の探索には大きく3つの目標設定をしている。

 

 1つ目は迷宮討伐に向けて次の階層に進むこと。

 そもそもの目標が迷宮討伐だからな。

 とはいえ45階層から一段階魔物が強くなるし、フロア面積も広くなるので、この階層はキッチリと全エリアをクリアにして魔物部屋も片づけて45階層以降の難易度を確認だ。

 

 2つ目はレベリング。

 イレーネ、オリビアがくのいちと竜将軍のジョブを得たばかりなので、レベルを上げが必要。

 アミルも今後の俺抜きでの探索に向けて、探索者ジョブのレベル上げをやりたい。

 

 3つ目は新ジョブ取得の模索。

 『くのいち』のジョブをイレーネは取得したが、俺は『忍者』のジョブが取得できていない。

 クリティカル攻撃の確率が増える武器を使ってモンスターを攻撃し続ければ、いずれは取得できるはずだから、デュランダルの使用は少し控え目にしてジョブ取得を目指す。

 その他にも新規ジョブ取得を目指して、今まで放置していたジョブの育成に勤しむ予定だ。

 

 百鬼夜行、勇者、英雄、遊び人のジョブはレベルキャップに引っ掛かったが基本的に固定だ。

 他にもレベルキャップに引っ掛かってしまった魔道士、刺客、博徒と他のジョブを控えに回して、入れ替えながら育成を行なっていく。

 剣聖や聖騎士もレベルキャップになったので、薬師、盗賊、料理人、探索者のジョブを育ててみようと思う。

 くのいちのジョブが刺客Lv70でイレーネが取得したので、Lv50の次はLv70で新規ジョブの取得ができるかもしれない。

 特に上位のジョブが取得できてなかったものを中心に育成だ。

 

 45階層から新規に出現した一段階強くてタフなオイスターシェルをひたすら叩きながら、奥へ奥へと探索を進める。

 結構、クリティカル攻撃が発生しているので、そろそろ『忍者』のジョブを取得したい。

 

 探索の途中にオリビアにトカラのことを確認。

 

「トカラとは何か話をしてみたか?」

「全然。竜人族で魔法使いって、お姉ちゃんは聞いたことないなぁ」

 まあ、オリビアの村にいなかったのはたまたまかもよ。

 

「同じ竜人族として気になるか?」

「?・・・・・・ひょっとして妬いてる?お姉ちゃんはユキムラ君一筋だよ」

 そんなことは訊いてない。

 

 だから、後ろから首に抱き着くのは止めろって。

 プレートメイルが後頭部に当たって痛いから。

 何故迷宮の中でバカップルみたいな振る舞いをしなければならないのか。

 

 なんとか振り解いて探索を続行。

 

・・・・・・

 

 そして、ようやく魔物部屋を発見。

 45階層を探索し始めて、3日目でようやくか。

 入口を確認するために壁をペタペタと触りまくる。

 なかなか入口が発見できない・・・・・・おっと、ここか。

 

 一瞬、ガクンッときて引き込まれたが、オーバーホエルミングをかけてワープで脱出。

 魔物部屋の中を索敵スキルで確認してから出てきたが、モンスターのサイズが大きくてなかなかの威圧感のある光景だった。

 

 改めて索敵のマップで見ると魔物部屋のサイズが広がっているな。

 持ってきたメジャーでちょっと測ろう。

 これは一辺が20mあるな。20m×20mの広さか。

 さすがにモンスターのサイズが大きくなると、魔物部屋の広さも比例するのだろうか。

 

 索敵で確認すると40匹前後はいるな。

 俺達以外に誰もこの階層に到達していないから間引く者もいないからか。

 

 とりあえず、いつも通りの手順で減らしていこう。

 モンスターの密度の薄い所を狙ってワープで入り、魔法をぶっ放して適当なタイミングでデュランダルと硬直のエストックで削る。

 硬直のエストックはイレーネから借りているクリティカル2倍のスキルが付与されたものだ。

 

 オイスターシェルはタフなので、なかなか削り倒せないが地道に出入りを繰り返す。

 ある程度減ったところで、オーバーホエルミングとオーバードライブのはしごで減らしていく。

 いつもより少し時間がかかったが殲滅完了。

 一度だけ、通路で近づいてきたモンスターのグループを倒した。

 

 その後もモンスターとの戦いは問題なく進んでいったが、午前中のうちにボス部屋には辿り着けなかった。

 それでも、レベリングは順調だ。

 特にトカラのレベル上昇は著しい。

 

 小荷駄隊にトカラ一人しか加えなかったことや元のレベルが低かったこともあり、ぐんぐんと上がっていった。

 彼の魔法使いジョブはLv29になった。

 午後もレベリングすれば、レベルだけなら他の護衛メンバーと見劣りしなくなるだろう。

 戦闘経験が大してないので低階層から慣らしていく必要があるとは思うが、そこはミラやマヤを育成したレドリックの判断に任せたい。

 

 一方でイレーネのくのいちジョブの方はLv25までしか上がっていない。

 上位ジョブだからレベルを上げるにしても、かなりの経験値が必要なのだろう。

 

 そして俺の『忍者』のジョブも取得できず。こちらは気長に構えるしかないな。

 いつかは取得できるはず・・・・・・きっと。

 

 探索を切り上げて、昼食のために自宅にワープで戻った。

 

・・・・・・

 

 食事を終えて、午後の探索を再開。

 

 探索自体は順調だ。

 そして、ここで新しいジョブを取得できた!

 

ジョブ 鬼神

効果 腕力大上昇 体力大上昇 敏捷大上昇 器用小上昇 知力小上昇

スキル 戦闘回数増加 輜重隊(4人)

     パーティー編成 アイテムボックス操作(70) ダンジョンウォーク

 

 探索者がLv70になった時点で取得した。

 アイテムボックスの数も70だし、ダンジョンウォークもあるので探索者のレベルがジョブ取得のトリガーなのは間違いないだろう。

 

 つまり百鬼夜行と探索者のジョブ双方をLv70にしろと?

 複数ジョブをセットできて、経験値ブーストできる異世界転生者以外には不可能だろう。

 

 それだけ苦労してジョブ取得しても、アクティブ攻撃スキルはなし。

 パーティー効果が5つで大上昇が3つもあるのは嬉しい。

 大上昇の効果が脳筋系のパラメーターに偏っている気もするが。

 そしてスキルの方は百鬼夜行や既存ジョブとの重複が多い。

 

 唯一重複してないのが『輜重隊(4人)』か。

 鬼武者と百鬼夜行の効果とスキルが、

 

ジョブ 鬼武者

効果 腕力中上昇 体力小上昇 敏捷小上昇

スキル 戦闘回数増加 小荷駄隊(2人)

 

ジョブ 百鬼夜行

効果 腕力大上昇 体力中上昇 敏捷中上昇

スキル 戦闘回数増加 小荷駄隊(4人)

     パーティー編成 アイテムボックス操作(50) フィールドウォーク

 

 ・・・・・・だったので、『輜重隊(4人)』は後方支援育成系のスキルなのだろうな。

 どこかで効果を確認するために、探索者Lv1の者を『小荷駄隊(4人)』と『輜重隊(4人)』のそれぞれに一人ずつ入れて、どの程度の育成の差が出るか確認してみるか。

 

 いや、そんなことよりも、別の確認が先だ。

 

 :

 :

 :

 

 おっと、これは凄いというかズルいというか。

 

 鬼武者と百鬼夜行のジョブを双方セットして、通常部隊から小荷駄隊の方に入れようとすると『小荷駄隊(4人)』にしか加入させられなかった。

 『小荷駄隊(2人)』と『小荷駄隊(4人)』を併用して6人を育成するのは不可能だった。

 

 だが、百鬼夜行と鬼神のジョブをそれぞれセットして、通常部隊から加入させようとすると『小荷駄隊(4人)』と『輜重隊(4人)』のどちらかを選択できる。

 スキル名称の部隊名が異なるからだろうか。

 これなら後方支援部隊を最大8人まで育成できることになり、結構デカい気がする。

 

 実際、トカラを『小荷駄隊(4人)』に入れた状態で、アミルを『輜重隊(4人)』に加えることができる。

 『輜重隊(4人)』の経験値を与える効果が『小荷駄隊(4人)』と同じなら、倍の育成効果を得たことと同じだ。

 

 アクティブ攻撃スキルはなかったが、タケダ家はメンバーが多いから育成効果が高いスキルは有難いかもしれない。

 

「ご主人様、どうされましたか?」

「アミル、どうやら新しいジョブを得たようなのだ。鬼神というジョブだ」

 ジョブの効果も高そうだし、嬉しくなってアミルに説明。

 

「キジン?変わった人ということですか?それは・・・・・・何と言ってよいのか。

 ご主人様の日々の行動によって、得たジョブでしょうか?」

「アミル、違う。奇人変人の奇人ではない。鬼の神という意味だ」

 いや彼女の指摘が的を射ている気もするが、そこはスルーだ。

 

「鬼のカミですか?神官の響きと似てる気もしますが?」

「・・・・・・」

 いせはれの世界って、神官のジョブがあったり、エレーヌの神殿があったり、ギルド神殿は存在するけど『神』の存在は聞いたことないんだよな。

 

 神様に祈ったりする人も見たことないし。

 神官のジョブを取得する方法も神に祈ったのではなく、精神統一というか精神修養だったし。

 

 実際、神を『異世界言語(全言語)』のスキルでブラヒム語で翻訳しようとしてもできない。

 なにか意図的に隠されていたりするのだろうか。まあ、いくら考えても分からんが。

 

「とにかく、他のメンバーを育成するのに有効なスキルなのかもしれない」

「なるほど・・・・・・良かったですね」

 反応、薄ぅ~。

 

 まあタケダ家のメンバーの育成でも新しいジョブが取得できた時は皆喜ぶけど、探索者のジョブ以外はレベルが上がっても確認できないから実感が湧かないのだろうな。

 皆から理解はされないが、スキルの価値は高いはずだ。

 

 ザビルのメンバーも今後は育成しなければならないし、護衛部隊の方もまだまだレベルを上げておきたい。

 きっと鬼神のジョブは今まで以上に役立つだろう

 

 鬼神は便利そうだから、固定で使うジョブは百鬼夜行、勇者、英雄、遊び人、鬼神になるか。

 遊び人は博徒のスキルをセットしたり、雷魔法をセットしたり結構使い易いんだよなぁ。

 鬼神は暫くは育成が必要だから、残り2枠を使って他のジョブを育成していくか。

 

 気を取り直して、残りの探索に励もう。

 午後いっぱいかかってもボス部屋に辿り着けないと予想していたが、予想外に早く見つかった。

 そして、更にワープを使うことで、全エリアのクリアも達成。

 ここまでで45階層の探索には合計で3日間かかったことになる。

 やはり45階層を全てクリアするのには3日間は必要という結論か。

 

 50階層が最高到達階層なら、残り5階層で15日間は見ておく必要があるな。

 45階層では半分がワンランク上のモンスターだったが、46階層以降は徐々にその割合が増えていくので、もう少し時間がかかるかもしれない。

 このターレ迷宮はいずれは討伐してしまう迷宮なので、階層の全エリアをクリアすることには拘る必要はないと思うが。

 

 

 45階層の締めでボス戦を片づけなければならない。

 

「アミル、次のボス戦は今までの中で一番強敵になるが、戦闘指示を出してみるか?」

「はい。もし何か至らない点があれば指摘をお願いします」

 それはもちろんだ。今までだってそうだったから。

 

「45階層からボス戦のモンスターの編成が変わります。

 44階層まではボス二匹でしたが、

 45階層からはボス二匹に加えて、お供のモンスターが二匹出現します。

 ボスはアバロニシェルというオイスターシェルよりも恐らく大きくてタフなモンスターです。

 お供のモンスターが何になるかは出現してみないことには分かりません。

 オイスターシェルが出現したら、この階層で戦ったようにタフな相手ですから注意が必要です」

「そうだな。こちらの編成はどうする?」

 一応、腹案はあるがアミルの指示を聞いてから、問題があれば指摘しよう。

 

「ボス二匹はご主人様とオリビアさんで一匹ずつ受け持って下さい。

 右側がオリビアさんで左側をご主人様でお願いします。

 お供のモンスターについては、左側をイレーネさん、右側をヴィルマさんでお願いします。

 私は遊撃で支援します。

 ご主人様とオリビアさんは余裕があればですが、

 イレーネさんとヴィルマさんのモンスターへの牽制もお願いします。

 ご主人様は雷魔法とイレーネさんのモンスターに博徒のスキルをかけるのもお願いします」

「了解した」

 ここまでは俺の考えた編成とほぼ同じで懸念事項はないな。

 

 俺とオリビアは攻撃の手数が多いから、イレーネとヴィルマの対峙しているモンスターへの牽制は可能かもしれない。

 ただ、ボスモンスターの強さは戦ってみないことには分からないから余裕があるかどうか。

 

「45階層から新規出現のオイスターシェルがワンランク強くなっているから、

 ボスモンスターはそれ以上に強くなっている可能性が高い。

 注意していこう」

「了解」

「了解」

「了解」

「ユキムラ君、任せて~」

 本当に頼りにしているぞ、オリビア。

 

「初戦の45階層以降のボス戦なので、今回は小荷駄隊外しをして万全の体制で迎え撃とう」

「了解」

「了解」

「了解」

「了解」

 

 トカラを小荷駄隊から、いったん通常部隊に加えた。

 待機部屋からボス部屋に5人で入る。ボス部屋の扉は閉じない。

 

 アミルの指示通りの配置についた。

 俺の少し右側にはオリビア、両翼の右にヴィルマ、左にイレーネが位置し、アミルは俺とオリビアの真ん中のやや後方に陣取った。

 

「では、始めるぞ」

 

 トカラを通常部隊から小荷駄隊に移した。

 モンスター出現のエフェクトとなり、煙から4つのモンスターが現れた。

 

 真ん中のデカい貝殻型のモンスターがアバロニシェルだな。

 そして、その両翼にはオイスターシェルが二匹だ。

 つまり今までの中で最高難度のボス戦だ。

 

(サンダーストーム、サンダーストーム)

 

 雷魔法を二連発。

 貝殻型のモンスターだと直ぐには麻痺したか分からないな。

 

(状態異常耐性ダウン)

 

 イレーネの前のオイスターシェルに博徒のスキルをかけた。

 

 まずは目の前のアバロニシェルにデュランダル、硬直のエストック、激情のダマスカス鋼剣、ひもろぎの聖槍をフル回転で叩き込む。

 イレーネの前のオイスターシェルにも聖槍でちょっかいをかけて援護は忘れない。

 左翼側の方から崩していこう。

 

 オーバーホエルミングの利用は温存。

 超速スキルを使えば多分、早く片が付くと思うが余力を持って戦えるのか確認したい。

 

 中央に並んだ二匹のアバロニシェルの地面に魔法陣が浮かんだ。

 だが、デュランダルを叩き込んでいるので直ぐに消える。

 オリビアも槍二本に詠唱中断のスキルが付与されているので、直ぐに打ち消したようだ。

 放っておいたら、どんな攻撃を受けたのだろうか。

 貝殻のモンスターだから水魔法か何かかもしれない。

 

 ボスはさすがにタフでやっかいだな。

 イレーネが目の前のオイスターシェルを石化させて、俺の前のボス戦に加わった。

 

(状態異常耐性ダウン)

 

 目の前のボスに博徒のスキルをかける。

 

(サンダーストーム、サンダーストーム)

 

 2回目の雷魔法二連発。

 ヴィルマとアミルが戦っている一番右側の戦線の動きが変わった。

 麻痺に追い込めたのか?

 ヴィルマの攻撃のサイクルが急に上がった気がする。

 

 おっと、目の前のボスが石化した。

 煙になる前に石化したということは、かなり耐久力があるってことだな。

 

(状態異常耐性ダウン)

 

 今度はオリビアの対峙しているボスに博徒のスキルをかけた。

 

 オリビアの戦っているボス戦にイレーネと俺が加わり、包囲して斬撃の嵐を見舞う。

 『ドラゴンファング』のスキルを使って、オリビアもアバロニシェルを激しく揺らす。

 イレーネと二人で隙ができたボスに斬撃を次々と打ち込み、彼女も『一閃』のスキルを発動。

 楽しくって仕方ないとばかりに剣を縦横無尽に振り回す。

 こうなるともう終盤だな。

 二体目のボスも早々に石化させてしまった。

 煙にならないから、本当に頑丈な奴だな。

 

 最後に麻痺しているオイスターシェルを皆で取り囲んでタコ殴り。

 俺も負けじとクリティカル攻撃を目指して、イレーネから借りたクリティカル2倍が付与された硬直のエストックを振るう。

 デュランダルは封印だ。早く終わらせると、クリティカル攻撃を誘発できないから。

 石化させる前に煙に変わってしまった。

 これで残った石化した奴等を片づけるだけだ。

 

 石化させたモンスターを皆で分担して全て煙に変えて、ボス戦は終了した。

 

「45階層のボスは結構タフでやっかいだったな。

 状態異常にできないと、もっと面倒だったかもしれない」

「はい。雷魔法と状態異常のスキルが付与された武器はやはり有効ですね」

 そうだな。だが、他に懸念点もあるな。

 

「イレーネとオリビアは新しいジョブを得てからは少し攻撃力が落ちたか?」

「御館様、ジョブを変えたばかりだから仕方ない」

「お姉ちゃんは全然大丈夫だよ~♪」

 全然大丈夫じゃないってことだな。

 

 二人のジョブには腕力補正の効果がないから、レベルが低くても高くても攻撃力がそれほど変わるとは思えない。

 だから攻撃力が落ちてる原因は恐らくレベル補正だろう。

 この階層のモンスターはLv45で、今はイレーネがLv27でオリビアがLv34だ。

 今までは俺の複数ジョブの影響で誤差だったかもしれないが、45階層まで来てワンランク上のモンスターになると無視できなくなってきた気がする。

 46階層以降になると、そのワンランク上のモンスターの割合が増えるから早めに対策を考えた方が良いかもしれない。

 

 45階層の攻略を終えて分かったのは、今の戦力でも十分探索可能ということと、走破するのに3日は覚悟すべきということか。

 50階層に向けて大きな方針変更は必要ないが、細々とした課題を解決していこう。

 

 アバロニシェル二匹のボスドロップは『牡蠣』か。

 オイスターシェルのレアドロップと同じ。

 ボス周回してまで欲しいものではない。

 

 そのまま46階層に抜けて、本日の探索は終了とした。

 

 

 46階層の小部屋からワープで自宅に戻った。

 アミルは二階に上がり、三人は修練場へと向かっていった。

 

 夕飯まで時間が少しあるので、着替えたらザビルに行こう。

 

・・・・・・

 

 ザビルに移動して、カラダンに引越状況を確認。

 

「防具屋の方には旧店舗から商品を全て引き揚げて移送しました。

 明日から営業を始める予定です。

 店主のサライ、手伝いのティナの二人で今まで通り運営できると思います。

 貴族用石鹸の在庫もクーラタル側から運びましたので、

 明日から石鹸セット、詰め替え用の石鹸双方の販売は可能です。

 息子のヒューゴが護衛として住むことも伝えました」

「もし不足する防具があれば、クーラタルの倉庫から持っていって構わない。

 あとで報告してくれれば良いので」

 手元にメモを書き込みながら、カラダンは頷いた。

 

「本館の方へは私とピコの部屋を二階に設けました。

 ミシェルとナナの部屋も決めて、既に二人の引越も完了しております。

 ウェイランド家の販売奴隷で売れ残った者は当方で引き受けて、

 既に代金を払って引き取り手続きも完了しています。

 今は奴隷商館全体の掃除をナナの監督の下で実施中です。

 食事もナナが手伝ってますから、彼女に任せています」

「残りの問題はあの母娘ぐらいか?」

 俺の指摘に少し渋い顔をしながら、ゆっくりと頷く。

 

「マチルダとレベッカの二人を本館側に住まわせるかまだ決めかねています。

 今晩だけ本館側の部屋にして、旦那様に面談してもらった後に最終決定したいと考えます」

「では、明日の午前中にマテウス達も含めてまとめて面談するか」

 育成も考えなければならないので、あまり先送りにしたくはない。

 

「はい。マテウス、ニケ、ミシェルやナナ達のジョブの件もありますし、その方が助かります。

 マテウスには奴隷商館側の奴隷達の取りまとめ役をナナと相談して決めるように伝えてます。

 決まらなければマテウスをとりまとめ役にする予定です」

「そうだな。戦闘奴隷もいるから、取りまとめ役は戦える奴が適任だろう」

 とはいえ、マテウスを奴隷商館側に住まわせるのは避けたいな。

 

 いずれは本館側の護衛を担ってほしいから。

 今日から3日間はモニカとマリーを護衛として派遣している。

 暫くはクーラタル側から護衛を出すのは仕方ないが、いずれはザビル拠点だけで護衛体制を確立してほしい。

 

「食事の調理とかは問題ないか?」

「チクルスさんに来てもらって、私と共にタケダ家の設備や内密事項の説明を実施しました。

 ナナが新しい厨房を使って食事を作っていますが、食事の準備はなんとかなりそうです。

 防具屋の三人も今晩はこちらで夕食を摂ることになっております。

 風呂の使い方は明日以降、伝える予定です」

 まあ、一度に全てを教えるのは無理があるよな。教わる側の人数が多すぎるから。

 

「明日の面談を経てマテウス、ニケ、ミシェル、ナナに自分達が

 ザビルでどのような役割をこなしてもらうか決めよう。

 マチルダとレベッカの母娘も同様だな」

「はい。今までとタケダ家は違うということを認識してもらう必要があります。

 直ぐには無理でも徐々に浸透させていくつもりです」

 まずは屋台骨をしっかりと作ることが重要だよな。

 

「そんなところか、では明日の午前中に面談を済ませてしまおう」

「はい。よろしくお願いいたします」

 カラダンも俺も忙しいから、ここで余り長く時間をかけられない。

 

 彼と別れて、クーラタルの自宅にワープで戻った。




お読みいただき、ありがとうございます。
次回投稿日は2026/2/1(日)の予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。